WEBVTT 00:00:08.260 --> 00:00:12.882 マーベル世界での生活は 完全なる悪夢だろう 00:00:13.007 --> 00:00:15.840 この地球の平均的な人にとって 00:00:15.940 --> 00:00:17.681 "これは悪夢だ" 00:00:19.201 --> 00:00:20.883 "悪夢よりひどい" 00:00:20.994 --> 00:00:28.044 人類絶滅級の危機が 隔週で起こるからだけではない 00:00:28.279 --> 00:00:34.591 この世界では進歩がとても少ないからだ 00:00:35.187 --> 00:00:40.011 ヒーローは世界を災害から守るが 00:00:40.124 --> 00:00:44.601 その力をよりよい世界を 作るためには使わないのだ 00:00:44.729 --> 00:00:47.302 彼らはほとんどの時間を 00:00:47.402 --> 00:00:50.903 現状を維持するために使う 00:00:53.213 --> 00:00:57.554 "世界を守ろうとし 変えようとしない" 00:00:57.772 --> 00:01:02.174 一方悪役は常に大きな目標を掲げ 00:01:02.300 --> 00:01:07.842 制度を確立しようとしたり 世界を変えようとしたりする 00:01:09.535 --> 00:01:11.622 2つ強調したい 00:01:11.732 --> 00:01:16.583 1 この動画はマーベル映画を 非難するものではない 00:01:16.715 --> 00:01:19.992 それは面白く 楽しめるものだ 00:01:20.117 --> 00:01:25.677 最新のものは表現として 素晴らしい歩みを見せている 00:01:26.187 --> 00:01:32.889 2 またすべての悪者が実際には正しい と主張するものでもない 00:01:33.008 --> 00:01:37.520 政治的に正当な批判をする場合もあるが 00:01:37.186 --> 00:01:39.166 "先祖はどこでこれを?" 00:01:39.276 --> 00:01:40.701 "金を払った?" 00:01:40.811 --> 00:01:43.535 "あるいはすべて奪ったか" 00:01:43.906 --> 00:01:48.524 大抵の悪役は冷酷かつ残忍で 00:01:48.637 --> 00:01:51.819 大量虐殺をすることもある 00:01:52.096 --> 00:01:53.997 今回見ていくのは 00:01:54.136 --> 00:02:00.869 スーパーヒーローの公式に埋め込まれた 概念上の暗示である 00:02:01.012 --> 00:02:03.862 "君らはヒーローと見られている" 00:02:03.982 --> 00:02:08.367 "自警団と呼ぶ人もいる" 00:02:08.951 --> 00:02:16.010 この動画の発想源の一つは 人類学者のグレーバーが書いたエッセイで 00:02:16.132 --> 00:02:21.270 官僚制のユートピアという本に詳細がある 00:02:21.387 --> 00:02:27.382 ヒーロー物語の政治学に関する元の記事は 2012年に書かれ 00:02:27.504 --> 00:02:31.144 ダークナイト・ライジングに反応したものだった 00:02:31.414 --> 00:02:36.162 しかし今やマーベルがハリウッドの 文化的中心となっているので 00:02:36.295 --> 00:02:43.058 グレーバーの理論をマーベル映画に 適用したら面白いだろうと私は思った 00:02:43.195 --> 00:02:44.924 グレーバーは言う 00:02:45.044 --> 00:02:54.108 "ヒーローは純粋に反応的である 文字通りの意味で彼らは単に物事に反応しているだけで 彼ら自身の計画は持っていない" 00:02:54.212 --> 00:02:59.863 "よりハイテクな武器をデザインしたり ときたま慈善活動にふける以外は" 00:02:59.994 --> 00:03:13.390 "実際 スーパーヒーローはほとんど全く 想像力を欠いているように見える 悪役は 対照的に どこまでもクリエイティブだ 彼らはプラン プロジェクト アイディアに満ちている" 00:03:13.809 --> 00:03:20.480 グレーバーがいい人について 話していることに注意することが重要だ 00:03:20.739 --> 00:03:26.222 ブルース・バナーやマット・マードックが 彼らの個人的目標を追いかけている時 00:03:26.346 --> 00:03:27.921 "どうやった?" 