1 00:00:08,260 --> 00:00:12,882 マーベル世界での生活は 完全なる悪夢だろう 2 00:00:13,007 --> 00:00:15,840 この地球の平均的な人にとって 3 00:00:15,940 --> 00:00:17,681 "これは悪夢だ" 4 00:00:19,201 --> 00:00:20,883 "悪夢よりひどい" 5 00:00:20,994 --> 00:00:28,044 人類絶滅級の危機が 隔週で起こるからだけではない 6 00:00:28,279 --> 00:00:34,591 この世界では進歩がとても少ないからだ 7 00:00:35,187 --> 00:00:40,011 ヒーローは世界を災害から守るが 8 00:00:40,124 --> 00:00:44,601 その力をよりよい世界を 作るためには使わないのだ 9 00:00:44,729 --> 00:00:47,302 彼らはほとんどの時間を 10 00:00:47,402 --> 00:00:50,903 現状を維持するために使う 11 00:00:53,213 --> 00:00:57,554 "世界を守ろうとし 変えようとしない" 12 00:00:57,772 --> 00:01:02,174 一方悪役は常に大きな目標を掲げ 13 00:01:02,300 --> 00:01:07,842 制度を確立しようとしたり 世界を変えようとしたりする 14 00:01:09,535 --> 00:01:11,622 2つ強調したい 15 00:01:11,732 --> 00:01:16,583 1 この動画はマーベル映画を 非難するものではない 16 00:01:16,715 --> 00:01:19,992 それは面白く 楽しめるものだ 17 00:01:20,117 --> 00:01:25,677 最新のものは表現として 素晴らしい歩みを見せている 18 00:01:26,187 --> 00:01:32,889 2 またすべての悪者が実際には正しい と主張するものでもない 19 00:01:33,008 --> 00:01:37,520 政治的に正当な批判をする場合もあるが 20 00:01:37,186 --> 00:01:39,166 "先祖はどこでこれを?" 21 00:01:39,276 --> 00:01:40,701 "金を払った?" 22 00:01:40,811 --> 00:01:43,535 "あるいはすべて奪ったか" 23 00:01:43,906 --> 00:01:48,524 大抵の悪役は冷酷かつ残忍で 24 00:01:48,637 --> 00:01:51,819 大量虐殺をすることもある 25 00:01:52,096 --> 00:01:53,997 今回見ていくのは 26 00:01:54,136 --> 00:02:00,869 スーパーヒーローの公式に埋め込まれた 概念上の暗示である 27 00:02:01,012 --> 00:02:03,862 "君らはヒーローと見られている" 28 00:02:03,982 --> 00:02:08,367 "自警団と呼ぶ人もいる" 29 00:02:08,951 --> 00:02:16,010 この動画の発想源の一つは 人類学者のグレーバーが書いたエッセイで 30 00:02:16,132 --> 00:02:21,270 官僚制のユートピアという本に詳細がある 31 00:02:21,387 --> 00:02:27,382 ヒーロー物語の政治学に関する元の記事は 2012年に書かれ 32 00:02:27,504 --> 00:02:31,144 ダークナイト・ライジングに反応したものだった 33 00:02:31,414 --> 00:02:36,162 しかし今やマーベルがハリウッドの 文化的中心となっているので 34 00:02:36,295 --> 00:02:43,058 グレーバーの理論をマーベル映画に 適用したら面白いだろうと私は思った 35 00:02:43,195 --> 00:02:44,924 グレーバーは言う 36 00:02:45,044 --> 00:02:54,108 "ヒーローは純粋に反応的である 文字通りの意味で彼らは単に物事に反応しているだけで 彼ら自身の計画は持っていない" 37 00:02:54,212 --> 00:02:59,863 "よりハイテクな武器をデザインしたり ときたま慈善活動にふける以外は" 38 00:02:59,994 --> 00:03:13,390 "実際 スーパーヒーローはほとんど全く 想像力を欠いているように見える 悪役は 対照的に どこまでもクリエイティブだ 彼らはプラン プロジェクト アイディアに満ちている" 39 00:03:13,809 --> 00:03:20,480 グレーバーがいい人について 話していることに注意することが重要だ 40 00:03:20,739 --> 00:03:26,222 ブルース・バナーやマット・マードックが 彼らの個人的目標を追いかけている時 41 00:03:26,346 --> 00:03:27,921 "どうやった?" 