1 00:00:06,842 --> 00:00:09,292 これは何でしょう? 2 00:00:09,292 --> 00:00:16,585 モコモコな靴下?熟れすぎたバナナ? カビの生えた歯磨き粉のチューブ? 3 00:00:16,585 --> 00:00:21,176 実は これは地味なナマコであり 見た目は奇妙かもしれませんが 4 00:00:21,176 --> 00:00:26,913 ナマコの日々の努力が生態系全体の 繁栄をもたらしているのです 5 00:00:26,913 --> 00:00:30,980 ナマコは棘皮動物門に属しています 6 00:00:30,980 --> 00:00:35,597 ウニ ヒトデ その他の放射状に対称的な 「棘皮」を持つ海洋無脊椎動物と 7 00:00:35,597 --> 00:00:38,640 同じ仲間です 8 00:00:38,640 --> 00:00:42,427 羽毛のような触手が 口から生えているナマコもいれば 9 00:00:42,427 --> 00:00:45,147 膨らんだ風船のようになっている ナマコもいます 10 00:00:45,147 --> 00:00:48,477 ヘッドレス・チキンモンスター (ユメナマコ)のようなものもいます 11 00:00:48,477 --> 00:00:52,518 これは珍しい深海生物に 実際に付けられている俗名です 12 00:00:52,518 --> 00:00:56,518 しかし 一般的には 長い円筒形をしているのが特徴です 13 00:00:56,518 --> 00:01:02,255 ナマコは基本的に脳がなく 多肉質の形態が消化管を覆っており 14 00:01:02,255 --> 00:01:05,975 口と肛門で両端を閉じています 15 00:01:05,975 --> 00:01:08,895 体全体にわたって 粘着性の管足があり 16 00:01:08,895 --> 00:01:12,095 海底を闊歩できるように なっています 17 00:01:12,095 --> 00:01:15,680 多くのナマコはなんと 肛門から呼吸していますが 18 00:01:15,680 --> 00:01:20,183 特殊な管足は 餌をとったり呼吸にも使われたりします 19 00:01:20,183 --> 00:01:23,063 筋肉を規則的に収縮させたり 弛緩させたりしながら 20 00:01:23,063 --> 00:01:27,640 呼吸樹という 体内にある肺のような構造で 21 00:01:27,640 --> 00:01:32,102 水を吸ったり吐いたりし 酸素を海水から取り出します 22 00:01:32,102 --> 00:01:34,372 カニやカクレウオのある特定の種は 23 00:01:34,372 --> 00:01:37,132 この規則的な動きを利用して 24 00:01:37,132 --> 00:01:42,361 ナマコの肛門が開くと 中に入って避難します 25 00:01:42,361 --> 00:01:48,648 1匹のナマコの後端に 同時に15匹もの カクレウオがいることもあります 26 00:01:48,648 --> 00:01:51,328 しかし 押し入ってくる彼らの行動に 27 00:01:51,328 --> 00:01:53,948 すべてのナマコが 我慢しているわけではありません 28 00:01:53,948 --> 00:01:57,438 ある種は肛門の周りに 5本の歯を備えており 29 00:01:57,438 --> 00:02:03,239 進化をもって望まざる客に 対抗したと考えられます 30 00:02:03,239 --> 00:02:05,839 しかし 肛門の歯がないナマコにも 31 00:02:05,839 --> 00:02:08,559 身を守るための道具は 装備されています 32 00:02:08,559 --> 00:02:10,809 彼らは脅威を回避し 33 00:02:10,809 --> 00:02:14,920 MCTとも呼ばれる変異性コラーゲン組織で 反撃します 34 00:02:14,920 --> 00:02:19,719 このゲル状の組織には 「原繊維 」と 呼ばれるコラーゲンの束が含まれています 35 00:02:19,719 --> 00:02:23,509 タンパク質の作用によって 原繊維が互いに寄せあうように横ずれし 36 00:02:23,509 --> 