1
00:00:08,642 --> 00:00:14,527
[ギター音楽]

2
00:00:34,018 --> 00:00:35,760
ジェフ・ウォール: 映像です

3
00:00:36,741 --> 00:00:37,810
いつもしていることです

4
00:00:37,810 --> 00:00:39,329
あの映像を探す

5
00:00:43,039 --> 00:00:44,350
被写体という人もいます

6
00:00:45,000 --> 00:00:46,950
私は出発点と呼びます

7
00:00:46,950 --> 00:00:47,820
同じことです

8
00:00:47,820 --> 00:00:49,320
何かが現れてくる

9
00:00:49,320 --> 00:00:56,300
例えば２００１年です
このドアを開けて外に出た時

10
00:00:56,300 --> 00:00:59,886
何人かの人が荷物を引いて歩いているのが見えました

11
00:01:00,910 --> 00:01:02,750
カメラを持っていたら写真を撮ったでしょう

12
00:01:02,750 --> 00:01:04,860
けれど持っていなかった

13
00:01:04,860 --> 00:01:11,189
出来事を再現する必要がありました

14
00:01:11,189 --> 00:01:16,670
２ブロック歩いたところで高架橋が見えました

15
00:01:16,670 --> 00:01:21,937
”ここだ”と思いました

16
00:01:25,579 --> 00:01:30,010
それまでこのようなことをしたいと思ったことは
一度もありませんでした

17
00:01:30,010 --> 00:01:31,490
偶然だったんです

18
00:01:32,082 --> 00:01:35,000
この偶然により新しい発想が生まれました

19
00:01:36,095 --> 00:01:39,575
何か絵を ー

20
00:01:39,575 --> 00:01:44,616
例えば北斎の”駿州江尻”を見ていたとします

21
00:01:45,000 --> 00:01:47,832
すぐに これは再現できるぞと思いつきます

22
00:01:50,453 --> 00:01:54,120
何かが起きるのを待たねばなりません

23
00:01:54,120 --> 00:01:58,816
そして何かが起こった時にはやるしか無い

24
00:02:01,342 --> 00:02:04,591
牛乳パックを持っていて

25
00:02:04,591 --> 00:02:07,200
何かの拍子で撒き散らしてしまう

26
00:02:07,200 --> 00:02:09,209
起こり得る話です

27
00:02:09,209 --> 00:02:15,130
みんなミルクをこぼしたことがあります
ただ 私はより洗練された方法で

28
00:02:15,130 --> 00:02:18,157
こぼれているのを見せているだけです

29
00:02:19,432 --> 00:02:24,980
[柔らかな電子音楽]