42 00:03:28,381 --> 00:03:29,687 "弁護士なので" 43 00:03:29,807 --> 00:03:39,448 スーパーヒーローが社会を進歩させるような 政治的目標に関わるのを見るのはとても珍しい 44 00:03:39,575 --> 00:03:48,134 トニー・スタークなどのわずかなヒーローだけが 新技術の開発などに関わっている 45 00:03:48,267 --> 00:03:53,751 だが彼が開発するのはハイテクな武器であり 46 00:03:53,869 --> 00:03:59,151 その武器は自警団活動のために使う 47 00:04:00,739 --> 00:04:07,739 悪を止めるのも必要ではあるが それはいいものを作るのとは違う 48 00:04:07,948 --> 00:04:11,811 現代政治でその2つは混同されがちだが 49 00:04:14,630 --> 00:04:17,740 "そう 私たちは現状維持団" 50 00:04:17,860 --> 00:04:19,306 "僕はグルート" 51 00:04:19,416 --> 00:04:24,152 社会を革新的に変えていこうというより 52 00:04:24,272 --> 00:04:27,118 スーパーヒーローはただ反応する 53 00:04:27,531 --> 00:04:30,206 現状に対する脅威に 54 00:04:30,836 --> 00:04:33,858 「エイジ・オブ・ウルトロン」で トニーとブルースは計画する 55 00:04:33,985 --> 00:04:37,375 AI技術で平和をもたらそうと 56 00:04:37,502 --> 00:04:38,378 "平和をもたらす" 57 00:04:38,478 --> 00:04:41,069 それは傲慢に見え 58 00:04:41,199 --> 00:04:43,979 人類にとって脅威でもある 59 00:04:44,096 --> 00:04:46,875 "平和を願うなら 解放しろ" 60 00:04:46,985 --> 00:04:49,960 "平和と静寂を混同してるな" 61 00:04:50,060 --> 00:04:55,097 そして世界を変えるのは間違いだと学ぶ 62 00:04:55,236 --> 00:04:59,976 あとはただ外部の脅威が来るのを待ち 63 00:05:00,096 --> 00:05:03,839 それが起きた場合のみ 行動に出る 64 00:05:06,269 --> 00:05:13,359 この点はマーベルの29の映画と 20のテレビドラマで確認できる 65 00:05:13,478 --> 00:05:18,314 しかし見方によっては その数はもっと多くなる 66 00:05:18,432 --> 00:05:22,589 キャラもストーリーもたくさんある 67 00:05:22,685 --> 00:05:28,565 だがここではスーパーヒーローの 包括的なパターンについて見ていこう 68 00:05:29,175 --> 00:05:30,798 グレーバーは指摘する 69 00:05:30,908 --> 00:05:43,578 "基本構成は次のような形を取る: 悪人が世界征服 破壊 盗み 強奪 復讐などの計画を始める ヒーローは危険を察知し 何が起きているかを理解する" 70 00:05:43,732 --> 00:05:56,665 "試行と困難ののち ヒーローは悪の計画を阻止する 世界はもう一度全く同じことが起こる次の回まで 通常に戻される" 71 00:05:56,780 --> 00:06:02,709 このループするストーリーの構造が マーベルスタジオの作品に貫徹している 72 00:06:02,828 --> 00:06:07,800 "ヒーローものにはある種の約束事がある" 73 00:06:08,318 --> 00:06:13,546 現状へと世界をリセットするというパターンは 74 00:06:13,675 --> 00:06:19,251 スーパーヒーロージャンルでは昔からあった 75 00:06:19,529 --> 00:06:25,966 しかしそれはマーベルのメタ的な原理でもある 76 00:06:26,852 --> 00:06:29,176 「エンドゲーム」では 77 00:06:29,306 --> 00:06:35,630 アベンジャーズは量子タイムマシーンを作り 世界を元に戻すために使う 78 00:06:35,231 --> 00:06:39,302 しかし死んだ人たちを生き返らせたあとは 79 00:06:39,402 --> 00:06:44,073 その驚くべき技術やインフィニティ・ストーンを 80 00:06:44,192 --> 00:06:49,432 地球に蔓延る他の問題のためには使わなかった 81 00:06:49,911 --> 00:06:54,871 実際 この架空の世界のルールでは そうすることは禁止されている 82 00:06:54,992 --> 00:06:58,934 "我らの世界は制圧され 何百万人が苦しむ" 83 00:07:00,057 --> 00:07:06,753 同じように ストレンジはタイム・ストーンを ダーク世界の侵略をなしにするために使った 84 00:07:06,873 --> 00:07:10,093 世界を通常に戻すために 85 00:07:11,193 --> 00:07:18,602 