0:00:00.428,0:00:03.425 人生はチャンスであふれています 0:00:03.425,0:00:06.575 それは自分で作り上げ[br]掴み取っていくものでもあるのです 0:00:06.575,0:00:08.506 私にとってはそれが五輪出場でした 0:00:08.506,0:00:11.952 それが私であり 私の幸せでした 0:00:11.952,0:00:15.701 オーストラリアチームの[br]クロスカントリースキーヤーとして 0:00:15.701,0:00:17.346 冬季オリンピックを目指し 0:00:17.346,0:00:21.575 私はチームメイトと共に[br]自転車訓練をしていました 0:00:21.575,0:00:23.519 向かう先にはシドニーの西の 0:00:23.519,0:00:26.669 雄大なブルーマウンテンズが[br]見えていました 0:00:26.669,0:00:29.133 快晴の秋空でした 0:00:29.133,0:00:33.318 太陽が輝き ユーカリが香り[br]夢で溢れていました 0:00:33.318,0:00:34.751 充実感がありました 0:00:34.751,0:00:37.649 訓練を開始してから5時間半 0:00:37.649,0:00:40.043 自転車で私が大好きな[br]坂道にさしかかりました 0:00:40.043,0:00:43.080 私は坂道が大好きです 0:00:43.080,0:00:45.778 私は立ちこぎを始めました 0:00:45.778,0:00:48.731 両足に力を入れ[br]吸いこんだ山の冷気が 0:00:48.731,0:00:51.386 肺一杯に広がるのを感じ 0:00:51.386,0:00:55.073 太陽の光を浴びようと顔をあげました 0:00:55.073,0:00:58.157 すると急に目の前が真っ暗になりました 0:00:58.157,0:01:01.151 ここはどこ?[br]何が起きたの? 0:01:01.151,0:01:04.752 全身に痛みが走りました 0:01:04.752,0:01:07.576 あと10分という時[br]猛スピードの小型トラックが 0:01:07.576,0:01:10.895 私にぶつかったのです 0:01:10.895,0:01:12.743 事故現場からヘリコプターで 0:01:12.743,0:01:16.351 シドニーの脊髄病棟に[br]運ばれました 0:01:16.351,0:01:19.403 私は生命に関わる[br]重傷を全身に負っていました 0:01:19.403,0:01:23.539 首と背中6か所を骨折 0:01:23.539,0:01:26.116 左ろっ骨も5か所骨折 0:01:26.116,0:01:28.923 右腕と鎖骨も折れていました 0:01:28.923,0:01:31.169 足首から下も一部骨折 0:01:31.169,0:01:34.429 体の右半分がぱっくりと開き[br]中は砂利だらけでした 0:01:34.429,0:01:36.723 額を横切る傷口からは 0:01:36.723,0:01:38.184 頭蓋骨が見えました 0:01:38.184,0:01:40.547 頭部も内蔵も損傷 0:01:40.547,0:01:43.228 5リットルの大出血でした 0:01:43.228,0:01:46.423 それは私サイズの体の[br]全血液量に相当します 0:01:46.423,0:01:49.214 プリンスヘンリー病院に到着した時には 0:01:49.214,0:01:53.585 私の血圧は40しかありませんでした 0:01:53.585,0:01:58.988 全くついていない日でした(笑) 0:02:02.635,0:02:07.732 10日間 私は2つの世界を行き来しました 0:02:07.732,0:02:10.961 体の中の自分とは別に 0:02:10.961,0:02:13.290 どこか他の場所から 0:02:13.290,0:02:15.188 他人事のように見ている自分がいました 0:02:15.188,0:02:18.941 あんなに壊れた体に戻りたい? 