WEBVTT 00:00:12.296 --> 00:00:15.806 子供の頃 自分には 特別な力があると信じていました 00:00:18.066 --> 00:00:19.282 笑っちゃいますよね 00:00:19.286 --> 00:00:20.352 (笑) 00:00:20.376 --> 00:00:22.526 私って本当にすごいんだから と自信満々でした 00:00:22.526 --> 00:00:26.552 褐色肌の人たちの気持ちが わかったからです 00:00:26.576 --> 00:00:29.976 例えば保守的なムスリムである 祖父のような人です 00:00:30.456 --> 00:00:35.352 また アフガニスタン人の母や パキスタン人の父のような 00:00:35.376 --> 00:00:39.276 そこまで信仰が深くない リベラル派の人々も理解できました 00:00:39.776 --> 00:00:41.392 それから もちろん 00:00:41.416 --> 00:00:43.832 白人の気持ちだって 理解できました 00:00:43.856 --> 00:00:45.816 私の故郷 ノルウェーの白人です 00:00:46.776 --> 00:00:49.352 白人であれ 褐色人種であれ どんな人であっても 00:00:49.376 --> 00:00:51.192 みんなが大好きでしたし 00:00:51.216 --> 00:00:52.472 みんなを理解していました 00:00:52.496 --> 00:00:54.832 その人たち同士は 必ずしも理解し合えなくても 00:00:54.856 --> 00:00:56.136 みんな私の仲間でした 00:00:56.896 --> 00:00:59.832 それでも 父は いつも私のことを心配して 00:00:59.856 --> 00:01:03.192 私にこう言い続けました 最良の教育を受けたって 00:01:03.216 --> 00:01:06.392 白人とは平等に扱われないと 00:01:06.416 --> 00:01:09.832 賢くなったって 差別は受けるだろうし 00:01:09.856 --> 00:01:12.672 認められたいなら 有名になるしかない というのが 00:01:12.696 --> 00:01:14.872 父の言い分でした 00:01:14.896 --> 00:01:18.896 7歳の時 父との会話で こんなことまで言われたんです 00:01:19.736 --> 00:01:22.712 7歳の私に向かって 父は 00:01:22.736 --> 00:01:26.112 「認められるにはスポーツか 音楽をやるしかないぞ」と言いました 00:01:26.136 --> 00:01:30.592 父は残念ながらスポーツができず 音楽をやる羽目になりました 00:01:30.616 --> 00:01:34.952 7歳の時 私のおもちゃと人形は 父が残らず かき集めて 00:01:34.976 --> 00:01:36.576 捨ててしまいました 00:01:37.456 --> 00:01:41.312 代わりに与えられたのは 安っぽい小さなキーボードと 00:01:41.336 --> 00:01:42.552 (笑) 00:01:42.576 --> 00:01:44.592 そして 歌の稽古です 00:01:44.616 --> 00:01:49.392 何時間も何時間も 毎日欠かさず 練習を強いられました 00:01:49.416 --> 00:01:53.672 すぐに 人前で演奏もさせられ お客さんは増えていきました 00:01:53.696 --> 00:01:57.376 面白いことに ノルウェーの多様性を 象徴するような存在になりました 00:01:57.376 --> 00:01:59.576 面白いことに ノルウェーの多様性を 象徴するような存在になりました 00:02:00.056 --> 00:02:01.792 もちろん とても誇らしかったです 00:02:01.816 --> 00:02:05.152 この頃は 新聞にも 褐色人種の人が 00:02:05.176 --> 00:02:07.752 好意的に取り上げられるようになり 00:02:07.776 --> 00:02:10.936 自分の特別な力が増しつつあるような 実感がありました 00:02:12.256 --> 00:02:15.232 12歳の時 学校からの帰り道に 00:02:15.256 --> 00:02:16.472 少し遠回りをして 00:02:16.496 --> 00:02:19.962 大好きなsalty feet (しょっぱい足) を買いに行きました 00:02:19.986 --> 00:02:21.472 大好物でした 00:02:21.496 --> 00:02:23.592 お店に入る途中で 00:02:23.616 --> 00:02:28.252 大きな白人男性が 入り口を塞いでいました 