WEBVTT

00:00:08.161 --> 00:00:11.015
これはジェネラル・ドラフティング社が—

00:00:11.015 --> 00:00:14.417
1937年に発行した
ニューヨーク州の地図です

00:00:14.417 --> 00:00:17.767
この地図は 地図マニアの間では
とても有名なんです

00:00:17.767 --> 00:00:20.519
ここキャッツキル山脈の麓に

00:00:20.519 --> 00:00:22.516
ロスコーという小さな町があって —

00:00:22.516 --> 00:00:25.500
スクリーンに映した方が
見やすいですね

00:00:27.626 --> 00:00:31.105
ロスコーの町があり
そのすぐ上にロックランドがあって

00:00:31.105 --> 00:00:34.928
そのすぐ上にアグローという
小さな町があります

00:00:34.928 --> 00:00:38.182
アグローは 地図の専門家の間では
よく知られているんですが

00:00:38.182 --> 00:00:40.078
それは「ペーパータウン」だからです

00:00:40.078 --> 00:00:42.668
これは「著作権トラップ」とも
呼ばれています

00:00:42.668 --> 00:00:46.250
ニューヨークの地図は
誰が作ろうと

00:00:46.250 --> 00:00:49.364
似通ったものになります

00:00:49.364 --> 00:00:53.075
それで地図出版社は
著作権を守るために

00:00:53.075 --> 00:00:56.589
地図に実在しない場所を
紛れ込ませておくんです

00:00:56.589 --> 00:00:59.299
その架空の場所が
他社の地図に出ていたなら

00:00:59.299 --> 00:01:02.608
コピーされたと分かります

00:01:02.608 --> 00:01:07.350
アグロー(Agloe)という名前は
この地図の作者のアーネスト・アルパースと

00:01:07.350 --> 00:01:10.767
オットー・リンドバーグの
イニシャルを並び替えたものです

00:01:10.767 --> 00:01:13.378
彼らの地図は
1937年に発行されました

00:01:13.378 --> 00:01:16.054
何十年か後にランドマクナリー社が

00:01:16.054 --> 00:01:19.230
このアグローの町が載っている
地図を出版しました

00:01:19.230 --> 00:01:23.782
舗装もされていない道が交差しているだけの
何もない場所です

00:01:23.782 --> 00:01:27.566
ジェネラル・ドラフティング社は
これを見てしてやったりと思い

00:01:27.566 --> 00:01:30.876
すぐランドマクナリー社に
電話したことでしょう

00:01:30.876 --> 00:01:32.322
「おい パクっただろ？

00:01:32.322 --> 00:01:36.766
アグローはうちででっち上げた町で
実在しないペーパータウンだ

00:01:36.766 --> 00:01:39.226
訴えてやるから覚悟しておけ！」

00:01:39.226 --> 00:01:43.856
するとランドマクナリー社は言います
「いやいや アグローは実在しますよ」

00:01:44.963 --> 00:01:47.402
みんなアグローという町が

00:01:47.402 --> 00:01:50.359
そこにあるものと期待して

00:01:50.359 --> 00:01:52.102
あの何もない

00:01:52.102 --> 00:01:55.223
未舗装道の交差点に
行くものだから

00:01:55.223 --> 00:01:58.876
誰かがアグローという場所を
作ってしまったんです

00:01:59.508 --> 00:02:03.254
最盛期にはガソリンスタンドと
雑貨屋と２軒の家がありました

00:02:03.254 --> 00:02:05.744
(笑)