0:02:18.941,0:02:24.663 でも別の声が言います[br]「頑張って 死なないで」 0:02:24.663,0:02:27.168 「だめ 無理」 0:02:27.168,0:02:30.121 「大丈夫 これはチャンスよ」 0:02:30.121,0:02:34.090 「だめ あの体はボロボロ[br]もう役に立たないわ」 0:02:34.090,0:02:39.594 「大丈夫 頑張って[br]一緒に力を合わせればできる」 0:02:39.594,0:02:41.877 私は分岐点にいました 0:02:41.877,0:02:45.745 自分の体に戻らなければ[br]二度とこの世に帰れない 0:02:45.745,0:02:49.903 命をかけた戦いでした 0:02:49.903,0:02:54.653 10日後[br]自分の体に戻る決心をすると 0:02:54.653,0:02:59.045 内出血が止まりました 0:02:59.045,0:03:02.161 次の問題は歩行でした 0:03:02.161,0:03:04.691 腰から下が麻痺していたのです 0:03:04.691,0:03:07.413 医者は両親に言いました[br]首は安定骨折だが 0:03:07.413,0:03:09.103 背中が完全に潰れていて 0:03:09.103,0:03:13.050 L1脊椎は落としたピーナツを 0:03:13.050,0:03:16.268 踏んで粉々にしたようだ と 0:03:16.268,0:03:18.699 手術が必要でした 0:03:18.699,0:03:21.599 手術が始まり ビーンバッグに乗せられ 0:03:21.599,0:03:23.893 文字通り半分に切られ 0:03:23.893,0:03:26.809 その証拠に[br]体を一周する傷がまだあります 0:03:26.809,0:03:29.419 脊髄に引っかかっていた骨を 0:03:29.419,0:03:31.181 できる限り除去しました 0:03:31.181,0:03:35.292 折れた2本のろっ骨を取りだし[br]L1の復元に使い 0:03:35.292,0:03:38.126 もう1本折れたろっ骨を使って 0:03:38.126,0:03:41.346 T12 L1 L2を繋ぎ合わせました 0:03:41.346,0:03:44.378 その後 体の縫合に1時間かかりました 0:03:44.378,0:03:47.385 私が集中治療室で眼を覚ますと 0:03:47.385,0:03:50.409 手術の成功に沸く医者がいました 0:03:50.409,0:03:53.494 足の親指が少しだけ動き 0:03:53.494,0:03:56.835 「やった オリンピックに行ける!」[br]と私は思いました 0:03:56.835,0:03:58.721 (笑) 0:03:58.721,0:04:00.994 私は確信していたのです 0:04:00.994,0:04:04.081 私にこんなことが起きる筈がないと 0:04:04.081,0:04:06.191 ところが医者は言ったのです 0:04:06.191,0:04:09.617 「ジャニーン 手術は成功しました 0:04:09.617,0:04:12.969 脊髄に刺さっていた骨は[br]出来る限り取り除きましたが 0:04:12.969,0:04:14.073 障害は一生残るでしょう 0:04:14.073,0:04:17.390 中枢神経の治療法もなく 0:04:17.390,0:04:20.440 いわゆる部分対マヒです 0:04:20.440,0:04:23.432 それに伴う様々な傷もあります 0:04:23.432,0:04:26.640 腰から下の感覚は失われ 0:04:26.640,0:04:29.661 戻ったとしても10~20%でしょう 0:04:29.661,0:04:32.782 内臓障害も残り 0:04:32.782,0:04:35.200 生涯カテーテルが必要です 0:04:35.200,0:04:40.702 仮に歩けても矯正器具と[br]歩行器なしには無理でしょう」 0:04:40.702,0:04:42.313 更に言いました[br]「ジャニーン 0:04:42.313,0:04:44.416 今後 何をするか改めて考えて 0:04:44.416,0:04:49.176 今までやってきたことは[br]二度とできないから」 0:04:49.176,0:04:51.889 私は理解に苦しみました 0:04:51.889,0:04:54.351 私は競技選手で[br]それしかしたことがありません 0:04:54.351,0:04:57.599 それができないなら[br]何ができるでしょう? 