ステルスゲームの主人公は
最高の "秘密道具" を常に携えている
Agent 47のピアノ線から、サムフィッシャーの
間抜けなゴーグル、エミリーカルドウィンの
超能力に至るまで、この "隠れん坊や達" は
その象徴的な装備アイテムで定義されてきた
何故なら、本来
ステルスゲームとは―
敵が通り過ぎるのを
単純に隠れて待っているだけのゲームではなく
道具や超能力、技を使って
有利になるように環境を変えるゲームだからだ
「School of Stealth」へようこそ
これは隠密ゲームに関するミニシリーズだ
エピソード 2 で、僕たちは
敵陣の奥深くから、さらに前進していく
今こそ、万能ベルトからステルスゲームの
五種類の秘密道具を選ぶときだ
先述のように、ステルスゲームの大半の能力は
重要な五種類の道具にまとめることができる
種類 1、情報収集の為の道具
これはキャラクターの視界を超えて
別の視点から見ることを可能にするものだ
普通なら閉ざされたドアの向こう側に
何があるかは認識できないが
サムフィッシャーはファイバーカメラを滑り込ませ
部屋を偵察できる
『Alien Isolation』には
モーショントラッカーがある
『Invisible Inc.』では鍵穴を覗く
『Dishonored』では
カバーから傾いて覗き込み
暗視ゴーグルは
闇の中の敵を明るく強調する
スネークの
尋問スキルも含まれる
パトロールや弾薬庫の情報を渡すように
敵を脅迫するのである
こうした秘密道具によって
敵を凌ぐ "情報有利性" が得られるのだ
『Gunpoint』の開発者
Tom Francis 曰く―
「敵に知られずに敵の情報をより多く得れば
プレイヤーは敵の存在を考慮することができます」
「その情報が計画の "原材料" になるのです」
またこうした秘密道具は
ゲームのペース配分に影響する
ステルスゲームのリズムは
次の要素で定義される
隣の部屋を慎重に偵察することと
その後、そこを通過することだ
観察と実行を
絶え間なく繰り返すループなのだ
種類 2、敵を操る道具
前回、ステルスゲームの敵が
プレイヤーを発見するために
模擬的な「視覚と聴覚」が
どのように実装されているか話した
これらの道具によって、そのような感覚システムを
プレイヤーの有利になるように利用できるのだ
プレイボーイ誌やデコイ、落ちている武器は
敵の目を惹きつける
一方、バットラングや
スティッキーカメラのスピーカー、小石などは
敵の耳に作用する
時折、注意を引く物が
世界自体に備わっている場合もある
例えば『Hitman』で
流し台を水浸しにすることなどだ
これら全てを使うことで
AI キャラを巡回する道から外し
より好ましい位置に
移動させることができる
時には、敵の巡回中に
小さな窓を開けて
気付かれずに
こっそり過ぎ去る場合もあれば
他にも、敵を罠に誘い込んだり
暗闇におびき寄せたりして
楽に倒す場合もある
さらに先を行って
敵の挙動を変えることもできる
『Mark of the Ninja』では、恐怖のクナイを使うことで
敵を錯乱・妄想状態に陥らせ
敵に同士討ちをさせることができる
種類 3、空間を再定義する道具
説明しやすいように、ステルスゲームの
レベルデザイン(場面設計)を見てみよう
『Thief』のプロジェクトリーダー、Greg LoPiccolo は
「空間はプレイヤーが取引する商品だ」と話し
ステルスゲームのステージは
二つの領域に分かれていると指摘した
「安全域」と「危険域」だ
『Thief』はこのアイデアを二つの軸で実行している
「光と陰の軸」(光量軸)と
「騒音と静寂の軸」(音量軸)だ
他のゲームは
異なる "区分け" かもしれない 例えば
『Batman』の「高所 / 低所」や
『Hitman』の「公共の場 / 関係者のみ」だ
だが発想は同じなのだ ステルスのステージは
"危険の海" のようなものであり
プレイヤーは "安全の島" の間を
泳ぐ必要があるのだ
だが、こうした秘密道具を使えば
この状況を操作できる
『Thief』では水の矢で