00:03:28.381 --> 00:03:29.687 "弁護士なので" 00:03:29.807 --> 00:03:39.448 スーパーヒーローが社会を進歩させるような 政治的目標に関わるのを見るのはとても珍しい 00:03:39.575 --> 00:03:48.134 トニー・スタークなどのわずかなヒーローだけが 新技術の開発などに関わっている 00:03:48.267 --> 00:03:53.751 だが彼が開発するのはハイテクな武器であり 00:03:53.869 --> 00:03:59.151 その武器は自警団活動のために使う 00:04:00.739 --> 00:04:07.739 悪を止めるのも必要ではあるが それはいいものを作るのとは違う 00:04:07.948 --> 00:04:11.811 現代政治でその2つは混同されがちだが 00:04:14.630 --> 00:04:17.740 "そう 私たちは現状維持団" 00:04:17.860 --> 00:04:19.306 "僕はグルート" 00:04:19.416 --> 00:04:24.152 社会を革新的に変えていこうというより 00:04:24.272 --> 00:04:27.118 スーパーヒーローはただ反応する 00:04:27.531 --> 00:04:30.206 現状に対する脅威に 00:04:30.836 --> 00:04:33.858 「エイジ・オブ・ウルトロン」で トニーとブルースは計画する 00:04:33.985 --> 00:04:37.375 AI技術で平和をもたらそうと 00:04:37.502 --> 00:04:38.378 "平和をもたらす" 00:04:38.478 --> 00:04:41.069 それは傲慢に見え 00:04:41.199 --> 00:04:43.979 人類にとって脅威でもある 00:04:44.096 --> 00:04:46.875 "平和を願うなら 解放しろ" 00:04:46.985 --> 00:04:49.960 "平和と静寂を混同してるな" 00:04:50.060 --> 00:04:55.097 そして世界を変えるのは間違いだと学ぶ 00:04:55.236 --> 00:04:59.976 あとはただ外部の脅威が来るのを待ち 00:05:00.096 --> 00:05:03.839 それが起きた場合のみ 行動に出る 00:05:06.269 --> 00:05:13.359 この点はマーベルの29の映画と 20のテレビドラマで確認できる 00:05:13.478 --> 00:05:18.314 しかし見方によっては その数はもっと多くなる 00:05:18.432 --> 00:05:22.589 キャラもストーリーもたくさんある 00:05:22.685 --> 00:05:28.565 だがここではスーパーヒーローの 包括的なパターンについて見ていこう 00:05:29.175 --> 00:05:30.798 グレーバーは指摘する 00:05:30.908 --> 00:05:43.578 "基本構成は次のような形を取る: 悪人が世界征服 破壊 盗み 強奪 復讐などの計画を始める ヒーローは危険を察知し 何が起きているかを理解する" 00:05:43.732 --> 00:05:56.665 "試行と困難ののち ヒーローは悪の計画を阻止する 世界はもう一度全く同じことが起こる次の回まで 通常に戻される" 00:05:56.780 --> 00:06:02.709 このループするストーリーの構造が マーベルスタジオの作品に貫徹している 00:06:02.828 --> 00:06:07.800 "ヒーローものにはある種の約束事がある" 00:06:08.318 --> 00:06:13.546 現状へと世界をリセットするというパターンは 00:06:13.675 --> 00:06:19.251 スーパーヒーロージャンルでは昔からあった 00:06:19.529 --> 00:06:25.966 しかしそれはマーベルのメタ的な原理でもある 00:06:26.852 --> 00:06:29.176 「エンドゲーム」では 00:06:29.306 --> 00:06:35.630 アベンジャーズは量子タイムマシーンを作り 世界を元に戻すために使う 00:06:35.231 --> 00:06:39.302 しかし死んだ人たちを生き返らせたあとは 00:06:39.402 --> 00:06:44.073 その驚くべき技術やインフィニティ・ストーンを 00:06:44.192 --> 00:06:49.432 地球に蔓延る他の問題のためには使わなかった 00:06:49.911 --> 00:06:54.871 実際 この架空の世界のルールでは そうすることは禁止されている 00:06:54.992 --> 00:06:58.934 "我らの世界は制圧され 何百万人が苦しむ" 00:07:00.057 --> 00:07:06.753 同じように ストレンジはタイム・ストーンを ダーク世界の侵略をなしにするために使った 