WEBVTT 00:00:00.887 --> 00:00:03.283 私はアーティストであり エンジニアです 00:00:03.307 --> 00:00:09.081 近ごろ 私たちの知覚にテクノロジーが どのように介在するかについて 00:00:09.105 --> 00:00:11.146 よく考えています 00:00:11.653 --> 00:00:16.293 それは全く目に付かないように 巧妙に行われています 00:00:17.260 --> 00:00:20.906 テクノロジーは現実世界の 実体験であるかのように装って 00:00:20.930 --> 00:00:24.741 私たちの現実に対する認識を 形作るように作られています 00:00:25.430 --> 00:00:30.116 その結果 そのようなテクノロジーの存在を 私たちはまったく意識しなくなり 00:00:30.140 --> 00:00:32.325 気づきさえしなくなっています NOTE Paragraph 00:00:33.360 --> 00:00:35.848 私がいつもかけているメガネを 例にとってみましょう 00:00:35.872 --> 00:00:39.896 メガネは 私が身の回りを 日常的に経験する方法の一部となっています 00:00:40.352 --> 00:00:41.842 メガネによって 常に 00:00:41.866 --> 00:00:45.951 現実が切り取られていても ほとんど気にも留めません 00:00:46.447 --> 00:00:50.463 私の言うテクノロジーも同じように 機能するようデザインされています 00:00:50.487 --> 00:00:52.925 私たちが見たり考えたりすることに 変化を与えながらも 00:00:52.949 --> 00:00:54.709 存在は意識されません NOTE Paragraph 00:00:55.780 --> 00:00:59.049 私が自分のメガネを意識するのは 00:00:59.073 --> 00:01:02.331 メガネに意識を向けさせることが 起きた時くらいのものです 00:01:02.355 --> 00:01:05.869 メガネが汚れたり 処方が変わったりした時です 00:01:06.481 --> 00:01:11.089 そこで自問しました 「アーティストとして何ができるだろう? 00:01:11.113 --> 00:01:13.560 私たちの現実を形作っている― 00:01:13.584 --> 00:01:19.755 報道やソーシャルメディア 広告やサーチエンジンなどの 00:01:19.779 --> 00:01:22.040 デジタルメディアに どうしたら同じように 00:01:22.064 --> 00:01:24.078 注意を向けられるだろう?」と 00:01:24.798 --> 00:01:29.570 そこで 私は 様々な知覚装置を作りました 00:01:29.594 --> 00:01:33.160 自分たちの世界の見方に 違和感を持たせ 00:01:33.184 --> 00:01:35.304 疑問を投げかける装置です NOTE Paragraph 00:01:36.859 --> 00:01:42.892 例えば 昨今では 私たちの多くが 自分の意見とは違う意見に対して 00:01:42.916 --> 00:01:45.409 アレルギー反応のようなものを 起こします 00:01:45.945 --> 00:01:51.601 いわば「心理的アレルギー」があることにさえ 気づいていないかもしれません 00:01:52.596 --> 00:01:58.239 そこで 赤色に対して人工的にアレルギーを 引き起こすヘルメットを作りました 00:01:58.263 --> 00:02:01.832 これを装着すると 感覚過敏を模して 赤いものが 00:02:01.832 --> 00:02:04.020 大きく見えるようになります 00:02:04.730 --> 00:02:08.288 ノシーボとプラシーボの 2つのモードがあります 00:02:09.272 --> 00:02:14.629 ノシーボモードでは 感覚過敏の知覚体験を作り出します 00:02:14.653 --> 00:02:17.360 赤色が目に入る度に 赤が大きく見えます 00:02:18.062 --> 00:02:21.593 ソーシャルメディアの 増幅効果に類似していて 00:02:21.617 --> 00:02:24.214 何か気に入らないものが目に入ると 00:02:24.238 --> 00:02:27.166 自分と同じような考え方をする人と 一緒になって 00:02:27.190 --> 00:02:31.785 メッセージやミームを交換するので さらに怒りが増幅されるというものです 00:02:32.274 --> 00:02:35.936 ときには ほんの些細な議論が増幅され 00:02:35.960 --> 00:02:38.361 度を失った規模に 膨れ上がります 00:02:39.038 --> 00:02:43.558 それは私たちが怒りの政治の中で 生きているからかもしれません 00:02:44.756 --> 00:02:48.171 プラシーボモードは こんなアレルギーへの人工治療です 00:02:48.575 --> 00:02:50.867 赤色が目に入る度に 赤が縮んで見えます 00:02:51.617 --> 00:02:54.492 デジタルメディア同様 一時しのぎに過ぎません 00:02:54.516 --> 00:02:57.415 