1 00:00:00,000 --> 00:00:03,000 私は創造性の研究をしている外科医ですが 2 00:00:03,000 --> 00:00:06,000 「手術中に創造的になってください」 3 00:00:06,000 --> 00:00:09,000 という患者を受け持ったことはありません 4 00:00:09,000 --> 00:00:12,000 少し皮肉な感じがします 5 00:00:12,000 --> 00:00:15,000 とは言っても 数々の手術をこなしてきた中で 6 00:00:15,000 --> 00:00:17,000 手術は楽器の演奏に通じるものがあると感じています 7 00:00:17,000 --> 00:00:20,000 音にまつわる不変の深い魅力が 8 00:00:20,000 --> 00:00:22,000 私を外科医に そして 9 00:00:22,000 --> 00:00:24,000 音の科学 特に音楽の研究に導きました 10 00:00:24,000 --> 00:00:26,000 これから数分間 11 00:00:26,000 --> 00:00:28,000 私の職歴について 12 00:00:28,000 --> 00:00:30,000 実際どのように音楽を研究しているか 13 00:00:30,000 --> 00:00:32,000 脳はどのようにして創造性を発揮するのか 14 00:00:32,000 --> 00:00:35,000 といった問題と絡めてお話しします 15 00:00:35,000 --> 00:00:37,000 研究のほとんどは ジョンズホプキンズ大学と 16 00:00:37,000 --> 00:00:39,000 以前いた国立衛生研究所で行いました 17 00:00:39,000 --> 00:00:41,000 いくつかの実験を振り返って 18 00:00:41,000 --> 00:00:43,000 音楽に関する実験を三つご紹介します 19 00:00:43,000 --> 00:00:45,000 最初にビデオをお見せしましょう 20 00:00:45,000 --> 00:00:48,000 これは有名な即興ジャズ演奏家であり 21 00:00:48,000 --> 00:00:51,000 即興を高いレベルまで昇華していった 22 00:00:51,000 --> 00:00:53,000 キース・ジャレットのビデオです 23 00:00:53,000 --> 00:00:55,000 彼は全てのコンサートを 24 00:00:55,000 --> 00:00:57,000 即興で演奏し 25 00:00:57,000 --> 00:00:59,000 二度と同じ演奏はしません 26 00:00:59,000 --> 00:01:01,000 ですので  強烈な創造性を示す 27 00:01:01,000 --> 00:01:03,000 素晴らしい例だと思います 28 00:01:03,000 --> 00:01:05,000 ではビデオを見ていきましょう 29 00:01:06,000 --> 00:01:10,000 (演奏) 30 00:02:02,000 --> 00:02:05,000 この即興は本当に素晴らしく 驚異的です 31 00:02:05,000 --> 00:02:07,000 一人の聴衆として 一人のファンとして 32 00:02:07,000 --> 00:02:09,000 これを聴くといつも感動します 33 00:02:09,000 --> 00:02:11,000 何がこれを可能にしているのでしょう? 34 00:02:11,000 --> 00:02:13,000 脳はどのようにしてあれだけの情報や 35 00:02:13,000 --> 00:02:15,000 音を同時に生み出しているのでしょう? 36 00:02:15,000 --> 00:02:18,000 芸術における創造性は魔法のようですが マジックではありません 37 00:02:18,000 --> 00:02:21,000 私はこの考えに従って この問題に科学的に着手しました 38 00:02:21,000 --> 00:02:23,000 つまり創造性は脳によるものです 39 00:02:23,000 --> 00:02:26,000 頭を使わずに芸術を創り出す人はそうそういません 40 00:02:26,000 --> 00:02:28,000 この考えでいくと 芸術における創造性は 41 00:02:28,000 --> 00:02:30,000 神経による産物であり 42 00:02:30,000 --> 00:02:33,000 他の複雑な神経プロセスの研究と同様に 43 00:02:33,000 --> 00:02:36,000 この現象も研究できると考えています 44 00:02:36,000 --> 00:02:38,000 スライドに下位問題として記してありますが 45 00:02:38,000 --> 00:02:40,000 創造性を科学的に研究することは本当に可能でしょうか? 