1
00:00:00,000 --> 00:00:03,000
テクノロジーの進歩とともに

2
00:00:03,000 --> 00:00:05,000
テクノロジーが向上し

3
00:00:05,000 --> 00:00:07,000
多くの人は進歩が

4
00:00:07,000 --> 00:00:09,000
我々をさらに知的で賢くさせて

5
00:00:09,000 --> 00:00:11,000
世界へ結びつけていくと信じています

6
00:00:11,000 --> 00:00:13,000
私がお話ししたいのは

7
00:00:13,000 --> 00:00:15,000
実情は必ずしもそうではなく

8
00:00:15,000 --> 00:00:18,000
進歩とは 変化を意味することばでしかありません

9
00:00:18,000 --> 00:00:20,000
変化で新しいものを得ることができますが

10
00:00:20,000 --> 00:00:22,000
同時に何かを失うのです

11
00:00:22,000 --> 00:00:24,000
これを説明するために

12
00:00:24,000 --> 00:00:27,000
とてもシンプルで どこにでもある日常的な ある問いを

13
00:00:27,000 --> 00:00:32,000
テクノロジーがどのように解決するのかお話ししましょう

14
00:00:32,000 --> 00:00:34,000
その問いとは

15
00:00:34,000 --> 00:00:37,000
今は何時？ 今は何時？

16
00:00:37,000 --> 00:00:40,000
iPhoneを見れば 時刻を確かめるのはとても簡単です

17
00:00:40,000 --> 00:00:42,000
皆さんにお訊ねしますが どうやって時刻を調べますか

18
00:00:42,000 --> 00:00:44,000
もしiPhoneをもっていなかったら

19
00:00:44,000 --> 00:00:47,000
どうやって時刻が分かるでしょう 例えば600年前だったら？

20
00:00:47,000 --> 00:00:49,000
どうやって分かったでしょう？

21
00:00:49,000 --> 00:00:52,000
時刻を確かめるには装置を使います

22
00:00:52,000 --> 00:00:56,000
アストロラーベとよばれる装置です

23
00:00:56,000 --> 00:01:00,000
アストロラーベは今日ではあまり知られていません

24
00:01:00,000 --> 00:01:02,000
でも13世紀には

25
00:01:02,000 --> 00:01:04,000
重宝された小道具だったのです

26
00:01:04,000 --> 00:01:08,000
世界で最初に人気になったコンピューターでした

27
00:01:08,000 --> 00:01:12,000
天空の模型でもあります

28
00:01:12,000 --> 00:01:14,000
いくつか部品がありまして

29
00:01:14,000 --> 00:01:17,000
リートと呼ばれる網状の部品が星の位置を示します

30
00:01:17,000 --> 00:01:20,000
プレートと呼ばれる部品は座標系にあたります

31
00:01:20,000 --> 00:01:24,000
メーターと呼ばれる目盛付きの部品に全体を組み付けます

32
00:01:24,000 --> 00:01:26,000
教育を受けた子どもであれば

33
00:01:26,000 --> 00:01:28,000
アストロラーベを使うことだけでなく

34
00:01:28,000 --> 00:01:31,000
アストロラーベを作ることも知っていたでしょう

35
00:01:31,000 --> 00:01:34,000
アストロラーベに関する最初の論文

36
00:01:34,000 --> 00:01:36,000
英語で書かれた最初の技術マニュアルは

37
00:01:36,000 --> 00:01:38,000
ジョフリー・チョーサーによって書かれました

38
00:01:38,000 --> 00:01:41,000
ジョフリー・チョーサーが1391年に

39
00:01:41,000 --> 00:01:45,000
彼の11歳の息子ルイスのために書いたのです

40
00:01:45,000 --> 00:01:50,000
その本を読んで 小さなルイスは大きな考えに気づいたでしょう

41
00:01:50,000 --> 00:01:52,000
このコンピューターを動かすための主要な考えです

42
00:01:52,000 --> 00:01:55,000
これは立体射影とよばれるものです

43
00:01:55,000 --> 00:01:57,000
基本的な構想は

44
00:01:57,000 --> 00:02:00,000
三次元画像をいかに表現するかというものです

45
00:02:00,000 --> 00:02:02,000
我々を取り囲む夜空を

46
00:02:02,000 --> 00:02:05,000
平らで持ち運びがてきる二次元表面にどう表現するか

47
00:02:05,000 --> 00:02:07,000
考えは比較的シンプルなものでした

48
00:02:07,000 --> 00:02:10,000
地球が宇宙の中心だと想像してみてください

49
00:02:10,000 --> 00:02:13,000
それを取り囲んでいるのは天球に投影された天空です

50
00:02:13,000 --> 00:02:16,000
天球の表面にあるどの地点も

51
00:02:16,000 --> 00:02:18,000
下の極を通して投影されて

52
00:02:18,000 --> 00:02:20,000
平らな表面上に記録されているのです

53
00:02:20,000 --> 00:02:24,000
北極星がこの装置の中心にあたります

54
00:02:24,000 --> 00:02:27,000
太陽や月、惑星の軌跡を示す黄道は

55
00:02:27,000 --> 00:02:29,000
離れた円にあたります

56
00:02:29,000 --> 00:02:33,000
明るい星はリートについた尖った部分にあたります

57
00:02:33,000 --> 00:02:36,000
高度はプレートに示されています

58
00:02:36,000 --> 00:02:39,000
アストロラーベが優れているのは投影だけではありません

59