00:02:06.015 --> 00:02:10.595
これは作家にとっては
抗しがたい魅力のある話です

00:02:10.595 --> 00:02:14.573
作家は自分が紙に書いた作り話が

00:02:14.573 --> 00:02:17.368
我々の住む世界を実際に変えられると
思いたいものです

00:02:17.368 --> 00:02:20.336
それで私は３番目に出した本を
「ペーパータウン」という題にしたんです

00:02:20.336 --> 00:02:24.493
しかしそのようなことが起きるメディア以上に
私の興味を引きつけるのは

00:02:24.503 --> 00:02:27.195
その現象そのものです

00:02:27.966 --> 00:02:32.284
世界の姿が地図を形作るというのは
当たり前のことです

00:02:32.284 --> 00:02:36.546
世界の形が地図の形を決めます

00:02:36.940 --> 00:02:39.089
しかしさらに興味深いのは

00:02:39.089 --> 00:02:43.880
どう地図を作るかで
世界は変わるということです

00:02:44.149 --> 00:02:48.676
というのも もし北が下だったとしたら
世界は違った場所になるでしょう

00:02:48.676 --> 00:02:52.175
もしアラスカとロシアが
反対側にあるのでなければ

00:02:52.175 --> 00:02:54.181
世界は違った場所になるでしょう

00:02:54.181 --> 00:02:57.111
もしヨーロッパを
実際に応じたサイズで示したら

00:02:57.111 --> 00:02:59.667
世界は違った場所になるでしょう

00:03:00.419 --> 00:03:04.320
世界地図によって世界は変わるのです

00:03:04.760 --> 00:03:09.587
地図の作り方に
どのようなものを選ぶかで

00:03:09.587 --> 00:03:12.330
我々の人生の地図の形は変わり

00:03:12.330 --> 00:03:14.510
それにより人生の形も変わります

00:03:14.510 --> 00:03:19.088
何を地図に描くかで
人生のたどる道は変わるのです

00:03:19.450 --> 00:03:23.039
私が言っているのは
オプラ・エンジェル・ネットワークのような

00:03:23.039 --> 00:03:26.578
「思いによってガンは克服できる」
みたいな話ではありません

00:03:26.578 --> 00:03:28.937
地図は将来自分が

00:03:28.937 --> 00:03:32.766
どこにいるかを
示しはしませんが

00:03:32.766 --> 00:03:35.168
いる可能性のある場所は示します

00:03:35.168 --> 00:03:39.926
個人的な地図に載っていない場所には
なかなか行かないものです

00:03:39.926 --> 00:03:42.684
子供のころ私は
できの悪い生徒でした

00:03:42.684 --> 00:03:46.161
平均成績が５段階で
２に近いものでした

00:03:46.482 --> 00:03:49.127
私がそんなに成績が悪かったのは

00:03:49.127 --> 00:03:51.767
学校教育というのが

00:03:51.767 --> 00:03:54.347
大人になるために設定された

00:03:54.347 --> 00:03:58.643
単なるハードルのように
感じていたからです

00:03:58.643 --> 00:04:01.988
私はそんな恣意的なハードルを
別に越えたいと思わず

00:04:01.988 --> 00:04:03.793
実際越えないことも
よくありました

00:04:03.793 --> 00:04:05.424
するとみんな脅しはじめます

00:04:05.424 --> 00:04:08.497
この記録は一生ついてまわるんだとか

00:04:08.497 --> 00:04:10.783
将来良い仕事に就けないぞとか

00:04:10.783 --> 00:04:13.466
でも良い仕事になんかに
就きたくはありませんでした

00:04:13.466 --> 00:04:16.012
11、12歳頃の私に言わせるなら

00:04:16.012 --> 00:04:19.636
良い仕事に就いている人たちというのは
朝すごく早く起きなければならず

00:04:19.636 --> 00:04:21.022
(笑)