00:02:28.272 --> 00:02:34.112 避けて通ろうとしたら 今度は私の前に立ち塞がり 00:02:34.136 --> 00:02:35.936 ジロジロ見てきました 00:02:36.896 --> 00:02:38.832 そして 私の顔に唾を吐きかけ 00:02:38.856 --> 00:02:40.072 「邪魔なんだよ 00:02:40.096 --> 00:02:43.352 黒人のクソガキ パキのクソガキ 00:02:43.376 --> 00:02:45.296 国に帰りやがれ」 00:02:46.296 --> 00:02:49.392 私は完全に恐怖で凍りつき 00:02:49.416 --> 00:02:50.712 その男をじっと見たまま 00:02:50.736 --> 00:02:53.656 怖さのあまり 顔についた唾を 拭うことさえできずにいました 00:02:54.536 --> 00:02:56.672 自分の涙が男の唾に 混じってもです 00:02:56.696 --> 00:02:59.286 周りを見渡しながら こう願っていました 00:02:59.286 --> 00:03:04.072 今すぐ 誰か大人が駆けつけて来て この男を止めてくれればと 00:03:04.096 --> 00:03:08.416 でも 周りの人は見ないフリをして 急ぎ足で通り過ぎて行きました 00:03:08.856 --> 00:03:12.636 私は非常に混乱し こんなことを思っていました 00:03:13.336 --> 00:03:16.632 「白人の仲間たち 何とかしてよ! どこにいるの? 何が起こってるの? 00:03:16.656 --> 00:03:18.836 どうして誰も 助けに来てくれないの?」 00:03:19.456 --> 00:03:21.712 当然ですが お菓子は買いませんでした 00:03:21.736 --> 00:03:23.856 全速力で家に帰りました 00:03:24.736 --> 00:03:26.816 その時は もう大丈夫だと思いましたが 00:03:27.496 --> 00:03:30.592 時が経ち 音楽活動が軌道に乗るにつれて 00:03:30.616 --> 00:03:34.846 褐色肌の人たちからも 嫌がらせを受けるようになりました 00:03:36.216 --> 00:03:38.666 両親と同じコミュニティーの 一部の男性にとっては 00:03:38.666 --> 00:03:44.392 女性が音楽活動をしたり メディアでもてはやされるなんて 00:03:44.416 --> 00:03:46.376 不名誉だし言語道断だったのです 00:03:48.076 --> 00:03:53.492 間もなく 自分のコンサートで 襲撃を受けるようになりました 00:03:53.516 --> 00:03:58.532 あるコンサートでの出来事です 舞台から乗り出した私の目に 00:03:58.556 --> 00:04:01.812 最後に映ったのは 褐色肌の若者の顔でした 00:04:01.836 --> 00:04:06.052 次の瞬間 私の目をめがけて 薬品のようなものが飛んで来て 00:04:06.076 --> 00:04:09.292 ほとんど何も見えなくなり 目からは涙が溢れましたが 00:04:09.316 --> 00:04:11.066 それでも歌い続けました 00:04:11.635 --> 00:04:16.356 オスロの街角で 今度は褐色肌の男性から 顔に唾を吐かれたこともありました 00:04:17.156 --> 00:04:20.372 誘拐されそうになったことさえあります 00:04:20.396 --> 00:04:22.452 殺しの脅迫は後を絶たず 00:04:22.476 --> 00:04:25.732 髭を生やした中年男性から 街角で呼び止められて 00:04:25.756 --> 00:04:27.892 こう言われました 「お前が心底憎らしい 00:04:27.916 --> 00:04:29.972 お前のせいで 俺の娘まで 00:04:29.996 --> 00:04:31.686 好き勝手できると思ってるんだ」 00:04:33.356 --> 00:04:36.172 若い男性から 警告されたこともありました 00:04:36.196 --> 00:04:39.212 音楽はイスラームの教えに反するし 売春婦の仕事だ 00:04:39.236 --> 00:04:41.972 活動を続けるならば レイプしてやる 00:04:41.996 --> 00:04:46.766 そして私のような売春婦が 再び生まれないように腹を切り裂いてやるぞと 00:04:48.356 --> 00:04:50.052 私はここでも 非常に戸惑いました 00:04:50.076 --> 00:04:51.981 事態が理解できませんでした 00:04:52.005 --> 00:04:55.715 褐色肌の仲間にも こんな扱いを 受けるようになるなんて 一体なぜなの? 