00:02:39,000 --> 00:02:43,000
まさに優れてるのは２つの座標系を組み合わせていることなのです

60
00:02:43,000 --> 00:02:45,000
２つはぴったりと合致します

61
00:02:45,000 --> 00:02:48,000
可動式なリートには 太陽・月・惑星の位置が示してあります

62
00:02:48,000 --> 00:02:50,000
ある緯度の地点で見られる

63
00:02:50,000 --> 00:02:55,000
天空中の惑星の位置が背景のプレート上に示されています

64
00:02:55,000 --> 00:03:00,000
どうやってこの装置を使ったらよいのでしょうか？

65
00:03:00,000 --> 00:03:06,000
少し準備させてください

66
00:03:06,000 --> 00:03:11,000
これがアストロラーベです すごいでしょう

67
00:03:11,000 --> 00:03:14,000
このアストロラーベはオックスフォード大学の

68
00:03:14,000 --> 00:03:17,000
歴史博物館から借りてきました

69
00:03:17,000 --> 00:03:20,000
いろんな部品が見えます

70
00:03:20,000 --> 00:03:22,000
後ろから目盛りを表示するメーターや

71
00:03:22,000 --> 00:03:24,000
これはリートです 見えますか？

72
00:03:24,000 --> 00:03:27,000
これは天空を示す可動部品です

73
00:03:27,000 --> 00:03:29,000
奥に見えるのは

74
00:03:29,000 --> 00:03:31,000
クモの巣の模様です

75
00:03:31,000 --> 00:03:35,000
このクモの巣が空の局所座標にあたるのです

76
00:03:35,000 --> 00:03:37,000
ここはルーラという部品です

77
00:03:37,000 --> 00:03:40,000
裏には他の装置がついています 計測ツール

78
00:03:40,000 --> 00:03:46,000
目盛りといった 計算に必要な機能ですね

79
00:03:46,000 --> 00:03:48,000
私はこんなものがいつも欲しかったんです

80
00:03:48,000 --> 00:03:53,000
論文を書くために 私は実際に作ってみました

81
00:03:53,000 --> 00:03:55,000
これは複製で

82
00:03:55,000 --> 00:03:58,000
15世紀のものが元になっています

83
00:03:58,000 --> 00:04:01,000
おそらくMacbook Pro 3台分の価値がありますよ

84
00:04:01,000 --> 00:04:04,000
でも本物は 1つで私の家と隣の家

85
00:04:04,000 --> 00:04:07,000
それだけでなく同じブロックの家

86
00:04:07,000 --> 00:04:09,000
通りの両側

87
00:04:09,000 --> 00:04:11,000
学校や教会もあわせたぐらい

88
00:04:11,000 --> 00:04:13,000
ともかく高価なものなんです

89
00:04:13,000 --> 00:04:15,000
この装置の使い方を紹介しましょう

90
00:04:15,000 --> 00:04:18,000
ステップ１から始めましょう

91
00:04:18,000 --> 00:04:20,000
最初に夜空にある星を選びます

92
00:04:20,000 --> 00:04:23,000
夜の時刻を知りたい場合です

93
00:04:23,000 --> 00:04:26,000
今夜天気がよければ 夏の大三角形が見えるはずです

94
00:04:26,000 --> 00:04:29,000
デネブという明るい星があるので それを選んでみます

95
00:04:29,000 --> 00:04:32,000
次にデネブの高度を測ります

96
00:04:32,000 --> 00:04:35,000
ステップ２では装置を持ち上げ

97
00:04:35,000 --> 00:04:38,000
星の高度を調べます

98
00:04:38,000 --> 00:04:40,000
これではっきりと見えます

99
00:04:40,000 --> 00:04:43,000
それから高度を読み取ります

100
00:04:43,000 --> 00:04:46,000
だいたい26度ですが 皆さんには見えませんね

101
00:04:46,000 --> 00:04:51,000
ステップ３では 装置の表面で星を確認します

102
00:04:51,000 --> 00:04:53,000
デネブがありました

103
00:04:53,000 --> 00:04:56,000
ステップ４では網状のリートを動かして

104
00:04:56,000 --> 00:04:59,000
空を動かして 星の高度を

105
00:04:59,000 --> 00:05:02,000
背景にある目盛りにあわせます

106
00:05:02,000 --> 00:05:05,000
さあ どうなるでしょう

107
00:05:05,000 --> 00:05:07,000
準備は整いました

108
00:05:07,000 --> 00:05:09,000
天空の模型がここにあって

109
00:05:09,000 --> 00:05:12,000
実物の天空と対応していますね

110
00:05:12,000 --> 00:05:14,000
ある意味

111
00:05:14,000 --> 00:05:17,000
手に宇宙の模型を持っているようなものです

112
00:05:17,000 --> 00:05:20,000
最後にルーラを持って

113
00:05:20,000 --> 00:05:22,000
ルーラを日付の線まで動かすと

114
00:05:22,000 --> 00:05:25,000
ここで時刻が分かります

115
00:05:25,000 --> 00:05:28,000
こんな風にこの装置は使うのです

116
00:05:28,000 --> 00:05:29,000
（笑い）

117
00:05:29,000 --> 00:05:31,000
皆さんがどう思っているか分かりますよ

118
00:05:31,000 --> 00:05:35,000
"やることがありすぎない？　時刻を知るのにそんな沢山のことをしなくちゃいけないの？"

