WEBVTT 00:00:00.564 --> 00:00:03.086 私の仕事は 人間と意思疎通するロボットの 00:00:03.086 --> 00:00:05.086 設計、制作、研究です 00:00:05.086 --> 00:00:06.639 きっかけは ロボット工学ではなく 00:00:06.639 --> 00:00:08.531 アニメーションでした 00:00:08.531 --> 00:00:11.117 ピクサーの「ルクソーJr」を 初めて見たとき 00:00:11.117 --> 00:00:13.103 私は感銘を受けました 00:00:13.103 --> 00:00:14.861 電気スタンドのような 平凡なものを 00:00:14.861 --> 00:00:17.452 これほどまでに 感情豊かにできるのかと 00:00:17.452 --> 00:00:19.285 映画が終わる頃には 00:00:19.285 --> 00:00:21.789 電気スタンドに 本当に感情移入してしまいますよ 00:00:21.789 --> 00:00:23.617 (笑) 00:00:23.617 --> 00:00:25.737 それで このやり方を 学びたいと思い 00:00:25.737 --> 00:00:29.271 最悪のキャリア選択を したわけです 00:00:29.271 --> 00:00:31.675 私の決断を知ったとき 母は こんな感じでした 00:00:31.675 --> 00:00:33.686 (笑) 00:00:33.686 --> 00:00:35.866 私は 慣れ親しんだソフトウェア会社の 技術職を辞め 00:00:35.866 --> 00:00:38.471 イスラエルからニューヨークに渡り アニメーションを学ぶことにしました 00:00:38.471 --> 00:00:39.482 イスラエルからニューヨークに渡り アニメーションを学ぶことにしました 00:00:39.482 --> 00:00:40.639 ニューヨークでは 00:00:40.639 --> 00:00:43.635 ハーレムの壊れかけのアパートに ルームメイトと住んでいました 00:00:43.635 --> 00:00:45.003 「壊れかけ」は 比喩ではなく 00:00:45.003 --> 00:00:46.963 本当にリビングルームの天井が 崩れ落ちるくらいです 00:00:46.963 --> 00:00:48.273 本当にリビングルームの天井が 崩れ落ちるくらいです 00:00:48.273 --> 00:00:50.939 ニューヨークの建築基準法違反の 報道では 決まって 00:00:50.939 --> 00:00:53.185 私たちのアパートの 映像が流れたものです 00:00:53.185 --> 00:00:56.783 どれだけ事態がひどいかを示す 格好の例だったんですね NOTE Paragraph 00:00:56.783 --> 00:00:58.729 私は 昼間は 学校に通い 00:00:58.729 --> 00:01:02.251 夜は 鉛筆でアニメーションを 1コマずつ描いていました 00:01:02.251 --> 00:01:04.525 そこで 2つの意外な教訓を 学びました 00:01:04.525 --> 00:01:07.078 1つは― 00:01:07.078 --> 00:01:09.038 感情を表現するには 00:01:09.038 --> 00:01:10.764 物の見た目は あまり重要ではなく 00:01:10.764 --> 00:01:13.110 動きが大事だということです どんなタイミングで 00:01:13.110 --> 00:01:14.717 物がどう動くかで 決まるのです 00:01:14.717 --> 00:01:17.944 2つ目は ある先生が教えてくれたことです 00:01:17.944 --> 00:01:20.347 『アイス・エイジ』の イタチを担当されていた― 00:01:20.347 --> 00:01:21.738 その先生が仰ったのは 00:01:21.738 --> 00:01:24.895 「アニメーターは監督ではなく 俳優である」ということです 00:01:24.895 --> 00:01:27.876 あるキャラクターに ふさわしい動きをさせたいなら 00:01:27.876 --> 00:01:30.227 頭で考えるのではなく 体を使って答えを探すのです 00:01:30.227 --> 00:01:31.863 鏡の前に立ち カメラの前で 00:01:31.863 --> 00:01:33.565 自ら演じて 求めているものを見つけ 00:01:33.565 --> 00:01:36.459 キャラクターにも そう演じさせます NOTE Paragraph 00:01:36.459 --> 00:01:38.619 1年後 私は マサチューセッツ工科大(MIT)の 00:01:38.619 --> 00:01:40.769 ロボット・ライフ研究グループにいました 00:01:40.769 --> 00:01:43.414 人間とロボットの関係を研究する 最初のグループです 00:01:43.414 --> 00:01:45.347 当時 私はまだ 「ルクソーJr」の 00:01:45.347 --> 00:01:48.064 電気スタンドを 本当に作ろうと思っていました 00:01:48.064 --> 00:01:49.631 でも 当時のロボットは あんな魅力的な動きはせず 00:01:49.631 --> 00:01:50.909 でも 当時のロボットは あんな魅力的な動きはせず 00:01:50.909 --> 00:01:52.544 アニメーションとは 違いました 00:01:52.544 --> 00:01:54.761 それどころか ロボットは― 00:01:54.761 --> 00:01:57.255 何と言うか ロボットっぽかったんです 00:01:57.255 --> 00:01:59.152 (笑) 00:01:59.152 --> 00:02:02.787 そこで アニメーション学校で 学んだことを生かして 00:02:02.787 --> 00:02:05.455 自分でロボットの電気スタンドを 作ろうと思いました 00:02:05.455 --> 00:02:07.539 1コマごとに デザインをして 00:02:07.539 --> 00:02:09.393 このロボットを出来るだけ 優雅で魅力的なものにしようとしました 00:02:09.393 --> 00:02:12.050 このロボットを出来るだけ 優雅で魅力的なものにしようとしました 00:02:12.050 --> 00:02:14.092 こちらは そのロボットが 00:02:14.092 --> 00:02:15.723 机上で私と戯れる様子です 00:02:15.723 --> 00:02:17.934 実は ここで私は ロボットの再設計をしていて 00:02:17.934 --> 00:02:19.731 ロボットは 知らないうちに 00:02:19.731 --> 00:02:22.419 私を助けて 自ら墓穴を掘ってるわけです 00:02:22.419 --> 00:02:24.449 (笑) 00:02:24.449 --> 00:02:26.418 機械的な感じは 出したくなかったので 00:02:26.418 --> 00:02:27.712 光を照らすのにも 静かで有能な助手のように 00:02:27.712 --> 00:02:30.754 光を照らすのにも 静かで有能な助手のように 00:02:30.754 --> 00:02:33.948 必要なときに側にいてくれて 出過ぎないようにしました 00:02:33.948 --> 00:02:35.625 例えば 私が電池をなくして 見つけられないでいると 00:02:35.625 --> 00:02:37.158 例えば 私が電池をなくして 見つけられないでいると 00:02:37.158 --> 00:02:41.753 電池がどこにあるか さりげなく教えてくれるのです 00:02:41.753 --> 00:02:44.319 私が困っているところです 00:02:44.319 --> 00:02:48.578 演技がヘタですみません 00:02:48.578 --> 00:02:50.026 注目いただきたいのは 00:02:50.026 --> 00:02:52.000 同じ機械であっても その動きによって 00:02:52.000 --> 00:02:55.004 優しく思いやりが あるように見えたり 00:02:55.004 --> 00:02:58.237 暴力的 挑戦的に 見えたりすることです 00:02:58.237 --> 00:03:01.548 ただ 動作が違うだけで 全く同じ物なのです 00:03:07.026 --> 00:03:12.900 「知りたいか? 教えてやろうか? 00:03:12.900 --> 00:03:13.837 彼はもう死んだんだ 00:03:13.837 --> 00:03:17.854 ただ横たわるだけで 目にも生気がない」 00:03:17.854 --> 00:03:18.857 (笑) 00:03:18.857 --> 00:03:22.755 でも 優雅な動きをすることは 人間・ロボット相互作用に必要な― 00:03:22.755 --> 00:03:24.339 構成要素の一つに 過ぎません 00:03:24.339 --> 00:03:25.828 当時 私は 博士課程で 00:03:25.828 --> 00:03:27.998 人間とロボットの チームワークを研究していました 00:03:27.998 --> 00:03:30.000 人間とロボットがチームで 共に働くときのチームワークを 00:03:30.000 --> 00:03:31.334 人間とロボットがチームで 共に働くときのチームワークを 00:03:31.334 --> 00:03:34.116 工学的、心理学的、哲学的観点で 研究していたのです 00:03:34.116 --> 00:03:35.583 同時に 私自身も チームワークをしていました 00:03:35.583 --> 00:03:37.438 同時に 私自身も チームワークをしていました 00:03:37.438 --> 00:03:39.659 ここに来てくれている 親友とです 00:03:39.659 --> 00:03:42.273 ですから 近い将来 一緒にいることになる― 00:03:42.273 --> 00:03:44.366 ロボットを容易に 想像することができました 