46 00:02:40,000 --> 00:02:42,000 これは良い設問だと思います 47 00:02:42,000 --> 00:02:45,000 音楽の科学的な研究のほとんどは 48 00:02:45,000 --> 00:02:47,000 非常に難解です 49 00:02:47,000 --> 00:02:50,000 また それらの研究の中に音楽を見出すのは困難です 50 00:02:50,000 --> 00:02:52,000 事実 音楽の研究には全く音楽らしさが無く 51 00:02:52,000 --> 00:02:54,000 音楽の要点を見失っています 52 00:02:54,000 --> 00:02:56,000 そして二つ目の問題が出てきます 53 00:02:56,000 --> 00:02:58,000 何故私たち科学者が創造性を研究するべきなのでしょう? 54 00:02:58,000 --> 00:03:00,000 私たちは適任者でないかもしれません 55 00:03:00,000 --> 00:03:02,000 もしかするとそうかもしれませんが 56 00:03:02,000 --> 00:03:04,000 しかし科学的見地から言わせてもらえば 57 00:03:04,000 --> 00:03:06,000 本日は多くの 58 00:03:06,000 --> 00:03:08,000 科学的な革新をお話ししますが 59 00:03:08,000 --> 00:03:10,000 脳がどのようにして革新を可能とするかは 60 00:03:10,000 --> 00:03:12,000 まだほとんど分かっていません 61 00:03:12,000 --> 00:03:15,000 人がどうやって創造的になるのか ほんの少ししか明らかになっていません 62 00:03:15,000 --> 00:03:17,000 今後10年 20年 30年で 63 00:03:17,000 --> 00:03:19,000 創造性の科学が本当に 64 00:03:19,000 --> 00:03:22,000 芽生え 花開くことになると思います 65 00:03:22,000 --> 00:03:24,000 なぜなら 私たちは今 新たな手法で 66 00:03:24,000 --> 00:03:26,000 複雑な即興ジャズ演奏といったプロセスを 67 00:03:26,000 --> 00:03:28,000 綿密に研究できるようになったからです 68 00:03:28,000 --> 00:03:30,000 こちらが脳です 69 00:03:30,000 --> 00:03:32,000 私たちは皆この素晴らしい脳を持っています 70 00:03:32,000 --> 00:03:35,000 未だ解明されているとは言い難いですが 71 00:03:35,000 --> 00:03:37,000 神経学者は 72 00:03:37,000 --> 00:03:39,000 答えより 問題の方を断然多く抱えているでしょう 73 00:03:39,000 --> 00:03:41,000 私自身も 本日のお話では 74 00:03:41,000 --> 00:03:43,000 ただ沢山質問をするだけです 75 00:03:43,000 --> 00:03:45,000 ラボで私が基本的に行っていることです 76 00:03:45,000 --> 00:03:47,000 脳がどのようにしてこれらを可能としているかを探求しています 77 00:03:47,000 --> 00:03:50,000 こちらが私が主に用いている手法です これは fMRIと呼ばれるものです 78 00:03:50,000 --> 00:03:53,000 MRI スキャナーとほぼ同じですが 79 00:03:53,000 --> 00:03:55,000 fMRI は別の方向に特化しており 80 00:03:55,000 --> 00:03:57,000 脳の画像を取るだけでなく 81 00:03:57,000 --> 00:04:00,000 活発な部位の画像を取ることができます 82 00:04:00,000 --> 00:04:02,000 さて 仕組みは次のようなもので 83 00:04:02,000 --> 00:04:04,000 血中酸素濃度を意味する BOLD イメージング 84 00:04:04,000 --> 00:04:06,000 と呼ばれるものです 85 00:04:06,000 --> 00:04:08,000 fMRI スキャナーは 86 00:04:08,000 --> 00:04:10,000 巨大な磁石で 87 00:04:10,000 --> 00:04:12,000 体の特定の部位にある分子を並べます 88 00:04:12,000 --> 00:04:15,000 脳の ある神経部位が活性化すると 89 00:04:15,000 --> 00:04:18,000 その部位には血液が流れ込みます 90 00:04:18,000 --> 00:04:20,000 その血流によって 91 00:04:20,000 --> 00:04:22,000 その部位の血液量が増加し 92 00:04:22,000 --> 00:04:25,000 デオキシヘモグロビン濃度が変化します 93 00:04:25,000 --> 00:04:27,000 デオキシヘモグロビンは MRI で検出できますが 94 00:04:27,000 --> 00:04:29,000 オキシヘモグロビンはできません 95 00:04:29,000 --> 00:04:31,000 神経活動ではなく血流を測定する 96 00:04:31,000 --> 00:04:33,000 この推論手法によって 