00:04:21.022 --> 00:04:25.211
彼らが朝一番にするのが
何かと言えば

00:04:25.211 --> 00:04:29.765
首つり縄みたいなものを
首に巻くということです

00:04:30.301 --> 00:04:32.493
文字通り自分の首に
首つり縄をかけて

00:04:32.493 --> 00:04:35.403
何か知りませんが
仕事に出かけていくんです

00:04:35.403 --> 00:04:38.226
それが幸せな人生のためのレシピとは
到底思えません

00:04:38.226 --> 00:04:42.145
象徴に魅了された
12歳の子供の想像力からすると

00:04:42.145 --> 00:04:44.080
毎朝最初にするのが

00:04:44.080 --> 00:04:47.181
自分の首を締めることだ
なんて人たちが

00:04:47.181 --> 00:04:48.946
幸せなんかではあり得ません

00:04:48.946 --> 00:04:50.381
そんな結末を迎えるために

00:04:50.381 --> 00:04:53.471
努力してハードルを越えようなんて
どうして思うでしょう？

00:04:53.471 --> 00:04:55.433
酷い結末です

00:04:55.433 --> 00:04:57.576
それから高校１年になって

00:04:57.576 --> 00:05:00.528
このインディアン・スプリングス・
スクールに移りました

00:05:00.528 --> 00:05:03.458
アラバマ州バーミングハム近郊の
小さな寄宿学校です

00:05:03.458 --> 00:05:06.915
そして私は突如として
学ぶ者へと変わりました

00:05:06.952 --> 00:05:08.435
そうなったのは

00:05:08.435 --> 00:05:11.329
学ぶ人々のコミュニティに
入ったためです

00:05:11.329 --> 00:05:13.728
そこでは
知の追求や取り組みを

00:05:13.728 --> 00:05:16.518
尊ぶ人たちに
囲まれていました

00:05:16.518 --> 00:05:20.313
それまで私がかっこいいと思っていた
斜に構えて真剣に取り組まない姿勢は

00:05:20.313 --> 00:05:22.383
そこでは賢明でも面白くもなく

00:05:22.383 --> 00:05:25.757
挑み甲斐ある難しい問題に対する

00:05:25.757 --> 00:05:28.757
愚かで凡庸な反応でしか
なかったのです

00:05:28.757 --> 00:05:31.604
学ぶのは素敵なことだと知った私は
学び始め

00:05:31.604 --> 00:05:34.894
無限集合にも大小があることを
知りました

00:05:34.894 --> 00:05:39.151
弱強五歩格とは何で
なぜそれが耳に心地良いのかを知りました

00:05:39.151 --> 00:05:42.617
南北戦争とは
国有化の争いだったことを学び

00:05:42.617 --> 00:05:44.013
物理の初歩を学び

00:05:44.013 --> 00:05:46.823
因果と相関を混同してはならないことを
学びました

00:05:46.823 --> 00:05:48.461
このような知識は

00:05:48.461 --> 00:05:52.541
文字通り私の日々を
豊かにしています

00:05:52.931 --> 00:05:56.113
その多くを「仕事」で
使わないのは確かですが

00:05:56.113 --> 00:05:58.449
それは要点ではなく

00:05:58.449 --> 00:06:00.294
知とは地図作りに
関わることなんです

00:06:00.294 --> 00:06:02.819
地図作りの過程とは
どんなものでしょう？

00:06:02.819 --> 00:06:05.459
どこかの地へと航海して行って

00:06:05.459 --> 00:06:07.989
「この場所の地図を作ろう」と思い

00:06:07.989 --> 00:06:11.266
それから「地図にすべき場所が
もっとあるかもしれない」と思う

00:06:11.266 --> 00:06:13.437
学びが本当に始まるのは
そこなんです

00:06:13.437 --> 00:06:16.187
私を見捨てずにいてくれた
教師がいたのは確かで

00:06:16.187 --> 00:06:18.747
それは私にとって
幸運なことでした

00:06:18.747 --> 00:06:22.996
私なんかに投資するのは無駄だと思わせるようなことを
たびたびしていましたから

00:06:22.996 --> 00:06:26.041
しかし私が中学高校時代に
学んだことの多くは

00:06:26.041 --> 00:06:28.929
教室の中ではなく

00:06:28.929 --> 00:06:31.404
教室の外で学んだものでした

00:06:31.404 --> 00:06:33.347
たとえば私は今でも暗唱できます

00:06:33.347 --> 00:06:35.806
「傾いた日の光のある冬の午後

00:06:35.806 --> 00:06:38.572
荘厳な聖堂の音のように重苦しく･･･」

00:06:38.572 --> 00:06:40.403
エミリー・ディキンソンの詩を

00:06:40.403 --> 00:06:43.343
学校で習ったからではなく

00:06:43.343 --> 00:06:45.673
高校生の時 学校にいた

00:06:45.673 --> 00:06:48.229
アマンダという子を好きになって

00:06:48.229 --> 00:06:51.050
その子がエミリー・ディキンソンを
好きだったからです

00:06:51.050 --> 00:06:53.505
「機会費用」について学んだのもそうです

00:06:53.505 --> 00:06:57.013
私が部屋でスーパー・マリオ・
カートで遊んでいると

00:06:57.023 --> 00:06:58.933
友達のエメットが入ってきて

00:06:58.933 --> 00:07:01.090
「何時間やってるんだ？」と聞くので

00:07:01.090 --> 00:07:03.721
「さあ ６時間くらいかな」と答えると

00:07:03.721 --> 00:07:07.802
彼は「その６時間にサーティワン・
アイスクリームでバイトしていたら

00:07:07.802 --> 00:07:09.963
30ドル稼げたんだぞ
それはつまり —

00:07:09.963 --> 00:07:13.893
スーパー・マリオ・カートをやるために
30ドル払っているようなものだ」と言うので

00:07:13.893 --> 00:07:17.419
「それくらい払ってやるさ」
と返しました (笑)