00:04:56.356 --> 00:04:59.452 2つの世界の 橋渡しになるのではなく 00:04:59.476 --> 00:05:02.476 2つの世界の間の溝に 落ちていくような感覚でした 00:05:02.796 --> 00:05:05.396 唾を吐かれて 私の力は奪われたのでしょう 00:05:07.356 --> 00:05:09.372 17歳になっても 00:05:09.396 --> 00:05:12.412 殺しの脅迫は後を絶たず 嫌がらせも続いていました 00:05:12.436 --> 00:05:15.198 状況があまりにも悪化したので ついに 母が口を開きました 00:05:15.222 --> 00:05:18.692 「もうあなたを守りきれないし 安全も保証できないの 00:05:18.716 --> 00:05:20.492 逃げるしか道はないのよ」 00:05:20.516 --> 00:05:25.916 私はロンドンへの片道切符を手にし 荷物をまとめて国を去りました 00:05:26.956 --> 00:05:30.652 あの頃 1番辛かったのは 誰も何も言ってくれなかったことです 00:05:30.676 --> 00:05:33.096 私のノルウェー脱出は 大きく報じられたのに 00:05:33.916 --> 00:05:37.452 褐色肌の仲間も 白人の仲間も 誰も何も言いませんでした 00:05:37.476 --> 00:05:39.596 「待って おかしいよ 00:05:40.756 --> 00:05:44.452 この子を応援しようよ 守ろうよ 私たちの仲間なんだから」だなんて 00:05:44.476 --> 00:05:46.092 誰も言いませんでした 00:05:46.116 --> 00:05:49.426 それどころか こんな気持ちでした 空港の手荷物引取所で 00:05:49.916 --> 00:05:52.772 ベルトコンベアーの上を 様々なスーツケースが 00:05:52.796 --> 00:05:54.052 回り続けていますが 00:05:54.076 --> 00:05:56.572 必ず ポツンと1つ残る スーツケースがあります 00:05:56.596 --> 00:05:59.612 誰も持って行こうとしないし 所有者も現れません 00:05:59.636 --> 00:06:00.936 そんな荷物みたいでした 00:06:01.836 --> 00:06:05.446 あれほどまでの孤独や喪失感は 感じたことがありませんでした 00:06:07.156 --> 00:06:11.286 ロンドンに移住してから 結局また音楽活動を再開しました 00:06:11.796 --> 00:06:14.996 国が変わっても 残念ながら 同じような状況でした 00:06:15.636 --> 00:06:18.206 ある時 届いた脅迫文は こんな感じでした 00:06:18.216 --> 00:06:22.612 お前を殺して 川ができるほどの血を流させてやると 00:06:22.636 --> 00:06:26.052 そして死ぬ前には 何度もレイプしてやると 00:06:26.076 --> 00:06:27.356 この頃にもなると 00:06:27.376 --> 00:06:29.972 こんな言葉にはもう 慣れっこになっていましたが 00:06:29.996 --> 00:06:34.426 今度は 私の家族までもが 脅され始めたのです 00:06:35.556 --> 00:06:40.796 そこで再び 荷物をまとめて 音楽を辞め アメリカに移り住みました 00:06:41.316 --> 00:06:42.572 もう うんざりでした 00:06:42.596 --> 00:06:45.212 こんな思いをするのは もう嫌でした 00:06:45.236 --> 00:06:47.892 音楽を選んだのは 私ではなく 父なのに 00:06:47.916 --> 00:06:50.716 そのせいで殺されるのは 絶対に嫌でした 00:06:52.996 --> 00:06:56.172 なんだか 自分を見失い 00:06:56.196 --> 00:06:57.732 全てを失った気分でした 00:06:57.756 --> 00:07:00.092 でも次にやりたいことは決まりました 00:07:00.116 --> 00:07:03.452 これからの人生 どれだけ時間がかかってもいいから 00:07:03.476 --> 00:07:05.132 若者を支援すること 00:07:05.156 --> 00:07:08.052 どんな方法でもいいから 少しでも 00:07:08.076 --> 00:07:09.772 寄り添ってあげることでした 00:07:09.796 --> 00:07:13.052 様々な団体で ボランティアを始めて 00:07:13.076 --> 00:07:17.856 