97 00:04:33,000 --> 00:04:35,000 特定の作業中 より多くの血流が認められる部位は 98 00:04:35,000 --> 00:04:37,000 より活発であると私たちは判断します 99 00:04:37,000 --> 00:04:39,000 以上が fMRI の仕組みの要点です 100 00:04:39,000 --> 00:04:41,000 これは 90 年代からずっと 101 00:04:41,000 --> 00:04:44,000 非常な複雑なプロセスの研究に用いられてきました 102 00:04:44,000 --> 00:04:46,000 では私の過去の研究を振り返っていきます 103 00:04:46,000 --> 00:04:48,000 fMRI スキャナー内でのジャズ演奏の研究です 104 00:04:48,000 --> 00:04:50,000 私の同僚である NIH のアラン・ブラウンと共同で行われました 105 00:04:50,000 --> 00:04:53,000 このショートビデオはその研究の様子です 106 00:04:53,000 --> 00:04:55,000 (ビデオ) チャールス・リム: こちらはジャズの実験に用いる 107 00:04:55,000 --> 00:04:57,000 MIDI キーボードです 108 00:04:57,000 --> 00:04:59,000 鍵盤の数は 35 109 00:04:59,000 --> 00:05:01,000 スキャナーに入るサイズで 110 00:05:01,000 --> 00:05:03,000 磁気内でも動作し 111 00:05:03,000 --> 00:05:05,000 芸術を創り出す為の 112 00:05:05,000 --> 00:05:07,000 最低限のインタフェースがあり 113 00:05:07,000 --> 00:05:10,000 スキャナー内で 仰向けで演奏する奏者の 114 00:05:10,000 --> 00:05:13,000 足の上に置けるよう クッションが付いています 115 00:05:13,000 --> 00:05:16,000 仕組みはこうです これ自体は何も音を鳴らしませんが 116 00:05:16,000 --> 00:05:18,000 楽器のデジタル信号である 117 00:05:18,000 --> 00:05:20,000 MIDI 信号を 118 00:05:20,000 --> 00:05:23,000 この箱を経由しコンピュータへ送ります 119 00:05:23,000 --> 00:05:26,000 そしてこのような高音質のピアノ音を鳴らします 120 00:05:26,000 --> 00:05:29,000 (演奏) 121 00:05:32,000 --> 00:05:52,000 (演奏) 122 00:05:54,000 --> 00:05:56,000 CL: ちゃんと動いています 123 00:05:56,000 --> 00:05:58,000 このキーボードを通じて 124 00:05:58,000 --> 00:06:00,000 音楽のプロセスを研究する手法が得られました 125 00:06:00,000 --> 00:06:03,000 ではこの格好良いキーボードで何ができるでしょう? 126 00:06:03,000 --> 00:06:05,000 単に「キーボードが手に入って良かった」ではいけません 127 00:06:05,000 --> 00:06:07,000 科学的な実験を考案しなくてはなりません 128 00:06:07,000 --> 00:06:10,000 実験は次のような問題に基づいたものとなります 129 00:06:11,000 --> 00:06:14,000 暗記および復習したものを演奏しているとき 130 00:06:14,000 --> 00:06:16,000 また 即興演奏をしているとき 131 00:06:16,000 --> 00:06:18,000 脳内では何が起こっているでしょうか? 132 00:06:18,000 --> 00:06:20,000 運動との一致や 133 00:06:20,000 --> 00:06:23,000 感覚運動機能レベルの観点ではどうでしょう? 134 00:06:23,000 --> 00:06:26,000 こちらはパラダイムと呼ばれるものです 135 00:06:26,000 --> 00:06:29,000 暗記して 単に音階を上下に演奏していくスケールパラダイムです 136 00:06:29,000 --> 00:06:31,000 次に スケールに即興を加えたものです 137 00:06:31,000 --> 00:06:33,000 四分音符 メトロノーム 右手 138 00:06:33,000 --> 00:06:35,000 科学的には堅実ですが 139 00:06:35,000 --> 00:06:37,000 音楽としてはとてもつまらないものです 140 00:06:37,000 --> 00:06:39,000 一番下はジャズパラダイムと呼ばれるものです 141 00:06:39,000 --> 00:06:41,000 実験として我々はプロのジャズ奏者を NIH へ招いて 142 00:06:41,000 --> 00:06:44,000 