WEBVTT

00:00:08.007 --> 00:00:10.586
故郷から何千キロも
離れた場所で

00:00:10.586 --> 00:00:14.097
金も持ち物もなくして
さまよっているとしたら どうでしょう？

00:00:14.097 --> 00:00:19.526
そのような苦境で多くの人は 自暴自棄になったり
運命を呪ったりするかもしれません

00:00:19.526 --> 00:00:26.506
しかしキプロスのゼノンの場合 それが一生の仕事と
後世への遺産の基礎を作ることになりました

00:00:26.506 --> 00:00:29.111
かつては裕福な商人だったものの

00:00:29.111 --> 00:00:34.386
紀元前300年頃にアテネで船が難破し 
すべてを失いました

00:00:34.386 --> 00:00:37.561
他にすることもなく 
とある本屋に入ったところ

00:00:37.561 --> 00:00:40.706
ソクラテスの話を読んで
惹き付けられた彼は

00:00:40.706 --> 00:00:46.447
アテネの有名な哲学者達のことを追い 
研究するようになりました

00:00:46.447 --> 00:00:49.396
ゼノンは弟子たちに
教えるようになり

00:00:49.396 --> 00:00:53.259
ストア哲学と呼ばれるものを
創始しました

00:00:53.259 --> 00:00:56.862
徳 忍耐 自制を重んじる
その教えは

00:00:56.862 --> 00:01:01.649
代々の思想家や指導者たちに
影響を与えてきました

00:01:01.649 --> 00:01:03.497
ストア哲学という名前は

00:01:03.497 --> 00:01:06.256
ゼノンと弟子達が
討論のために集った

00:01:06.256 --> 00:01:11.358
装飾のある公共の柱廊である
「ストア・ポイキレ」からきています

00:01:11.358 --> 00:01:14.556
今日では「ストイック」という言葉は

00:01:14.556 --> 00:01:17.428
プレッシャーのかかる
状況にも動じず

00:01:17.438 --> 00:01:21.027
感情の起伏を抑えた人を
指すのに使われています

00:01:21.027 --> 00:01:24.917
これがストア哲学の重要な
ある側面を捕らえているにしても

00:01:24.917 --> 00:01:28.827
元々の哲学は
単なる態度以上のものでした

00:01:28.827 --> 00:01:30.718
ストア主義者たちは

00:01:30.718 --> 00:01:34.688
身の回りのものはすべて
因果の網によって動いており

00:01:34.688 --> 00:01:37.712
それが宇宙に
合理的な構造

00:01:37.712 --> 00:01:40.768
「ロゴス」をもたらしていると
考えていました

00:01:40.768 --> 00:01:45.209
私たちは自分に影響を及ぼす出来事を
必ずしもコントロールできませんが

00:01:45.209 --> 00:01:49.369
どのように対処するかは
自分で決められます

00:01:49.369 --> 00:01:52.397
ストア主義者は
理想的な社会を夢想するよりは

00:01:52.397 --> 00:01:55.828
ありのままの世界に
対処しようとし

00:01:55.828 --> 00:02:00.479
４つの基本的な徳を通して
自分を高めることに務めました

00:02:00.479 --> 00:02:01.829
実践知

00:02:01.829 --> 00:02:08.130
情報に基づいて落ち着いて論理的に
困難な状況を乗り切れること

00:02:08.130 --> 00:02:09.250
節制

00:02:09.250 --> 00:02:14.449
生活のあらゆる面で 
自制と節度を持ってあたること

00:02:14.449 --> 00:02:15.870
正義

00:02:15.870 --> 00:02:20.129
悪を為したものも含め 
人を公正に扱うこと

00:02:20.129 --> 00:02:21.580
勇気

00:02:21.580 --> 00:02:24.030
非常の際だけでなく

00:02:24.030 --> 00:02:28.740
日常的な問題にも
確固として誠実に対処すること

00:02:28.740 --> 00:02:32.360
ローマ時代の最も有名なストア哲学者である
セネカは書いています

00:02:32.360 --> 00:02:36.460
「時には生きることでさえ