ロウソクを消すことができ(光量軸)
明るく照らされた "危険域" を
暗く安全な場所に変える
もう一方の軸(音量軸)では、苔の矢で
床に苔を生やして、足音を消すことが可能で
その空間の音量を
静かなものに変えられる
別の工夫としては
キャラに変更を加えることで
危険域でも比較的安全に
存在できるようにするものがある
例えば『MGS 3』では、カモフラージュ要素によって
周囲の環境に溶け込んだり
『Hitman』では変装によって
Agent 47 に侵入する資格を与えたりしてる
これらの道具により、ステージのことを
単なる静的なパズルではなく―
何かを変更して自分に有利する機会として
見ることができるのだ
種類 4、機動性を拡張する道具
これは通常、見張りが到達できない場所へ
移動するための仕組みである
バットマンの鉤縄を使えば
高所にあるガーゴイル像へ飛ぶことができる
サムフィッシャーの股割りジャンプは
特定の廊下では―
敵の上に立っていても
発見されることはない
『Dishonored』には見事な
近距離テレポート技、ブリンクがあり
高所へ登ったり
遮蔽物の間を飛んだりできる
しかし全てのステルスゲームに
このような大胆な技がある訳ではない
多くの場合、ステルス作品は起立、しゃがみ込み
うつ伏せといった "姿勢" に専念している
これら全ての姿勢が、異なる度合いの
可視性・騒音性・動作速度をもたらしている
最後に
種類 5、敵を無力化する道具
ステルスゲームには
棍棒や地雷や―
信頼できる(非現実的な)
消音ピストルが定番だろ?
ステルスゲームで
見張りを除去することは不可能ではない
痕跡を消しさえすれば
問題ないのだ
しかし重要なのは、ステルス作品がマシンガンや
ロケットランチャーを提供しない点である
というのも、こうした五種類の道具は
実質的に全ての軸において
敵より優位であるとプレイヤーに気付かせることが
目的だからだ ただ一点、軍事力を除いて
知識が増えるほど、より自由に動いたり
警備員を自在に誘導したりできる
プレイヤーは全てを支配できるのだ
……但し、真正面からの銃撃戦になるまでは、の話だが
だがこれは
将来のエピソードで扱う
しかし、これらの道具に共通するのは
バランスを取る必要があるという点だ
道具の能力を、どう制限し
どんな欠点を設けるか慎重に考慮しなければ
ゲームの設計上、あらゆる種類の
問題が生じるだろう
だから、敵や空間を操れる道具を無制限に使用したら
"最強の攻略法" が生まれてしまうかもしれない
それは単純かつ効果的な戦術で
もっと面白い遊び方があるのに延々と実行できてしまう
(訳註 ゲームが単純作業化する)
例えば、敵を欺くために
無限湧きする小石を投げるだとか
全部の松明に
明かりを点けるだとかだ
情報を与え過ぎる道具は
ゲームの流れを破壊し得る
それで『Assassin’s Creed Origins』では
相棒の鷲をドローンのように飛ばして
目視した全ての敵に
タグを付けることができるのだが
これにより、敵が生きている限り
その居場所を完全に把握できてしまう
これはステルスゲームのリズムを破壊し、本質的に
"観察局面" をたった一つの容易なものに平坦化し
続く "実行局面" も
邪魔が入らない低リスクなものに変えてしまうのだ
そして、強すぎる武器で視界に入った
全ての敵を殺せば(または永久に無力化すれば)
状況の複雑さを軽減することが
可能になってしまうのだ
ゲーム設計の教授 Robert Yang は
ステルス作品で敵を殺すことについて―
「ステージが過疎化し、システム間の接続は断たれ
ゲームが退屈になる」と言っている
もし『Dishonored』で脱出する際に、自分が殺した
死体の山の前を通った経験があるなら―
彼の言葉の意味が
分かるだろう
おっと! X 線の視界はかなり便利だから
絶対オフにしたくなくなるという問題もある
ゲーム全体が、空港の保安検査場の画面で
遊んでいるかのように見えてしまう
では、どうすれば道具の力を
均整化できるのだろうか?
