1 00:00:01,080 --> 00:00:03,150 [ドラムを叩く音] 2 00:00:09,560 --> 00:00:11,040 始まりなんかないよ。 3 00:00:11,040 --> 00:00:13,540 [ドラムを叩く音] 4 00:00:32,260 --> 00:00:35,820 これで…十分かな。 5 00:00:36,340 --> 00:00:37,715 [ドラムを叩く音] 6 00:00:37,715 --> 00:00:42,215 [ケビン・ビーズリーの原料] 7 00:00:42,610 --> 00:00:43,500 [手を叩く音] 8 00:00:43,500 --> 00:00:44,579 いまは 9 00:00:44,579 --> 00:00:50,170 ホイットニー美術館での展覧会に向けてエネルギーを注いでいます。 10 00:00:50,170 --> 00:00:54,300 ニューヨークでは初めてとなる個展です。 11 00:00:57,680 --> 00:01:00,360 今回のプロジェクトはいくつかの部分に分かれています。 12 00:01:01,760 --> 00:01:04,860 そのひとつは、綿繰り機のモーターと 13 00:01:04,860 --> 00:01:08,780 三つの大きな彫刻作品からなる 14 00:01:09,340 --> 00:01:13,860 サウンド・インスタレーションです。 15 00:01:15,420 --> 00:01:19,450 この作品は2011年の夏、バージニア州バレンタインズでの 16 00:01:19,450 --> 00:01:24,040 親族の集まりから得た経験に基づいています。 17 00:01:25,520 --> 00:01:27,600 私はニュー・ヘイブンから車で向かいました。 18 00:01:27,600 --> 00:01:34,680 土地には家へとつながる曲がりくねった道があります。 19 00:01:35,860 --> 00:01:39,160 見上げると、畑にはなにか植えてあります。 20 00:01:40,460 --> 00:01:42,220 車を停めてよく見てみました。 21 00:01:43,390 --> 00:01:46,280 「いったいなんだこれは?」と思ったのです。 22 00:01:46,280 --> 00:01:51,040 車の窓を開けると、綿だと気づきました。 23 00:01:52,220 --> 00:01:57,520 それはよくわからない形で私に衝撃を与えたのです。 24 00:01:57,520 --> 00:01:59,220 感情的に、重すぎたのです。 25 00:01:59,220 --> 00:02:00,960 精神的にも、重すぎたのです。 26 00:02:01,400 --> 00:02:03,460 何かが受け入れられないと感じたのです。 27 00:02:03,460 --> 00:02:06,320 「なぜこんなにこの植物が憎いのだろう?」と。 28 00:02:07,120 --> 00:02:13,160 この植物はただ育ち、美しくあろうとしかしていません。 29 00:02:14,840 --> 00:02:19,520 分析しなければならないことがたくさんあると感じました。 30 00:02:21,260 --> 00:02:26,200 この綿についてですが。 31 00:02:28,200 --> 00:02:31,610 これらはすべて種が除かれています。 32 00:02:31,610 --> 00:02:34,240 バージニア州― 33 00:02:34,240 --> 00:02:36,520 バレンタインズ産のものです。 34 00:02:36,530 --> 00:02:40,440 未加工の綿を素材として使うことは非常に重要です。 35 00:02:40,440 --> 00:02:45,110 なぜなら素材志向の私にとって 36 00:02:45,110 --> 00:02:50,200 素材にはそれぞれコンテクストがあるからなのです。 37 00:02:51,320 --> 00:02:56,040 展覧会では三つの大きな彫刻作品が設置されます。 38 00:02:56,040 --> 00:03:01,840 私は建築との関係からそれらを平板と呼んでいます。 39 00:03:01,840 --> 00:03:05,230 それらは全く違う素材からできています。 40 00:03:06,120 --> 00:03:07,560 これはセーターです。 41 00:03:08,680 --> 00:03:11,260 イェール大学の 42 00:03:13,060 --> 00:03:15,060 良質でプレッピーな綿のセーターです。 43 00:03:15,760 --> 00:03:19,340 こちらは青いドゥーラグです。 44 00:03:20,120 --> 00:03:23,260 川、あるいは 45 00:03:23,260 --> 00:03:26,460 流れる水を表現しています。 46 00:03:26,840 --> 00:03:31,440 すべての素材にはそれぞれ歴史や命があります。 47 00:03:31,440 --> 00:03:33,640 よって物語を語る手段となるのです。 48 00:03:35,460 --> 00:03:42,280 これは私がイェール大の卒業式で着たガウンの襟です。 49 00:03:42,280 --> 00:03:45,040 綿はあらゆることを考えさせてくれます。 50 00:03:45,040 --> 00:03:46,300 政治について。 51 00:03:46,300 --> 00:03:48,880 自分の社会的関係について。 52 00:03:48,880 --> 00:03:51,300 経済について。 53 00:03:51,300 --> 00:03:52,800 賠償について。 54 00:03:53,740 --> 00:03:57,940 すべてが広がっていくのです。 55 00:04:01,140 --> 00:04:06,150 これらのページは大西洋を横断する奴隷売買の地図帳の一部です。 56 00:04:06,150 --> 00:04:09,280 [大西洋を横断する奴隷売買の地図帳] 57 00:04:09,880 --> 00:04:13,080 これらの記録が長い間、細部にわたって残されていたことは 58 00:04:13,090 --> 00:04:14,730 驚くべきことです。 59 00:04:14,730 --> 00:04:18,540 しかしこれは貿易や商業の暗示でもあります。 60 00:04:19,440 --> 00:04:22,810 すべてのもの、すべての動きが記録されます。 61 00:04:22,810 --> 00:04:26,160 なぜならそこにはお金、資本が関わるからです。 62 00:04:27,200 --> 00:04:29,080 しかしこれらは人間の身体です。 