00:03:44.366 --> 00:03:46.213 ユダヤ教の「過越し祭」の後 私たちは 00:03:46.213 --> 00:03:48.053 折畳み椅子の 片づけをしていて 00:03:48.053 --> 00:03:50.986 すぐに自分たちのリズムを 見つけられたことに 驚きました 00:03:50.986 --> 00:03:52.553 誰もが それぞれの役割を果たし 00:03:52.553 --> 00:03:54.182 担当分けも 必要ありませんでした 00:03:54.182 --> 00:03:56.278 言葉に出して 意思疎通するまでもなく 00:03:56.278 --> 00:03:57.889 ただただ そうなったのです 00:03:57.889 --> 00:03:58.783 そこで思いました 00:03:58.783 --> 00:04:00.632 人間とロボットの 違いはここだと 00:04:00.632 --> 00:04:02.297 人間とロボットとのやり取りは チェスのようなもので 00:04:02.297 --> 00:04:03.495 人間とロボットとのやり取りは チェスのようなもので 00:04:03.495 --> 00:04:04.758 人間が何かすると ロボットは それを分析し 00:04:04.758 --> 00:04:06.638 人間が何かすると ロボットは それを分析し 00:04:06.638 --> 00:04:08.168 次に何をするかを決めて 計画・実行します 00:04:08.168 --> 00:04:09.344 次に何をするかを決めて 計画・実行します 00:04:09.344 --> 00:04:11.475 人間は自分の番になるまで 待つだけです 00:04:11.475 --> 00:04:12.665 だから チェスなのです 00:04:12.665 --> 00:04:14.875 チェスは 数学者や コンピュータ科学者向きなので 00:04:14.875 --> 00:04:16.396 確かに理にかなっています 00:04:16.396 --> 00:04:18.654 チェスは 情報分析や 00:04:18.654 --> 00:04:21.503 意思決定 計画がすべてですから NOTE Paragraph 00:04:21.503 --> 00:04:25.191 でも 私はロボットを チェス・プレーヤーではなく 00:04:25.191 --> 00:04:27.152 ウマが合い 共に作業できるような 00:04:27.152 --> 00:04:29.177 同僚のように したかったのです 00:04:29.177 --> 00:04:32.570 そこで 私は再び ひどいキャリア選択をしました 00:04:32.570 --> 00:04:35.230 1学期 演技を 学ぶことにしたのです 00:04:35.230 --> 00:04:38.090 博士課程を中断し 演技の授業を受けました 00:04:38.090 --> 00:04:40.550 実際に演劇にも 出ましたよ 00:04:40.550 --> 00:04:43.342 そのビデオが出まわっていないことを 祈っていますが 00:04:43.342 --> 00:04:45.969 私は 演劇に関する本を 片っ端から読みました 00:04:45.969 --> 00:04:47.945 19世紀に書かれた本も 図書館で借りました 00:04:47.945 --> 00:04:49.012 19世紀に書かれた本も 図書館で借りました 00:04:49.012 --> 00:04:52.470 ビックリしたのは 貸出名簿にある名前は私のほか 00:04:52.470 --> 00:04:55.286 1人だけで それも 1889年のものでした(笑) 00:04:55.286 --> 00:04:57.000 つまり この本は 100年もの間 00:04:57.000 --> 00:05:00.191 ロボット工学に 再発見されるのを待っていたんです 00:05:00.191 --> 00:05:01.669 この本に書かれていたのは 00:05:01.669 --> 00:05:04.034 どの筋肉を動かせば 00:05:04.034 --> 00:05:06.742 目的の感情を表現できるか といったものでした NOTE Paragraph 00:05:06.742 --> 00:05:08.574 でも 大きな衝撃を 受けたのは 00:05:08.574 --> 00:05:09.910 「メソッド演技法」でした 00:05:09.910 --> 00:05:12.186 これは20世紀に入って 広まった演技法ですが 00:05:12.186 --> 00:05:14.830 メソッド演技法では 筋肉を操る必要はなく 00:05:14.830 --> 00:05:17.503 体を使って ふさわしい動きを 見つけるべきだとします 00:05:17.503 --> 00:05:19.683 感覚の記憶を使って 感情を再現して 00:05:19.683 --> 00:05:21.539 感覚の記憶を使って 感情を再現して 00:05:21.539 --> 00:05:24.440 体で考えて ふさわしい表現法を見つけます 00:05:24.440 --> 00:05:26.460 