WEBVTT 00:00:13.407 --> 00:00:14.631 この4月から 00:00:14.631 --> 00:00:16.783 早番の時間帯に仕事することにしました 00:00:16.813 --> 00:00:18.874 2つ気がついた事があります 00:00:18.874 --> 00:00:23.252 早朝の4時というのは あまりに早すぎて ずっと大変です 00:00:23.252 --> 00:00:25.235 いっぽう早起きのおかげで 00:00:25.235 --> 00:00:28.873 素晴らしく美しい日の出があると知りました 00:00:28.873 --> 00:00:32.221 太陽の光には何かしら不思議な力があるのです 00:00:32.221 --> 00:00:33.834 光は言うまでもなくフォトンですが 00:00:33.834 --> 00:00:36.108 フォトンというのは興味深い粒子で 00:00:36.108 --> 00:00:37.586 質量がなくて 00:00:37.586 --> 00:00:39.622 常に光速で運動し 00:00:39.662 --> 00:00:41.937 ある量のエネルギーを 抱え込んでいます 00:00:42.567 --> 00:00:44.500 太陽から我々の元に届くフォトンは 00:00:44.500 --> 00:00:47.053 様々なレベルのエネルギーを持っています 00:00:47.053 --> 00:00:50.565 エネルギーあふれるブルーの光は 00:00:50.565 --> 00:00:52.912 大きなエネルギーを持っていますが 00:00:52.912 --> 00:00:55.165 空気の分子と相互作用して 00:00:55.165 --> 00:00:58.579 散乱してしまいます それが空が青い理由です 00:00:58.579 --> 00:01:00.883 一方のんびり屋の赤いフォトンは 00:01:00.883 --> 00:01:04.580 大気中を妨げられることなく真っすぐ進むので 00:01:04.580 --> 00:01:06.862 日の出は赤いのです 00:01:06.862 --> 00:01:09.475 太陽から来る全てのフォトンは 00:01:09.475 --> 00:01:11.914 このように様々なエネルギーを持っています 00:01:12.394 --> 00:01:14.209 さて問題はここです 00:01:14.209 --> 00:01:19.243 エネルギーを取り出す際には 特定の1波長を選んで最適化することになり 00:01:19.543 --> 00:01:22.064 それ以外の波長に対しては最適ではありません 00:01:22.974 --> 00:01:24.575 この事を理解するには 00:01:24.575 --> 00:01:27.543 ソーラーパネルの原理を 説明しなくてはなりません 00:01:28.173 --> 00:01:31.422 ソーラーパネルは半導体で作られていて 00:01:31.422 --> 00:01:34.361 半導体から電気を取り出すために 00:01:34.361 --> 00:01:37.638 電子を自然の状態から 00:01:37.638 --> 00:01:39.417 伝導帯に持ち上げます 00:01:39.787 --> 00:01:43.553 そのために必要となるエネルギーを バンドギャップと呼びます 00:01:43.553 --> 00:01:45.136 これには3つのパターンがあります 00:01:45.136 --> 00:01:48.819 まずフォトンが バンドギャップと同じエネルギーを持つ場合 00:01:48.819 --> 00:01:51.984 電子を伝導帯に持ち上げて 00:01:51.984 --> 00:01:54.424 役立てることができます 00:01:54.424 --> 00:01:55.733 第二のパターンは 00:01:55.733 --> 00:01:58.695 フォトンのエネルギーが バンドギャップよりも小さい時 00:01:58.708 --> 00:02:00.240 この場合はフォトンは 00:02:00.240 --> 00:02:01.690 使われずに通過します 00:02:01.690 --> 00:02:04.758 電子を放出させるのに 十分なエネルギーがないからです 00:02:05.188 --> 00:02:06.372 最後のパターンは 00:02:06.372 --> 00:02:09.554 フォトンがバンドギャップを上回る エネルギーを持つ場合です 00:02:09.554 --> 00:02:12.221 この 余剰分のエネルギーもまた 使うことができません 00:02:12.221 --> 00:02:16.775 なぜならこの場合も1個のフォトンから 1個の電子しか得られないからです 00:02:17.335 --> 00:02:19.566 現在の技術で望める最高の効率は 00:02:19.566 --> 00:02:23.594 得られるエネルギーのうち 24%を取り出す事です 00:02:24.134 --> 00:02:28.143 今日のソーラーパネルはこの原理的な 限界値に限りなく近づいています 00:02:28.833 --> 00:02:29.830 今年 00:02:29.830 --> 00:02:31.712 ソーラーパネルは 00:02:31.712 --> 00:02:35.682 世界で消費される電力のおよそ 5パーセントを供給しています 00:02:35.682 --> 00:02:37.580 もちろんこれではまだ不十分です 00:02:37.580 --> 00:02:39.681 我々の電源構成を組み替えるには 00:02:39.681 --> 00:02:42.247 もっともっとたくさんの ソーラーパネルを設置し 00:02:42.247 --> 00:02:45.535 それぞれのパネルの効率を 上げなければなりません 00:02:45.945 --> 00:02:48.341 しかし我々は原理的な限界に直面しています 00:02:48.761 --> 00:02:51.092 ここからどうやって先に 進めば良いのでしょう? 