WEBVTT 00:00:06.629 --> 00:00:09.070 こんな島を想像してみてください 00:00:09.070 --> 00:00:14.150 100人の完璧に論理的な人々が 独裁者によって幽閉されています 00:00:14.150 --> 00:00:18.291 しかし 不思議なルールが1つあり そこから逃げることができます 00:00:18.291 --> 00:00:23.051 どの囚人も夜間 守衛のところへ行くことが許され 00:00:23.051 --> 00:00:26.392 囚人が緑色の瞳ならば 解放されますが 00:00:26.392 --> 00:00:30.342 そうでない場合は 火山の噴火口に投げ込まれてしまいます 00:00:30.342 --> 00:00:34.103 実は 囚人達は100人とも 緑色の瞳なのですが 00:00:34.103 --> 00:00:36.676 全員がこの島で生まれ育ち 00:00:36.676 --> 00:00:41.491 独裁者のせいで 自分の瞳の色を知らないのです 00:00:41.491 --> 00:00:43.446 光を反射するものがひとつもなく 00:00:43.446 --> 00:00:46.155 水は不透明な容器に入れられており 00:00:46.155 --> 00:00:47.663 そして最も重要なことは― 00:00:47.663 --> 00:00:50.780 お互いに口をきくことは 禁じられているのです 00:00:50.780 --> 00:00:54.754 しかし 毎朝の点呼の時に お互いの姿を確認できます 00:00:54.754 --> 00:00:59.196 しかし 成功を完全に確信できるまでは 00:00:59.196 --> 00:01:02.607 誰もリスクを冒すことはありません 00:01:02.607 --> 00:01:05.007 人権擁護団体の圧力のおかげで 00:01:05.007 --> 00:01:09.048 独裁者はしぶしぶと あなたの訪問を受け入れ 00:01:09.048 --> 00:01:12.465 囚人達に次の条件で 話しかけることを許しました 00:01:12.465 --> 00:01:14.549 発言は1回限りで 00:01:14.549 --> 00:01:17.858 新たな情報を与えてはならない 00:01:17.858 --> 00:01:20.582 どうすれば 独裁者を怒らせることなく 00:01:20.582 --> 00:01:24.246 囚人達を救うことができるでしょうか? 00:01:24.246 --> 00:01:25.979 じっくりと慎重に考えたあなたは 00:01:25.979 --> 00:01:31.381 「少なくとも1人は緑色の瞳だ」と 全員に呼びかけました 00:01:31.381 --> 00:01:33.269 独裁者はいぶかるものの 00:01:33.269 --> 00:01:37.652 これでは何も変化は 起こらないはずだと考え 安心します 00:01:37.652 --> 00:01:42.401 あなたは島を離れ そこでの生活に変化はなさそうです 00:01:42.401 --> 00:01:44.656 しかし あなたが訪問した100日後の朝 00:01:44.656 --> 00:01:47.183 囚人は1人も残っていませんでした 00:01:47.183 --> 00:01:50.881 前夜にそれぞれ島を脱出していたのです 00:01:50.881 --> 00:01:53.933 さて どうやって独裁者を 出し抜いたのでしょうか? 00:01:53.933 --> 00:01:59.108 囚人の数は任意であるといえば 分かりやすくなるでしょう 00:01:59.108 --> 00:02:04.178 アドリアとビルの2人だけだったと 話を単純化しましょう 00:02:04.178 --> 00:02:06.498 お互いの緑色の瞳を認めた2人は 00:02:06.498 --> 00:02:09.744 緑色なのは 1人だけかもしれないと考えます 00:02:09.744 --> 00:02:12.310 最初の夜はどちらも逃げ出しません 00:02:12.310 --> 00:02:15.231 しかし 翌朝2人とも島に残っていたため 00:02:15.231 --> 00:02:17.641 ここで新たな情報を手に入れたのです 00:02:17.641 --> 00:02:22.268 アドリアはビルと一緒にいる相手が 緑色の瞳でなければ 00:02:22.268 --> 00:02:24.230 ビルは自分の瞳が緑色だと考えて 00:02:24.230 --> 00:02:28.209 最初の晩に逃げ出しただろうと 気づきます 00:02:28.209 --> 00:02:32.321 同時にビルもアドリアについて 同じことに気づきます 00:02:32.321 --> 00:02:34.340 もう一方の人が残っているという事実により 00:02:34.340 --> 00:02:39.124 自分の瞳も緑色だと分かったわけです 00:02:39.124 --> 00:02:42.282 2日目の朝には 2人とも脱出しています 00:02:42.282 --> 00:02:44.526 さて3人目の囚人を考えてみましょう 00:02:44.526 --> 00:02:48.795 アドリア、ビル、カールはそれぞれ 他の2人が緑色の瞳である事に気づきます 00:02:48.795 --> 00:02:53.905 しかし 他の人も同様に 緑色の瞳は2人だと気付いているか 00:02:53.905 --> 00:02:55.512 それとも1人だけなのか 確信を持てません 00:02:55.512 --> 00:02:57.821 最初の夜はやはり待ちます 00:02:57.821 --> 00:03:01.072 翌朝もまだ確かではありません 00:03:01.072 --> 00:03:03.801 カールは「もし僕の瞳が緑色でなければ 00:03:03.801 --> 00:03:06.977 アドリアとビルはお互いを見て 00:03:06.977 --> 00:03:09.703 2晩目に2人とも逃げてしまうだろう」と 考えます 00:03:09.703 --> 00:03:12.468 しかし 3日目の朝に両方とも残っていた場合 00:03:12.468 --> 00:03:16.226 カールも緑色の瞳だという事がわかります 00:03:16.226 --> 00:03:19.284 アドリアとビルも同じ結論に達し 00:03:19.284 --> 00:03:22.295 3日目の夜に全員が脱出します 00:03:22.295 --> 00:03:24.255 この帰納的論法を使えば 00:03:24.255 --> 00:03:28.883 囚人は何人いても構いません 00:03:28.883 --> 00:03:31.900 ここで大切なのは 共有知識という概念で 00:03:31.900 --> 00:03:34.539 哲学者デイヴィド・ルイスが 導入しました 00:03:34.539 --> 00:03:38.935 あなたの発言自体には 何ら新しい情報は含まれていませんが 00:03:38.935 --> 00:03:42.953 全員に一斉に知らせることです 00:03:42.953 --> 00:03:46.680 すると 少なくとも1人は 緑色の瞳であることに加えて 00:03:46.680 --> 00:03:51.090 囚人はそれぞれ 緑色の瞳の人の姿を 00:03:51.090 --> 00:03:54.321 全て追うことができて 00:03:54.321 --> 00:03:58.787 そして各自が そのことを理解しています 00:03:58.787 --> 00:04:00.839 どの囚人も自分が 00:04:00.839 --> 00:04:04.316 緑色の瞳であるかどうかは 分からないので 00:04:04.316 --> 00:04:06.431 それを判断するためには 00:04:06.431 --> 00:04:12.571 島にいる囚人と同じ数の夜だけ 待つ必要があります 00:04:12.571 --> 00:04:17.098 もちろん 「少なくとも99人は 緑色の瞳だ」と言えば 00:04:17.098 --> 00:04:21.491 時間を98日間 短縮する事もできます 00:04:21.491 --> 00:04:26.251 でも 独裁者のことを考えて 穏やかに切り出すべきですね