共演者にあわせて アドリブで動くのです 00:05:26.460 --> 00:05:29.708 これを知ったとき ちょうど認知心理学の有力説― 00:05:29.708 --> 00:05:32.804 「身体化された認知」について 読んでいたのですが 00:05:32.804 --> 00:05:34.478 それもまた 同じ考え方だったのです 00:05:34.478 --> 00:05:35.987 私たちは 体を使って考えます 00:05:35.987 --> 00:05:38.212 脳は考えるため 体は動くためのもの ではなく 00:05:38.212 --> 00:05:40.621 私たちの体は 脳に働きかけて 00:05:40.621 --> 00:05:42.838 どんな振る舞いをするか 決めるのです 00:05:42.838 --> 00:05:44.209 雷に打たれたかのようでした 00:05:44.209 --> 00:05:45.571 私はオフィスに戻り 00:05:45.571 --> 00:05:48.470 論文を書き上げました 公表はしていませんが 00:05:48.470 --> 00:05:50.836 「人工知能のための演技講座」 というものです 00:05:50.836 --> 00:05:52.233 私はさらに 1ヶ月をかけて 00:05:52.233 --> 00:05:54.844 人間とロボットが 共演する演劇を 00:05:54.844 --> 00:05:56.696 当時 初めて 上演しました 00:05:56.696 --> 00:06:00.263 さきほどご覧いただいた ロボットと俳優の映像がそうです 00:06:00.263 --> 00:06:01.692 そこで思いました 00:06:01.692 --> 00:06:04.599 どうすれば 人工知能のモデル― 00:06:04.599 --> 00:06:06.460 コンピュータを使った数値計算で 00:06:06.460 --> 00:06:08.784 アドリブという考え方を モデル化できるか? 00:06:08.784 --> 00:06:10.941 リスクを取り チャンスを生かし 00:06:10.941 --> 00:06:12.508 間違いさえ起こす モデルです 00:06:12.508 --> 00:06:15.280 これで ロボットは より良いチームメイトになるでしょう 00:06:15.280 --> 00:06:17.908 私はかなりの時間をかけて このモデル作りに取組み 00:06:17.908 --> 00:06:20.257 たくさんのロボットに 組み込みました 00:06:20.257 --> 00:06:22.272 こちらは かなり初期の例ですが 00:06:22.272 --> 00:06:25.984 ロボットが この身体化された人工知能を使い 00:06:25.984 --> 00:06:28.742 私の動きをなぞらえようと しているところです 00:06:28.742 --> 00:06:30.229 ゲームのようです 00:06:30.229 --> 00:06:32.086 ちょっと見てみましょう 00:06:35.594 --> 00:06:39.698 出し抜こうとすれば 簡単に騙せてしまいます 00:06:39.698 --> 00:06:41.899 これは 俳優同士で 00:06:41.899 --> 00:06:43.786 互いの動きを 真似ようとして 00:06:43.786 --> 00:06:46.304 同調して行くのと ちょっと似ていますね 00:06:46.304 --> 00:06:48.220 そこで ある実験をしました 00:06:48.220 --> 00:06:52.303 街行く人々に このロボットの 電気スタンドを使ってもらい 00:06:52.303 --> 00:06:56.257 身体化された人工知能の 検証を行いました 00:06:56.257 --> 00:07:00.543 私は 同じロボットに 2種類の脳を載せました 00:07:00.543 --> 00:07:01.863 つまり 同じ電気スタンドに 2つの脳を入れたのです 00:07:01.863 --> 00:07:03.793 つまり 同じ電気スタンドに 2つの脳を入れたのです 00:07:03.793 --> 00:07:05.633 被験者の半分には 00:07:05.633 --> 00:07:08.457 いわば伝統的な プログラムされたロボット脳を 00:07:08.457 --> 00:07:09.711 使いました 00:07:09.711 --> 00:07:12.265 ロボットは自分の番を待ち 分析し 計画をします 00:07:12.265 --> 00:07:13.921 「計算脳」とでも 呼びましょう 00:07:13.921 --> 00:07:17.553 残り半分には 舞台俳優のように リスクテイクする脳を準備しました 00:07:17.553 --> 00:07:19.633 「冒険する脳」と 呼びましょう 00:07:19.633 --> 00:07:22.594 こちらの脳は 時に すべて計算せずに動きますし 00:07:22.594 --> 00:07:24.771 間違いをして それを直すこともあります 00:07:24.771 --> 00:07:27.354 これらのロボットと 退屈な作業をしてもらいました 00:07:27.354 --> 00:07:28.852 20分もかかる作業で 00:07:28.852 --> 00:07:30.353 一緒にやらないといけません 00:07:30.353 --> 00:07:32.634 工場の仕事のように 00:07:32.634 --> 00:07:35.299 同じことを何度も繰り返す シミュレーションです 00:07:35.299 --> 00:07:37.073 その結果 皆が好きだったロボットは 00:07:37.073 --> 00:07:38.721 冒険する脳の方でした 00:07:38.721 --> 00:07:40.103 こちらの方が より賢くて 00:07:40.103 --> 00:07:42.171 熱心に取組み 良きチームメンバーとして 00:07:42.171 --> 00:07:44.268 チームの成功に より貢献したというのです 00:07:44.268 --> 00:07:45.983 「彼」「彼女」と呼ばれさえしました 00:07:45.983 --> 00:07:48.899 一方で 計算脳の方は 「それ」と呼ばれ 00:07:48.899 --> 00:07:51.646 誰も人間扱いは しませんでした 00:07:51.646 --> 00:07:53.495 冒険するロボットと一緒に 00:07:53.495 --> 00:07:55.193 仕事した人たちは こう言っています 00:07:55.193 --> 00:07:59.275 「最後には友だちになって 心の中でハイタッチしてたよ」 00:07:59.275 --> 00:08:00.714 まあ いいですけど 00:08:00.714 --> 00:08:03.961 (笑) 痛々しいでしょう 00:08:03.961 --> 00:08:06.676 一方で 計算脳と 仕事をした人たちは 00:08:06.676 --> 00:08:09.049 怠け者の助手だと 言っていました 00:08:09.049 --> 00:08:11.750 ロボットは 決められたことしかしません 00:08:11.750 --> 00:08:14.307 これこそ ロボットに 期待されていることのはずですが 00:08:14.307 --> 00:08:16.742 皆 もっと高い期待を持っていたようで 驚きました 00:08:16.742 --> 00:08:21.886 ロボット工学の専門家より 期待が高いです 00:08:21.886 --> 00:08:23.856 そういう時期に 来ているのかもしれません 00:08:23.856 --> 00:08:26.717 ちょうど メソッド演技法が 00:08:26.717 --> 00:08:28.149 19世紀の演技を変えたように 00:08:28.149 --> 00:08:29.992 計算し尽くされ 決められたことをすることから 00:08:29.992 --> 00:08:31.774 計算し尽くされ 決められたことをすることから 00:08:31.774 --> 00:08:35.295 より本能的に リスクも取り 感情が身体化されるようになるのです 00:08:35.295 --> 00:08:36.699 ロボットも同じような変革を 遂げる時期にあるのでしょう 00:08:36.699 --> 00:08:39.845 ロボットも同じような変革を 遂げる時期にあるのでしょう NOTE Paragraph 00:08:39.845 --> 00:08:40.966 数年後 私は― 00:08:40.966 --> 00:08:43.474 アトランタのジョージア工科大で 次の研究をしていました 00:08:43.474 --> 00:08:44.539 グループで ロボット音楽家に 取り組んでいました 00:08:44.539 --> 00:08:45.821 グループで ロボット音楽家に 取り組んでいました 00:08:45.821 --> 00:08:48.662 音楽は チームワークや連携 00:08:48.662 --> 00:08:51.059 タイミングやアドリブを 00:08:51.059 --> 00:08:52.948 確かめる最高の場所なのです 00:08:52.948 --> 00:08:55.484 このロボットは マリンバを演奏しています 00:08:55.484 --> 00:08:57.499 マリンバは いちおう言っておくと 00:08:57.499 --> 00:09:00.344 大きな木琴のようなものです 00:09:00.344 --> 00:09:03.039 これに取り組んでいたとき 00:09:03.039 --> 00:09:05.633 人間・ロボットが即興演奏した 他の作品を見ました 00:09:05.633 --> 00:09:08.012 他にも 人間・ロボットの 即興演奏はあるのですが 00:09:08.012 --> 00:09:10.105 やはり どうも チェスの動きのようでした 00:09:10.105 --> 00:09:11.409 人間が演奏して ロボットがそれを分析し 00:09:11.409 --> 00:09:13.989 人間が演奏して ロボットがそれを分析し 00:09:13.989 --> 00:09:16.201 自分のパートを その場で考えるのです 00:09:16.201 --> 00:09:17.868 これこそ音楽家が言う 「コールアンドレスポンス」で 00:09:17.868 --> 00:09:19.351 これこそ音楽家が言う 「コールアンドレスポンス」で 00:09:19.351 --> 00:09:23.188 ロボットと人工知能に ふさわしいものです 00:09:23.188 --> 00:09:25.095 でも 演劇やチームワーク研究で 使った考え方を応用したら 00:09:25.095 --> 00:09:28.232 でも 演劇やチームワーク研究で 使った考え方を応用したら 00:09:28.232 --> 00:09:30.684 バンドのようにロボットと ジャム・セッションが 00:09:30.684 --> 00:09:32.305 できるかもしれない と思いました 00:09:32.305 --> 00:09:36.118 その場で 互いがリフを重ね 一瞬たりとも止まらないのです 00:09:36.118 --> 00:09:38.910 ですから 演技でやったことを 今度は音楽でしようとしたのです 00:09:38.910 --> 00:09:40.297 ロボットはこれから何を 演奏するか知らぬまま 00:09:40.297 --> 00:09:41.272 ロボットはこれから何を 演奏するか知らぬまま 00:09:41.272 --> 00:09:42.545 ただ体を動かして 00:09:42.545 --> 00:09:44.773 機会をとらえて 演奏をするのです 00:09:44.773 --> 00:09:47.494 私が17歳のとき ジャズの先生が教えてくれました 00:09:47.494 --> 00:09:48.758 即興演奏をするときは 00:09:48.758 --> 00:09:50.419 自分が何をするのか分からないまま ただ 演奏するのです 00:09:50.419 --> 00:09:51.434 自分が何をするのか分からないまま ただ 演奏するのです 00:09:51.434 --> 00:09:52.864 ロボットには 何を演奏するか 00:09:52.864 --> 00:09:54.809 認識しないまま ただ演奏するようにしました 00:09:54.809 --> 00:09:57.753 こちらの演奏を ちょっとご覧ください 00:09:57.753 --> 00:10:00.670 ロボットが 人間の演奏を聞き 00:10:00.670 --> 00:10:02.473 即興演奏をしています 00:10:02.473 --> 00:10:04.846 ここで 人間の音楽家もまた 00:10:04.846 --> 00:10:06.633 ロボットの動きを見て 00:10:06.633 --> 00:10:09.453 それに合わせて 動いています 00:10:09.453 --> 00:10:13.981 ロボットが思いついた演奏は 素晴らしいですよ 00:10:13.981 --> 00:11:00.056 (音楽) 00:11:00.056 --> 00:11:05.087 (拍手) NOTE Paragraph 00:11:05.087 --> 00:11:07.073 音楽家は ただ音を出すだけではありません 00:11:07.073 --> 00:11:09.459 音だけなら 誰もライブ・ショーに行かないでしょう 00:11:09.459 --> 00:11:11.382 音楽家は 自分の体と 00:11:11.382 --> 00:11:13.329 他のメンバーと 聴衆と 心を交わし 00:11:13.329 --> 00:11:15.492 自らの体を使って 音楽を表現するのです 00:11:15.492 --> 00:11:17.872 すでに舞台には ロボット音楽家がいるのだから 00:11:17.872 --> 00:11:20.820 それを一人前の音楽家にしてやろう と思いました 00:11:20.820 --> 00:11:23.336 私は 社会的な表現ができる脳を ロボットのために設計し始めました 00:11:23.336 --> 00:11:24.885 私は 社会的な表現ができる脳を ロボットのために設計し始めました 00:11:24.885 --> 00:11:26.712 この頭は マリンバには触らず 00:11:26.712 --> 00:11:28.348 音楽というものを 表現するだけです 00:11:28.348 --> 00:11:31.428 これらは アトランタのバーの ナプキンに描いたスケッチです 00:11:31.428 --> 00:11:34.050 このバーは 危険なことに 私の研究室と自宅の 00:11:34.050 --> 00:11:35.502 ちょうど間にあるんです (笑) 00:11:35.502 --> 00:11:36.918 ですから 平均して 00:11:36.918 --> 00:11:39.846 毎日3、4時間は過ごしていましたね 00:11:39.846 --> 00:11:42.744 たぶん(笑) 00:11:42.744 --> 00:11:45.723 私は アニメーションに立ち返り 00:11:45.723 --> 00:11:47.905 