それでも世界を現状から変えることは 明確に禁じられていた 86 00:07:20,285 --> 00:07:24,396 "自然法則を変えるな 守れ" 87 00:07:24,876 --> 00:07:33,790 実際 スーパーヒーローが世界を操作し 根底から変えようとすると 88 00:07:33,912 --> 00:07:38,915 自身が悪になってしまうリスクがある 89 00:07:39,839 --> 00:07:44,688 ここで現状とは何かを定義するといいだろう 90 00:07:44,809 --> 00:07:53,844 社会学的には 現状とは私たちが住む 現在の政治的経済的構造のことだ 91 00:07:53,956 --> 00:07:57,970 今の社会で この構造に含まれるのは 92 00:07:58,070 --> 00:08:00,663 軍事化した国家 93 00:08:00,770 --> 00:08:03,067 新自由主義政府 94 00:08:03,167 --> 00:08:05,365 民営企業 95 00:08:05,455 --> 00:08:08,963 ある種の資本主義だろう 96 00:08:09,883 --> 00:08:15,271 スーパーヒーローの責任が 現状を維持することだという事実は 97 00:08:15,394 --> 00:08:23,260 もし世界がパラダイスであった時は あまり問題にならないだろう 98 00:08:23,236 --> 00:08:26,868 しかしご存知の通り そうではない 99 00:08:26,978 --> 00:08:32,608 世界には不正 搾取 抑圧が蔓延っている 100 00:08:33,639 --> 00:08:36,537 環境破壊は言うまでもない 101 00:08:36,647 --> 00:08:41,180 "気候変動が広がっています…" 102 00:08:41,289 --> 00:08:47,928 この現実は悪役並に怖くないだろうか 103 00:08:48,518 --> 00:08:52,069 マーベル映画はもちろんフィクションだ 104 00:08:52,189 --> 00:08:58,290 だが現実世界の鏡としてもデザインされていて 私たちと同じ問題を抱えている 105 00:08:58,417 --> 00:09:03,582 超能力者やエイリアンや魔法使いがいる以外は 106 00:09:03,688 --> 00:09:06,058 "アンドロイドにエイリアン" 107 00:09:06,168 --> 00:09:06,817 "問題ない" 108 00:09:06,917 --> 00:09:07,884 "完全に問題だ" 109 00:09:07,994 --> 00:09:09,117 "いや違う" 110 00:09:09,437 --> 00:09:17,197 それらの超能力者が力を よい世界を 作るために使ったらと想像してほしい 111 00:09:17,318 --> 00:09:22,073 それは現在のシステムを終わらせ 搾取や不平等を消し去るだろう 112 00:09:22,190 --> 00:09:27,443 環境破壊を止められるかもしれない 113 00:09:27,579 --> 00:09:33,015 富裕層の富を再分配するかもしれない 114 00:09:33,133 --> 00:09:36,989 だがヒーローはそのどれもしない 115 00:09:37,101 --> 00:09:42,628 代わりに ランダムに慈善をするだけだ 116 00:09:42,864 --> 00:09:47,656 億万長者は自分のための新技術を作る 117 00:09:47,770 --> 00:09:52,156 "スターク・タワーを自立式の灯台に" 118 00:09:52,252 --> 00:09:57,261 戦士は腐敗政治家にいいことをしろと言う 119 00:09:57,382 --> 00:09:59,728 "いいことをしろよ議員" 120 00:09:59,851 --> 00:10:05,484 一番良くて 裕福な君主が 国際コミュニティセンターを建てる 121 00:10:05,586 --> 00:10:09,337 "ワカンダの最初の国際的センターになる" 122 00:10:09,453 --> 00:10:14,277 その絆創膏的なやり方は 少しの人々を助けるかもしれないが 123 00:10:14,376 --> 00:10:21,253 それはまた現在の政治的構造を 持続させるようデザインされてもいる 124 00:10:21,750 --> 00:10:25,496 不都合な真実は その慈善活動自体が 125 00:10:25,612 --> 00:10:32,287 彼らに有利な権力構造を強化していることだ 126 00:10:32,417 --> 00:10:37,311 その観点から見るとヒーローがそのすごい力を 127 00:10:37,433 --> 00:10:41,943 世界を変えるために使わないというのは 128 00:10:42,059 --> 00:10:45,837 完全なるディストピアに感じられてくる 129 00:10:49,167 --> 