00:07:06.873 --> 00:07:10.093 世界を通常に戻すために 00:07:11.193 --> 00:07:18.602 それでも世界を現状から変えることは 明確に禁じられていた 00:07:20.285 --> 00:07:24.396 "自然法則を変えるな 守れ" 00:07:24.876 --> 00:07:33.790 実際 スーパーヒーローが世界を操作し 根底から変えようとすると 00:07:33.912 --> 00:07:38.915 自身が悪になってしまうリスクがある 00:07:39.839 --> 00:07:44.688 ここで現状とは何かを定義するといいだろう 00:07:44.809 --> 00:07:53.844 社会学的には 現状とは私たちが住む 現在の政治的経済的構造のことだ 00:07:53.956 --> 00:07:57.970 今の社会で この構造に含まれるのは 00:07:58.070 --> 00:08:00.663 軍事化した国家 00:08:00.770 --> 00:08:03.067 新自由主義政府 00:08:03.167 --> 00:08:05.365 民営企業 00:08:05.455 --> 00:08:08.963 ある種の資本主義だろう 00:08:09.883 --> 00:08:15.271 スーパーヒーローの責任が 現状を維持することだという事実は 00:08:15.394 --> 00:08:23.260 もし世界がパラダイスであった時は あまり問題にならないだろう 00:08:23.236 --> 00:08:26.868 しかしご存知の通り そうではない 00:08:26.978 --> 00:08:32.608 世界には不正 搾取 抑圧が蔓延っている 00:08:33.639 --> 00:08:36.537 環境破壊は言うまでもない 00:08:36.647 --> 00:08:41.180 "気候変動が広がっています…" 00:08:41.289 --> 00:08:47.928 この現実は悪役並に怖くないだろうか 00:08:48.518 --> 00:08:52.069 マーベル映画はもちろんフィクションだ 00:08:52.189 --> 00:08:58.290 だが現実世界の鏡としてもデザインされていて 私たちと同じ問題を抱えている 00:08:58.417 --> 00:09:03.582 超能力者やエイリアンや魔法使いがいる以外は 00:09:03.688 --> 00:09:06.058 "アンドロイドにエイリアン" 00:09:06.168 --> 00:09:06.817 "問題ない" 00:09:06.917 --> 00:09:07.884 "完全に問題だ" 00:09:07.994 --> 00:09:09.117 "いや違う" 00:09:09.437 --> 00:09:17.197 それらの超能力者が力を よい世界を 作るために使ったらと想像してほしい 00:09:17.318 --> 00:09:22.073 それは現在のシステムを終わらせ 搾取や不平等を消し去るだろう 00:09:22.190 --> 00:09:27.443 環境破壊を止められるかもしれない 00:09:27.579 --> 00:09:33.015 富裕層の富を再分配するかもしれない 00:09:33.133 --> 00:09:36.989 だがヒーローはそのどれもしない 00:09:37.101 --> 00:09:42.628 代わりに ランダムに慈善をするだけだ 00:09:42.864 --> 00:09:47.656 億万長者は自分のための新技術を作る 00:09:47.770 --> 00:09:52.156 "スターク・タワーを自立式の灯台に" 00:09:52.252 --> 00:09:57.261 戦士は腐敗政治家にいいことをしろと言う 00:09:57.382 --> 00:09:59.728 "いいことをしろよ議員" 00:09:59.851 --> 00:10:05.484 一番良くて 裕福な君主が 国際コミュニティセンターを建てる 00:10:05.586 --> 00:10:09.337 "ワカンダの最初の国際的センターになる" 00:10:09.453 --> 00:10:14.277 その絆創膏的なやり方は 少しの人々を助けるかもしれないが 00:10:14.376 --> 00:10:21.253 それはまた現在の政治的構造を 持続させるようデザインされてもいる 00:10:21.750 --> 00:10:25.496 不都合な真実は その慈善活動自体が 00:10:25.612 --> 00:10:32.287 彼らに有利な権力構造を強化していることだ 00:10:32.417 --> 00:10:37.311 その観点から見るとヒーローがそのすごい力を 00:10:37.433 --> 00:10:41.943 世界を変えるために使わないというのは 00:10:42.059 --> 00:10:45.837 完全なるディストピアに感じられてくる 00:10:49.167 --> 00:10:50.087 "入って" 00:10:50.187 --> 00:10:56.357 そして奇妙なことに体制への 批判の声を上げるのはいつも悪人だ 00:10:56.459 --> 00:11:00.803 "上にいる金持ちどもは好き放題だ" 00:11:00.907 --> 00:11:02.420 "俺らは?" 00:11:02.520 --> 00:11:07.470 "道路を作り 戦争を戦うが 奴らは俺らを無視だ" 00:11:07.590 --> 00:11:10.579 "そのテーブルを取り戻す" 00:11:10.698 --> 00:11:15.927 マーベルに登場する悪役たちを見ていくと 00:11:16.047 --> 00:11:22.948 彼らが何かしら現状を破壊しようと していることにすぐ気づく 00:11:23.145 --> 00:11:26.448 構造的変化を求め 00:11:26.590 --> 00:11:30.403 権威的変化を狙っている 00:11:30.527 --> 00:11:37.214 世界の仕組みを根底から変えよう としているのは彼らだけなのだ 00:11:37.326 --> 00:11:39.829 "これは世界を変える" 00:11:39.939 --> 00:11:41.930 "この技術は世界を変える" 00:11:42.030 --> 00:11:44.728 "世界を変えようとしてる" 00:11:44.838 --> 00:11:48.507 悪役たちの動機は復讐から 00:11:48.606 --> 00:11:53.188 社会的不正義の是正 ただの強欲まで幅広い 00:11:53.288 --> 00:11:59.358 ただここで見るべきなのは その悪役たちの計画の規模が 00:11:59.486 --> 00:12:04.526 その悪役たちの持つ力次第で変わることだ 00:12:05.246 --> 00:12:09.664 低いレベルの悪役は 一つの機関内での改革を求める 00:12:09.784 --> 00:12:13.380 軍事企業とか 00:12:13.617 --> 00:12:19.810 あるいは世界で最も大きな企業と その金持ちなCEOを潰そうとする 00:12:20.177 --> 00:12:24.586 より野心的な悪役は 街全体を作り変えようとする 00:12:24.703 --> 00:12:27.445 "俺は街を作る" 00:12:27.686 --> 00:12:30.267 "今よりいい街を" 00:12:30.387 --> 00:12:32.369 あるいは世界全体 00:12:32.489 --> 00:12:35.039 あるいは宇宙全体を 00:12:35.949 --> 00:12:41.130 一般的に より強い悪役は より大きな変化を求めている 00:12:41.250 --> 00:12:45.814 "これこそ私の夢だ" 00:12:46.540 --> 00:12:51.048 現在の世界秩序を取り壊すという目標は 00:12:51.173 --> 00:12:56.789 最初は説得力があるように観客には見える 00:12:56.906 --> 00:12:59.835 "よりよい世界を作るには" 00:12:59.955 --> 00:13:03.735 "古いものを壊さなければ" 00:13:04.985 --> 00:13:09.947 ロシアの無政府主義者バクーニンは 1842年にこう書いた 00:13:10.072 --> 00:13:15.033 "破壊への情熱は 創造的情熱でもある" 00:13:15.283 --> 00:13:18.862 不正な秩序を破壊する衝動は 00:13:18.977 --> 00:13:25.536 現状に代わる世界への想像力を 必要とするということだ 00:13:27.659 --> 00:13:32.610 観客はこの社会正義的悪に惹かれる 00:13:32.730 --> 00:13:35.136 "タイタンは普通の星だった" 00:13:35.246 --> 00:13:37.821 "多くの人がいた" 00:13:37.940 --> 00:13:42.816 これらの敵は終わらせたいと語る 00:13:42.932 --> 00:13:48.140 社会問題 不正義 非合法な権力を 00:13:49.875 --> 00:13:54.071 マーベルでは神が文字通り歩み寄ってくる 00:13:54.170 --> 00:13:57.951 そして絶大な力を振るう 00:13:58.053 --> 00:14:01.146 "神のために苦しめ" 00:14:01.266 --> 00:14:06.756 しかし同時に残酷であるか 人々の苦しみに無関心でもある 00:14:06.873 --> 