0:04:57.599,0:05:01.469 自問しました[br]それができないのなら 0:05:01.469,0:05:03.320 私は何者? 0:05:07.735,0:05:11.055 集中治療室から脊髄病棟に移され 0:05:11.055,0:05:13.474 薄くて固い専用ベッドに寝かされました 0:05:13.474,0:05:16.017 足を動かすことは不可能で 0:05:16.017,0:05:17.931 血栓を防ぐ圧縮タイツを履いていました 0:05:17.931,0:05:21.056 片方の腕にギプス[br]もう片方に点滴の針 0:05:21.056,0:05:23.813 首もネックサポートと[br]両側の砂袋で固定されていました 0:05:23.813,0:05:25.742 頭上の鏡に映るものだけが 0:05:25.742,0:05:29.100 私の世界でした 0:05:29.100,0:05:32.577 病室には他に5人の患者がいましたが 0:05:32.577,0:05:34.832 全員が動けず横になっていたので 0:05:34.832,0:05:39.903 お互いの姿は見えませんでした 0:05:39.903,0:05:43.040 何と素晴らしいことでしょう? 0:05:43.040,0:05:47.754 外見に拘らず友情を育む機会など 0:05:47.754,0:05:50.488 人生ではそう多くないでしょう? 0:05:50.488,0:05:52.999 うわべだけの会話でなく 0:05:52.999,0:05:56.327 心のうち 恐怖心 0:05:56.327,0:06:00.985 そして退院後の人生への期待を[br]語り合いました 0:06:00.985,0:06:03.702 ある晩 看護師のジョナサンが 0:06:03.702,0:06:07.892 大量のストローを病室に持ってきました 0:06:07.892,0:06:10.561 私達それぞれにストローの束を渡し 0:06:10.561,0:06:13.313 「さあ これをつなげて」[br]と言いました 0:06:13.313,0:06:16.614 他にやることもないので[br]私達はつなげ始めました 0:06:16.614,0:06:20.255 全部つなぎ終えると[br]彼は静かに病室を回り 0:06:20.255,0:06:22.740 全てのストローをつなげ 0:06:22.740,0:06:26.313 病室をストローの輪で囲みました 0:06:26.313,0:06:30.245 「さあ皆 自分のストローを握って」 0:06:30.245,0:06:37.220 私達が握ると彼は言いました[br]「これで皆繋がった」 0:06:37.220,0:06:42.680 ストローを手に皆と[br]一つになって呼吸をしたとき 0:06:42.680,0:06:47.033 この道のりでは皆[br]仲間だとわかったのです 0:06:47.033,0:06:51.537 動けない身で病室にいながら 0:06:51.537,0:06:54.759 これまで経験したことのない 0:06:54.759,0:06:58.011 深くて豊かで純粋な絆を 0:06:58.011,0:07:02.355 感じられたのです 0:07:02.355,0:07:06.836 そして退院後は皆 0:07:06.836,0:07:11.655 違った生き方になるだろうと[br]理解しました 0:07:11.655,0:07:15.817 半年後 退院の時となり 0:07:15.817,0:07:19.283 父の押す車椅子に乗って[br]外に出ました 0:07:19.283,0:07:22.144 全身ギプスに覆われ 0:07:22.144,0:07:25.115 手術後初めて顔に太陽を顔に浴び 0:07:25.115,0:07:27.053 私は思いました 0:07:27.053,0:07:30.927 なぜこれを当たり前と[br]思っていたのだろう? 0:07:30.927,0:07:35.204 私は命があることに感謝しました 0:07:35.204,0:07:37.199 ところが病院を出る前[br]看護師長がそばに来て 0:07:37.199,0:07:39.418 こう言いました[br]「ジャニーン 心の準備をしてね 0:07:39.418,0:07:42.153 家に着くとあることが起きるから」 0:07:42.153,0:07:44.045 「何それ?」