ヨーロッパに住む ムスリムの若者を支援しました 00:07:18.876 --> 00:07:20.986 すると 驚いたことに 00:07:21.016 --> 00:07:26.396 あまりにも多くの若者が 苦しみや葛藤を抱えていたのです 00:07:27.236 --> 00:07:30.772 家族やコミュニティーに関する問題を 本当にたくさん抱えていました 00:07:30.796 --> 00:07:34.412 そういった環境では 子供にとっての幸せや人生は 00:07:34.436 --> 00:07:37.366 大人の名誉や評判に比べて 軽視されているようでした 00:07:38.556 --> 00:07:42.556 もしかしたら自分はそこまで孤独でも 変でもないのかなと 思い始めました 00:07:43.076 --> 00:07:45.396 私みたいな人は もっといるんじゃないかと 00:07:46.076 --> 00:07:48.292 実は 世間にはあまり 理解されていないのですが 00:07:48.316 --> 00:07:52.612 ヨーロッパで育った 私のような子供に本当によくあるのが 00:07:52.636 --> 00:07:55.052 自分らしくいられる自由がないことです 00:07:55.076 --> 00:07:57.406 自分らしく 生きさせてもらえないのです 00:07:58.156 --> 00:08:00.966 自分が選んだ人と 00:08:01.556 --> 00:08:05.192 結婚したり交際することは 許されません 00:08:05.196 --> 00:08:06.852 人生の進路も 自分で選べません 00:08:06.876 --> 00:08:10.652 ヨーロッパに住むムスリムにとっては これが当たり前なのです 00:08:10.676 --> 00:08:13.856 世界で一番自由な社会にいても 束縛を受けています 00:08:14.436 --> 00:08:18.332 人生 夢 将来 どれも私たちのものではありません 00:08:18.356 --> 00:08:21.612 親やムスリムコミュニティーの 所有物なのです 00:08:21.636 --> 00:08:24.716 若者から数え切れないほどの 話を聞きました 00:08:25.676 --> 00:08:28.571 社会で行き場を失い 00:08:28.595 --> 00:08:30.331 周囲の目にはつきませんが 00:08:30.355 --> 00:08:33.345 苦しみを抱えているのです それもたった1人で 00:08:34.316 --> 00:08:38.715 子供たちは強制結婚をさせられ 名誉の名の下に暴力や虐待を受けます 00:08:40.076 --> 00:08:43.772 このような若者を支援する仕事を始めて 何年か経ってから 00:08:43.796 --> 00:08:45.812 もう逃げるわけにはいかないと悟り 00:08:45.836 --> 00:08:50.492 怖がったり 身を隠しながら 残りの人生を過ごすわけにはいかないし 00:08:50.516 --> 00:08:53.106 実際に行動を 起こさないといけないと思いました 00:08:54.436 --> 00:08:57.532 私だけでなく 似たような境遇の人々が 口を閉ざしたままでは 00:08:57.556 --> 00:08:59.876 こんな悪習が続くだけだとも悟りました 00:09:00.796 --> 00:09:05.292 それで 決めたんです 子供の頃の特別な力を呼び起こして 00:09:05.316 --> 00:09:10.012 こういった問題に別の側面から関わる 当事者の大人たちに 00:09:10.036 --> 00:09:15.216 家族と生まれた国の間で板挟みになる 若者の気持ちを理解してもらおうと 00:09:15.756 --> 00:09:19.336 そこで私は映画を作り始め 若者に聞いた話を語り始めました 00:09:19.676 --> 00:09:24.202 もう一つ 理解してもらいたかったのは このような問題に真剣に向き合わないと 00:09:24.232 --> 00:09:26.196 恐ろしい事態に陥ることです 00:09:26.796 --> 00:09:29.156 一作目で題材にしたのは バナズという少女です 00:09:29.836 --> 00:09:33.076 バナズはロンドンに住む クルド系の17歳で 00:09:33.916 --> 00:09:36.716 聞き分けが良く 両親の言うことは何でもしました 00:09:37.236 --> 00:09:39.652 何もかもを正しくこなそうとしたのです 00:09:39.676 --> 00:09:42.292 両親が選んだ男性と 結婚もしましたが 00:09:42.316 --> 00:09:45.276 夫には日常的に殴られ レイプされました 00:09:46.276 --> 