00:14:08.425 "勝者を発表する" 00:14:08.551 --> 00:14:13.924 "神の名の下に最も人間の魂を集めた者を" 00:14:14.034 --> 00:14:15.383 "悪い奴だ" 00:14:15.483 --> 00:14:16.896 "とんでもなくね" 00:14:16.990 --> 00:14:19.177 このような暴政が 00:14:19.277 --> 00:14:24.807 ゴア・ザ・ゴッド・ブッチャーが 「ソー:ラブ&サンダー」で倒そうとしたものだ 00:14:24.927 --> 00:14:28.554 "神々が気にかけるのは" 00:14:29.484 --> 00:14:31.532 "神々だけだ" 00:14:32.162 --> 00:14:39.020 「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」で フラッグ・スマッシャーズは難民を支援し 00:14:39.128 --> 00:14:45.341 国境の封鎖を妨害し 人々の国外追放をやめさせようとした 00:14:45.449 --> 00:14:49.341 "ただ生きるためだけに どれだけ犠牲を払えばいい?" 00:14:51.043 --> 00:14:55.931 「ブラックパンサー」ではキルモンガーは ワカンダの持つテクノロジーを 00:14:56.041 --> 00:15:00.567 アフリカの人々を弾圧から 自由にするために使おうとした 00:15:00.673 --> 00:15:02.738 "黒人の革命は長らく" 00:15:02.848 --> 00:15:07.189 "火力も資源も持っていなかった" 00:15:07.287 --> 00:15:08.791 "それも今日で終わる" 00:15:08.891 --> 00:15:14.391 視聴者は 悪役の独白に納得しかけている 自分に気づくかもしれない 00:15:14.515 --> 00:15:20.928 しかしそれが確信に変わるより先に 彼らは突然大量殺人を始めてしまう 00:15:23.357 --> 00:15:25.725 彼らにとっても意味がないのに 00:15:25.845 --> 00:15:27.699 "中に人が" 00:15:27.939 --> 00:15:30.094 "こうしないと通じない" 00:15:30.214 --> 00:15:37.072 悪役はいつも無差別殺人を始めるが それは作者が勝手に作ったものだ 00:15:38.222 --> 00:15:42.865 "アベンジャーズを殺せば世界は良くなるって" 00:15:42.974 --> 00:15:44.630 "良くなるさ" 00:15:44.746 --> 00:15:45.772 "みんなが死んでも?" 00:15:45.886 --> 00:15:46.983 "これは…!" 00:15:47.103 --> 00:15:55.387 これは観客が 悪役の思想や革命に 共感しないようにデザインされたものだ 00:15:55.754 --> 00:16:01.191 "彼らは私たちを苦しめ 犯罪者の烙印を押す" 00:16:02.460 --> 00:16:07.277 "でもその苦しみが私たちを一つにする" 00:16:08.118 --> 00:16:11.770 "一つの世界に 一つの人々" 00:16:11.877 --> 00:16:19.222 このパターンから浮かび上がるメッセージは しかしながら有害とならざるをえない 00:16:19.346 --> 00:16:24.323 社会を根底から変えようとする活動は 00:16:24.441 --> 00:16:30.125 危険なだけでなく 悪でもあるのだと 00:16:31.155 --> 00:16:35.487 社会的平等を目指す側が悪であることが 00:16:35.620 --> 00:16:43.709 スーパーヒーローものが保守的であると 批判されることがある理由の一つである 00:16:43.812 --> 00:16:49.731 "進化なしでどうやって人類が救える?" 00:16:54.080 --> 00:16:56.318 グレーバーは書く 00:16:56.437 --> 00:17:08.627 "彼らは法的政治的秩序の守護者に留まる それが欠陥があり劣化していても守るべきだと なぜなら他の体制はより悪いものだからだ 00:17:08.747 --> 00:17:13.968 "一つの集団にとっていいものは 他の集団にとっては悪いものだ" 00:17:14.092 --> 00:17:20.638 マーベルのイデオロギーによれば 現状こそベストだということだ 00:17:20.764 --> 00:17:22.625 完璧ではないが 00:17:22.735 --> 00:17:28.035 変えようとするのは大惨事になるだけだ 00:17:30.326 --> 