00:02:51.742 --> 00:02:54.756 ここでタンデムと呼ばれる解決策があります 00:02:55.326 --> 00:02:58.892 ヨーロッパとアメリカの研究所で 00:02:58.892 --> 00:03:00.743 民間の資金を主とした研究から 00:03:00.743 --> 00:03:02.618 画期的な成果が生まれ 00:03:02.618 --> 00:03:07.900 二種の半導体を利用して費用対効果の優れた タンデムモジュールができるようになりました 00:03:07.900 --> 00:03:12.282 上側ではバンドギャップの大きい材料を使って エネルギーの大きいフォトンを取り出し 00:03:12.282 --> 00:03:17.195 下側にはバンドギャップの小さい材料を使って エネルギーの小さいフォトンを捕まえます 00:03:17.195 --> 00:03:22.561 タンデムはソーラーパネルの エネルギー出力効率を35%まで改善します 00:03:22.561 --> 00:03:24.250 これを実現するために 00:03:24.250 --> 00:03:25.255 我々は 00:03:25.255 --> 00:03:29.111 あらゆる工学的課題と製造上困難な問題を 解決しなくてはなりません 00:03:29.111 --> 00:03:30.626 そして今日 00:03:30.626 --> 00:03:34.324 費用対効果を満足する解決策が見えてきて 00:03:34.324 --> 00:03:38.381 商業ベースのタンデムのモジュールが 00:03:38.381 --> 00:03:40.513 実現される日は近いのです 00:03:40.513 --> 00:03:43.660 これはソーラーパネルが1954年に 00:03:43.660 --> 00:03:48.110 ベル研究所で最初に発明されて以来 最大の革新です 00:03:48.610 --> 00:03:50.744 世界のどこにタンデムが設置されようとも 00:03:50.744 --> 00:03:53.727 単位面積当たりのエネルギー収量を 増大させるからです 00:03:53.727 --> 00:03:56.409 設置される全てのパネルが もっと効率的になります 00:03:56.409 --> 00:03:58.293 これは極めて重要な技術なのです 00:03:58.293 --> 00:04:02.471 我々は緊急性を持って たとえばインドなどの必要な所で 00:04:02.871 --> 00:04:04.697 普及させなければなりません 00:04:05.107 --> 00:04:08.750 インドは気候変動との戦いの最前線です 00:04:08.750 --> 00:04:11.498 人々は新しい解決策に飢えています 00:04:11.498 --> 00:04:14.997 人口あたりのエネルギー消費は 世界で最も少ないのです 00:04:14.997 --> 00:04:16.798 インドには 石炭よりも優れた方法で 00:04:16.798 --> 00:04:20.664 工業化する機会が与えられるべきです 00:04:20.664 --> 00:04:23.762 タンデム発電は そこに貢献できる可能性があります 00:04:23.762 --> 00:04:28.341 強力なタンデム発電モジュールで 水を 酸素と水素に電気分解したらどうでしょう 00:04:28.761 --> 00:04:31.860 エネルギー収量の向上したタンデム発電なら 00:04:31.860 --> 00:04:34.893 クリーンな水素が経済的に実現可能になります 00:04:34.893 --> 00:04:37.363 そしてクリーンな水素が得られれば 00:04:37.363 --> 00:04:42.441 膨大な量のエネルギーを長期間蓄える事ができ 00:04:42.441 --> 00:04:45.700 製鉄産業のエネルギー源にすることも可能です 00:04:46.140 --> 00:04:48.738 タンデム発電は変革をもたらします 00:04:48.738 --> 00:04:51.928 ただそれだけでは 不十分です 00:04:51.928 --> 00:04:53.865 気候変動の問題に打ち勝つには 00:04:53.865 --> 00:04:55.585 大変な覚悟が要ります 00:04:55.585 --> 00:04:58.037 今のところ我々は負けつつある状態です 00:04:58.387 --> 00:05:03.094 二酸化炭素の排出は減るどころか増えています 00:05:03.124 --> 00:05:04.531 これを変化させるには 00:05:04.551 --> 00:05:07.257 精神的に大きな変革が必要です 00:05:07.283 --> 00:05:09.634 自分の惑星について 00:05:09.634 --> 00:05:12.149 責任を持ってケアする必要があると 考える者が 00:05:12.149 --> 00:05:17.399 大半となるような 大きな転換点を 越えていかなければいけないのです 00:05:17.799 --> 00:05:20.418 現在我々はその転換点から ほど遠いところにいます 00:05:20.418 --> 00:05:24.014 しかしタンデムの発明により 道具立ては揃いつつあります 00:05:24.014 --> 00:05:27.410 あとは我々がこれをいかに 有効に使いこなすかにかかっています