[Script Info] Title: [Events] Format: Layer, Start, End, Style, Name, MarginL, MarginR, MarginV, Effect, Text Dialogue: 0,0:00:06.34,0:00:09.51,Default,,0000,0000,0000,,トニーです  "Every Frame a Painting" の時間です Dialogue: 0,0:00:09.51,0:00:12.34,Default,,0000,0000,0000,,私が映画製作者について発見した\N興味深いことのひとつは Dialogue: 0,0:00:12.34,0:00:16.11,Default,,0000,0000,0000,,シーンの細部を撮るときほど\N作者自身が現れることです Dialogue: 0,0:00:16.11,0:00:17.56,Default,,0000,0000,0000,,「何が望みだ」 Dialogue: 0,0:00:23.29,0:00:29.22,Default,,0000,0000,0000,,多くの人は 監督を、重要な場面、長回しや\Nスタイリッシュなものをどのように撮るかで見分けます Dialogue: 0,0:00:29.22,0:00:33.85,Default,,0000,0000,0000,,そしてそう 他の誰かのショットへの\Nオマージュなどでも見分けますね Dialogue: 0,0:00:33.85,0:00:37.56,Default,,0000,0000,0000,,しかし 遅かれ早かれ\N全ての映画製作者はこんな場面に立ち戻ります Dialogue: 0,0:00:37.56,0:00:42.25,Default,,0000,0000,0000,,2人が部屋で会話しています\Nそこには映画的なものはほとんどありません Dialogue: 0,0:00:42.25,0:00:45.14,Default,,0000,0000,0000,,これは映画製作者が本当に気を使っていることを\N教えてくれるようなシーンです Dialogue: 0,0:00:45.14,0:00:49.96,Default,,0000,0000,0000,,「もし医者でなかったら、数光年先に放置してやるところだ」 Dialogue: 0,0:00:49.96,0:00:53.45,Default,,0000,0000,0000,,「果てしなく光栄だね」\N「皮肉は慎め」 Dialogue: 0,0:00:53.45,0:00:56.95,Default,,0000,0000,0000,,デヴィッド・フィンチャーは?\N彼は情報に気を使います Dialogue: 0,0:00:56.95,0:01:01.41,Default,,0000,0000,0000,,多くの映画製作者は説明的になるのを避けようとしますが\N時折フィンチャーは何もしません Dialogue: 0,0:01:01.41,0:01:02.99,Default,,0000,0000,0000,,「塩のバランスは重要だ」 Dialogue: 0,0:01:02.99,0:01:05.63,Default,,0000,0000,0000,,「人間の脂肪が石けん作りに最適なんだ」 Dialogue: 0,0:01:06.81,0:01:09.37,Default,,0000,0000,0000,,「ここはどこだ」\N「痩身クリニック」 Dialogue: 0,0:01:09.67,0:01:13.86,Default,,0000,0000,0000,,彼の世界では、登場人物が新しい情報を知る時にドラマが起こります Dialogue: 0,0:01:13.86,0:01:15.35,Default,,0000,0000,0000,,「地下室に行けば すぐわかる」 Dialogue: 0,0:01:15.35,0:01:17.48,Default,,0000,0000,0000,,登場人物が既に知っている情報と、どう噛み合うでしょう? Dialogue: 0,0:01:17.48,0:01:20.04,Default,,0000,0000,0000,,「カルフォルニアでは地下室持ってる人なんて\N珍しいですよ」 Dialogue: 0,0:01:20.04,0:01:23.06,Default,,0000,0000,0000,,真実を知ったとき、登場人物はどう反応するでしょう? Dialogue: 0,0:01:23.06,0:01:24.06,Default,,0000,0000,0000,,「俺は持ってるんだ」 Dialogue: 0,0:01:25.76,0:01:30.06,Default,,0000,0000,0000,,フィンチャーのスタイルはこのアイデアの拡張であり\N彼の映画製作についての解説は興味深いものがあります Dialogue: 0,0:01:30.06,0:01:32.54,Default,,0000,0000,0000,,"何でも出来ることはわかっている。