00:07:18.458 --> 00:07:21.733
しかし私はそれで
機会費用というものを学び

00:07:22.749 --> 00:07:27.746
それによって私の人生の地図は
より良く より大きくなり

00:07:27.746 --> 00:07:29.964
より多くの場所を
含むようになったんです

00:07:29.964 --> 00:07:34.499
起こりえることが増え
可能な未来が広がりました

00:07:35.037 --> 00:07:37.170
これが系統立った

00:07:37.170 --> 00:07:40.130
正式な学習過程でないのは確かです

00:07:40.130 --> 00:07:43.048
穴だらけで 整合性がなく
知らないことも沢山あります

00:07:43.048 --> 00:07:44.369
カントールが発見した

00:07:44.369 --> 00:07:48.411
「ある無限集合は別の無限集合よりも大きい」
という話は知っていましたが

00:07:48.411 --> 00:07:51.477
その背後にある解析学を
ちゃんと理解していたわけではありません

00:07:51.477 --> 00:07:53.481
機会費用の考えは
分かっていましたが

00:07:53.481 --> 00:07:55.375
収穫逓減の法則は
知りませんでした

00:07:55.375 --> 00:07:56.317
しかし学習を

00:07:56.317 --> 00:07:59.037
越えなければならない
恣意的なハードルではなく

00:07:59.037 --> 00:08:02.114
地図作りだと考えることの良い点は

00:08:02.114 --> 00:08:05.586
海岸線が少し見えると
もっと見たいと思うようになることです

00:08:05.586 --> 00:08:07.775
今では背後にある解析学についても

00:08:07.775 --> 00:08:09.895
ある程度分かるようになりました

00:08:09.895 --> 00:08:12.375
だから中高時代には
周りに学ぶコミュニティがあって

00:08:12.375 --> 00:08:14.385
大学でも別のコミュニティがあり

00:08:14.385 --> 00:08:16.575
就職すると
また別のコミュニティがありました

00:08:16.575 --> 00:08:17.676
雑誌「ブックリスト」の

00:08:17.676 --> 00:08:19.286
編集アシスタントになったんですが

00:08:19.286 --> 00:08:21.657
周りにいるのはみんな
ものすごく博識な人たちです

00:08:21.657 --> 00:08:25.552
それから私は本を書いて
作家が誰でも夢見ることをしました

00:08:25.552 --> 00:08:27.640
すっぱり仕事を辞めたんです

00:08:28.753 --> 00:08:30.351
高校以来初めて

00:08:30.351 --> 00:08:33.941
私は学ぶコミュニティを失いました

00:08:33.941 --> 00:08:35.520
それは惨めで

00:08:35.520 --> 00:08:37.232
嫌なものでした

00:08:37.232 --> 00:08:40.361
その２年ほどの間に
沢山の本を読みました

00:08:40.361 --> 00:08:42.438
スターリンについての本を読み

00:08:42.438 --> 00:08:45.712
ウズベクの人々がイスラム教徒になった
経緯を書いた本を読み

00:08:45.712 --> 00:08:47.896
原子爆弾の製造方法についての
本を読みました

00:08:47.896 --> 00:08:53.046
しかしそれは自分で作ったハードルを
自分で飛び越えているようで

00:08:53.046 --> 00:08:57.379
学ぶコミュニティに属している
ワクワク感はありませんでした

00:08:57.379 --> 00:08:59.499
周りの世界を
より良く知ろうという

00:08:59.499 --> 00:09:03.058
壮大な地図作成の企図に
共に取り組む人々の輪の中にいる

00:09:03.058 --> 00:09:04.988
興奮はありませんでした

00:09:04.988 --> 00:09:06.960
それから2006年に

00:09:06.960 --> 00:09:09.402
この人物 ゼイ・フランクに出会いました

00:09:09.402 --> 00:09:11.840
直接会ったわけではなく
ネットで見つけたんです

00:09:12.952 --> 00:09:17.802
ゼイ・フランクは当時「ゼイ・フランク・ショー」という
ビデオシリーズをやっていて

00:09:17.809 --> 00:09:22.645
私はそこで再び学ぶコミュニティに
戻ることができたんです

00:09:22.645 --> 00:09:25.347
これは彼がラスベガスについて
語っているくだりです

00:09:26.006 --> 00:09:29.523
(ナレーション) ラスベガスは
大きく暑い砂漠の真ん中に作られました

00:09:29.523 --> 00:09:32.363
ここにあるものは大概
どっかよそから持ってきたものです

00:09:32.363 --> 00:09:34.406
岩あり 木あり 滝あり

00:09:34.406 --> 00:09:37.636
この魚なんか私の空飛ぶ豚と
同じくらいに場違いでしょう

00:09:37.636 --> 00:09:40.346
周りの焼けるように熱い砂漠と比べたなら

00:09:40.346 --> 00:09:41.166
この人たちもそう

00:09:41.166 --> 00:09:43.437
世界中のあらゆるものが
ここに再現されています

00:09:43.437 --> 00:09:44.650
元々の歴史や

00:09:44.650 --> 00:09:46.524
それを体験した人々からは
切り離されて

00:09:46.524 --> 00:09:47.978
時には改善さえされています

00:09:47.978 --> 00:09:49.926
スフィンクスにも
ちゃんと鼻があります

00:09:49.926 --> 00:09:51.515
ここでは見たがままを受け取り

00:09:51.515 --> 00:09:53.882
何か欠けていると
感じることがありません

00:09:53.882 --> 00:09:56.676
このニューヨークが持つ意味は
誰にとっても同じです

00:09:56.676 --> 00:09:58.069
すべてが文脈を欠いています

00:09:58.069 --> 00:10:00.333
それは文脈が何でもあり
ということでもあります

00:10:00.333 --> 00:10:02.481
セルフ・パーキング　イベントセンター
シャークリーフ

00:10:02.481 --> 00:10:05.614
この場所のでっち上げは
世界最大の偉業の１つと言えるかもしれません

00:10:05.614 --> 00:10:08.136
ここに属する人は誰もおらず
誰もがここに属しているからです

00:10:08.136 --> 00:10:09.410
朝歩き回っていると

00:10:09.410 --> 00:10:13.157
多くの建物は太陽を砂漠へと反射する
巨大な鏡であることに気付きました

00:10:13.157 --> 00:10:14.943
しかしこの鏡は
普通の鏡とは違い

00:10:14.943 --> 00:10:19.537
それが映すのは 周りに埋め込まれた
自分の姿ではなく 空虚です

00:10:19.537 --> 00:10:22.067
(ジョン・グリーン) ピクセルが目に付く
オンラインビデオを見ると

00:10:22.067 --> 00:10:25.567
なんか懐かしい思いがしますね (笑)