00:09:49.092 家族に助けを求めると こう言われました 00:09:49.116 --> 00:09:51.372 「家に帰って 旦那さんにもっと尽くしなさい」 00:09:51.396 --> 00:09:54.212 娘が離婚して出戻るなんて もってのほかだったのです 00:09:54.236 --> 00:09:57.286 当然 家名に泥を塗ることに なりますからね 00:09:58.076 --> 00:10:00.676 夫の暴力はひどく 耳から流血するほどでした 00:10:01.596 --> 00:10:06.692 そんな夫の元からやっと逃げ出し 自分が選んだ若い男性と 00:10:06.716 --> 00:10:08.532 恋に落ちましたが 00:10:08.556 --> 00:10:10.812 コミュニティーや家族に知れ渡ると 00:10:10.836 --> 00:10:12.246 バナズは行方不明になり 00:10:13.736 --> 00:10:15.666 発見されたのは3ヵ月後 00:10:16.496 --> 00:10:20.616 自宅の下に埋められていた スーツケースの中から発見されました 00:10:25.116 --> 00:10:28.636 首を絞められ 死ぬまで殴られたのです 00:10:30.236 --> 00:10:34.756 実の父親と叔父の命令を受けた 3人の従兄弟による犯行でした 00:10:35.436 --> 00:10:37.612 これだけでも酷い事件ですが 00:10:37.636 --> 00:10:43.532 さらに バナズは地元の警察に 5回も足を運んで 助けを求め 00:10:43.556 --> 00:10:46.612 家族に殺されそうだと 相談に行っていたそうです 00:10:46.636 --> 00:10:49.516 警察は真面目に取り合わず 何の対処もしませんでした 00:10:50.556 --> 00:10:51.812 この事件から言えるのは 00:10:51.836 --> 00:10:56.212 あまりにも多くの若者が 家族や周囲のコミュニティーの中で 00:10:56.236 --> 00:10:59.332 こうした問題を抱えているにとどまらず 00:10:59.356 --> 00:11:03.076 自分が生まれ育った国でも 00:11:04.116 --> 00:11:07.746 誤解や無関心の憂き目に 遭ったりしていることです 00:11:09.166 --> 00:11:13.862 自分の家族に裏切られた若者は 社会に拠り所を求めます 00:11:13.886 --> 00:11:15.942 社会が理解してあげないと 00:11:15.966 --> 00:11:17.346 若者は行き場を失います 00:11:18.646 --> 00:11:21.822 この映画の製作中 何人かに こう言われました 00:11:21.846 --> 00:11:24.382 「ディーヤ これって 単に そういう文化なんだよ 00:11:24.406 --> 00:11:26.597 単に この種の人たちが 自分の子供にすることだ 00:11:26.621 --> 00:11:28.181 部外者には何もできないよ」 00:11:29.406 --> 00:11:32.696 殺人は決して私の文化ではありません 00:11:33.806 --> 00:11:34.726 そうですよね? 00:11:34.746 --> 00:11:36.742 私のような見た目で 00:11:36.766 --> 00:11:39.262 似たような生い立ちの 若い女性だって 00:11:39.286 --> 00:11:43.382 住んでいる国で 誰もが与えられる権利を持ち 00:11:43.406 --> 00:11:46.516 同じ保護を受けられるべきじゃありませんか? 00:11:47.886 --> 00:11:52.622 次に作った映画では イスラム過激派と暴力に 00:11:52.646 --> 00:11:55.502 ヨーロッパに住む ムスリムの若者の一部が 00:11:55.526 --> 00:11:57.706 引き寄せられる理由を 理解したかったのですが 00:11:58.406 --> 00:11:59.486 このテーマでは 00:11:59.496 --> 00:12:02.986 自分が一番恐れていたものと 向き合うことになりました 00:12:04.566 --> 00:12:06.166 褐色肌で髭の生えた男性です 00:12:08.206 --> 00:12:12.396 人生の大半を こういう男性に 怯えながら生きてきました 00:12:13.286 --> 00:12:15.982 人生の大半にわたって 恐れてきたタイプです 00:12:16.006 --> 00:12:18.862 心底嫌いだと 思っていました 00:12:18.886 --> 00:12:20.416 それも ずっと長い間です 00:12:20.886 --> 00:12:24.862 それから2年間にわたり 犯罪を犯したテロリストや戦闘員 00:12:24.886 --> 00:12:27.382 元過激派に取材をしました 00:12:27.406 --> 00:12:30.742 私も元々知っていた 歴然たる事実としては 00:12:30.766 --> 00:12:35.942 宗教や政治問題や 植民地時代の爪痕や 00:12:35.966 --> 00:12:40.222 近年に見られる ヨーロッパの外交政策の失敗なども 00:12:40.246 --> 00:12:41.826 全て 背景の一部でしたが 00:12:42.246 --> 00:12:45.502 それ以上に興味を持って探ったのは 当事者である人間についてで 00:12:45.526 --> 00:12:47.102 人によってどんな事情があり 00:12:47.126 --> 00:12:51.446 若者の一部がなぜ こうした組織に 巻き込まれるのか でした 00:12:52.726 --> 00:12:57.136 本当に驚いたのが 心に傷を負った 人間の姿を見いだしたことです 00:12:59.486 --> 00:13:01.942 私が探し求め 見つけようとしていたような 00:13:01.966 --> 00:13:03.342 極悪人は見当たらず— 00:13:03.366 --> 00:13:06.502 はっきり言ってその方が スッキリしたでしょうが 00:13:06.526 --> 00:13:08.236 出てきたのは傷ついた人々でした 00:13:09.246 --> 00:13:10.742 バナズと同じように 00:13:10.766 --> 00:13:14.112 過激派に転じた若者も 苦しんでいたのです 00:13:14.132 --> 00:13:16.582 家族と生まれた国の違いを 00:13:16.606 --> 00:13:20.086 乗り越えようとして 心に傷を負ったのです 00:13:21.446 --> 00:13:24.822 それから 過激派組織やテロ組織は 00:13:24.846 --> 00:13:28.302 こうした若者の感情を 巧く利用して 00:13:28.326 --> 00:13:32.182 皮肉にも その感情を 暴力に向かわせているのです 00:13:32.206 --> 00:13:33.782 「仲間においで」と誘います 00:13:33.806 --> 00:13:36.782 「家族も生まれた国も どちらも捨てなさい 00:13:36.806 --> 00:13:38.462 どちらも受け入れてくれないよ 00:13:38.486 --> 00:13:41.582 家族にとっては お前よりも名誉が大切なんだ 00:13:41.606 --> 00:13:42.862 国にしてみれば 00:13:42.886 --> 00:13:48.766 本物のノルウェー人 イギリス人 フランス人は白人だけだ」 00:13:49.766 --> 00:13:53.222 そして若者が欲しくて仕方がないものを 与えてやると約束するのです 00:13:53.246 --> 00:13:57.582 重要感 英雄感 連帯感や目的だけでなく 00:13:57.606 --> 00:14:00.006 自分たちを愛し 認めてくれる コミュニティーです 00:14:00.926 --> 00:14:03.862 無力に感じている若者も 力を持ったような気分になります 00:14:03.886 --> 00:14:08.766 周囲の目につかず 口を閉ざしていた若者が やっと注目され 思いを聞いてもらえるのです 00:14:11.746 --> 00:14:14.282 若者が望むような扱いをしてくれるのは 00:14:14.306 --> 00:14:18.176 私たちではなく こういう組織なのです なぜこうなってしまったのでしょうか 00:14:20.686 --> 00:14:22.262 つまり 00:14:22.286 --> 00:14:25.622 暴力を正当化したり 00:14:25.646 --> 00:14:29.382 容認するつもりはありませんが 00:14:29.406 --> 00:14:32.982 一部の若者が なぜ こうした組織に惹かれるのか 00:14:33.006 --> 00:14:36.166 理解しなければならない と言いたいのです 00:14:37.606 --> 00:14:39.942 こちらをご覧ください 00:14:39.966 --> 00:14:43.246 私の映画に出てきた男性たちの 幼少期の写真です 00:14:45.466 --> 00:14:48.426 非常に興味深いことに 彼らの多くには共通点があり— 00:14:49.186 --> 00:14:50.842 考えもしなかったことでした— 00:14:50.866 --> 00:14:54.186 父親がいない人や 父親に虐待を受けていた人ばかりでした 00:14:55.026 --> 00:14:56.962 そんな若者の中には 00:14:56.986 --> 00:15:01.122 過激派組織内に 優しく愛情深い父親的な存在を 00:15:01.146 --> 00:15:03.006 見いだしている者もいたのです 00:15:05.346 --> 00:15:08.506 人種差別的な暴力により 残忍になってしまった男性もいました 00:15:09.226 --> 00:15:11.482 その人は 被害者意識から逃れるために 00:15:11.506 --> 00:15:13.002 暴力を振るう側になったのでした 00:15:13.026 --> 00:15:18.322 また あることに身に覚えがあり 震えあがりました 00:15:18.346 --> 00:15:24.666 17歳でノルウェーを去った時の 私が抱いていたのと同じ感情です 00:15:25.586 --> 00:15:28.962 同じような混乱 同じような深い悲しみ 00:15:28.986 --> 00:15:32.466 同じように 周りに裏切られ 00:15:34.137 --> 00:15:35.947 孤立しているという感覚です 00:15:38.656 --> 00:15:41.776 2つの文化に引き裂かれ 行き場を失ったような気持ちです 00:15:42.856 --> 00:15:45.392 そうは言っても 私は暴力を選ばず 00:15:45.416 --> 00:15:48.152 銃の代わりに カメラを選びました 00:15:48.176 --> 00:15:51.512 例の特別な力のおかげです 00:15:51.536 --> 00:15:56.432 暴力ではなく 理解することが答えだとわかったのです 00:15:56.456 --> 00:15:58.152 その人を人間として見て 00:15:58.176 --> 00:16:01.912 長所も全て 短所も全て 認めることです 00:16:01.936 --> 00:16:03.792 皮肉な現状に終止符を打つこと 00:16:03.816 --> 00:16:06.472 悪者と被害者という二極的な 考え方はやめることです 00:16:06.496 --> 00:16:09.142 私自身 ようやく受け入れられた 事実があります 00:16:09.736 --> 00:16:12.272 2つの文化は 衝突し合うものではなく 00:16:12.296 --> 00:16:15.526 むしろ2つの文化のおかげで 自分自身の声を見つけられたことです 00:16:15.936 --> 00:16:18.672 片方だけを選ばなければなんて 思わなくなりましたが 00:16:18.686 --> 00:16:20.896 非常に長い時間がかかりました 00:16:21.736 --> 00:16:23.752 今でも 本当に多くの若者が 00:16:23.776 --> 00:16:25.792 同じ問題による葛藤を抱え 00:16:25.816 --> 00:16:27.816 たった一人で苦しんでいます 00:16:29.536 --> 00:16:32.176 そんな状況では まるで生の傷口のように 00:16:32.656 --> 00:16:35.712 人によっては イスラム過激派による世界観が 00:16:35.736 --> 00:16:39.096 傷ついた心に入り込んで さらに蝕んでしまうのです 00:16:41.208 --> 00:16:44.433 アフリカに伝わることわざがあります 00:16:46.056 --> 00:16:49.072 「若者が村の一員として 迎えられなければ 00:16:49.096 --> 00:16:51.856 村を焼き払って 暖かみを感じようとするだろう」 00:16:53.336 --> 00:16:54.816 お願いがあります 00:16:55.736 --> 00:16:58.272 ムスリムの親やコミュニティーの皆さん 00:16:58.296 --> 00:17:00.712 子供に期待を押し付けることなく 00:17:00.736 --> 00:17:03.512 愛情を注ぎ 思いやってあげてください 00:17:03.536 --> 00:17:05.976 自分の名誉ではなく 子供を選んであげてください 00:17:06.496 --> 00:17:09.512 子供の幸せよりも 自分の名誉を優先すると なぜ 00:17:09.536 --> 00:17:12.086 子供が怒りや疎外感を 感じるのか理解してください 00:17:12.616 --> 00:17:15.191 子供にとって友達のような 存在になってください 00:17:15.214 --> 00:17:16.992 信頼が得られるばかりでなく 00:17:17.016 --> 00:17:19.311 日々の出来事も 気軽に話してもらえるようになり 00:17:19.336 --> 00:17:21.696 子供が こうした関係を外に 求めなくなります 