私が演奏していた左下の楽譜を 143 00:06:44,000 --> 00:06:46,000 暗記してもらい 144 00:06:46,000 --> 00:06:49,000 全く同じコード進行で即興してもらいました 145 00:06:49,000 --> 00:06:51,000 右下の音のアイコンをクリックして頂けますか 146 00:06:51,000 --> 00:06:53,000 スキャナー内で録音したものを聴いてみましょう 147 00:06:53,000 --> 00:06:58,000 (演奏) 148 00:07:21,000 --> 00:07:23,000 結局 とても不自然な環境ではありましたが 149 00:07:23,000 --> 00:07:25,000 彼らは演奏できました 150 00:07:25,000 --> 00:07:27,000 そのソロを 200 回は聴きましたが 151 00:07:27,000 --> 00:07:29,000 未だに気に入っています 152 00:07:29,000 --> 00:07:31,000 ミュージシャンたちにも 最終的には慣れてもらえました 153 00:07:31,000 --> 00:07:33,000 さて 私たちは初めに音符の数を数えました 154 00:07:33,000 --> 00:07:35,000 彼らは即興演奏中に 単により多くの音を出しただけだったのでしょうか? 155 00:07:35,000 --> 00:07:37,000 そうではありませんでした 156 00:07:37,000 --> 00:07:39,000 次に脳の活動を調べてみました 157 00:07:39,000 --> 00:07:41,000 こちらの画像について説明していきます 158 00:07:41,000 --> 00:07:44,000 これらは脳の対比画像で 159 00:07:44,000 --> 00:07:46,000 即興演奏時と 暗譜演奏時との 160 00:07:46,000 --> 00:07:48,000 活動の差を示しています 161 00:07:48,000 --> 00:07:50,000 活性化している赤い部位は前頭前皮質と 162 00:07:50,000 --> 00:07:52,000 前頭皮質です 163 00:07:52,000 --> 00:07:54,000 青いところは非活性化している部位です 164 00:07:54,000 --> 00:07:56,000 内側前頭前皮質と呼ばれる領域が 165 00:07:56,000 --> 00:07:58,000 演奏中に活性化していることが分かりました 166 00:07:58,000 --> 00:08:01,000 外側前頭前皮質と呼ばれる領域が 167 00:08:01,000 --> 00:08:04,000 演奏中に非活性化しており これについて説明します 168 00:08:04,000 --> 00:08:06,000 以上の部位は脳の中でも多機能な領域で 169 00:08:06,000 --> 00:08:09,000 ジャズを担当している領域というわけではありません 170 00:08:09,000 --> 00:08:11,000 反省 内省 ワーキングメモリなど 171 00:08:11,000 --> 00:08:13,000 その他さまざまなことと 172 00:08:13,000 --> 00:08:15,000 関連している領域です 173 00:08:15,000 --> 00:08:18,000 実は 意識は前頭葉に座しています 174 00:08:18,000 --> 00:08:20,000 ところがここでは 175 00:08:20,000 --> 00:08:23,000 内省など 抑制に関わっている部位と 176 00:08:23,000 --> 00:08:25,000 自伝的あるいは自己表現といった 促進に関わっている部位との 177 00:08:25,000 --> 00:08:27,000 連携が見られます 178 00:08:27,000 --> 00:08:29,000 予備実験的な段階ですが 私たちが考えているのは -- 179 00:08:29,000 --> 00:08:31,000 一つの実験の結果です 間違っているかもしれません 180 00:08:31,000 --> 00:08:33,000 それでも 一つの実験結果です 181 00:08:33,000 --> 00:08:36,000 筋が通った説明として私たちが考えているのは 182 00:08:36,000 --> 00:08:38,000 創造的になるには 183 00:08:38,000 --> 00:08:40,000 前頭葉において奇妙な解離が必要であるということです 184 00:08:40,000 --> 00:08:42,000 一方の領域が活性化し 別の大きな領域は沈静化します 185 00:08:42,000 --> 00:08:45,000 その結果 人は間違えることを恐れなくなり 186 00:08:45,000 --> 00:08:47,000 新たな創造の神経活動を 187 00:08:47,000 --> 00:08:50,000 停止させない ということになります 188 00:08:50,000 --> 00:08:53,000 さて 多くの方がご存じの通り 音楽はソロだけでなく 189 00:08:53,000 --> 00:08:55,000 コミュニーケーションの中でも行われます 190 00:08:55,000 --> 00:08:57,000 従って次の問題です 191 00:08:57,000 --> 00:08:59,000 ジャズ演奏において通常行われるような 192 00:08:59,000 --> 00:09:01,000 トレーディングフォースと呼ばれる 193 00:09:01,000 --> 00:09:03,000 ミュージシャンたちが交互に演奏している時には何が起こっているのでしょうか? 