00:10:25.567 --> 00:10:29.888
彼は優れた知識人というだけでなく
優れたコミュニティの作り手でもあります

00:10:29.888 --> 00:10:32.586
そして彼のビデオを巡るコミュニティは

00:10:32.586 --> 00:10:35.082
多くの点で学ぶコミュニティでもありました

00:10:35.082 --> 00:10:38.700
みんなで協力してゼイ・フランクと
チェスで対戦して打ち負かしたり

00:10:38.700 --> 00:10:42.744
ある若者がアメリカ横断旅行するのを
みんなで助けたり

00:10:42.744 --> 00:10:45.132
地球を具にサンドイッチを作ったり—

00:10:45.132 --> 00:10:47.632
１人が地球のある地点で
パンを持ち

00:10:47.632 --> 00:10:51.056
もう１人が
地球の反対側の地点で

00:10:51.056 --> 00:10:53.416
パンを持つんです

00:10:53.416 --> 00:10:59.449
馬鹿げたアイデアではありますが
その中に学びの要素があり

00:10:59.860 --> 00:11:01.601
それが私を夢中にさせたんです

00:11:01.601 --> 00:11:05.223
インターネットを探せば そのようなコミュニティを
至る所で見つけられます

00:11:05.223 --> 00:11:07.547
Tumblrで解析学の
タグをフォローすれば

00:11:07.547 --> 00:11:09.937
多くの人が不平を言っているのを
見るでしょうが

00:11:09.937 --> 00:11:12.015
そういった不平を
リブログして

00:11:12.015 --> 00:11:15.764
解析学は面白くて
美しいんだと言い

00:11:15.764 --> 00:11:19.925
相手が解けないと思った問題は
どう見るべきかを示す人がいます

00:11:19.925 --> 00:11:22.534
Redditのサイトには
「歴史学者に聞く」とか

00:11:22.534 --> 00:11:25.034
「科学質問箱」のような
サブカテゴリがあり

00:11:25.034 --> 00:11:26.207
専門家に

00:11:26.207 --> 00:11:28.357
様々な質問をすることができて

00:11:28.357 --> 00:11:31.998
真剣な質問もあれば
馬鹿げた質問もあります

00:11:31.998 --> 00:11:34.491
しかし学ぶ者にとって

00:11:34.491 --> 00:11:38.026
現在最も興味深いコミュニティが
見られるのはYouTubeです

00:11:38.026 --> 00:11:39.648
異論は認めます

00:11:39.648 --> 00:11:44.213
YouTubeのページというのは
教室を思わせます

00:11:44.357 --> 00:11:46.259
たとえば「ミニット・フィジックス」では

00:11:46.259 --> 00:11:48.629
ある男が物理の世界のことを
教えています

00:11:48.629 --> 00:11:50.014
(ナレーション) 本題に入ろう

00:11:50.014 --> 00:11:54.264
2012年7月4日時点で ヒッグス粒子は
素粒子物理学の標準モデルにおいて

00:11:54.264 --> 00:11:57.060
実験的に確認されていない
最後の基本要素だった

00:11:57.060 --> 00:11:59.860
しかし標準モデルができた
1970年代に未発見だったのなら

00:11:59.860 --> 00:12:01.810
なんでヒッグス粒子は
他のよく知られた

00:12:01.810 --> 00:12:03.943
電子や光子やクォークのような
粒子と並んで

00:12:03.943 --> 00:12:06.348