一つの方法は
システムに内在する制限を設けることだ
『Ghost Recon Wildlands』は、Assassin’s Creed の鷲に
よく似たシステムを持っているが
その "鳥" は、UAV(無人機)に
置き換えられている
電池は限られ、飛行距離は短く
見張っている敵が撃墜してくるのだ
情報収集はできるが
万能ではない
同様に『The Last of Us』では
壁越しに敵を目視できるが
これは敵が
音を立てている時だけである
『Deus Ex』では、敵にタグを付けられるが
同時に追跡可能な数には限りがある
もう一つの方法は
能力を一時的なものにすることだ
サムフィッシャーは照明を消すために
ヒューズを飛ばすのだが、またすぐに点灯する
煙玉は、危険域の中に安全な場所を作るが
小さくて一時的なものである
『Invisible Inc』で敵を気絶させても
数ターン後には起き上がる
ずっと気絶させておきたければ
仲間を一人そこへ留めておく必要がある
能力を制限するための明快な方法としては
所持数に限度を設ければよい
『SC: Chaos Theory』のスティッキーカメラは
ステージに数個だけだし
『Thief』では、前のステージで盗んだお金で
水の矢を購入しなければならない
ボタンを押すだけで、石を無限に
投げられるゲームも一部にはあるが
『Dishonored』ではゲーム内の
物体を見つける必要がある
また『Hitman』で食器棚に
押し込められる敵の人数は、二人だけである
攻略法に対抗する能力を
AI に授けることも可能だ
『Hitman』のエンフォーサーは
変装を見抜くことができるキャラで
関係者だけの空間であっても
多少の危険がある
『Shadow Tactics: Blades of the Shogun』の
麦わら帽子の敵は
石に気を取られたりしない
僕はこの設定の背景にある
論理が分からんのだが
でも、Hey
それがビデオゲームだ
また AI が順応する場合もある
例えば『MGS V』では
ヘッドショットが上手すぎると
歩哨がヘルメットをかぶり始める
さらに大胆な例では『ECHO』というゲームの敵は
プレイヤーの戦術を学び、模倣する
つまり、もしプレイヤーが
一つの強力な手法に固執するなら
敵が "オウム返し" を始めても
それは驚きではないのである
また "特殊な設定" を、特定のステージや場面に
与える機会もある
これにより、プレイヤー好みの計画を
一時的に妨害できるのだ
例えば『Splinter Cell: Chaos Theory』には
機関室がガスで満たされた
船上ステージがある
つまり、銃火器を使うと
何もかもが爆発するということだ
次に、ステージの配置と
警備のパターンがある
派遣する見張りが一人だけなら
簡単であるが
二人の見張りが互いを見つめ合っている状況だと
プレイヤーはもっと頭を使う必要がある
そして最後に、現在状況の外部に
「抽象的なシステム」の存在がある
『Invisible Inc』で警備員を殺すと
警報システムが一段階上昇する
『Dishonored』で敵を殺害すると
ステージクリア後に特定のスコアを失い
ゲームの物語が
変化する場合がある
このアイデアは、プレイヤーに
自身の戦術について深く考えさせ
ゲームが単純な体験に転じてしまう問題を
防ぐためのものである
だから "武器" の使用は、簡単にするべきではなく
リスクを伴うべきだ
"情報" は容易に得るのではなく
収集には慎重さが必要で、内容も不完全であるべきだ
そして "戦略" は無限に反復するのではなく
いくつかのものを混用するべきなのだ
「学課 2」は以上である
次回の動画では、隠密の設計について
もっと深く飛び込んでみようと思う
一先ず、ステルス作品のお気に入りの仕組みを
下のコメント欄で教えてくれ
(日本語字幕の編集求む)
やぁ、見てくれて
ありがとう
GMTK は最近 YouTube の
チャンネル登録者数が 80万人に達した これは驚きだ
登録ボタンの横にある
ベルアイコンを押せば
新しい動画が公開されたときに
君の電話にも通知が届く
僕の分析によれば
10% の人達が既に押している
それじゃ Hey!
どうも!