119
00:05:35,000 --> 00:05:39,000
iPodを見ればすぐに時刻が分かりますからね

120
00:05:39,000 --> 00:05:41,000
でも違いがあります

121
00:05:41,000 --> 00:05:44,000
iPodでもiPhoneでも

122
00:05:44,000 --> 00:05:46,000
正確に時刻を知ることができます

123
00:05:46,000 --> 00:05:48,000
ルイス君は時刻を調べるのに

124
00:05:48,000 --> 00:05:50,000
天空の模型を使いました

125
00:05:50,000 --> 00:05:53,000
彼は実際の天空との対応関係が分かっていたでしょうし

126
00:05:53,000 --> 00:05:56,000
ただ何時か分かるだけでなく

127
00:05:56,000 --> 00:05:58,000
どこから太陽が昇り

128
00:05:58,000 --> 00:06:01,000
どのように空を動くのかも分かったでしょう

129
00:06:01,000 --> 00:06:05,000
太陽が何時に昇って沈むかも分かったでしょう

130
00:06:05,000 --> 00:06:07,000
基本的に 頭上にある天体

131
00:06:07,000 --> 00:06:09,000
すべてのことが分かったでしょう

132
00:06:09,000 --> 00:06:11,000
コンピューターグラフィックスや

133
00:06:11,000 --> 00:06:14,000
コンピューターのインターフェースデザインでは

134
00:06:14,000 --> 00:06:17,000
アフォーダンスということばがあります

135
00:06:17,000 --> 00:06:20,000
アフォーダンスとは 物を使って何かしようとするときに

136
00:06:20,000 --> 00:06:23,000
それを補助するためにその物がなす能力の指標です

137
00:06:23,000 --> 00:06:25,000
アストロラーベによって我々は

138
00:06:25,000 --> 00:06:28,000
夜空とつながり

139
00:06:28,000 --> 00:06:31,000
夜空を見上げれば

140
00:06:31,000 --> 00:06:34,000
目に見えるものも 見えないものも分かるようになります

141
00:06:34,000 --> 00:06:38,000
それは1つの使い道にすぎません 驚くことに

142
00:06:38,000 --> 00:06:41,000
恐らく350、400通りの使い方が

143
00:06:41,000 --> 00:06:43,000
文書で記されて 千通り以上の使い方が

144
00:06:43,000 --> 00:06:45,000
この最初のコンピューターにはあるとされています

145
00:06:45,000 --> 00:06:47,000
裏面には目盛りと測定値がついていて

146
00:06:47,000 --> 00:06:49,000
地球上の旅人を案内してくれます

147
00:06:49,000 --> 00:06:52,000
これで測量もできます　これを使ってバグダットで測量が行われました

148
00:06:52,000 --> 00:06:56,000
あらゆる種類の数学的方程式の解を求めることもできます

149
00:06:56,000 --> 00:06:59,000
それを説明するのに 大学で教育課程を開けるほどです

150
00:06:59,000 --> 00:07:01,000
アストロラーベには輝かしい歴史があります

151
00:07:01,000 --> 00:07:03,000
２千年以上前に発明されたのです

152
00:07:03,000 --> 00:07:06,000
立体射影の概念は

153
00:07:06,000 --> 00:07:08,000
紀元前330年にまでさかのぼります

154
00:07:08,000 --> 00:07:10,000
アストロラーベは様々な

155
00:07:10,000 --> 00:07:12,000
大きさや形状のものがあります

156
00:07:12,000 --> 00:07:15,000
携帯できるものもあれば 大きなディスプレイのようなものもあります

157
00:07:15,000 --> 00:07:17,000
あらゆるアストロラーベに共通しているのは

158
00:07:17,000 --> 00:07:19,000
どれも美しい芸術作品だということです

159
00:07:19,000 --> 00:07:22,000
職人気質に溢れ　精密に作られています

160
00:07:22,000 --> 00:07:25,000
これは驚くべき 注目に値するものです

161
00:07:25,000 --> 00:07:28,000