00:17:35.853 漫画家のアラン・ムーアはこう批評する 00:17:35.973 --> 00:17:43.379 "現実を無視し 単純化し 安易な解決策に流れている" 00:17:43.509 --> 00:17:44.915 彼は正しい 00:17:45.035 --> 00:17:48.162 私たちの社会が抱える問題は 00:17:48.282 --> 00:17:54.155 悪い個人の顔をパンチすることでは 解決できないものだ 00:17:55.303 --> 00:17:58.726 ファンタジーのようにはいかない 00:17:58.842 --> 00:18:06.567 ここで少し 現実の世界で起きた 社会変革についての話をしよう 00:18:06.899 --> 00:18:10.493 "私たちはこの現状に挑戦する…" 00:18:11.293 --> 00:18:17.359 社会変革は人々が積極的に団結し 大きな運動を起こした時に起こる 00:18:17.489 --> 00:18:20.604 その時 現状が動く 00:18:20.724 --> 00:18:25.379 "次に進むまでは戦い続けるしかない" 00:18:25.954 --> 00:18:29.346 運動が圧力を高めていく 00:18:29.461 --> 00:18:35.866 権力者側が大衆の要求に 応えるしかないと感じるまで 00:18:35.992 --> 00:18:41.672 これが社会変革の中で起きてきたことだ 00:18:42.202 --> 00:18:44.781 フレデリック・ダグラスは言った 00:18:44.891 --> 00:18:48.939 "要求がなければ権力は何も認めない" 00:18:49.389 --> 00:18:53.559 これがマーベル世界の問題だ 00:18:53.696 --> 00:18:56.720 大衆の声がない 00:18:59.390 --> 00:19:03.212 いるのは無実の被害者 騒ぐモブ 00:19:03.348 --> 00:19:08.270 そしてもちろん 神のような超人だけだ 00:19:08.380 --> 00:19:15.976 大衆がいなければ グレーバーの言う 憲法的な権力も存在しないのだ 00:19:16.122 --> 00:19:20.280 この状況では力を持つ小さな集団 00:19:20.392 --> 00:19:26.463 選ばれていないスーパーマンまたは スーパーウーマンがすべてのカードを持つ 00:19:26.602 --> 00:19:28.360 "写真撮っていいですか?" 00:19:28.470 --> 00:19:29.154 "いいよ" 00:19:29.264 --> 00:19:35.644 マーベルの世界で市民に残された役割は ヒーローたちを崇拝することだけである 00:19:35.764 --> 00:19:37.555 "あなたの大ファンです" 00:19:40.504 --> 00:19:46.322 大衆は力を削がれ ただのオタクになる 00:19:48.173 --> 00:19:53.093 そこには地球が持続可能となるために必要な 00:19:53.198 --> 00:19:58.772 根本的社会変革が起こる可能性がない 00:19:58.871 --> 00:20:01.321 "宇宙じゃ食べ物は無料よ" 00:20:01.421 --> 00:20:03.778 "金を払うなんて変" 00:20:04.078 --> 00:20:07.304 私はアベンジャーズが悪いとは言っていない 00:20:07.434 --> 00:20:12.439 悪い奴は止めてほしいし 大惨事は防いでほしい 00:20:12.884 --> 00:20:19.684 それはその世界では正しいことだ 00:20:21.958 --> 00:20:23.229 私が言いたいのは 00:20:23.337 --> 00:20:28.537 マーベル帝国で繰り返される物語の形式が 00:20:28.656 --> 00:20:31.503 私たちの世界観を狭める可能性だ 00:20:31.613 --> 00:20:33.434 "私は世界を平和にした" 00:20:33.544 --> 00:20:36.161 そうかもしれない 00:20:36.591 --> 00:20:44.423 あなたがメディアを牛耳っているような 上流階級の人なら面白くない話だろう 00:20:44.545 --> 00:20:50.805 そのような人にとっては現状維持こそが おそらく最も心地よいことだからだ 00:20:51.776 --> 00:20:54.718 しかしそれ以外の人は 映画館に行って 00:20:54.826 --> 00:21:02.710 別の世界に飛ばされてなお 世界を変えようと考えているならば 00:21:02.831 --> 00:21:06.921 自動的に悪役になるだろう