00:10:50,087 "入って" 130 00:10:50,187 --> 00:10:56,357 そして奇妙なことに体制への 批判の声を上げるのはいつも悪人だ 131 00:10:56,459 --> 00:11:00,803 "上にいる金持ちどもは好き放題だ" 132 00:11:00,907 --> 00:11:02,420 "俺らは?" 133 00:11:02,520 --> 00:11:07,470 "道路を作り 戦争を戦うが 奴らは俺らを無視だ" 134 00:11:07,590 --> 00:11:10,579 "そのテーブルを取り戻す" 135 00:11:10,698 --> 00:11:15,927 マーベルに登場する悪役たちを見ていくと 136 00:11:16,047 --> 00:11:22,948 彼らが何かしら現状を破壊しようと していることにすぐ気づく 137 00:11:23,145 --> 00:11:26,448 構造的変化を求め 138 00:11:26,590 --> 00:11:30,403 権威的変化を狙っている 139 00:11:30,527 --> 00:11:37,214 世界の仕組みを根底から変えよう としているのは彼らだけなのだ 140 00:11:37,326 --> 00:11:39,829 "これは世界を変える" 141 00:11:39,939 --> 00:11:41,930 "この技術は世界を変える" 142 00:11:42,030 --> 00:11:44,728 "世界を変えようとしてる" 143 00:11:44,838 --> 00:11:48,507 悪役たちの動機は復讐から 144 00:11:48,606 --> 00:11:53,188 社会的不正義の是正 ただの強欲まで幅広い 145 00:11:53,288 --> 00:11:59,358 ただここで見るべきなのは その悪役たちの計画の規模が 146 00:11:59,486 --> 00:12:04,526 その悪役たちの持つ力次第で変わることだ 147 00:12:05,246 --> 00:12:09,664 低いレベルの悪役は 一つの機関内での改革を求める 148 00:12:09,784 --> 00:12:13,380 軍事企業とか 149 00:12:13,617 --> 00:12:19,810 あるいは世界で最も大きな企業と その金持ちなCEOを潰そうとする 150 00:12:20,177 --> 00:12:24,586 より野心的な悪役は 街全体を作り変えようとする 151 00:12:24,703 --> 00:12:27,445 "俺は街を作る" 152 00:12:27,686 --> 00:12:30,267 "今よりいい街を" 153 00:12:30,387 --> 00:12:32,369 あるいは世界全体 154 00:12:32,489 --> 00:12:35,039 あるいは宇宙全体を 155 00:12:35,949 --> 00:12:41,130 一般的に より強い悪役は より大きな変化を求めている 156 00:12:41,250 --> 00:12:45,814 "これこそ私の夢だ" 157 00:12:46,540 --> 00:12:51,048 現在の世界秩序を取り壊すという目標は 158 00:12:51,173 --> 00:12:56,789 最初は説得力があるように観客には見える 159 00:12:56,906 --> 00:12:59,835 "よりよい世界を作るには" 160 00:12:59,955 --> 00:13:03,735 "古いものを壊さなければ" 161 00:13:04,985 --> 00:13:09,947 ロシアの無政府主義者バクーニンは 1842年にこう書いた 162 00:13:10,072 --> 00:13:15,033 "破壊への情熱は 創造的情熱でもある" 163 00:13:15,283 --> 00:13:18,862 不正な秩序を破壊する衝動は 164 00:13:18,977 --> 00:13:25,536 現状に代わる世界への想像力を 必要とするということだ 165 00:13:27,659 --> 00:13:32,610 観客はこの社会正義的悪に惹かれる 166 00:13:32,730 --> 00:13:35,136 "タイタンは普通の星だった" 167 00:13:35,246 --> 00:13:37,821 "多くの人がいた" 168 00:13:37,940 --> 00:13:42,816 これらの敵は終わらせたいと語る 169 00:13:42,932 --> 00:13:48,140 社会問題 不正義 非合法な権力を 170 00:13:49,875 --> 00:13:54,071 マーベルでは神が文字通り歩み寄ってくる 171 00:13:54,170 --> 00:13:57,951 そして絶大な力を振るう 172 00:13:58,053 --> 00:14:01,146 "神のために苦しめ" 173 00:14:01,266 --> 00:14:06,756 しかし同時に残酷であるか 人々の苦しみに無関心でもある 174 00:14:06,873 --> 00:14:08,425 "勝者を発表する" 175 00:14:08,551 --> 00:14:13,924 "神の名の下に最も人間の魂を集めた者を" 176 00:14:14,034 --> 00:14:15,383 "悪い奴だ" 177 00:14:15,483 --> 00:14:16,896 "とんでもなくね" 178 00:14:16,990 --> 00:14:19,177 このような暴政が 179 00:14:19,277 --> 00:14:24,807 ゴア・ザ・ゴッド・ブッチャーが 「ソー:ラブ&サンダー」で倒そうとしたものだ 180 00:14:24,927 --> 00:14:28,554 "神々が気にかけるのは" 181 00:14:29,484 --> 00:14:31,532 "神々だけだ" 182 00:14:32,162 --> 00:14:39,020 「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」で フラッグ・スマッシャーズは難民を支援し 183 00:14:39,128 --> 00:14:45,341 国境の封鎖を妨害し 人々の国外追放をやめさせようとした 184 00:14:45,449 --> 00:14:49,341 "ただ生きるためだけに どれだけ犠牲を払えばいい?" 185 00:14:51,043 --> 00:14:55,931 「ブラックパンサー」ではキルモンガーは ワカンダの持つテクノロジーを 186 00:14:56,041 --> 00:15:00,567 アフリカの人々を弾圧から 自由にするために使おうとした 187 00:15:00,673 --> 00:15:02,738 "黒人の革命は長らく" 188 00:15:02,848 --> 00:15:07,189 "火力も資源も持っていなかった" 189 00:15:07,287 --> 00:15:08,791 "それも今日で終わる" 190 00:15:08,891 --> 00:15:14,391 視聴者は 悪役の独白に納得しかけている 自分に気づくかもしれない 191 00:15:14,515 --> 00:15:20,928 しかしそれが確信に変わるより先に 彼らは突然大量殺人を始めてしまう 192 00:15:23,357 --> 00:15:25,725 彼らにとっても意味がないのに 193 00:15:25,845 --> 00:15:27,699 "中に人が" 194 00:15:27,939 --> 00:15:30,094 "こうしないと通じない" 195 00:15:30,214 --> 00:15:37,072 悪役はいつも無差別殺人を始めるが それは作者が勝手に作ったものだ 196 00:15:38,222 --> 00:15:42,865 "アベンジャーズを殺せば世界は良くなるって" 197 00:15:42,974 --> 00:15:44,630 "良くなるさ" 198 00:15:44,746 --> 00:15:45,772 "みんなが死んでも?" 199 00:15:45,886 --> 00:15:46,983 "これは…!" 200 00:15:47,103 --> 00:15:55,387 これは観客が 悪役の思想や革命に 共感しないようにデザインされたものだ 201 00:15:55,754 --> 00:16:01,191 "彼らは私たちを苦しめ 犯罪者の烙印を押す" 202 00:16:02,460 --> 00:16:07,277 "でもその苦しみが私たちを一つにする" 203 00:16:08,118 --> 00:16:11,770 "一つの世界に 一つの人々" 204 00:16:11,877 --> 00:16:19,222 このパターンから浮かび上がるメッセージは しかしながら有害とならざるをえない 205 00:16:19,346 --> 00:16:24,323 社会を根底から変えようとする活動は 206 00:16:24,441 --> 00:16:30,125 危険なだけでなく 悪でもあるのだと 207 00:16:31,155 --> 00:16:35,487 社会的平等を目指す側が悪であることが 208 00:16:35,620 --> 00:16:43,709 スーパーヒーローものが保守的であると 批判されることがある理由の一つである 209 00:16:43,812 --> 00:16:49,731 "進化なしでどうやって人類が救える?" 210 00:16:54,080 --> 00:16:56,318 グレーバーは書く 211 00:16:56,437 --> 00:17:08,627 "彼らは法的政治的秩序の守護者に留まる それが欠陥があり劣化していても守るべきだと なぜなら他の体制はより悪いものだからだ 212 00:17:08,747 --> 00:17:13,968 "一つの集団にとっていいものは 他の集団にとっては悪いものだ" 213 00:17:14,092 --> 00:17:20,638 マーベルのイデオロギーによれば 現状こそベストだということだ 214 00:17:20,764 --> 00:17:22,625 完璧ではないが 215 00:17:22,735 --> 00:17:28,035 変えようとするのは大惨事になるだけだ 216 00:17:30,326 --> 00:17:35,853 