194 00:09:03,000 --> 00:09:05,000 こちらは 12 小節のブルースです 195 00:09:05,000 --> 00:09:07,000 どこで交代するか分かるように 196 00:09:07,000 --> 00:09:09,000 4 小節グループに分割しました 197 00:09:09,000 --> 00:09:11,000 実験では先ほどと同様 ミュージシャンをスキャナーに入れ 198 00:09:11,000 --> 00:09:13,000 メロディーを記憶してもらい 199 00:09:13,000 --> 00:09:15,000 制御室の別のミュージシャンと 200 00:09:15,000 --> 00:09:18,000 交互に演奏してもらいました 201 00:09:18,000 --> 00:09:20,000 こちらはミュージシャンのマイク・ポープです 202 00:09:20,000 --> 00:09:23,000 世界最高のベーシストの一人で 素晴らしいピアノ奏者です 203 00:09:28,000 --> 00:09:30,000 先ほどの楽譜を 204 00:09:30,000 --> 00:09:32,000 彼が弾いてくれています 205 00:09:32,000 --> 00:09:34,000 私が楽譜に書いたものより少し良くね 206 00:09:34,000 --> 00:09:36,000 (ビデオ) CL: マイク どうぞ (男性: フォースと共にあらんことを) 207 00:09:36,000 --> 00:09:38,000 看護師: ポケットの中には何も入っていませんね? 208 00:09:38,000 --> 00:09:41,000 マイク・ポープ: 入っていません (看護師: OK) 209 00:09:50,000 --> 00:09:52,000 CL: スキャナーに入るにはそれなりの姿勢が必要なんです 210 00:09:52,000 --> 00:09:54,000 (笑い) 211 00:09:54,000 --> 00:09:56,000 実際おもしろいですよ 212 00:09:56,000 --> 00:09:59,000 私たちは交互に演奏しています 213 00:09:59,000 --> 00:10:02,000 彼はあの中です 足が見えるでしょう 214 00:10:03,000 --> 00:10:06,000 私はこちらの制御室で交互に演奏しています 215 00:10:06,000 --> 00:10:09,000 (音楽) 216 00:10:18,000 --> 00:10:21,000 (ビデオ) マイク・ポープ: これはなかなか良く 217 00:10:21,000 --> 00:10:23,000 トレーディングフォースを再現しています 218 00:10:23,000 --> 00:10:25,000 早すぎず丁度いい 219 00:10:25,000 --> 00:10:27,000 繰り返し演奏することで 220 00:10:27,000 --> 00:10:30,000 環境にも慣れます 221 00:10:31,000 --> 00:10:34,000 私にとって難しかったのは運動まわりのことです 222 00:10:34,000 --> 00:10:36,000 手元を見るのに 223 00:10:36,000 --> 00:10:38,000 二つの鏡を介していることや 224 00:10:38,000 --> 00:10:40,000 仰向けでいることで 225 00:10:40,000 --> 00:10:42,000 手以外動かすことができなかったことです 226 00:10:42,000 --> 00:10:44,000 難しかったです 227 00:10:44,000 --> 00:10:46,000 それでも 228 00:10:46,000 --> 00:10:49,000 確かにありました 229 00:10:49,000 --> 00:10:51,000 確かに 230 00:10:51,000 --> 00:10:55,000 本当の 純粋な音楽の相互作用がありました 231 00:10:55,000 --> 00:10:57,000 CL: ここでいったん止めます 232 00:10:57,000 --> 00:10:59,000 科学でこれをするのは大罪なのですが 233 00:10:59,000 --> 00:11:01,000 こちらにお見せしているのは 234 00:11:01,000 --> 00:11:03,000 予備データです 235 00:11:03,000 --> 00:11:05,000 一人の被験者のデータ 236 00:11:05,000 --> 00:11:07,000 