自分と意見が異なる人々に出くわすと 00:02:57.439 --> 00:02:58.916 フォローを外して 00:02:58.940 --> 00:03:01.688 一切 目に入らないようにするのです 00:03:02.343 --> 00:03:05.546 対象を回避することで アレルギーを治療するのです 00:03:05.570 --> 00:03:10.117 でも反対意見を意図的に無視する このやり方では 00:03:10.141 --> 00:03:14.197 人間の社会は過度に細分化され 分断を深めてしまいます NOTE Paragraph 00:03:15.343 --> 00:03:18.402 このヘルメットの内部のデバイスは 現実を再構築し 00:03:18.426 --> 00:03:21.376 拡張現実を創り出す 一連のレンズを通して 00:03:21.400 --> 00:03:23.315 私たちの目に映し出します 00:03:23.935 --> 00:03:28.717 赤色を取り上げたのは 強烈で感情に訴えるからですが 00:03:28.741 --> 00:03:30.699 可視性も高いと同時に 00:03:30.723 --> 00:03:32.001 政治的でもあります 00:03:32.390 --> 00:03:33.653 前回 行われた― 00:03:33.677 --> 00:03:36.726 アメリカ大統領選挙の勢力地図を このヘルメットを通して見ると 00:03:36.750 --> 00:03:37.915 どうなるでしょうか? NOTE Paragraph 00:03:37.939 --> 00:03:38.947 (笑) NOTE Paragraph 00:03:38.971 --> 00:03:42.544 あなたが共和党支持か民主党支持かは まったく関係ありません 00:03:42.568 --> 00:03:46.557 なぜなら媒介により私たちの知覚が 改変されているからです 00:03:46.581 --> 00:03:49.714 どちらの側も アレルギーを持っているのです NOTE Paragraph 00:03:51.134 --> 00:03:52.454 デジタルメディアでは 00:03:52.478 --> 00:03:55.611 私たちが毎日目にするものは しばしば介在されており 00:03:55.635 --> 00:03:57.368 非常に巧妙に行われています 00:03:57.758 --> 00:03:59.753 もし私たちがこの事を 意識しなければ 00:03:59.777 --> 00:04:05.091 多くの心理的アレルギーに対して 脆弱なままであり続けることになります NOTE Paragraph 00:04:06.900 --> 00:04:10.410 知覚は私たちのアイデンティティの 一部であるだけではなく 00:04:10.434 --> 00:04:14.728 デジタルメディアにおいては バリューチェーンの一部でもあるのです 00:04:15.992 --> 00:04:19.567 私たちの視界には あまりに多くの情報が詰め込まれ 00:04:19.591 --> 00:04:25.103 私たちの知覚は不動産価値を持つ 商品になってしまったのです 00:04:26.035 --> 00:04:29.564 無意識の偏りを悪用するために デザインは利用され 00:04:29.588 --> 00:04:33.068 自分の意見を再確認するコンテンツを アルゴリズムは好みます 00:04:33.092 --> 00:04:37.283 それゆえ 視野の隅々までもが 広告を販売するために 00:04:37.307 --> 00:04:38.649 侵食されるのです 00:04:39.402 --> 00:04:43.419 このように あなたの通知画面に 小さな赤い点が現れると 00:04:43.443 --> 00:04:47.521 それは大きく広がり 頭の中を埋め尽くします NOTE Paragraph 00:04:48.571 --> 00:04:51.932 メガネにちょっとした汚れを つける方法や 00:04:51.956 --> 00:04:54.654 メガネのレンズを変える方法を 考え始めるうちに 00:04:54.678 --> 00:04:56.776 別のプロジェクトを思いつきました 00:04:57.423 --> 00:05:01.224 これからお見せするのはコンセプトです 現実の製品ではありません 00:05:01.676 --> 00:05:03.749 ウェブブラウザのプラグインで 00:05:03.773 --> 00:05:08.115 いつもは気も留めないような事柄に 気づかせてくれます 00:05:08.709 --> 00:05:12.479 先ほどのヘルメットのように このプラグインは現実を再構築しますが 00:05:12.503 --> 00:05:15.728 今回はデジタルメディア そのものを再構築します 00:05:17.066 --> 00:05:20.222 ふるい落とされた 隠れた声を目立たせます 00:05:20.246 --> 00:05:21.819 あなたが着目すべきことが 00:05:21.843 --> 00:05:24.352 より大きく活性化していきます 00:05:24.376 --> 00:05:28.671 この例では猫たちの中から ジェンダーバイアスの記事が浮かび上がります NOTE Paragraph 00:05:28.695 --> 00:05:30.716 (笑) NOTE