標準モデルに含められたのかと
疑問に思うかもしれない

00:12:06.348 --> 00:12:08.483
良い質問だね
大きな理由は２つある

00:12:08.483 --> 00:12:11.866
第１に 電子が電場の励起であるのと同様に

00:12:11.866 --> 00:12:14.506
ヒッグス粒子は
どこでも浸透するヒッグス場の

00:12:14.506 --> 00:12:16.866
励起の粒子であるということ

00:12:16.866 --> 00:12:19.337
ヒッグス場は
弱い相互作用のモデルにおいて

00:12:19.337 --> 00:12:21.177
重要な役割を果たす

00:12:21.177 --> 00:12:24.074
特にその弱さの理由を
ヒッグス場が説明してくれる

00:12:24.074 --> 00:12:26.167
この点については
後のビデオでもっと詳しく話そう

00:12:26.167 --> 00:12:28.767
弱い核力の理論は
1980年代に確認されたものの

00:12:28.767 --> 00:12:30.197
方程式においてヒッグス場は

00:12:30.197 --> 00:12:32.372
弱い核力と複雑に絡み合っていて

00:12:32.372 --> 00:12:34.405
それが独立して実在するものであることを

00:12:34.405 --> 00:12:36.455
確認することはできなかった

00:12:36.455 --> 00:12:39.842
(グリーン) 次のビデオは
私が「速修講座」シリーズの１つとして

00:12:39.842 --> 00:12:42.150
第一次世界大戦について
話したものです

00:12:42.150 --> 00:12:45.582
(ナレーション) 戦争の直接の原因は
1914年6月28日にサラエボで

00:12:45.582 --> 00:12:47.960
オーストリアの
フランツ・フェルディナント大公が

00:12:47.960 --> 00:12:52.510
ボスニア系セルビア人の国粋主義者
ガヴリロ・プリンツィプにより暗殺されたことです

00:12:52.510 --> 00:12:54.408
20世紀最初の大きな戦争が

00:12:54.408 --> 00:12:56.998
テロで始まったということに
注意しておきましょう

00:12:56.998 --> 00:13:00.028
フランツ・フェルディナント大公は
伯父である皇帝フランツ・ヨーゼフ１世に

00:13:00.028 --> 00:13:01.758
さほど好かれていたわけではありません

00:13:01.758 --> 00:13:03.350
この髭男ね

00:13:03.350 --> 00:13:07.059
しかしそれでも暗殺によってオーストリアは
セルビアに最後通牒を出すことになり

00:13:07.059 --> 00:13:10.005
セルビアはオーストリアの要求の
一部しか飲まなかったため

00:13:10.005 --> 00:13:13.134
オーストリアがセルビアに
宣戦布告することになりました

00:13:13.134 --> 00:13:16.060
ロシアはセルビアと同盟関係にあったので
軍を動員しました

00:13:16.060 --> 00:13:17.948
オーストリアと同盟関係にあったドイツは

00:13:17.948 --> 00:13:20.108
軍の動員をやめるように
ロシアに求めましたが

00:13:20.108 --> 00:13:23.375
ロシアが従わなかったため
ドイツも軍を動員して

00:13:23.375 --> 00:13:26.574
ロシアに宣戦布告し
オスマン帝国との同盟を固め

00:13:26.574 --> 00:13:30.148
さらにフランスにも宣戦布告しました —
だってフランスだから

00:13:30.148 --> 00:13:33.780
(笑)

