1 00:00:02,940 --> 00:00:08,500 インターネット:暗号(あんごう)と公開カギ(こうかいかぎ) 2 00:00:08,990 --> 00:00:14,150 はい、わたしはミラ ギルエプナー。UCバークレー校でコンピュータサイエンスを学び 3 00:00:14,150 --> 00:00:18,080 情報の安全をまもるために、国防省で働いています。 4 00:00:18,500 --> 00:00:26,000 インターネットはオープンでパブリックなシステム。 私たちはみな、回線を共有して、情報をやり取りしています。 5 00:00:26,840 --> 00:00:30,719 オープンシステムだとしても、多くのプライベートなデータをやりとりします。 6 00:00:30,719 --> 00:00:35,220 たとえば、クレジットカードの番号、銀行口座、パスワード、メール。 7 00:00:35,890 --> 00:00:38,220 これらのプライベートな情報は、どのように守られるでしょうか? 8 00:00:38,680 --> 00:00:46,109 暗号(あんごう)によって、データは、まぜられ、おきかえられ、読めなくなり、秘密(ひみつ)にされます。 9 00:00:46,109 --> 00:00:51,090 複合(ふくごう)は、これを元にもどして、読めるようにすることです。 10 00:00:51,660 --> 00:00:55,560 これは、単純なアイデアで、人々は昔からこれを行ってきました。 11 00:00:55,560 --> 00:01:02,379 さいしょの有名な暗号は、「シーザー暗号」です。 シーザーは、ローマの将軍、ジュリアス・シーザーです。 12 00:01:02,379 --> 00:01:08,110 かれは、軍の指令が、敵に読まれないように、暗号を使いました。 13 00:01:09,010 --> 00:01:12,540 シーザー暗号のアルゴリズムは、それぞれの文字を 14 00:01:12,540 --> 00:01:16,759 アルファベット表で、いくつか後の文字に置きかえるものです。 15 00:01:16,759 --> 00:01:22,109 送り手と受け手だけが知っている数を「カギ」と呼びます。 16 00:01:22,109 --> 00:01:26,770 「カギ」をつかって、受け手は秘密のメッセージを開けることができます。 17 00:01:27,750 --> 00:01:33,759 例えば、もとのメッセージが HELLO で、シーザー暗号のカギが5だと、 暗号化されたメッセージは・・・ 18 00:01:38,369 --> 00:01:43,259 メッセージの複合は、カギを使って、ぎゃくのことをします。 19 00:01:45,709 --> 00:01:48,789 しかしシーザー暗号には、もんだいがあります。 20 00:01:48,789 --> 00:01:54,639 すべてのカギをためせば、だれでも、かんたんに、 暗号を、やぶることができます。 21 00:01:54,639 --> 00:02:02,129 アルファベットは26文字しかありません。 これは、26通りカギをためせば、複合化できるのです。 22 00:02:03,049 --> 00:02:08,020 たった26通りのカギをためすのは難しくありません。 1~2時間もあれば、じゅうぶんです。 23 00:02:08,020 --> 00:02:13,050 もっと難しくしましょう。すべての文字を同じだけ動かすのではなく、 24 00:02:13,050 --> 00:02:16,400 それぞれを、べつべつの数、動かします。 25 00:02:16,400 --> 00:02:23,500 この例では、10ケタのカギが、それぞれの文字をどれだけ変えるかを表します。 26 00:02:25,750 --> 00:02:34,160 このカギは本当に安全でしょうか? 10ケタの暗号は、10億通りのカギになります。 27 00:02:34,160 --> 00:02:39,170 これは人間には解読できません。数100年かかるでしょう。 28 00:02:39,860 --> 00:02:45,450 しかし今日のコンピュータは、10億通りを試すのに数秒しかかかりません。 29 00:02:46,030 --> 00:02:51,240 現代では、悪い人も、エンピツではなく、コンピュータを使います 30 00:02:51,240 --> 00:02:56,040 かれらに破られない「難しい」暗号メッセージはどのように作るのでしょうか? 31 00:02:56,040 --> 00:03:02,180 ここで「難しい」とは、ふつうの時間では計算がまにあわない、と言うい意味です。 32 00:03:02,990 --> 00:03:08,800 こんにち、安全な通信には、「256ビットのカギ」を使います。 これは、悪い人が、あなたのメッセージを読もうとしても 33 00:03:08,800 --> 00:03:18,360 暗号を破るには、カギの組み合わせが多すぎて、カギをやぶることができないのです 34 00:03:19,500 --> 00:03:24,040 たとえ 100,000 のスーパーコンピュータがあって、 35 00:03:24,040 --> 00:03:31,530 1秒で何億のカギを試すことができても、 すべてのカギを計算するには、何兆もの年数がかかるのです。 