と私が聞くと[br]彼女は言いました 0:07:44.045,0:07:46.151 「きっと落ち込むわ」 0:07:46.151,0:07:48.866 「私はならないわ ジャニーン・マシンよ」 0:07:48.866,0:07:51.046 私のあだ名です 0:07:51.046,0:07:53.912 彼女は言いました[br]「いいえなるわ 皆なるから 0:07:53.912,0:07:56.659 脊髄病棟では それが普通 0:07:56.659,0:07:57.972 車椅子も普通のこと 0:07:57.972,0:08:00.142 でも家に着くと気が付くの 0:08:00.142,0:08:02.238 様変わりした人生に」 0:08:02.238,0:08:06.071 家に着くとそれは起きました 0:08:08.641,0:08:11.660 サム看護婦は正しかったのです 0:08:11.660,0:08:14.554 私は意気消沈しました 0:08:14.554,0:08:17.925 車椅子に座り 腰から下は感覚がなく 0:08:17.925,0:08:21.494 カテーテルの瓶をぶら下げ[br]歩けませんでした 0:08:21.494,0:08:23.627 入院中にげっそりと痩せ 0:08:23.627,0:08:27.389 体重は36キロしかありませんでした 0:08:27.389,0:08:29.910 私は全て投げ出したかった 0:08:29.910,0:08:33.340 ランニングシューズを履いて[br]外へ逃げ出したかった 0:08:33.340,0:08:36.727 元の人生 元の体を返して欲しかった 0:08:36.727,0:08:39.247 母がベッドに腰をかけ つぶやきました 0:08:39.247,0:08:43.140 「この先 人生は好転するのかしら」 0:08:43.140,0:08:47.436 私は思いました[br]「あり得ない 大事なもの 0:08:47.436,0:08:51.636 努力した全てを失ったのよ 0:08:51.636,0:08:54.513 何もかも」 0:08:54.513,0:08:59.537 そしてこればかり考えました[br]「なぜ私? なぜ私が?」 0:08:59.537,0:09:03.436 それから脊髄病棟にいる 0:09:03.436,0:09:05.839 友人達を思い出しました 0:09:05.839,0:09:07.483 特にマリアです 0:09:07.483,0:09:09.593 マリアは交通事故に遭い 0:09:09.593,0:09:14.440 16歳の誕生日に[br]完全四肢麻痺であると告げられました 0:09:14.440,0:09:16.733 首から下は全く動かず 0:09:16.733,0:09:20.422 声帯も損傷し 話せなかったのです 0:09:20.422,0:09:22.696 私は言われました[br]「彼女の横に移しますね 0:09:22.696,0:09:24.991 彼女の為になるでしょうから」 0:09:24.991,0:09:28.321 私は不安でした[br]彼女の横になって 0:09:28.321,0:09:30.270 自分がどう反応をするか[br]分からなかったのです 0:09:30.270,0:09:34.194 大変だと思ったのですが[br]実際は彼女の笑顔に救われました 0:09:34.194,0:09:39.436 彼女は笑顔を絶やさなかった 0:09:39.436,0:09:43.858 彼女はいつも幸せそうでした[br]話せるようになった時も 0:09:43.858,0:09:49.935 理解は困難でしたが[br]彼女は不満を言わなかった 一度も 0:09:49.935,0:09:55.758 彼女がなぜあんな風に状況を[br]受け入れられたのか不思議でした 0:09:55.758,0:10:00.477 そしてわかったのです[br]私だけが問題を抱えている訳じゃない と 0:10:00.477,0:10:04.782 人生には問題がつき物で[br]痛みは私だけでなく 0:10:04.782,0:10:09.925 誰にでもあるものなのです[br]以前のように 0:10:09.925,0:10:14.257 選択は自分次第で[br]このまま戦い続けるか 0:10:14.257,0:10:19.278 諦めて[br]この体とこの人生を受け入れるのも 0:10:19.278,0:10:22.661 自分次第なのです 0:10:22.661,0:10:26.476 そこで「なぜ私?」