勇敢な行為である」

00:02:36.460 --> 00:02:40.401
ストア哲学は自己の改善に
主眼がありましたが

00:02:40.401 --> 00:02:43.061
自己中心的な哲学
というわけではありません

00:02:43.061 --> 00:02:47.221
ローマの法が奴隷を所有物と
見なしていた時代にあって

00:02:47.221 --> 00:02:50.041
セネカは奴隷を
人間的に扱うべきこと

00:02:50.041 --> 00:02:54.402
人はみんな基本的な人間性を
共有することを説きました

00:02:54.402 --> 00:02:57.511
ストア哲学はまた受身であることを
勧めるものでもありません

00:02:57.511 --> 00:03:01.292
自らの人徳を養い 
自制できる人間だけが

00:03:01.292 --> 00:03:07.012
他者に良い変化をもたらせると
考えていたのです

00:03:07.012 --> 00:03:12.141
最も有名なストア主義の著述家は 
ローマの最も偉大な皇帝でもありました

00:03:12.141 --> 00:03:14.862
その19年間の在位中

00:03:14.862 --> 00:03:19.243
ストア哲学はマルクス・アウレリウスに
２つの大きな戦争を乗り切り

00:03:19.243 --> 00:03:25.532
多くの子供の死を乗り越えて
ローマ帝国を治める強固な意志を与えました

00:03:25.532 --> 00:03:28.013
２千年の後 マルクスの自省録は

00:03:28.013 --> 00:03:32.173
南アフリカの人種平等を求めて戦う
ネルソン・マンデラの

00:03:32.173 --> 00:03:37.173
27年に及ぶ獄中生活において
導きと安らぎを与えました

00:03:37.173 --> 00:03:42.664
解放され最終的に勝利したとき 
マンデラは平和と和解を強調しました

00:03:42.664 --> 00:03:45.912
過去の不正は変えることが
できませんが

00:03:45.912 --> 00:03:48.824
人々が現在の問題に取り組んで

00:03:48.824 --> 00:03:52.803
より良い公正な未来を
求めることはできるからです

00:03:52.803 --> 00:03:55.643
ストア哲学は
ギリシアとローマにおいて

00:03:55.643 --> 00:03:58.473
数世紀に渡り
活動的な学派でした

00:03:58.473 --> 00:04:01.092
公的な組織としては
消失しましたが

00:04:01.092 --> 00:04:04.775
その影響は今日まで
続いています

00:04:04.775 --> 00:04:08.274
トマス・アクィナスのような
キリスト教神学者たちは

00:04:08.274 --> 00:04:12.211
ストア哲学の集中と徳を
賞賛して取り入れました

00:04:12.211 --> 00:04:17.424
またストア哲学のアタラキシア —
心の平静と

00:04:17.434 --> 00:04:21.326
仏教の涅槃の概念には
類似性があります

00:04:21.326 --> 00:04:25.658
とくに影響力の強い
ストア哲学者エピクテトスは

00:04:25.658 --> 00:04:28.669
苦悩は人生における
出来事から来るのではなく

00:04:28.669 --> 00:04:32.338
それに対する我々の判断から
来るのだと書いています

00:04:32.338 --> 00:04:35.260
これは現代の心理学や
自助の運動に

00:04:35.260 --> 00:04:37.819
強く共鳴しています

00:04:37.819 --> 00:04:41.013
たとえば理性感情行動療法は

00:04:41.013 --> 00:04:44.395
人が自分の生活環境に
対して形成する

00:04:44.395 --> 00:04:48.596
自滅的な態度を変えることに
焦点を置いています

00:04:48.596 --> 00:04:52.742
またヴィクトール・フランクルの
ロゴセラピーというのもあります

00:04:52.742 --> 00:04:57.137
フランクル自身の強制収容所での体験を
反映しているロゴセラピーは

00:04:57.137 --> 00:04:59.895
絶望的な状況においてさえも

00:04:59.895 --> 00:05:04.159
意志力を養って
自分の人生を意味で満たせるとする

00:05:04.159 --> 00:05:07.165
ストア哲学の原則に基づいています