30
00:02:31,050 --> 00:02:33,810
生まれた時からこの街を知っています

31
00:02:33,810 --> 00:02:38,330
人生のほとんどをこの街で過ごしました
そういう人は街が好きか もしくは ー

32
00:02:38,430 --> 00:02:40,593
憎んでいるか

33
00:02:41,090 --> 00:02:42,680
多くのことを知っている

34
00:02:42,730 --> 00:02:47,029
多くのことがあった
だから私もバンクバーに複雑な思いを抱いています

35
00:02:47,980 --> 00:02:53,276
ここで仕事をするということは
そういった感情と折り合いをつけることだと感じます

36
00:02:55,959 --> 00:03:00,477
ある瞬間でどちらの感情が勝るかは
全くもって予測できません

37
00:03:03,390 --> 00:03:08,891
私の作品がそういったものを含んでいると思いたいものです

38
00:03:15,134 --> 00:03:27,943
♪ ♪

39
00:03:39,390 --> 00:03:44,550
いまだになぜ自分が絵描きにならなかったのかわかりません

40
00:03:44,740 --> 00:03:51,250
１９６４年頃 私が１９か２０歳の時に絵をやめました

41
00:03:51,250 --> 00:04:00,618
６０年代半ばは概念芸術のような
オルタナティブアートが爆発的に発生した時期でした

42
00:04:01,170 --> 00:04:06,759
どういうわけか当時のバンクーバーは
その風潮にピッタリはまっていたんです

43
00:04:08,189 --> 00:04:09,500
だから転向しました

44
00:04:09,500 --> 00:04:14,409
スタジオ持ちの絵描きをやめたんです
スタジオは１５歳の時に手に入れたものでした

45
00:04:14,409 --> 00:04:16,740
他のことに挑戦したかったんです

46
00:04:20,370 --> 00:04:29,232
写真に真剣に取り組むことになったのは
材料に未知の可能性があるとわかった時だと思います

47
00:04:30,753 --> 00:04:33,167
縮尺に関係がありました

48
00:04:33,167 --> 00:04:38,758
写真を大きくできないことに
技術な問題はないように思えました

49
00:04:38,758 --> 00:04:42,053
[機械音]

50
00:04:43,561 --> 00:04:47,592
写真は粗い分子構造のような美しい表面を持ちます

51
00:04:47,882 --> 00:04:51,117
見えているものと隠れているものがあります

52
00:04:52,050 --> 00:04:57,771
写真が引き伸ばされれば
それらが見えてきます

53
00:04:57,771 --> 00:05:00,229
[はっきりしない話し声]

54
00:05:00,229 --> 00:05:05,203
広告用の照明を見た時
「これを使ってみようと思いました

55
00:05:05,340 --> 00:05:06,590
興味深いものでした。

56
00:05:06,590 --> 00:05:10,528
光の具合が全く違うものだったんです

57
00:05:11,233 --> 00:05:14,411
それから照明を使いうまくいきました

58
00:05:16,413 --> 00:05:21,786
ある種硬質なイメージが生まれました

59
00:05:24,315 --> 00:05:29,490
どのように事を進めるかに決まったルールはありません

60
00:05:30,850 --> 00:05:33,850
時にレプリカを作ることもあります

61
00:05:36,695 --> 00:05:39,577
レプリカ作りはとても楽しい作業です

62
00:05:39,577 --> 00:05:45,270
技術的に興味深く
芸術家として没頭できます

63
00:05:46,862 --> 00:05:47,893
[ジェフ・ウォール] どこを見てる？

64
00:05:47,893 --> 00:05:49,349
— 手です。親指です

65
00:05:49,349 --> 00:05:50,982
[ジェフ・ウォール］アンドリューの顔を見て

66
00:05:51,187 --> 00:05:52,187
いま

67
00:05:52,391 --> 00:05:53,108
そうそう

68
00:05:53,108 --> 00:05:53,608
そんな感じ

69
00:05:53,608 --> 00:05:54,175
ああ いいね

70
00:05:54,403 --> 00:05:55,067
そのまま

71
00:05:55,067 --> 00:05:55,567
ゴー

72
00:05:56,754 --> 00:05:57,595
ストップ

73
00:05:58,534 --> 00:05:59,534
ゴー

74
00:06:00,803 --> 00:06:01,803
ストップ

75
00:06:02,303 --> 00:06:04,669
私の写真にはフェイクは収められていません

76
00:06:04,669 --> 00:06:06,310
起こったことは起こったことです

77
00:06:06,310 --> 00:06:07,505
— 本番

78
00:06:07,505 --> 00:06:08,280
[シャッター音　フラッシュ]

79
00:06:08,280 --> 00:06:09,301
うまくできた

80
00:06:09,301 --> 00:06:11,240
[シャッター音　フラッシュ]

