1 00:00:00,537 --> 00:00:02,363 1991年のことです 2 00:00:02,363 --> 00:00:05,121 人生で最も深く 動かされるような 3 00:00:05,121 --> 00:00:06,687 体験をしました 4 00:00:06,687 --> 00:00:11,414 大学の3年目です 学部には7年いたんですが— 5 00:00:11,414 --> 00:00:13,605 「ウィニングラン」を していたもので 6 00:00:13,605 --> 00:00:17,827 合唱団のツアーで 北カリフォルニアに行き 7 00:00:17,827 --> 00:00:20,484 一日中バスに 乗った後 8 00:00:20,484 --> 00:00:22,550 山の中の のどかな湖畔で 9 00:00:22,550 --> 00:00:24,739 休憩していました 10 00:00:24,739 --> 00:00:29,135 コオロギや鳥やカエルが 賑やかに鳴いています 11 00:00:29,135 --> 00:00:31,851 そのうち 北の方の山から 12 00:00:31,851 --> 00:00:34,819 スピルバーグの映画に 出てきそうな雲が 13 00:00:34,819 --> 00:00:36,292 こちらに 迫ってきて 14 00:00:36,292 --> 00:00:38,939 雲が谷に 差し掛かった時 15 00:00:38,939 --> 00:00:43,337 鳴いていた動物たちが 一斉に 16 00:00:43,337 --> 00:00:45,553 鳴きやんだのです 17 00:00:45,553 --> 00:00:50,637 瞬時に訪れた静けさ——何が起ころうと しているのか 皆知っているかのようでした 18 00:00:50,637 --> 00:00:52,697 そして雲が 頭上まで来たとき 19 00:00:52,697 --> 00:00:57,007 ドカーン! 凄まじい雷鳴がして 激しく雨が降り出しました 20 00:00:57,007 --> 00:01:00,469 すごいとしか 言いようのないものでした 21 00:01:00,469 --> 00:01:03,472 帰宅後に見つけた オクタビオ・パスの詩に 22 00:01:03,472 --> 00:01:05,973 曲を付け 『豪雨』という題で 23 00:01:05,973 --> 00:01:08,154 合唱曲を 作ることにしました 24 00:01:08,154 --> 00:01:11,317 すぐ後で お聞かせします 25 00:01:11,317 --> 00:01:15,692 時を経て 3年前のことになりますが 26 00:01:15,692 --> 00:01:19,133 YouTubeで この「バーチャル合唱団」 プロジェクトを 27 00:01:19,133 --> 00:01:21,389 公開しました 28 00:01:21,389 --> 00:01:24,596 12カ国から185人の歌手が 参加しています 29 00:01:24,596 --> 00:01:28,033 小さな映像の私の指揮で 彼らがそれぞれ— 30 00:01:28,033 --> 00:01:29,188 寮の自室や 31 00:01:29,188 --> 00:01:32,277 自宅の居間で 歌っています 32 00:01:32,277 --> 00:01:36,003 2年前 この場所で 「バーチャル合唱団2」を 33 00:01:36,003 --> 00:01:39,550 初披露しました 34 00:01:39,550 --> 00:01:44,112 58カ国の2,052人の 歌手が参加し 35 00:01:44,112 --> 00:01:47,403 私の作った『眠り』という 曲を歌いました 36 00:01:47,403 --> 00:01:52,697 そして昨年の春には 「バーチャル合唱団3」を公開しました 37 00:01:52,697 --> 00:01:55,253 『ウォーター・ナイト』という 私の書いた曲を 38 00:01:55,253 --> 00:02:01,517 73カ国の4千人近い歌手が 歌っています 39 00:02:01,517 --> 00:02:06,936 (音楽) 40 00:02:06,936 --> 00:02:09,943 バーチャル合唱団を 今後どうしていこうかと 41 00:02:09,943 --> 00:02:12,093 クリスと話していた時 42 00:02:12,093 --> 00:02:16,854 彼は技術を限界まで使う アイデアを提案しました 43 00:02:16,854 --> 00:02:19,357 これをリアルタイムで できないか? 44 00:02:19,357 --> 00:02:22,397 ライブで歌い合わせる というのは? 