ロボット音楽家の見た目だけでなく 00:11:47.905 --> 00:11:50.713 どんな風に動くかを 考え出そうとしました 00:11:50.713 --> 00:11:54.013 他の人の演奏が 気に入らない様子だったり 00:11:54.013 --> 00:11:56.492 たった今 感じているビートを 00:11:56.492 --> 00:11:58.141 表現していたりします NOTE Paragraph 00:11:58.141 --> 00:12:02.668 幸いにも 資金を得て このロボットを作れることになりました 00:12:02.668 --> 00:12:04.878 また同じような演奏を お見せしますが 00:12:04.878 --> 00:12:07.220 今度は 社会的表現力を 持つロボットです 00:12:07.220 --> 00:12:09.184 ご覧いただきたいのは 00:12:09.184 --> 00:12:10.880 ロボットが 人間の演奏にあわせた 00:12:10.880 --> 00:12:12.744 ビートを見せているところです 00:12:12.744 --> 00:12:16.760 人間の方も ロボットが 意思を持っているように感じています 00:12:16.760 --> 00:12:18.140 ロボットもソロパートになるなり 動き方を変えます 00:12:18.140 --> 00:12:20.680 ロボットもソロパートになるなり 動き方を変えます 00:12:20.680 --> 00:12:24.600 (音楽) 00:12:24.600 --> 00:12:27.501 ロボットは私を見て ちゃんと聞いているか確かめています 00:12:27.501 --> 00:12:48.601 (音楽) 00:12:48.601 --> 00:12:52.228 この演奏の 最後に注目してください 00:12:52.228 --> 00:12:55.067 今度は ロボットは 色々なことをしながらも 00:12:55.067 --> 00:12:57.204 自らの体と語り合います 00:12:57.204 --> 00:12:58.816 準備ができると 00:12:58.816 --> 00:13:02.168 私にあわせて 最後の音を 共に奏でます 00:13:02.168 --> 00:13:15.097 (音楽) 00:13:15.128 --> 00:13:20.906 (拍手) NOTE Paragraph 00:13:20.906 --> 00:13:25.263 ありがとう これがどれだけ― 00:13:25.263 --> 00:13:27.944 楽器に触れない体の部分が どれだけ 00:13:27.944 --> 00:13:31.310 演奏表現に役立っているか ご覧いただけたでしょうか 00:13:31.310 --> 00:13:34.530 私たちはアトランタにいたので あるとき いかにもラッパー風な人が 00:13:34.530 --> 00:13:36.399 研究室にやってきました 00:13:36.399 --> 00:13:38.639 私たちは このラッパーを 招き入れて 00:13:38.639 --> 00:13:41.212 ロボットとジャム・セッションを してもらいました 00:13:41.212 --> 00:13:43.914 ここではロボットは ビートに乗っていて 00:13:43.914 --> 00:13:45.143 ここではロボットは ビートに乗っていて 00:13:45.143 --> 00:13:47.997 2つのことに気付くと思います 1つは― 00:13:47.997 --> 00:13:50.510 ロボットが頭を動かしているとき どんなに魅力的かで 00:13:50.051 --> 00:13:52.412 ロボットに合わせて 自分の頭も動かしたくなります 00:13:52.412 --> 00:13:56.207 2つ目は ラッパーは iPhoneに夢中になっても 00:13:56.207 --> 00:13:59.121 ロボットが自分の方に向くと すぐに演奏に戻ります 00:13:59.121 --> 00:14:01.200 ロボットは 彼の周辺視野に― 00:14:01.200 --> 00:14:03.770 視野の隅にあるだけなのに すごい力を持っています 00:14:03.770 --> 00:14:05.821 これは 私たちは 自分の周りにある― 00:14:05.821 --> 00:14:07.522 動く物は 無視できないからです 00:14:07.522 --> 00:14:09.286 神経過敏なんです 00:14:09.286 --> 00:14:12.618 ですから もし 仲間が気もそぞろに 00:14:12.618 --> 00:14:15.489 iPhoneやスマートフォンに 夢中になっていたりしたら 00:14:15.489 --> 00:14:17.082 そこにロボットを置いて 注意を引きつけましょう(笑) 00:14:17.082 --> 00:14:18.636 そこにロボットを置いて 注意を引きつけましょう(笑) 00:14:18.636 --> 00:14:38.211 (音楽) 00:14:38.211 --> 00:14:44.872 (拍手) NOTE