00:13:33.780 --> 00:13:36.203
みんながYouTubeで学んでいるのは

00:13:36.203 --> 00:13:39.203
物理や歴史ばかりではありません

00:13:39.203 --> 00:13:41.737
次は数学のビデオです

00:13:43.766 --> 00:13:46.168
(ナレーション) また数学の授業だね

00:13:46.168 --> 00:13:48.322
数学は毎日あるから

00:13:48.322 --> 00:13:51.011
それで何かを学ぶ
無限級数の和とか

00:13:51.011 --> 00:13:52.385
高校で習うよね？

00:13:52.385 --> 00:13:56.485
こんな面白い話を高校でやるのは変な話だけど
連中はどうにか台無しにしてしまうので

00:13:56.485 --> 00:13:59.496
それがカリキュラムに無限級数が入っている
理由だと思う

00:13:59.496 --> 00:14:03.056
分かることながら 気を紛らわそうと
落書きをしつつ

00:14:03.056 --> 00:14:04.609
当の問題について考えるよりは

00:14:04.609 --> 00:14:06.736
series (級数) の複数形って何だろうと
考え始める

00:14:06.736 --> 00:14:09.008
serieses? seriese? 
seriesen? serii?

00:14:09.008 --> 00:14:10.748
それとも単数形を

00:14:10.748 --> 00:14:13.737
serie とか serus とか
serum に変えるべきなのかも

00:14:13.737 --> 00:14:16.088
sheep の単数形が
shoop であるべきなのと同じように

00:14:16.088 --> 00:14:18.545
でも 1/2 + 1/4 + 1/8 + 1/16 + ･･･という和が

00:14:18.545 --> 00:14:21.085
１に近づくというのは有用だ
たとえば —

00:14:21.085 --> 00:14:23.535
それぞれ隣のゾウのしっぽを
鼻で掴んでいる

00:14:23.535 --> 00:14:25.121
ゾウの列を描きたいときなんかには

00:14:25.121 --> 00:14:26.871
大人のゾウ　子ゾウ
赤ちゃんゾウ

00:14:26.871 --> 00:14:28.883
犬サイズのゾウ
子犬サイズのゾウ という具合に

00:14:28.883 --> 00:14:30.713
小さなタスクスさんを越えて
続けていける

00:14:30.713 --> 00:14:32.630
これは少なくとも
微妙にすごいことで

00:14:32.630 --> 00:14:34.913
１本の線の上に
無数のゾウを描きながら

00:14:34.913 --> 00:14:37.723
ノートの１ページ内に
収めることができるんだから

00:14:37.723 --> 00:14:40.316
(グリーン) 最後は
「スマート・エブリデイ」のデスティンで

00:14:40.316 --> 00:14:42.460
角運動量保存について
話していますが

00:14:42.460 --> 00:14:44.290
YouTubeのことなので
ネコを使っています

00:14:44.290 --> 00:14:47.345
(ナレーション) デスティンです
「スマート・エブリデイ」にようこそ

00:14:47.345 --> 00:14:51.183
ネコがいつも脚を下にして着地するのには
気付いていると思う

00:14:51.183 --> 00:14:53.413
今日の疑問は
それはなぜかということ

00:14:53.413 --> 00:14:56.244
多くのシンプルな疑問と同様
答えはすごく込み入っている

00:14:56.244 --> 00:14:58.104
この疑問をきちんと言い換えるなら

00:14:58.104 --> 00:15:01.922
「ネコはいかにして脚を上にした状態から
脚を下にした状態へと

00:15:01.922 --> 00:15:06.992
落下中の基準座標系において 角運動量保存則を
破ることなく 遷移するのか？」

00:15:08.062 --> 00:15:10.991
(グリーン) 紹介した４本のビデオに
共通しているのは

00:15:10.991 --> 00:15:14.630
YouTubeで50万回以上
再生されていることです

00:15:14.630 --> 00:15:17.740
見ている人々は
授業で見ているのではなく

00:15:17.740 --> 00:15:20.045
それぞれのYouTubeチャンネルにできた

00:15:20.045 --> 00:15:23.734
学ぶコミュニティの一員として
見ているのです

00:15:23.734 --> 00:15:26.396
YouTubeは教室のようだと言いましたが

00:15:26.396 --> 00:15:27.736
色々な点でその通りであり

00:15:27.736 --> 00:15:31.247
