WEBVTT 00:00:00.771 --> 00:00:04.135 急速に大きくなりつつある アメリカ人の健康問題は何でしょう? 00:00:04.135 --> 00:00:06.973 がん? 心臓発作? 糖尿病? 00:00:07.603 --> 00:00:09.449 実はこのどれでもなく 00:00:09.449 --> 00:00:11.250 正解はアルツハイマー病です 00:00:11.250 --> 00:00:13.276 アメリカでは 67秒に1人の割合で 00:00:13.276 --> 00:00:16.221 アルツハイマー病の 診断が下されています 00:00:16.761 --> 00:00:20.149 アルツハイマー病患者は 2050年までに3倍に増えるとされ 00:00:20.149 --> 00:00:23.446 高齢化社会において 彼らの介護をすることは 00:00:23.446 --> 00:00:26.005 大きな社会問題となりつつあります 00:00:26.585 --> 00:00:28.465 私の家族は アルツハイマー病患者を 00:00:28.465 --> 00:00:30.967 介護するという苦労を 実際に味わいました 00:00:30.967 --> 00:00:33.107 3世代が同居する家に育った私にとって 00:00:33.107 --> 00:00:35.262 祖父はとても身近な存在でした 00:00:35.262 --> 00:00:36.689 4歳の時 00:00:36.689 --> 00:00:39.192 祖父と私が日本で 公園を散歩していると 00:00:39.192 --> 00:00:40.497 祖父が突然いなくなりました 00:00:40.497 --> 00:00:43.710 これまでの人生で 最も恐ろしい思いをした瞬間であり 00:00:43.710 --> 00:00:46.117 このときに初めて 私たち家族は 00:00:46.117 --> 00:00:48.412 祖父がアルツハイマー病であることを 知らされました 00:00:48.682 --> 00:00:52.025 この12年間で 祖父の症状はどんどん悪化し 00:00:52.025 --> 00:00:55.823 祖父の徘徊は家族にとって 特に大きなストレスになりました 00:00:55.823 --> 00:00:57.302 祖父の介護を 主に担っている叔母は 00:00:57.302 --> 00:01:00.349 祖父から目を離さないよう 夜中に起きていようと苦労し 00:01:00.349 --> 00:01:03.047 それでも度々 祖父がベッドから 脱け出すのを止められませんでした 00:01:03.047 --> 00:01:05.858 私は祖父の身の安全とともに 叔母の健康がとても 00:01:05.858 --> 00:01:07.599 気にかかるようになりました 00:01:07.599 --> 00:01:11.130 家族の抱える問題に役立つような 解決法を色々と探しましたが 00:01:11.130 --> 00:01:12.490 見つかりませんでした 00:01:12.960 --> 00:01:15.693 それから 2年後のある夜 00:01:15.693 --> 00:01:19.158 私が世話をしているときに 祖父が ベッドから出ようとするのを見ました 00:01:19.158 --> 00:01:21.150 祖父が床に足をついた瞬間に 00:01:21.150 --> 00:01:24.412 足のかかとに圧力センサーを つけたら どうだろう?と思いました 00:01:24.412 --> 00:01:26.809 ベッドを出て 床に足をつけば 00:01:26.809 --> 00:01:30.516 圧力センサーが体重による 圧力の増加を感知して 00:01:30.516 --> 00:01:33.971 介護者のスマートフォンに警告音を 無線送信するのです 00:01:33.971 --> 00:01:36.312 そうすれば 叔母は 祖父の徘徊を心配せずに 00:01:36.312 --> 00:01:39.002 夜にもっとよく眠れるかもしれません 00:01:39.002 --> 00:01:42.934 では この靴下の デモンストレーションを行います 00:01:45.134 --> 00:01:47.802 靴下をはいたモデルに 出てきてもらえますか? 00:01:48.831 --> 00:01:50.560 ありがとう 00:01:52.170 --> 00:01:55.950 さて 患者が床に足をつくと― 00:01:55.950 --> 00:01:57.510 ( 警告音 ) 00:01:57.510 --> 00:02:00.182 警告音が介護者のスマートフォンに 送信されます 00:02:04.571 --> 00:02:06.057 ありがとう ( 拍手 ) 00:02:06.057 --> 00:02:09.225 靴下モデルの方 ありがとう 00:02:12.045 --> 00:02:14.649 さて これが初期のデザインの 設計図です 00:02:15.819 --> 00:02:18.441 センサーに関する技術を 生み出したいという思いは 00:02:18.441 --> 00:02:21.969 長い間 センサーと科学技術が 好きであることが発端かもしれません 00:02:21.979 --> 00:02:23.465 6歳の時 00:02:23.465 --> 00:02:25.795 家族で親しくしている あるお年寄りが 風呂場で転倒し 00:02:25.795 --> 00:02:27.505 重いけがを負ったことがありました 00:02:27.505 --> 00:02:29.606 私は自分の祖父母のことが 心配になり 00:02:29.606 --> 00:02:31.958 スマート風呂システムを 構築することにしました 00:02:31.958 --> 00:02:35.566 運動センサーを風呂場の タイルに内蔵し 00:02:35.566 --> 00:02:39.404 お年寄りの患者が風呂場で 転倒するのを感知するのです 00:02:39.404 --> 00:02:41.416 当時はたった6歳で 00:02:41.416 --> 00:02:43.739 幼稚園も卒業していなかったので 00:02:43.739 --> 00:02:48.073 このアイディアを現実にするための 資金も道具も持っていませんでしたが 00:02:48.073 --> 00:02:50.706 それでも この研究体験によって 00:02:50.706 --> 00:02:54.957 お年寄りのためにセンサーを使いたい という願いは強固になりました 00:02:54.957 --> 00:02:59.573 センサー技術によってお年寄りの 生活の質を高めることができると考えています 00:03:00.944 --> 00:03:04.425 計画を立ててみると 3つの困難に直面する事がわかりました 00:03:04.425 --> 00:03:06.194 1つ目は センサーの構築 00:03:06.194 --> 00:03:07.773 2つ目は 回路の設計 そして 00:03:07.773 --> 00:03:09.519 3つ目は スマホ用アプリのコード化です 00:03:09.519 --> 00:03:12.927 これによって 実現するのが 当初考えていたよりも 00:03:12.927 --> 00:03:14.982 ずっと難しいとわかりました 00:03:14.982 --> 00:03:18.476 まず 患者の足底に楽につけられるような 薄くて柔軟な 00:03:18.476 --> 00:03:21.237 装着可能なセンサーを 作らなければなりませんでした 00:03:21.237 --> 00:03:24.656 より広範な研究とゴムのような 様々な素材を試した結果 00:03:24.656 --> 00:03:28.191 ゴムは足底に快適に装着するには 厚すぎることがわかったので 00:03:28.191 --> 00:03:29.758 フィルムセンサーを 00:03:29.758 --> 00:03:32.660 圧力を感知する導電性インク分子で 印刷することにしました 00:03:32.660 --> 00:03:36.236 圧力がかかると 分子間の 導電性が高まります 00:03:36.236 --> 00:03:39.200 それにより 電気抵抗を測定することで 00:03:39.200 --> 00:03:40.967 圧力を測定する回路を設計できました 00:03:41.267 --> 00:03:44.026 次に 装着可能なワイヤレス回路を 設計しなければなりませんでしたが 00:03:44.026 --> 00:03:47.338 ワイヤレス信号通信には 大量の電力と 00:03:47.338 --> 00:03:49.101 重くてかさばる電池が必要です 00:03:49.101 --> 00:03:52.728 ありがたいことに Bluetoothの 低エネルギー技術を知りました 00:03:52.728 --> 00:03:56.251 ごく少量の電力しか消費せず コイン大の電池で動くものです 00:03:56.251 --> 00:03:59.880 これによってシステムが夜中に 電池切れになることが防げます 00:03:59.880 --> 00:04:03.343 最後に 介護者のスマホを 遠隔モニターに変えられる― 00:04:03.343 --> 00:04:05.821 アプリのコード化を しなければなりませんでした 00:04:05.821 --> 00:04:09.497 このために JavaやXCodeをさらに勉強し 00:04:09.497 --> 00:04:12.984 Blutoothの低エネルギーデバイスの ためのコード化を 00:04:12.984 --> 00:04:15.860 YouTubeのビデオや 色々なテキストを使って学びました 00:04:17.230 --> 00:04:21.019 これらの要素を組み合わせて 2つのプロトタイプを作りました 00:04:21.019 --> 00:04:23.347 1つはセンサーが靴下に 内蔵されているもの 00:04:23.347 --> 00:04:25.743 もう1つは患者の足底に 触れるものなら 00:04:25.743 --> 00:04:27.949 何にでも接着できる 再装着可能な 00:04:27.949 --> 00:04:29.782 センサー部品です 00:04:29.782 --> 00:04:32.682 今から1年ほど前にデバイスを 祖父に試用してもらい 00:04:32.682 --> 00:04:34.593 100%の成功率で 00:04:34.593 --> 00:04:38.089 900回以上もの祖父の徘徊を 感知しました 00:04:38.629 --> 00:04:41.052 昨夏 このデバイスを カリフォルニアの 00:04:41.052 --> 00:04:43.598 いくつかの居住介護施設で ベータテストすることができ 00:04:43.598 --> 00:04:45.770 現在 デバイスを商品化できるものに 改善できるように 00:04:45.770 --> 00:04:48.733 フィードバックを組み込んでいるところです 00:04:48.733 --> 00:04:50.841 多くの患者さんにデバイスを 試してもらうことで 00:04:50.841 --> 00:04:53.350 夜寝るときに 靴下を履かない人のための 00:04:53.350 --> 00:04:56.235 解決法を見つけなければならないと いうことがわかりました 00:04:56.805 --> 00:04:59.630 多くの患者さんによって集められた センサーのデータは 00:04:59.630 --> 00:05:01.959 介護の改善のために役立つほか 00:05:01.959 --> 00:05:04.777 もしかしたらアルツハイマー病の 治療にもつながるかもしれません 00:05:04.777 --> 00:05:06.620 たとえば 現在は 00:05:06.620 --> 00:05:09.848 患者の夜間徘徊の頻度と 00:05:09.848 --> 00:05:12.714 日中の活動や食事内容との 相互関係を調べています 00:05:13.854 --> 00:05:16.615 決して忘れられないのは 私のデバイスが初めて 00:05:16.615 --> 00:05:18.833 祖父が夜に徘徊するのを 感知したときのことです 00:05:18.833 --> 00:05:21.784 その瞬間 生活をより良いものへと 変えることのできる 00:05:21.784 --> 00:05:23.761 科学技術の力に心を打たれました 00:05:24.011 --> 00:05:26.131 幸せに そして健康に 00:05:26.131 --> 00:05:28.156 人々が生きられる世界を 思い描いています 00:05:28.156 --> 00:05:30.216 どうもありがとうございました 00:05:30.216 --> 00:05:33.526 ( 拍手 )