Paragraph 00:14:44.872 --> 00:14:47.382 私たちが取り組んでいる 最新のロボットをご紹介しましょう 00:14:47.382 --> 00:14:49.526 私たちが取り組んでいる 最新のロボットをご紹介しましょう 00:14:49.526 --> 00:14:51.599 ちょっと驚くようなことがわかりました 00:14:51.599 --> 00:14:54.634 人々はもはや ロボットが賢かろうが 00:14:54.634 --> 00:14:56.342 即興演奏もし 聞くことができようが 00:14:56.342 --> 00:15:00.750 何年も開発してきた知能で何ができようが どうでもいいんです 00:15:00.750 --> 00:15:04.263 ただロボットが音楽を楽しんでいるのが 大好きでした(笑) 00:15:04.263 --> 00:15:06.668 「ロボットが音楽に反応している」 とは言わず 00:15:06.668 --> 00:15:08.340 「音楽を楽しんでいる」 と言うのです 00:15:08.340 --> 00:15:10.744 このアイデアを 使わない手はないと 00:15:10.744 --> 00:15:13.629 私は新しいインテリアを デザインしました 00:15:13.629 --> 00:15:15.718 今回は電気スタンドではなく ドックスピーカーです 00:15:15.718 --> 00:15:18.826 スマートフォンを直接つなげる スピーカーです 00:15:18.826 --> 00:15:20.545 もし ドックスピーカーが 00:15:20.545 --> 00:15:23.146 音楽をかけてくれるだけでなく 自ら楽しんでいたら 00:15:23.146 --> 00:15:25.657 どうでしょうか?(笑) 00:15:25.657 --> 00:15:27.434 こちらは アニメーション・テストで 00:15:27.434 --> 00:15:31.835 初期のものです(笑) 00:15:31.835 --> 00:15:36.005 完成形は こちらです 00:15:47.223 --> 00:16:09.461 (音楽「Drop It Like It's Hot」) 00:16:09.461 --> 00:16:12.105 ノリノリで頭を振ってますね 00:16:12.105 --> 00:16:15.327 (拍手) 00:16:15.327 --> 00:16:17.228 聴衆の皆さんも 頭を振っていましたよ 00:16:17.228 --> 00:16:20.386 ロボットの影響力は 大きいでしょう 00:16:20.386 --> 00:16:23.028 それも 単なる遊びや ゲームではありません NOTE Paragraph 00:16:23.028 --> 00:16:25.420 体を使って意思疎通し 00:16:25.420 --> 00:16:27.214 体で動くロボットについて 00:16:27.214 --> 00:16:29.407 これほどまでに関心を 持つ理由の一つは― 00:16:29.407 --> 00:16:32.640 ロボット工学者の 秘密を少しばらすことになりますが― 00:16:32.640 --> 00:16:35.001 いつかは 誰しも ロボットと 00:16:35.001 --> 00:16:37.254 一緒に暮らすことに なるからです 00:16:37.254 --> 00:16:39.550 将来 あなたの人生には きっとロボットがいます 00:16:39.550 --> 00:16:41.678 あなたの人生でないとしても 子どもの人生に 00:16:41.678 --> 00:16:43.467 私はこのロボットたちに 00:16:43.467 --> 00:16:46.961 今よりももっと 雄弁になり 人と交わり 00:16:46.961 --> 00:16:48.749 優雅になってほしいのです 00:16:48.749 --> 00:16:50.668 そのためには ロボットは 00:16:50.668 --> 00:16:52.034 チェス・プレーヤーよりは むしろ― 00:16:52.034 --> 00:16:54.744 舞台俳優や音楽家のようになる 必要があると思います 00:16:54.744 --> 00:16:57.683 ロボットは チャンスを生かし アドリブできるべきでしょう 00:16:57.683 --> 00:17:00.180 あなたがすることを 察することができ 00:17:00.180 --> 00:17:02.756 また 間違いを犯し それを正すこともできるべき― 00:17:02.756 --> 00:17:03.979 なのかもしれません 00:17:03.979 --> 00:17:06.015 結局 私たちは 人間ですから 00:17:06.015 --> 00:17:09.386 ロボットも 人間と同じように ちょっと完ぺきではない方が 00:17:09.386 --> 00:17:11.252 私たちには 完ぺきなのかもしれません 00:17:11.252 --> 00:17:12.766 ありがとうございました 00:17:12.766 --> 00:17:16.188 (拍手)