00:02:27,409 組織を硬くしたり 離れることで 軟らかくしたりできます 37 00:02:27,409 --> 00:02:30,489 この汎用性の高い組織には 多くの利点があります 38 00:02:30,489 --> 00:02:32,619 効率的な運動に役立ったり 39 00:02:32,619 --> 00:02:35,569 狭い空間にもナマコが 収まることも可能にしたり 40 00:02:35,569 --> 00:02:39,339 分裂することで 無性生殖を可能にします 41 00:02:39,339 --> 00:02:45,276 しかしMCTの最も激しい用法は 捕食者から攻撃を受けた時に行使されます 42 00:02:45,276 --> 00:02:48,036 内部組織の付着物を緩め 43 00:02:48,036 --> 00:02:50,616 素早く筋肉を柔らかくし 収縮させることで 44 00:02:50,616 --> 00:02:55,638 多くのナマコの種は肛門から 様々な臓器を撃ち出すことができます 45 00:02:55,638 --> 00:02:57,938 この行為は「内臓放出」と呼ばれ 46 00:02:57,938 --> 00:03:01,058 意外にも有効な防御機構となっています 47 00:03:01,058 --> 00:03:03,988 捕食者を驚かせて 気をそらすだけでなく 48 00:03:03,988 --> 00:03:08,229 一部のナマコの種の内臓には 粘着性と毒性があります 49 00:03:08,229 --> 00:03:10,809 内蔵放出は思い切ったことにも みえますが 50 00:03:10,809 --> 00:03:16,729 数週間後には ナマコは失った腸を 再生することができます 51 00:03:16,729 --> 00:03:19,889 泳ぐように進化した少数の種や 52 00:03:19,889 --> 00:03:21,719 動かずに餌を食べる種は別として 53 00:03:21,719 --> 00:03:26,132 この重くて扱いにくい生き物の多くは 海草を食べながら生活しています 54 00:03:26,132 --> 00:03:29,422 ナマコは 浅い海岸から 55 00:03:29,422 --> 00:03:33,222 水深6000メートルの深海溝まで あらゆるところに生息しています 56 00:03:33,222 --> 00:03:37,753 深海底では ナマコが 動物バイオマスの大部分を占め 57 00:03:37,753 --> 00:03:41,569 一部の地域では95%に達しています 58 00:03:41,569 --> 00:03:46,154 ソーセージ形をしたこの不思議な生き物は 歩くにつれて 砂を吸い上げ 59 00:03:46,154 --> 00:03:50,456 それに含まれる有機物を消化し 副産物を排泄します 60 00:03:50,456 --> 00:03:54,763 この過程でナマコは 砕屑物を分解し 養分を再利用することで 61 00:03:54,763 --> 00:03:58,043 海底をきれいにし 酸化します 62 00:03:58,043 --> 00:04:02,790 これによって海草藻場と 貝類が繁栄する環境を作ります 63 00:04:02,790 --> 00:04:06,790 ナマコの排泄物は サンゴの形成にも役立ち 64 00:04:06,790 --> 00:04:11,585 海洋環境の酸性化を防ぐ緩衝材としての 役割を果たしている可能性があります 65 00:04:11,585 --> 00:04:15,365 海の掃除機として ナマコは 大変すばらしい仕事をしています 66 00:04:15,365 --> 00:04:17,295 砂地で出来た海底の約半分が 67 00:04:17,295 --> 00:04:21,460 ナマコの消化管を通過したと 考えられています 68 00:04:21,460 --> 00:04:24,653 次の機会に足の指の間に 砂が挟まった感触を楽しむ際には 69 00:04:24,653 --> 00:04:27,940 こんな風に想像してみましょう 70 00:04:27,940 --> 00:04:32,118 これらの砂は ある時に お尻で息をするいたずらっ子のナマコが 71 00:04:32,118 --> 00:04:35,778 排泄したものかもしれないと