Paragraph 00:05:30.740 --> 00:05:36.157 アルゴリズムによって増幅される事象を このプラグインで希釈できました 00:05:36.831 --> 00:05:38.527 このコメント欄のように 00:05:38.551 --> 00:05:41.620 同じ意見を叫んでいる人が たくさんいると 00:05:42.111 --> 00:05:44.981 このプラグインはそのようなコメントを ものすごく小さくします NOTE Paragraph 00:05:45.005 --> 00:05:46.013 (笑) NOTE Paragraph 00:05:46.037 --> 00:05:51.288 画面上で表示されるピクセルの量が 00:05:51.312 --> 00:05:55.866 このスレッドに貢献している 実際の価値に比例しています NOTE Paragraph 00:05:55.890 --> 00:05:57.832 (笑) NOTE Paragraph 00:05:59.345 --> 00:06:02.976 (拍手) NOTE Paragraph 00:06:04.919 --> 00:06:08.980 このプラグインは 私たちの視界の不動産価値も示し 00:06:09.004 --> 00:06:12.460 私たちの知覚がどれほど 商品化されているかを教えてくれます 00:06:12.912 --> 00:06:14.501 広告ブロッカーとは異なり 00:06:14.525 --> 00:06:16.997 あなたがウェブで目にする すべての広告について 00:06:17.021 --> 00:06:20.428 あなたが稼げるはずの広告料を 表示してくれます NOTE Paragraph 00:06:20.452 --> 00:06:21.697 (笑) NOTE Paragraph 00:06:22.356 --> 00:06:24.648 私たちは現実と 商用流通化された現実との 00:06:24.672 --> 00:06:26.925 2つの現実のはざまにある 戦場で生活しており 00:06:27.329 --> 00:06:32.415 このプラグインの次のバージョンは 商用化現実を打ちのめして 00:06:32.439 --> 00:06:35.238 ありのままの事実を 見せるようにします NOTE Paragraph 00:06:35.262 --> 00:06:37.053 (笑) NOTE Paragraph 00:06:38.335 --> 00:06:41.964 (拍手) NOTE Paragraph 00:06:43.179 --> 00:06:46.791 このアイデアに様々な道があることが 想像できるでしょう 00:06:46.815 --> 00:06:51.229 この技術を実際に製品化するなら 高いリスクになるのは分かっています 00:06:52.006 --> 00:06:54.945 私はこのプラグインを 善意をもって 00:06:54.969 --> 00:06:58.806 知覚を訓練し 偏りを排除するために 作り上げました 00:06:58.830 --> 00:07:02.558 でも同様のアプローチは 悪用することもできます 00:07:02.582 --> 00:07:05.787 例えば世論を操作するために このようなプラグインの 00:07:05.811 --> 00:07:08.229 インストールを 市民に強要するようなことです 00:07:08.768 --> 00:07:11.505 公正かつ個人的なものにするのは 簡単ではなく 00:07:11.529 --> 00:07:14.684 その努力がなければ 介在するものを 増やすだけになってしまいます NOTE Paragraph 00:07:15.933 --> 00:07:18.595 さて これは私たちにとって どういう意味を持つのでしょう? 00:07:19.230 --> 00:07:22.963 テクノロジーが 人々の分断を 深めているのだとしても 00:07:22.987 --> 00:07:26.589 既存のモデルを打ち壊し さらにその先に進むことによって 00:07:26.613 --> 00:07:29.860 再び世界をつなぐことに 利用できると思うのです 00:07:30.508 --> 00:07:33.846 これらのテクノロジーと いかに接点を持つかを探ることで 00:07:33.870 --> 00:07:39.055 私たちは習慣化した 機械的ともいえる行動から抜け出して 00:07:39.079 --> 00:07:41.749 最終的にお互いの共通の基盤を 見いだせるのです NOTE Paragraph 00:07:42.915 --> 00:07:44.704 テクノロジーは 中立になりえません 00:07:45.191 --> 00:07:48.210 文脈をもたらし 現実を切り取ります 00:07:48.234 --> 00:07:51.122 これは問題でもありますが 解決策でもあります 00:07:51.624 --> 00:07:57.264 私たちの盲点を発見し 知覚を訓練し直すことに利用でき 00:07:57.949 --> 00:08:01.432 そうすれば お互いの見方を 選び取れるのです NOTE Paragraph 00:08:01.892 --> 00:08:03.083 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:08:03.107 --> 00:08:05.792 (拍手)