と[br]自問するのを止めました 0:10:26.476,0:10:29.429 「だったら私が」と[br]考えるようになりました 0:10:29.429,0:10:33.556 どん底はスタート地点として 0:10:33.556,0:10:40.447 最高なのかもしれないと[br]思い始めました 0:10:40.447,0:10:44.439 自分を創造性のある人間だと[br]考えたことはありません 0:10:44.439,0:10:48.103 私はアスリートでした[br]体は機械でした 0:10:48.103,0:10:52.794 ところがこれ以上ない創造的なプロジェクトに 0:10:52.794,0:10:54.729 取り掛かることになるのです 0:10:54.729,0:10:57.449 人生の建て直しです 0:10:57.449,0:11:00.008 何をすればいいか[br]全く見当もつかない中 0:11:00.008,0:11:02.863 その不確かさの中で 0:11:02.863,0:11:05.307 自由を感じ取ったのです 0:11:05.307,0:11:08.061 もう決められた道を進まなくてもいい 0:11:08.061,0:11:14.183 人生の無限の可能性を探れる 0:11:14.183,0:11:20.403 それに気付き[br]人生は起点を迎えようとしていました 0:11:20.403,0:11:25.207 ギブスをはめた体で[br]自宅で車椅子に座っていると 0:11:25.207,0:11:29.096 上空を飛行機が飛ぶのが見え 0:11:29.096,0:11:32.003 思いついたのです[br]「これだ! 0:11:32.003,0:11:36.366 私は歩けない[br]なら飛ぼうじゃないか」 0:11:36.366,0:11:39.002 「ママ 私 飛行機の操縦の勉強をする」[br]と私が言うと 0:11:39.002,0:11:43.142 母は言いました[br]「あら素敵ね」 (笑) 0:11:43.142,0:11:45.073 私は続けました[br]「タウンページかして」 0:11:45.073,0:11:47.415 電話帳を受け取り[br]飛行訓練学校へ電話しました 0:11:47.415,0:11:50.377 飛行コースの予約をしたいと伝えると 0:11:50.377,0:11:53.008 学校側は言いました[br]「いつ来られますか?」 0:11:53.008,0:11:54.861 私はこう答えました[br]「友達の都合を聞かないと 0:11:54.861,0:11:58.170 私は運転できる体じゃないし[br]歩くのもやっとですから 0:11:58.170,0:11:59.160 問題ありますか?」 0:11:59.160,0:12:01.257 予約を済ませ数週間後[br]友人のクリスと母が 0:12:01.257,0:12:03.034 空港へ連れて行ってくれました 0:12:03.034,0:12:05.727 36キロの私の体は[br]体幹ギブスで固定され 0:12:05.727,0:12:08.763 更にだぶだぶのオーバーオールが[br]被さっていました (笑) 0:12:08.763,0:12:11.561 パイロットの免許を取るのに 0:12:11.561,0:12:14.351 ふさわしい風体とはいえませんでした (笑) 0:12:14.351,0:12:16.717 カウンターに掴り体を支えながら[br]言いました 0:12:16.717,0:12:18.531 「飛行レッスンを受けに来ました」 0:12:18.531,0:12:21.797 私を見たスタッフ達は[br]奥で貧乏くじを押し付け合いました 0:12:21.797,0:12:25.715 「君が担当しろよ」[br]「いい いい 君が受け持てよ」 0:12:25.715,0:12:27.045 やっと一人が出てきて言いました 0:12:27.045,0:12:28.828 「やあ 僕はアンドリュー[br]実飛行に行きましょう」 0:12:28.828,0:12:30.456 「最高」と言った私を 0:12:30.456,0:12:31.784 彼らは駐機場へ連れて行ってくれました 0:12:31.784,0:12:33.542 そこに赤白青の飛行機がありました 0:12:33.542,0:12:36.876 綺麗でした[br]私は翼まで持ち上げられ 0:12:36.876,0:12:39.474 そこからコックピットに入れられました 0:12:39.474,0:12:41.747 座ってみると至るところに[br]ボタンやダイヤルがありました 0:12:41.747,0:12:45.280 「どうやってこれ全部覚えるの?」[br]と思っていると 0:12:45.280,0:12:47.823 インストラクターのアンドリューが前に座り[br]飛行機をスタートさせ 0:12:47.823,0:12:49.885 「地上滑走試してみますか?」