36 00:03:32,500 --> 00:03:37,690 たった一つの、256ビット暗号メッセージを、やぶるだけでも。 37 00:03:37,690 --> 00:03:43,320 コンピュータは、毎年、2倍の速さになり、半分の大きさになっています 38 00:03:43,320 --> 00:03:48,400 このペースが続けば、こんにち、不可能な計算も、何年かすれば、 39 00:03:48,400 --> 00:03:54,170 たった数100年で解決でき、256ビットでは、安全ではなくなるでしょう。 40 00:03:54,170 --> 00:04:00,300 じっさい、コンピュータの計算スピードに合わせて、カギも長くなっています。 41 00:04:01,070 --> 00:04:05,540 よいニュースは、長いキーを使うことは暗号メッセージを「難しく」するだけでなく、 42 00:04:05,540 --> 00:04:10,450 暗号を破るための試行回数を指数関数的に増やすことです。 43 00:04:11,210 --> 00:04:16,779 暗号と複合のために、送り手と受けてが、同じカギを使うことを 44 00:04:16,779 --> 00:04:23,129 「対称(たいしょう)カギ暗号」といいます。 対称カギ暗号では、シーザー暗号と同じく 45 00:04:23,129 --> 00:04:27,900 ひみつのカギを、手わたしして、2人が知っている必要があります。 46 00:04:27,900 --> 00:04:36,190 人は、これで良いですが、インターネットでは、2台のコンピュータが、こっそり会って、カギを教える、ことはできません。 47 00:04:37,390 --> 00:04:40,429 そのかわり、コンピュータは、「非対称(ひたいしょう)カギ暗号」を使います 48 00:04:40,429 --> 00:04:45,830 公開カギは、みんなに教えますが、 秘密カギは、ひみつです。だれにも教えません。 49 00:04:47,000 --> 00:04:58,690 公開カギは、だれでも知っていて、暗号で秘密のメッセージが作れます。 秘密カギは、複合して、読むときだけ使います。 50 00:04:58,690 --> 00:05:03,190 どのような数学を使っているのか、ここでは説明は省きますが、 51 00:05:03,190 --> 00:05:06,129 たとえば、あなたのメールボックスがあって、 52 00:05:06,129 --> 00:05:09,640 だれでも、「公開カギ」があれば、メールを預けることができる 53 00:05:09,640 --> 00:05:16,509 「公開カギ」は、好きなだけコピーを作って、友だちに送ったり、公開して自由につかえます 54 00:05:16,509 --> 00:05:22,060 あなたの友だちは、知らない人でも、公開カギでメッセージを預けます 55 00:05:22,060 --> 00:05:26,310 預けられたメッセージを取り出して、読むことができるのは、 56 00:05:26,310 --> 00:05:30,099 「秘密カギ」をもっている、あなただけです。 57 00:05:30,099 --> 00:05:35,510 あなたは、メールボックスに預けられた、公開カギをつかって メッセージを安全に、友人に返信できます。 58 00:05:35,510 --> 00:05:41,529 前もって、秘密カギを決めなくても、 安全なメッセージをやり取りできます。 59 00:05:41,529 --> 00:05:47,460 公開カギ暗号は、開かれたインターネットで、 安全にメッセージを送るために、ひつようなものです。 60 00:05:47,460 --> 00:05:54,300 ウェッブをブラウズするとき、 SSLやTLSといったセキュアプロトコルが、私たちを守っています。 61 00:05:54,300 --> 00:06:01,400 ブラウザのアドレスバーに、カギのマークや https が表示されていれば、 あなたのコンピュータは、これを使っています。 62 00:06:01,400 --> 00:06:09,739 コンピュータが、公開カギ暗号を使って、 データを安全に、やり取りしている、という意味です 63 00:06:09,739 --> 00:06:15,660 ますます、多くの人がインターネットを使い プライベートなデータがもっともっと増え、 64 00:06:15,660 --> 00:06:19,080 データを守ることが、ますます必要です。 65 00:06:19,080 --> 00:06:25,819 コンピュータは、どんどん早くなるので、破られない 難しい、新しい暗号を、開発しなければなりません 66 00:06:25,819 --> 00:06:29,769 これが、私の仕事です。つねに変化しつづけます。