00:17:22.454 --> 00:17:25.616 過激派に惹かれている 若者にも言いたいことがあります 00:17:26.720 --> 00:17:30.510 あなたの怒りを駆り立てているのは 苦しみだと気づいてください 00:17:31.736 --> 00:17:35.152 あなたの血を私欲のために 利用しようとする偏狭な大人たちに 00:17:35.166 --> 00:17:38.366 抵抗できるような 強さを見つけてください 00:17:39.136 --> 00:17:41.256 生きていく術を見つけてください 00:17:41.976 --> 00:17:44.232 あなたにできる最高の復讐は 00:17:44.256 --> 00:17:47.712 幸せで自由な人生を 全うすることだと気づいてください 00:17:47.736 --> 00:17:50.096 他の誰でもない自分が決めた人生です 00:17:50.656 --> 00:17:54.516 なぜ ムスリムの若者として 自分も死に急ごうとするのですか? 00:17:55.176 --> 00:17:59.406 その他大勢の私たちに問います いつ若者の声に耳を傾けるのでしょうか? 00:18:00.616 --> 00:18:01.872 若者の苦しみを 00:18:01.896 --> 00:18:05.856 もっと前向きな感情に変えられるよう どうすれば支えてあげられるでしょうか? 00:18:06.856 --> 00:18:08.312 自分は世間から嫌われている— 00:18:08.336 --> 00:18:11.112 自分の身に何があっても 誰も気にしないし 00:18:11.136 --> 00:18:12.912 誰も認めてくれないという思いとは 00:18:12.936 --> 00:18:15.776 違う感情を抱かせてあげる方法を 見つけてあげてください 00:18:17.376 --> 00:18:20.312 ムスリムの若者が死傷したり 暴力を振るう側になる前に 00:18:20.336 --> 00:18:25.272 どうにかして 彼らの存在に目を向け 認識してあげてください 00:18:25.296 --> 00:18:28.872 このような若者を気にかけ 自分たちの同胞として扱ってください 00:18:28.896 --> 00:18:33.752 同じ人種の人が被害を受けた時だけ 憤るのはやめてください 00:18:33.776 --> 00:18:38.792 憎しみを寄せ付けず 亀裂を埋める方法を見つけてください 00:18:38.816 --> 00:18:42.792 お互い そして若者たちを 見限るわけにはいきません 00:18:42.816 --> 00:18:44.952 向こうがこちらに 愛想を尽かしたとしてもです 00:18:44.976 --> 00:18:47.152 私たち誰もがこの問題の一部です 00:18:47.176 --> 00:18:52.656 長期的に考えても 復讐や暴力では過激派に立ち向かえません 00:18:53.576 --> 00:18:57.352 テロリストの望みは 私たちが恐怖のあまり家に閉じこもり 00:18:57.376 --> 00:18:59.552 玄関だけでなく心も閉ざすことです 00:18:59.576 --> 00:19:03.392 そうやって社会に 傷を負った若者がさらに増えればいい 00:19:03.416 --> 00:19:06.952 そこから過激派の思想を さらに広めてやろうという目論見なのです 00:19:06.976 --> 00:19:09.672 テロリストの望みは 私たちも彼らのように 00:19:09.696 --> 00:19:12.056 憎しみに溢れ 偏狭で残酷になることです 00:19:14.296 --> 00:19:16.752 パリでのテロ事件の翌日 00:19:16.776 --> 00:19:20.316 友人の1人が 娘さんの写真を送ってくれました 00:19:20.896 --> 00:19:23.352 白人とアラブ系の2人の少女です 00:19:23.376 --> 00:19:24.676 2人は親友同士です 00:19:25.216 --> 00:19:28.696 こんな光景が 過激派の力を奪うのです 00:19:31.336 --> 00:19:34.392 この2人の少女たちに 備わった特別な力から 00:19:34.416 --> 00:19:35.992 進むべき道が見えてきます 00:19:36.022 --> 00:19:39.336 私たちが力を合わせて 作る必要のある社会です 00:19:40.216 --> 00:19:43.596 若者を受け入れない社会ではなく 00:19:44.576 --> 00:19:46.906 若者を受け入れ 支援する社会です 00:19:48.056 --> 00:19:49.392 ありがとうございました 00:19:49.416 --> 00:19:52.346 (拍手)