本当に昔ながらの教室のようです

00:15:31.247 --> 00:15:34.937
先生がいて
その元に生徒がいて

00:15:34.937 --> 00:15:36.794
みんなで対話しています

00:15:36.794 --> 00:15:38.470
YouTubeのコメント欄は

00:15:38.470 --> 00:15:42.258
一般に評判が悪いですが

00:15:42.258 --> 00:15:44.927
これらのチャンネルの
コメント欄を見たなら

00:15:44.927 --> 00:15:48.626
そこにあるのは取り上げられているテーマに
取り組む人々の姿で

00:15:48.626 --> 00:15:51.438
込み入った難しい質問をし

00:15:51.438 --> 00:15:55.542
他の人がその質問に答えています

00:15:55.542 --> 00:15:57.181
YouTubeにおいては

00:15:57.181 --> 00:16:00.763
先生がビデオで説明するのと

00:16:00.772 --> 00:16:03.283
みんながコメントするのは

00:16:03.283 --> 00:16:05.381
同じページの上です

00:16:05.381 --> 00:16:10.960
そうやって生の活発な本物の議論に
参加できるのです

00:16:10.960 --> 00:16:14.838
私も自分のビデオのコメント欄で
議論に参加しています

00:16:14.838 --> 00:16:18.834
このことは歴史であれ
数学であれ科学であれ

00:16:18.834 --> 00:16:20.544
同じです

00:16:20.544 --> 00:16:24.932
そして若い人々がネットにある
このようなツールやジャンルを使って

00:16:24.932 --> 00:16:28.756
知に取り組む場を作り出しています

00:16:28.756 --> 00:16:31.277
インターネットのミームなどに
通常見られる

00:16:31.277 --> 00:16:35.374
皮肉で無関心な態度とは
違っています

00:16:35.374 --> 00:16:38.068
あの「神は退屈して解析学を作った」みたいな

00:16:38.068 --> 00:16:41.741
こちらではハニー・ブー・ブーが
産業資本主義を批判しています

00:16:41.741 --> 00:16:43.801
[自由資本主義は
人類の良き面などではない

00:16:43.801 --> 00:16:46.925
まったく逆で それは残忍で破壊的
なニヒリズムの手段なのだ]

00:16:46.925 --> 00:16:49.594
スライドの字が
見えないかもしれませんけど

00:16:50.717 --> 00:16:52.592
私はこのようなコミュニティが

00:16:52.592 --> 00:16:59.171
新しい世代の学びの場となっていると
信じています

00:16:59.171 --> 00:17:03.808
私が中高時代に持っていて
大学で再び得たような

00:17:03.808 --> 00:17:08.008
地図を作るコミュニティです

00:17:08.425 --> 00:17:11.073
そして大人になってから

00:17:11.073 --> 00:17:14.893
このような学ぶコミュニティに再び出会い

00:17:14.893 --> 00:17:19.983
大人になっても学び続けるようにと
力づけられています

00:17:19.983 --> 00:17:24.019
私はもはや学びが若者だけのものとは
感じません

00:17:24.019 --> 00:17:26.406
ヴァイ・ハートや
「ミニット・フィジックス」は

00:17:26.406 --> 00:17:29.708
以前は知らなかったようなことを
教えてくれました

00:17:29.708 --> 00:17:31.805
みんな啓蒙時代のパリのサロンや

00:17:31.805 --> 00:17:34.805
アルゴンキン・ラウンド・テーブルに

00:17:34.805 --> 00:17:36.386
思いをはせて

00:17:36.386 --> 00:17:37.746
「ああ そんな場にいられたら

00:17:37.746 --> 00:17:42.093
ドロシー・パーカーの冗談に笑うことができたなら
素敵なのに」と思いますが

00:17:42.093 --> 00:17:46.753
そのような場は
今でも存在しているのです

00:17:46.753 --> 00:17:52.216
年寄りが恐れて近づかない
インターネットの片隅にあるのです

00:17:52.243 --> 00:18:01.169
私は本当にそう思っていますが
1960年代にアグローが現実に作られた時

00:18:01.169 --> 00:18:03.209
私たちは歩み始めたのです

00:18:03.209 --> 00:18:04.869
ありがとうございました

00:18:04.869 --> 00:18:08.930
(拍手)