81
00:06:11,240 --> 00:06:12,270
いいね

82
00:06:13,158 --> 00:06:21,445
偶然を捉えるのとデザインされたものを捉えるのに
大きな違いはありません

83
00:06:21,900 --> 00:06:27,816
つまり 嘘を写真の中に収めることは不可能なのです

84
00:06:28,613 --> 00:06:35,492
♪ ♪

85
00:06:52,080 --> 00:06:56,099
どんな種類のものであれ技術を修めるのは
簡単なことではないと思います

86
00:06:56,099 --> 00:06:58,970
写真も同じです

87
00:06:58,970 --> 00:07:00,660
シャッターを押すのは容易です

88
00:07:00,660 --> 00:07:03,651
— リハーサルをしよう

89
00:07:03,651 --> 00:07:06,650
始める前にきちんと印を確認して

90
00:07:06,650 --> 00:07:09,809
[ジェフ・ウォール]しかしうまくまとめるのは大変です

91
00:07:09,809 --> 00:07:12,150
集中力が必要です

92
00:07:12,150 --> 00:07:14,930
— あまり強そうに見えないね

93
00:07:14,930 --> 00:07:15,680
— はい

94
00:07:15,680 --> 00:07:20,266
— すぐにでも悪いことをしそうな格好をして

95
00:07:20,266 --> 00:07:21,266
—オーケー

96
00:07:21,949 --> 00:07:25,180
[ジェフ・ウォール] 演者と共に作品を作り上げることは
いつも即興的です

97
00:07:25,999 --> 00:07:28,500
—近くで見てみて

98
00:07:28,500 --> 00:07:33,379
[ジェフ・ウォール] 思いもしなかったものが得られます

99
00:07:33,379 --> 00:07:34,849
— ここにしよう

100
00:07:35,190 --> 00:07:38,190
— ミケランジェロの彫刻みたいに見えるよ

101
00:07:38,190 --> 00:07:39,650
[笑い]

102
00:07:39,878 --> 00:07:41,341
— 最高だ

103
00:07:48,395 --> 00:07:49,444
— 本番

104
00:07:50,878 --> 00:07:52,880
[シャッター音] 素晴らしい

105
00:07:54,815 --> 00:07:56,515
次

106
00:07:56,515 --> 00:07:59,334
３.２.１ 本番

107
00:08:00,340 --> 00:08:05,530
[ジェフ・ウォール] 納得のいくものを作るには
期限を定めない必要があると学びました

108
00:08:07,533 --> 00:08:11,879
５日 か１０日か
２０日かかるかもしれない

109
00:08:11,879 --> 00:08:13,830
実際わかりません

110
00:08:15,000 --> 00:08:21,650
何回でも同じ対象の写真を撮ることができます
その中に他のどれとも違う１枚があります

111
00:08:21,650 --> 00:08:24,190
そういうものなのです

112
00:08:24,190 --> 00:08:30,321
そして その１枚には思いもよらないものが写っているのです

113
00:08:34,190 --> 00:08:41,337
拘束された人がどこか他の場所へ
連れて行かれるところです

114
00:08:42,133 --> 00:08:44,718
ニュースでよく見る光景です

115
00:08:46,265 --> 00:08:53,010
これは対話が終わった後の状況です
なので１つ忍ばせておきました

116
00:08:53,010 --> 00:08:55,179
彼が話したんです

117
00:08:55,179 --> 00:08:59,312
そうしたら相手が耳を傾けました

118
00:08:59,562 --> 00:09:03,501
あまり起こらないことです

119
00:09:04,810 --> 00:09:08,420
会話は写真にとって大きなものです
映像に捉えられない

120
00:09:08,420 --> 00:09:10,690
見えない要素

121
00:09:10,690 --> 00:09:14,310
表現方法の限界です

122
00:09:15,266 --> 00:09:16,573
とても気に入っています

123
00:09:16,573 --> 00:09:19,101
常にどこかに穴があるんです

124
00:09:21,126 --> 00:09:26,301
[アコースティック音楽]