だから問題は" Dialogue: 0,0:01:32.54,0:01:36.37,Default,,0000,0000,0000,,"何をするかではなく、何をしないかだ" Dialogue: 0,0:01:36.37,0:01:40.21,Default,,0000,0000,0000,,では、デビッド・フィンチャーがしない事とは? Dialogue: 0,0:01:47.01,0:01:51.22,Default,,0000,0000,0000,,ひとつには手持ちカメラの使用\Nフィンチャーは三脚固定で撮る監督です Dialogue: 0,0:01:51.22,0:01:53.54,Default,,0000,0000,0000,,揺れるカメラを嫌い 1作品に1回使うかどうかです Dialogue: 0,0:01:53.54,0:01:56.07,Default,,0000,0000,0000,,『ドラゴンタトゥーの女』は2回で、『ゾディアック』は1回 Dialogue: 0,0:01:56.07,0:01:57.96,Default,,0000,0000,0000,,『ソーシャル・ネットワーク』はこれだけ Dialogue: 0,0:02:00.84,0:02:03.41,Default,,0000,0000,0000,,『セブン』は多い方で5回です Dialogue: 0,0:02:03.41,0:02:05.94,Default,,0000,0000,0000,,「電話 電話だ どこだ」 Dialogue: 0,0:02:05.94,0:02:08.52,Default,,0000,0000,0000,,カメラの揺れを使ったときでも、彼の演出意図に注意して下さい Dialogue: 0,0:02:08.52,0:02:11.08,Default,,0000,0000,0000,,刑事を揺れるカメラで撮り Dialogue: 0,0:02:11.08,0:02:14.05,Default,,0000,0000,0000,,場面の支配者たる犯人を固定カメラで撮ります Dialogue: 0,0:02:14.05,0:02:16.26,Default,,0000,0000,0000,,「箱には何が」\N「銃を渡せ」 Dialogue: 0,0:02:16.26,0:02:18.39,Default,,0000,0000,0000,,「何が入ってた」\N「銃を」 Dialogue: 0,0:02:18.39,0:02:19.68,Default,,0000,0000,0000,,「言っただろう」 Dialogue: 0,0:02:19.68,0:02:23.27,Default,,0000,0000,0000,,もうひとつフィンチャーが避けることは\Nカメラの人為的な操作感です Dialogue: 0,0:02:23.27,0:02:26.12,Default,,0000,0000,0000,,多くの監督は故意にカメラを揺らしたりしますし Dialogue: 0,0:02:26.12,0:02:29.25,Default,,0000,0000,0000,,また そこに人がいたように見えてしまうミスをします Dialogue: 0,0:02:29.25,0:02:30.76,Default,,0000,0000,0000,,フィンチャーは反対です Dialogue: 0,0:02:30.76,0:02:36.51,Default,,0000,0000,0000,,"僕は全知の感覚が好きで\Nカメラは完全にこの場所を見回して" Dialogue: 0,0:02:36.51,0:02:38.06,Default,,0000,0000,0000,,"また別の場所を見回す” Dialogue: 0,0:02:38.06,0:02:41.55,Default,,0000,0000,0000,,"そしてカメラが個性を持たないようにする\Nそれがとても好きなんだ" Dialogue: 0,0:02:41.55,0:02:44.04,Default,,0000,0000,0000,,"起こることは運命的に起こるんだ" Dialogue: 0,0:02:47.01,0:02:51.98,Default,,0000,0000,0000,,時々ショットが手動によるものかCGかを判断できなくなります Dialogue: 0,0:02:51.98,0:02:55.34,Default,,0000,0000,0000,,最後の効果は『シャイニング』のホテルのように不吉です Dialogue: 0,0:03:01.70,0:03:04.32,Default,,0000,0000,0000,,また、彼は必要がない限りクローズアップを撮りません Dialogue: 0,0:03:04.32,0:03:06.84,Default,,0000,0000,0000,,フィンチャーのクローズアップとインサートは特徴的です Dialogue: 0,0:03:06.84,0:03:10.94,Default,,0000,0000,0000,,彼はほとんどクローズアップを撮りません、なぜなら\N”クローズアップにすると観客は" Dialogue: 0,0:03:11.86,0:03:16.34,Default,,0000,0000,0000,,”「これを観ろ!これが重要だぞ!」と観客は知ってしまうからね” Dialogue: 0,0:03:16.34,0:03:19.70,Default,,0000,0000,0000,,”クローズアップを使うときは慎重にやる必要があるんだ” Dialogue: 0,0:03:22.85,0:03:25.69,Default,,0000,0000,0000,,どんな場面でも、クローズアップは一瞬だけです Dialogue: 0,0:03:25.69,0:03:28.60,Default,,0000,0000,0000,,そして監督するほどクローズアップが減っていきます Dialogue: 0,0:03:28.60,0:03:31.03,Default,,0000,0000,0000,,「あなたは本来なら国務長官よ」 Dialogue: 0,0:03:32.25,0:03:35.74,Default,,0000,0000,0000,,ここぞという瞬間だけ映すから力強いのです Dialogue: 0,0:03:38.72,0:03:41.39,Default,,0000,0000,0000,,最後に フィンチャーはそうしないですむなら\N絶対にカメラを動かしません Dialogue: 0,0:03:41.39,0:03:44.77,Default,,0000,0000,0000,,"僕は広いフレームで見せたいんだ" Dialogue: 0,0:03:44.77,0:03:48.80,Default,,0000,0000,0000,,"状況をできるだけ重くしないように" Dialogue: 0,0:03:48.80,0:03:51.22,Default,,0000,0000,0000,,”舞台の眼の前にいるみたいにね” Dialogue: 0,0:03:51.22,0:03:53.61,Default,,0000,0000,0000,,”今何が起こってるのか?