45 00:02:22,397 --> 00:02:23,992 Skypeを使って 46 00:02:23,992 --> 00:02:26,096 それを今日 試みようとしています 47 00:02:26,096 --> 00:02:28,269 『豪雨』を お聞かせします 48 00:02:28,269 --> 00:02:31,421 前半は ステージにいる 歌手が歌います 49 00:02:31,421 --> 00:02:33,917 カリフォルニア州立大の ロングビーチ校と 50 00:02:33,917 --> 00:02:37,245 フラートン校 それに リバーサイド・シティ・カレッジから 51 00:02:37,245 --> 00:02:40,565 米国最高のアマチュア合唱団が 参加してくれました 52 00:02:40,565 --> 00:02:47,603 (拍手) 53 00:02:47,603 --> 00:02:49,789 後半部で 54 00:02:49,789 --> 00:02:52,611 30カ国から30人の バーチャル合唱団が 55 00:02:52,611 --> 00:02:54,661 これに加わります 56 00:02:54,661 --> 00:02:57,245 技術の粋を尽くしても ズレが出ます 57 00:02:57,245 --> 00:03:00,077 1秒未満ですが 58 00:03:00,077 --> 00:03:02,156 ミリ秒単位の 音楽の世界では 59 00:03:02,156 --> 00:03:03,608 一生分もの 時間です 60 00:03:03,608 --> 00:03:06,075 それでズレが出ても 大丈夫なように 61 00:03:06,075 --> 00:03:08,578 『豪雨』を編曲する ことにしました 62 00:03:08,578 --> 00:03:11,483 歌手達が正確に 合わせなくとも 63 00:03:11,483 --> 00:03:13,981 音楽として成り立つ ようにしたのです 64 00:03:13,981 --> 00:03:17,245 では恐れながら 皆さんのお許しを頂いて 65 00:03:17,245 --> 00:03:19,357 『豪雨』を演奏させて頂きます 66 00:03:19,357 --> 00:03:24,076 (拍手) 67 00:03:24,076 --> 00:03:27,833 (ピアノ) 68 00:03:30,249 --> 00:03:34,785 雨・・・ 69 00:03:41,142 --> 00:03:44,809 影の水の目 70 00:03:46,253 --> 00:03:50,002 井戸水の目 71 00:04:04,512 --> 00:04:11,275 夢の水の目 72 00:04:15,439 --> 00:04:21,451 青い太陽 緑の旋風 73 00:04:33,919 --> 00:04:39,731 光のくちばしが つつき開く 74 00:04:41,687 --> 00:04:45,459 ザクロの星々 75 00:04:51,694 --> 00:04:57,898 教えてほしい 焼けた地よ 水はないのか? 76 00:05:10,311 --> 00:05:15,044 血ばかり 塵ばかり 77 00:05:18,239 --> 00:05:22,867 棘を踏んだ 足跡ばかり 78 00:05:34,903 --> 00:05:38,587 雨が目を覚ます・・・ 79 00:05:52,271 --> 00:05:55,583 目を開けて 眠らなければならない 80 00:05:55,583 --> 00:06:00,026 手で夢を 見なければならない 81 00:06:08,140 --> 00:06:12,426 道を探す川の夢を 夢見なければならない 82 00:06:13,191 --> 00:06:17,090 自らの世界を夢見る 太陽の夢を 83 00:06:27,628 --> 00:06:33,690 声に出して 夢見なければならない 84 00:06:48,967 --> 00:06:56,315 歌わなければならない 歌が根を張り— 85 00:07:15,759 --> 00:07:19,899 幹 枝 鳥 星になるまで 86 00:07:45,475 --> 00:07:50,455 失われた言葉を 見つけねばならない 87 00:08:00,322 --> 00:08:03,375 血が 潮が 大地が 肉体が 88 00:08:08,187 --> 00:08:12,658 語ることを記憶し 89 00:08:34,991 --> 00:08:41,759 出発の地まで 戻らねばならない 90 00:08:52,561 --> 00:09:02,415 (音楽) 91 00:11:22,745 --> 00:11:37,169 『豪雨』 曲/ エリック・ウィテカー 詩/ オクタビオ・パス 訳/ ライサンダー・ケンプ 92 00:11:37,169 --> 00:11:39,478 『豪雨』 曲/ エリック・ウィテカー 詩/ オクタビオ・パス 訳/ ライサンダー・ケンプ 93 00:11:39,478 --> 00:11:46,881 ベス アナベルはどこ? ジェイコブも 94 00:11:46,881 --> 00:11:51,413 (拍手) 95 00:12:08,622 --> 00:12:13,485 どうもありがとう