125
00:09:53,509 --> 00:09:56,518
写真は決して語りません

126
00:09:59,886 --> 00:10:04,606
物語を暗示するだけです

127
00:10:14,935 --> 00:10:21,211
写真を見る時実際は物語を書いているのです

128
00:10:24,215 --> 00:10:28,499
瞬間的に自身の物語を作ります

129
00:10:29,796 --> 00:10:32,520
人それぞれによって違う物語です

130
00:10:37,731 --> 00:10:42,373
”オリーブ農園の休憩”というタイトルの作品です

131
00:10:45,446 --> 00:10:51,510
この中にはベドウィンの農業従事者とオリーブ畑

132
00:10:51,510 --> 00:10:54,476
それとイスラエルで最大級の刑務所が写っています

133
00:10:55,819 --> 00:10:59,806
いろいろな事を考えさせられます

134
00:10:59,806 --> 00:11:03,750
ある人たちは星空の下で眠っています
貧しい人たちかもしれない

135
00:11:03,750 --> 00:11:05,670
監獄で眠っている人たちもいる

136
00:11:05,670 --> 00:11:06,700
彼らが何者かは誰も知りません

137
00:11:06,700 --> 00:11:10,000
そういう人たちが何千もいる

138
00:11:11,101 --> 00:11:14,644
私はそういった人たちに
共感のようなものを抱きます

139
00:11:15,100 --> 00:11:18,477
私が撮ったすべての人に
共感のようなものを抱きます

140
00:11:22,213 --> 00:11:26,970
鑑賞者と被写体の間に繋がりはありません

141
00:11:26,970 --> 00:11:31,234
その芸術性と美しさによって繋がりが作られるのです

142
00:11:32,668 --> 00:11:36,730
一枚のホームレスの絵を見たとします

143
00:11:36,730 --> 00:11:39,659
あなたは初めて経験するような感情を抱いた

144
00:11:39,659 --> 00:11:42,608
写真の中にいる対象を見たことがなかったからです

145
00:11:43,475 --> 00:11:48,100
そうしてこの写真が美しいのは
この人が美しいからだと気づく

146
00:11:49,466 --> 00:11:53,952
その感情が写真の中の対象によって
引き起こされたと気づいた時

147
00:11:53,952 --> 00:11:57,051
あなたと対象の間に新たな関係が生まれます

148
00:11:58,712 --> 00:12:02,655
これが芸術の社会的価値です

149
00:12:02,655 --> 00:12:11,860
芸術は何も強いません 命令もしません
ただ 経験を与えるか 経験自体を作り出すことにより ー

150
00:12:12,950 --> 00:12:15,000
そう 何かを変えるんです

151
00:12:16,685 --> 00:12:19,654
♪ ♪

152
00:12:19,654 --> 00:12:26,269
私の作品はほとんどがリアリズム的なものです

153
00:12:26,269 --> 00:12:29,590
一つの現象としてよく考えた時
写真とはそういうものだからです

154
00:12:29,590 --> 00:12:33,630
けれど常に記録者でいたいわけではありませんし

155
00:12:33,630 --> 00:12:35,899
そう騙りたくもありません

156
00:12:36,946 --> 00:12:41,916
視覚的な芸術作品は
際限なく見続けることができるなにかであるはずです

157
00:12:44,556 --> 00:12:51,153
突然 意味もなくある海のイメージが浮かんだとします

158
00:12:53,839 --> 00:12:57,896
白昼夢のようにです

159
00:13:03,450 --> 00:13:08,830
このようなイメージは刹那の間しか留まりません
イメージは消える

160
00:13:09,930 --> 00:13:12,452
しかし あなたは覚えている

161
00:13:12,748 --> 00:13:17,196
視覚の世界から去っていく

162
00:13:17,947 --> 00:13:19,750
私の中には常に

163
00:13:19,750 --> 00:13:22,000
映像と呼ばれる何かがあります

164
00:13:22,842 --> 00:13:24,842
♪ ♪

165
00:13:25,755 --> 00:13:29,285
あの映像を探しています
次のあの映像です

166
00:13:29,285 --> 00:13:31,766
♪ ♪

167
00:13:38,002 --> 00:13:49,845
[柔らかな電子音楽]