漫画家のアラン・ムーアはこう批評する 217 00:17:35,973 --> 00:17:43,379 "現実を無視し 単純化し 安易な解決策に流れている" 218 00:17:43,509 --> 00:17:44,915 彼は正しい 219 00:17:45,035 --> 00:17:48,162 私たちの社会が抱える問題は 220 00:17:48,282 --> 00:17:54,155 悪い個人の顔をパンチすることでは 解決できないものだ 221 00:17:55,303 --> 00:17:58,726 ファンタジーのようにはいかない 222 00:17:58,842 --> 00:18:06,567 ここで少し 現実の世界で起きた 社会変革についての話をしよう 223 00:18:06,899 --> 00:18:10,493 "私たちはこの現状に挑戦する…" 224 00:18:11,293 --> 00:18:17,359 社会変革は人々が積極的に団結し 大きな運動を起こした時に起こる 225 00:18:17,489 --> 00:18:20,604 その時 現状が動く 226 00:18:20,724 --> 00:18:25,379 "次に進むまでは戦い続けるしかない" 227 00:18:25,954 --> 00:18:29,346 運動が圧力を高めていく 228 00:18:29,461 --> 00:18:35,866 権力者側が大衆の要求に 応えるしかないと感じるまで 229 00:18:35,992 --> 00:18:41,672 これが社会変革の中で起きてきたことだ 230 00:18:42,202 --> 00:18:44,781 フレデリック・ダグラスは言った 231 00:18:44,891 --> 00:18:48,939 "要求がなければ権力は何も認めない" 232 00:18:49,389 --> 00:18:53,559 これがマーベル世界の問題だ 233 00:18:53,696 --> 00:18:56,720 大衆の声がない 234 00:18:59,390 --> 00:19:03,212 いるのは無実の被害者 騒ぐモブ 235 00:19:03,348 --> 00:19:08,270 そしてもちろん 神のような超人だけだ 236 00:19:08,380 --> 00:19:15,976 大衆がいなければ グレーバーの言う 憲法的な権力も存在しないのだ 237 00:19:16,122 --> 00:19:20,280 この状況では力を持つ小さな集団 238 00:19:20,392 --> 00:19:26,463 選ばれていないスーパーマンまたは スーパーウーマンがすべてのカードを持つ 239 00:19:26,602 --> 00:19:28,360 "写真撮っていいですか?" 240 00:19:28,470 --> 00:19:29,154 "いいよ" 241 00:19:29,264 --> 00:19:35,644 マーベルの世界で市民に残された役割は ヒーローたちを崇拝することだけである 242 00:19:35,764 --> 00:19:37,555 "あなたの大ファンです" 243 00:19:40,504 --> 00:19:46,322 大衆は力を削がれ ただのオタクになる 244 00:19:48,173 --> 00:19:53,093 そこには地球が持続可能となるために必要な 245 00:19:53,198 --> 00:19:58,772 根本的社会変革が起こる可能性がない 246 00:19:58,871 --> 00:20:01,321 "宇宙じゃ食べ物は無料よ" 247 00:20:01,421 --> 00:20:03,778 "金を払うなんて変" 248 00:20:04,078 --> 00:20:07,304 私はアベンジャーズが悪いとは言っていない 249 00:20:07,434 --> 00:20:12,439 悪い奴は止めてほしいし 大惨事は防いでほしい 250 00:20:12,884 --> 00:20:19,684 それはその世界では正しいことだ 251 00:20:21,958 --> 00:20:23,229 私が言いたいのは 252 00:20:23,337 --> 00:20:28,537 マーベル帝国で繰り返される物語の形式が 253 00:20:28,656 --> 00:20:31,503 私たちの世界観を狭める可能性だ 254 00:20:31,613 --> 00:20:33,434 "私は世界を平和にした" 255 00:20:33,544 --> 00:20:36,161 そうかもしれない 256 00:20:36,591 --> 00:20:44,423 あなたがメディアを牛耳っているような 上流階級の人なら面白くない話だろう 257 00:20:44,545 --> 00:20:50,805 そのような人にとっては現状維持こそが おそらく最も心地よいことだからだ 258 00:20:51,776 --> 00:20:54,718 しかしそれ以外の人は 映画館に行って 259 00:20:54,826 --> 00:21:02,710 別の世界に飛ばされてなお 世界を変えようと考えているならば 260 00:21:02,831 --> 00:21:06,921 自動的に悪役になるだろう