\N今男たちは何を観ているのか?” Dialogue: 0,0:03:53.61,0:03:57.29,Default,,0000,0000,0000,,「注意を払う必要はない」\N「何だこれは?」 Dialogue: 0,0:03:57.30,0:03:59.68,Default,,0000,0000,0000,,このように彼が自らに課す制約を全て考えてみましょう Dialogue: 0,0:03:59.68,0:04:04.46,Default,,0000,0000,0000,,手ぶれ、人為性、不必要なクローズアップ、意味のないカメラの動き Dialogue: 0,0:04:04.46,0:04:08.42,Default,,0000,0000,0000,,さてフィンチャーに会話だけの場面を撮ってもらいましょう\N映画的にできるでしょうか? Dialogue: 0,0:04:08.42,0:04:11.03,Default,,0000,0000,0000,,「犯人は死ぬまで食わせ続けた」 Dialogue: 0,0:04:11.03,0:04:13.89,Default,,0000,0000,0000,,「検死官によると12時間以上も」 Dialogue: 0,0:04:13.89,0:04:16.88,Default,,0000,0000,0000,,話の内容はともかく ドラマは映画的です Dialogue: 0,0:04:16.88,0:04:19.75,Default,,0000,0000,0000,,3人の場面です 1人は立ち、2人は座っています Dialogue: 0,0:04:19.75,0:04:22.43,Default,,0000,0000,0000,,まずフィンチャーは2人の会話に注目させます Dialogue: 0,0:04:22.43,0:04:27.08,Default,,0000,0000,0000,,ショットサイズ(画面を占める体の割合)から、\N主任よりサマセットの方が影響力があるとわかりますが、どちらも譲歩しません。 Dialogue: 0,0:04:27.08,0:04:30.99,Default,,0000,0000,0000,,サマセットが事件から降りようとすると…\N「担当は外してほしい」 Dialogue: 0,0:04:30.99,0:04:33.67,Default,,0000,0000,0000,,主任とサマセットを写す別アングルに移動します Dialogue: 0,0:04:33.67,0:04:35.94,Default,,0000,0000,0000,,ここでミルズは自分のやり方でいこうする気配を出します Dialogue: 0,0:04:35.94,0:04:39.10,Default,,0000,0000,0000,,しかしサマセットの目線は 他所を向いて無視します Dialogue: 0,0:04:39.10,0:04:41.97,Default,,0000,0000,0000,,ミルズが遮って Dialogue: 0,0:04:41.97,0:04:43.45,Default,,0000,0000,0000,,「俺はここにいるんだ 顔みて言えよ」 Dialogue: 0,0:04:43.45,0:04:46.34,Default,,0000,0000,0000,,カメラはこのアングルに戻り \Nサマセットはついに彼と向き合います Dialogue: 0,0:04:46.34,0:04:48.88,Default,,0000,0000,0000,,主任は窮地に陥り \N姿勢を正さねばなりません Dialogue: 0,0:04:48.88,0:04:51.89,Default,,0000,0000,0000,,「俺がやります」\N「駄目だ 他をやれ」 Dialogue: 0,0:04:51.89,0:04:57.26,Default,,0000,0000,0000,,この場面で唯一の主任のクローズアップです \Nミルズが追い出される時のためのとっておきです Dialogue: 0,0:04:57.26,0:04:59.98,Default,,0000,0000,0000,,だから無音でも、このシーンの意図はわかります Dialogue: 0,0:04:59.98,0:05:03.28,Default,,0000,0000,0000,,このドラマを見せるためにフィンチャーは\Nあなたの眼を奪い ここに連れてきました Dialogue: 0,0:05:03.28,0:05:06.26,Default,,0000,0000,0000,,これを見せるために\Nそしてこの幕引きのために Dialogue: 0,0:05:06.26,0:05:10.36,Default,,0000,0000,0000,,3人の人物、3つの関係をカメラがすべて撮れるよう\N舞台配置されています Dialogue: 0,0:05:10.36,0:05:11.89,Default,,0000,0000,0000,,「残念だが」 Dialogue: 0,0:05:11.89,0:05:15.16,Default,,0000,0000,0000,,次の同じ登場人物の場面です\Nミルズが座っている距離の遠さに注目してください Dialogue: 0,0:05:15.16,0:05:17.38,Default,,0000,0000,0000,,しかし、サマセットが説明を始めると… Dialogue: 