と[br]私に訊きました 0:12:49.885,0:12:52.086 地上で飛行機を操縦するとき 0:12:52.086,0:12:54.111 足元のペダルでコントロールします 0:12:54.111,0:12:56.458 私は言いました[br]「いいえ 足は動かせません」 0:12:56.458,0:12:57.670 「あっ」と彼が言うので 0:12:57.670,0:13:00.477 「でも手は使えます」と言うと[br]「了解」と彼は答えました 0:13:00.477,0:13:03.506 そして彼は操縦を始め滑走路に入り[br]離陸準備にかかりました 0:13:03.506,0:13:06.315 スピードを上げ滑走路を進み 0:13:06.315,0:13:10.325 駐機場から車輪が離れ[br]空中に飛び立ったとき 0:13:10.325,0:13:15.356 私はこの上ない自由を感じました 0:13:15.356,0:13:17.822 訓練区域に入ったとき 0:13:17.822,0:13:20.403 アンドリューは言いました 0:13:20.403,0:13:22.879 「あそこの山が見えますか?」 0:13:22.879,0:13:24.412 私が「ええ」と答えると[br]彼は続けました 0:13:24.412,0:13:29.168 「今度はあなたが操縦機を握り[br]あの山の方に飛んでみてください」 0:13:29.168,0:13:31.650 見上げると[br]彼が指していたのは 0:13:31.650,0:13:34.873 この旅路の始まりとなった 0:13:34.873,0:13:37.853 あのブルーマウンテンズでした 0:13:37.853,0:13:42.438 私は操縦桿を手に飛んでいました 0:13:42.438,0:13:45.491 脊髄病棟から遠く離れた場所にいて 0:13:45.491,0:13:49.633 その瞬間 [br]自分はパイロットになると確信しました 0:13:49.633,0:13:53.503 身体検査に合格するかは疑問でしたが 0:13:53.503,0:13:56.562 そんなことより夢が先決でした 0:13:56.562,0:14:00.786 帰宅後 [br]トレーニング日誌に計画を書きました 0:14:00.786,0:14:03.616 歩行訓練を目一杯こなし 0:14:03.616,0:14:06.750 二人の人に支えられ立つところから 0:14:06.750,0:14:09.625 一人が支えてくれるだけで[br]立てるようになり 0:14:09.625,0:14:11.527 家具と家具が離れていなければ 0:14:11.527,0:14:14.260 家具づたいに[br]伝い歩きできるまでになりました 0:14:14.260,0:14:16.452 そしてやっと家に中で 0:14:16.452,0:14:18.684 壁沿いに歩けるまでになりました 0:14:18.684,0:14:22.274 こんな風にです[br]母は私の後ろを付いて回り 0:14:22.274,0:14:25.927 指紋を拭き取っていました(笑) 0:14:25.927,0:14:30.606 少なくとも彼女には私の居場所が[br]わかっていました 0:14:30.606,0:14:32.992 医師が私の体が元に戻るよう 0:14:32.992,0:14:35.029 手術を継続していた一方で 0:14:35.029,0:14:38.684 私は航空理論の勉強を続け[br]やがて驚いたことに 0:14:38.684,0:14:42.119 パイロットの身体検査にも受かり 0:14:42.119,0:14:44.651 飛行許可が下りました 0:14:44.651,0:14:47.315 寸暇を惜しんで飛行訓練学校に行き 0:14:47.315,0:14:48.853 ちょっと勇気がいりましたが 0:14:48.853,0:14:51.255 カンタス航空のパイロットを[br]夢見る若者にまぎれて 0:14:51.255,0:14:54.742 年長の私がいました 0:14:54.742,0:14:57.443 ギブス 金属のブレース[br]だぶだぶのオーバーオールに 0:14:57.443,0:15:01.009 薬の袋とカテーテルを持って[br]びっこを引いている私です 0:15:01.009,0:15:02.270 彼等は私を見てこう考えたでしょう 0:15:02.270,0:15:05.641 「何かの冗談か?