アストロラーベはあらゆるテクノロジーと同様に 時代とともに進化してきました

162
00:07:28,000 --> 00:07:32,000
例えば初期のリートはとてもシンプルで簡単なつくりですが 後期のリートは

163
00:07:32,000 --> 00:07:34,000
文化レベルの高さを象徴しています

164
00:07:34,000 --> 00:07:37,000
これはオックスフォードにあったものです

165
00:07:37,000 --> 00:07:39,000
とてつもなく素晴らしく

166
00:07:39,000 --> 00:07:41,000
リートの模様がきれいに左右対称に作られていながら

167
00:07:41,000 --> 00:07:45,000
全く非対称的で法則性のない天空を正確に地図として表しているのです

168
00:07:45,000 --> 00:07:47,000
素晴らしいというほかないでしょう？ 驚くべき技術です

169
00:07:47,000 --> 00:07:50,000
ルイス君はアストロラーベを持っていたのでしょうか？

170
00:07:50,000 --> 00:07:53,000
真ちゅう製でなく 木か紙で作られたものを持っていたでしょう

171
00:07:53,000 --> 00:07:56,000
この最初のコンピューターの大多数は

172
00:07:56,000 --> 00:07:58,000
携帯できるもので

173
00:07:58,000 --> 00:08:01,000
ポケットの奥にしまうことができました

174
00:08:01,000 --> 00:08:04,000
アストロラーベは何をもたらしたのでしょうか

175
00:08:04,000 --> 00:08:06,000
まず言えることは

176
00:08:06,000 --> 00:08:10,000
もうずっと昔の人々や

177
00:08:10,000 --> 00:08:12,000
祖先がどんなに優れているか気付かせてくれます

178
00:08:12,000 --> 00:08:15,000
素晴らしい装置です

179
00:08:15,000 --> 00:08:17,000
あらゆるテクノロジーが進歩していきます

180
00:08:17,000 --> 00:08:20,000
あらゆるテクノロジーは他の人々によって形を変えられ動かされます

181
00:08:20,000 --> 00:08:22,000
テクノロジーが進歩すれば

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さらに正確で精密になります

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我々がそれによって失うのは

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間違いなく 天空を理解し

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物事の背景にあるものを感じ取ることです

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空を理解し 自分と天空の関係を知ることは

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今が何時かという問いへの

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核心となる本当の答えにあたります

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だからアストロラーベは単に優れた装置というだけではありません

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この装置から学ぶことは何でしょう？

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そもそも人は 世の中の色々なものとつながりをもてると

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なんとなく思っています

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あらゆるものがどのように組み合わさり

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私たちとどんな関係があるのだろうかと

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そんな思いに アストロラーベが

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また連れて行ってくれます

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ありがとうございました（喝采）