0,0:05:18.01,0:05:22.36,Default,,0000,0000,0000,,「大食 強欲」 Dialogue: 0,0:05:22.36,0:05:25.92,Default,,0000,0000,0000,,彼らが目を合わせるのを同じ画面の中で見せるために\Nフィンチャーはここに誘導しました Dialogue: 0,0:05:25.92,0:05:28.02,Default,,0000,0000,0000,,たとえ彼らが別の10分で\N協力しあっていなくても Dialogue: 0,0:05:28.02,0:05:30.32,Default,,0000,0000,0000,,ここで互いに尊敬し始めます Dialogue: 0,0:05:30.32,0:05:33.27,Default,,0000,0000,0000,,実際に『セブン』を観ると Dialogue: 0,0:05:33.27,0:05:35.58,Default,,0000,0000,0000,,どのカットにおいても\N二人の関係の進展をみることができます Dialogue: 0,0:05:35.58,0:05:38.68,Default,,0000,0000,0000,,関係はこれで終わります 良い演出です Dialogue: 0,0:05:39.27,0:05:41.90,Default,,0000,0000,0000,,フィンチャーは年齢を重ねるにつれ\Nより巧妙になります Dialogue: 0,0:05:41.90,0:05:44.80,Default,,0000,0000,0000,,たとえば 不在を表現するのは こんな風にとても上手です Dialogue: 0,0:05:44.80,0:05:46.61,Default,,0000,0000,0000,,誰もいない椅子を撮ったり Dialogue: 0,0:05:46.61,0:05:51.27,Default,,0000,0000,0000,,「エドワードはハーバードインベスターズの社長で\N彼は僕の親友だ」 Dialogue: 0,0:05:51.27,0:05:53.27,Default,,0000,0000,0000,,または夫がいない空間を撮ったり Dialogue: 0,0:05:53.27,0:05:55.13,Default,,0000,0000,0000,,「ひどすぎるわ\N話をしましょう」 Dialogue: 0,0:05:56.51,0:05:57.99,Default,,0000,0000,0000,,「いつこれは終わるの?」 Dialogue: 0,0:05:57.99,0:06:02.30,Default,,0000,0000,0000,,誰かが幸せそうにレンズを覗きこんだ一瞬で、フィンチャーはシーン全体を組み立てます Dialogue: 0,0:06:02.30,0:06:05.34,Default,,0000,0000,0000,,「ここにいれて嬉しいです。\N使ってくれて感謝します」 Dialogue: 0,0:06:05.34,0:06:08.95,Default,,0000,0000,0000,,あるいは怯えたり\N「気をつけろよ サム」 Dialogue: 0,0:06:08.95,0:06:11.07,Default,,0000,0000,0000,,そして 冷蔵庫の中を見せたりします Dialogue: 0,0:06:15.82,0:06:21.60,Default,,0000,0000,0000,,フィンチャーが妥協しないという噂は本当で\N1つのシーンを50~60回、多いときは99回撮影します Dialogue: 0,0:06:21.60,0:06:26.38,Default,,0000,0000,0000,,「二重虹?どういうことなんだ」 Dialogue: 0,0:06:26.38,0:06:30.10,Default,,0000,0000,0000,,また、優れた演出をみるのは素晴らしいことです Dialogue: 0,0:06:30.10,0:06:34.70,Default,,0000,0000,0000,,ひとつのカットで力関係の変化を示す演出を Dialogue: 0,0:06:34.70,0:06:36.45,Default,,0000,0000,0000,,「電話線を切れ」 Dialogue: 0,0:06:36.45,0:06:38.85,Default,,0000,0000,0000,,そのひと時をじっくり楽しもうとする演出を Dialogue: 0,0:06:44.64,0:06:48.29,Default,,0000,0000,0000,,ただA地点からB地点に移動する人をみせる演出を Dialogue: 0,0:06:48.29,0:06:53.62,Default,,0000,0000,0000,,たとえフィンチャーが好きではなくても\Nこれは現在において最高レベルの演出技法であり、絶対に学ぶ価値があるものです Dialogue: 0,0:06:54.73,0:07:00.53,Default,,0000,0000,0000,,「俺はゾディアックじゃない。たとえそうでも言うわけがない」 Dialogue: 0,0:07:00.53,0:07:03.39,Default,,0000,0000,0000,,それから もしあなたが本当にフィンチャーを好きなら\N彼はあなた達をこんなふうに考えています Dialogue: 0,0:07:03.39,0:07:06.68,Default,,0000,0000,0000,,"僕は人々は変態だと思ってる" Dialogue: 0,0:07:06.68,0:07:08.77,Default,,0000,0000,0000,,"そして、僕はそれを支持するよ" Dialogue: 0,0:07:08.77,0:07:11.03,Default,,0000,0000,0000,,"それが僕のキャリアの基礎だからね"