私は医学准教授 兼
科学的可視化主任として
イェール大学医学部に
招かれました
私の仕事は NASAのために
宇宙飛行士の宇宙滞在に備えた
ロボットポッドによる仮想手術用の
プログラムを書くことでした
取り組んだ中で特に素晴らしかったのは
スキャン技術を使って かつては見ることのできなかったものを
見られるようにしたことです
単に病気の処置というだけではなく
驚異に満ちた人の体の仕組みを
見ることができるようにしたのです
コラーゲンを最初に見たときのことをよく覚えています
体中のいたる部分
髪 皮膚 骨 爪
様々なものがコラーゲンでできています
縄のような構造をしており
こんな風にくねり 渦巻いています
コラーゲンの構造が変わる場所は
目の中の
角膜だけです
そこでは格子状になっていて
透明になるのです
完璧に整った構造で 神秘を感ぜずには
いられませんでした
そのようなものを体の至る所で
目にしたからです
国立衛生研究所と 興味深いMRI装置に
取り組んでいる人物と
一緒に仕事する機会がありました
私たちがやっていたのは
この新しい技術を使って
受胎から誕生までの胎児の発達を
スキャンするというプロジェクトです
私がアルゴリズムを書き
ポール・ラウターバーがハードウェアを作りました
彼は後にMRIの発明でノーベル賞を手にしています
私はデータを手にしました
「受胎から誕生まで」の
一部をご覧に入れましょう
(音楽)
「受胎から誕生まで」
卵母細胞
精子
受精卵
24時間 最初の卵割
受精卵は融合後数時間で分裂し・・・
12〜15時間ごとに卵割を繰り返す
初期胚
栄養はまだ卵黄嚢から取っている
25日目 心腔が発達する
32日目 腕と手が発達する
36日目 原始的な脊椎が現れる
この時期に胚は最も急速に成長する
このペースで成長し続けたなら 生まれる頃には
1.5トンにもなっているだろう
45日目
胚の心拍の速さは母親の2倍
51日目
52日目 網膜 鼻 指が発達する
子宮内で絶えず動いているが
これは筋肉と骨格を発達させるため不可欠である
12週目 未分化のペニス—
見た目上 男女はまだわからない
8ヶ月目
分娩 娩出期
誕生の時
(拍手)
ありがとうございます
ご覧の通り
このデータに取り組んでいると
その見事さに打たれます
スキャンしていくごとに
プロジェクトで作業するほどに感じます
2つの単純な細胞が
やがて人間という魔法のような存在へと成長する
驚くべき機構を備えているのです
このデータに取り組み
まだ小さな塊の体に目を向けると
胚盤胞の外側の
栄養膜組織が
突然子宮の側面に付着し
「ここにいよう」と言います
卵胞ホルモン 黄体ホルモンを使って
突然 コミュニケーションを取り始め
「ここに根付くことにしよう」と伝え
この驚くべき三角の胚を作り
44日目には
それと認識できる形になり
9週間で
小さな人間のようになります
驚くべきは情報です
体の中の生物学的メカニズムは
情報をどうやって
得ているのでしょう?
変わったものをお見せしましょう
25日目の人の心臓です
2本の子縄のようなものが
見事な折り紙のように
4週目には
毎秒百万個の細胞を作り出しながら
自らを折り畳み
5週間目には初期の心房と心室が現れ
6週目には心臓内部に
乳頭状突起ができはじめ
心臓の弁のそれぞれが
このようにできていき
やがて成熟した心臓ができあがります
体全体も基本的に同じように発達します
遺伝的構造の中のメカニズムが
神経細胞が正確にどこに行くべきなのか
魔法のように伝えます
それがどのように行われるかの
数学的モデルの複雑さは
人の理解力を越えています
私自身数学者ですが
これら一連の命令が
ミスすることもなく
私たちの体を作っていくのを
驚きをもって見ています
ミステリーであり 魔法であり 神を思わせます
成長した体に目を向けましょう
毛細血管の小さな房
小さな顕微鏡的下部構造です
9ヶ月で産み落とされる時には
体の中に6万マイル近くの
血管ができていますが
見えているのはそのうちの1マイルだけ
あとの59,999マイルは
栄養を運び 老廃物を運び出しています
このようなシステムを作り出す複雑さは
どのような理解も
既知の数学さえ越えています
脳から体の様々な部分へと
送られる命令の体系・・・
この折り畳みの複雑さを見てください
皺によってより多くの情報を
保持できるという知恵は どこからくるのか
赤ちゃんの脳の成長を見るといいです
これは実際 今私たちがしていることです
生まれた瞬間から赤ちゃんの脳を
スキャンする新しい研究を立ち上げています
6歳になるまで6ヶ月ごとに行い
250人ほどを対象にすることになるでしょう
脳回と溝がどう織り込まれ
この発達が記憶や人間という驚異に
どうつながるのかを見たいと思っています
自分自身の存在だけではありません
女性の体は遺伝子構造を
どう理解しているのか 自分の体を作るだけでなく
それはまた 自らを
歩く免疫学的心血管システム
移動可能な子育てシステムへと
作り上げる知恵を
持ち合わせているという驚異
これもまた我々の理解を超えているものであり
我々という存在がもつ魔法です
どうもありがとうございました
(拍手)