63 00:04:30,760 --> 00:04:35,300 現在の状況で黒人であること― 64 00:04:35,300 --> 00:04:39,480 それが前へと進む原動力となるのです。 65 00:04:39,480 --> 00:04:41,880 「一定の時間があります。」 66 00:04:41,880 --> 00:04:43,560 「一定の空間があります。」 67 00:04:43,560 --> 00:04:44,820 これらは誤った語り口なのです。 68 00:04:44,820 --> 00:04:48,260 しかしそれはプレッシャーを感じる要因でもあります。 69 00:04:48,660 --> 00:04:52,580 私にとってそれが彫刻を制作することの本質なのです。 70 00:04:53,280 --> 00:04:56,080 鑑賞者は作品の素材と向き合わなければなりません。 71 00:04:56,420 --> 00:04:59,380 これらの作品はそれを要求します。 72 00:04:59,660 --> 00:05:02,980 作品があなたに対面するため― 73 00:05:04,100 --> 00:05:06,000 あなたも向き合うことを求められます。 74 00:05:07,300 --> 00:05:10,580 [ドラムを叩く音] 75 00:05:25,780 --> 00:05:27,400 [沈黙] 76 00:05:27,400 --> 00:05:29,410 私は綿繰り機を探していました。 77 00:05:29,410 --> 00:05:31,460 綿を持っていたので 78 00:05:31,460 --> 00:05:34,620 Tシャツや服を作れるかもしれないと考えていました。 79 00:05:35,240 --> 00:05:37,050 eBayにアクセスして 80 00:05:37,050 --> 00:05:40,610 小さな手持ちの、手回しのものを探していると 81 00:05:40,610 --> 00:05:46,620 最初に見つけたのがこの大きな綿繰り機のモーターの広告でした。 82 00:05:47,440 --> 00:05:50,730 私が何をすべきか伝えているように感じられました。 83 00:05:51,440 --> 00:05:55,480 綿繰り機は1794年にイーライ・ホイットニーによって発明されました。 84 00:05:55,900 --> 00:05:59,740 それは種から繊維を分けるもので 85 00:06:00,120 --> 00:06:04,340 奴隷にとって最も時間のかかる作業でした。 86 00:06:05,400 --> 00:06:09,120 人々はその発明によって奴隷の数が減ると考えました。 87 00:06:09,120 --> 00:06:11,270 しかし実際はその反対でした。 88 00:06:11,270 --> 00:06:14,580 なぜなら土地がさらに入手され農地が広がったからです。 89 00:06:14,980 --> 00:06:17,880 綿繰り機は奴隷の数を増やしました。 90 00:06:20,360 --> 00:06:24,840 モーターは防音ガラスの中に入っています。 91 00:06:25,060 --> 00:06:28,950 それが稼働しているのを見ながらも 92 00:06:28,950 --> 00:06:32,640 音が聞こえないという体験を可能にするためです。 93 00:06:38,260 --> 00:06:42,900 どんな音がするのか前の所有者に尋ねたところ 94 00:06:42,900 --> 00:06:45,850 うまく言葉で表現できなかったという体験をもとに 95 00:06:45,850 --> 00:06:47,550 このような形をとっています。 96 00:06:47,550 --> 00:06:51,490 前の所有者はこの音を表現する言葉を有していませんでした。 97 00:06:51,490 --> 00:06:54,700 実際に自分で体験するしかないのです。 98 00:06:59,400 --> 00:07:00,280 よし。 99 00:07:01,320 --> 00:07:04,390 音は私にとって常に重要なものであり続けています。 100 00:07:05,520 --> 00:07:10,560 それはますます世界を把握するための手段となっています。 101 00:07:11,960 --> 00:07:16,120 音は他の素材と同じくらい物質的で触覚的です。 102 00:07:16,120 --> 00:07:20,110 [音声処理された綿繰り機のモーターの音] 103 00:07:35,920 --> 00:07:37,060 [沈黙] 104 00:07:37,060 --> 00:07:40,350 [ホイットニー美術館] 105 00:07:45,000 --> 00:07:50,360 見えないものや昔ながらの方法では感じられないものの 106 00:07:50,360 --> 00:07:54,100 物質性や触覚性をどのようにして伝えるのでしょう。 107 00:07:55,340 --> 00:07:56,560 [音声処理されたモーターの音] 108 00:07:56,560 --> 00:07:59,140 [リスニングルーム] 109 00:08:05,240 --> 00:08:07,280 それは体の中を震えさせます。 110 00:08:07,280 --> 00:08:08,840 振動を感じられます。 111 00:08:10,060 --> 00:08:13,371 人は座ってこれを聴きたいでしょうか。 112 00:08:13,371 --> 00:08:16,650 この音はなんなのか、どこから来ているのか 113 00:08:16,650 --> 00:08:20,000 時間をかけて考えたいでしょうか。 114 00:08:26,560 --> 00:08:31,140 私が関心を持っているのは 人々がこの素材との関係について自問すること― 115 00:08:32,110 --> 00:08:34,709 アメリカの南部という 116 00:08:34,709 --> 00:08:38,869 ある特定の地域で作られた綿による壁面を見て 117 00:08:38,869 --> 00:08:42,440 それと自身との関係について考え 118 00:08:42,440 --> 00:08:46,290 どのように自分が関与していると感じるのかということです。 119 00:08:51,300 --> 00:08:55,880 これらのものを把握し理解するために 私たちは十分な時間をかけているでしょうか。 120 00:08:58,200 --> 00:09:04,269 人々が時間をかけるシナリオを設定すること― 121 00:09:04,269 --> 00:09:07,400 それが私にできることです。