[br]彼女にやれっこないよ」 0:15:05.641,0:15:07.544 私も時々そう思いました 0:15:07.544,0:15:12.044 でもかまわなかった[br]私の中で何かが燃え始め 0:15:12.044,0:15:16.431 私の傷を消し去ってくれたのです 0:15:16.431,0:15:18.396 小さなゴールに達成しては前進し 0:15:18.396,0:15:22.122 ついには自家用機パイロット免許を[br]取得したのです 0:15:22.122,0:15:27.352 自由飛行することを覚え[br]友達とオーストラリア中を飛行しました 0:15:27.352,0:15:30.180 双発機の操縦も学び 0:15:30.180,0:15:32.746 資格を得ました 0:15:32.746,0:15:35.691 良天候でも悪天候でも[br]飛行できる訓練をし 0:15:35.691,0:15:38.156 計器飛行資格を取得しました 0:15:38.156,0:15:41.260 その後[br]商業用パイロットの免許も取り 0:15:41.260,0:15:43.983 インストラクターの資格も得ました 0:15:43.983,0:15:47.182 そして気が付けば 0:15:47.182,0:15:49.430 初めて飛行した訓練学校に戻り 0:15:49.430,0:15:52.576 生徒に飛ぶ事を教えていました 0:15:52.576,0:15:56.718 ちょうど脊髄病棟から退院して[br]18ヵ月後でした 0:15:56.718,0:16:08.272 (拍手) 0:16:08.272,0:16:10.423 そして思いました[br]「どうせなら 0:16:10.423,0:16:13.694 逆さ飛行も習おうかしら」 0:16:13.694,0:16:16.348 その言葉を実行し 0:16:16.348,0:16:20.406 アクロバット飛行の[br]インストラクターになりました 0:16:20.406,0:16:26.589 父と母は?[br]私と飛んだことはありません 0:16:26.589,0:16:32.304 身体的な制約も 0:16:32.304,0:16:37.466 私の気力を留められなかったのです 0:16:37.466,0:16:40.847 老子の言葉にもあります 0:16:40.847,0:16:43.766 「今の自分に固執するのをやめた時 0:16:43.766,0:16:47.197 なり得る自分になれる」 0:16:47.197,0:16:52.102 自分で決めつけていた自分を捨てて 0:16:52.102,0:16:56.303 初めて新しい人生を[br]作れるのだとわかりました 0:16:56.303,0:17:00.940 自分の人生と信じてきた人生を[br]手放して初めて 0:17:00.940,0:17:05.724 待ち受けている新しい人生を[br]発見できたのです 0:17:05.724,0:17:08.945 私の本当の強さは 0:17:08.945,0:17:12.162 体から来るものではない 0:17:12.162,0:17:17.169 身体能力が劇的に変わっても 0:17:17.169,0:17:20.952 私であることに変わりはなかった 0:17:20.952,0:17:25.291 私の中のともし火は消えていず 0:17:25.291,0:17:29.988 誰の中にでもある筈です 0:17:29.988,0:17:33.211 私の体だけが「私」でないように 0:17:33.211,0:17:36.659 皆さんの体だけが[br]皆さん自身ではないのです 0:17:36.659,0:17:40.935 外見や出身地 0:17:40.935,0:17:45.253 仕事など もう意味はない 0:17:45.253,0:17:50.700 大切なのは真の自分を 0:17:50.700,0:17:54.752 究極の創造性で表現し 0:17:54.752,0:17:58.518 人間性の炎を絶やさないことです 0:17:58.518,0:18:01.324 なぜなら私達は皆 0:18:01.324,0:18:05.471 無数のストローで繋がっているのです 0:18:05.471,0:18:08.392 今それを皆でつなげて 0:18:08.392,0:18:10.199 握り締める時なのです 0:18:10.199,0:18:14.563 全体の幸福を掴もうとするなら 0:18:14.563,0:18:17.286 物理的なことに目を向けず 0:18:17.286,0:18:21.121 心の声を受け入れてください 0:18:21.121,0:18:25.200 さあ皆さん 私と一緒に[br]ストローを掲げようではありませんか 0:18:25.200,0:18:31.479 ありがとうございました[br](拍手) 0:18:31.479,0:18:36.449 ありがとう