マイク・ポープのデータです 237 00:11:07,000 --> 00:11:09,000 これはどういう画像かというと 238 00:11:09,000 --> 00:11:12,000 彼と私 即興対暗譜の演奏では 239 00:11:12,000 --> 00:11:15,000 左脳の下前頭回にある 240 00:11:15,000 --> 00:11:17,000 言語野 ブローカ野が活性化しています 241 00:11:17,000 --> 00:11:19,000 実は右脳でも同様の活性が見られたのですが 242 00:11:19,000 --> 00:11:22,000 ここがコミュニケーション表現に関わっているとされている領域です 243 00:11:22,000 --> 00:11:24,000 音楽は言語であるということで 244 00:11:24,000 --> 00:11:27,000 実際そのような神経基盤があるのかもしれませんが 245 00:11:27,000 --> 00:11:30,000 二人のミュージシャンが音楽の会話をしている時にこのようなデータが取れました 246 00:11:30,000 --> 00:11:32,000 現在までに 8 名の被験者でデータが取れており 247 00:11:32,000 --> 00:11:34,000 今はそれをまとめているところです 248 00:11:34,000 --> 00:11:36,000 何か意味のある報告ができればと思っています 249 00:11:36,000 --> 00:11:39,000 さて 即興 言語ときたら次は何でしょう? 250 00:11:39,000 --> 00:11:41,000 ラップ そうそう ラップです 251 00:11:41,000 --> 00:11:43,000 フリースタイルです 252 00:11:43,000 --> 00:11:45,000 私は以前からフリースタイルに惹かれていました 253 00:11:45,000 --> 00:11:47,000 早速こちらのビデオを見てみましょう 254 00:11:47,000 --> 00:11:49,000 ♫(ビデオ) モス・デフ: 5:10 に起きているだろうか♫ 255 00:11:49,000 --> 00:11:52,000 ♫お前の近くで Rockしてやる♫ 256 00:11:52,000 --> 00:11:54,000 ♫丸ごとシナジーに対称性が見えるか♫ 257 00:11:54,000 --> 00:11:57,000 ♫俺を傷つけてみろ 化学的に崩壊させて♫ 258 00:11:57,000 --> 00:11:59,000 ♫最高のMCじゃないか 俺がどうしていたかって話か♫ 259 00:11:59,000 --> 00:12:02,000 ♫ケネディースタイルで 夜更けの 2:50 ♫ 260 00:12:02,000 --> 00:12:05,000 ♫俺がそこにいるとき 女たちが合鍵を曲げろと言う♫ 261 00:12:05,000 --> 00:12:07,000 CL: フリースタイルラップとジャズには 262 00:12:07,000 --> 00:12:09,000 多くの共通点があります 263 00:12:09,000 --> 00:12:11,000 この二つの音楽は異なる時代にあって 264 00:12:11,000 --> 00:12:13,000 お互いに関係があると思います 265 00:12:13,000 --> 00:12:15,000 かつてジャズが担っていた社会的機能を 266 00:12:15,000 --> 00:12:17,000 ラップも同様に持っています 267 00:12:17,000 --> 00:12:19,000 ではどうしたらラップを科学的に研究できるでしょうか? 268 00:12:19,000 --> 00:12:21,000 同僚は 私が狂っていると思っていますが 269 00:12:21,000 --> 00:12:23,000 私は可能だと考えています 270 00:12:23,000 --> 00:12:25,000 実験手続きはこうです フリースタイルアーティストを招いて 271 00:12:25,000 --> 00:12:27,000 彼らが聞いたことのない 272 00:12:27,000 --> 00:12:29,000 新しく書き下ろしたラップを記憶してもらい 273 00:12:29,000 --> 00:12:31,000 フリースタイルラップをしてもらいます 274 00:12:31,000 --> 00:12:33,000 私はラボのメンバーに TED でラップをすると言ってきました 275 00:12:33,000 --> 00:12:35,000 彼らは「嘘だろ」と言ったのですが 276 00:12:35,000 --> 00:12:37,000 私は -- 277 00:12:37,000 --> 00:12:43,000 (拍手) 278 00:12:43,000 --> 00:12:45,000 こうします 279 00:12:45,000 --> 00:12:48,000 巨大スクリーンを見て 皆さん一緒にラップしてください 280 00:12:48,000 --> 00:12:50,000 実験として行ったことは 281 00:12:50,000 --> 00:12:52,000 左下のサウンドアイコンをクリックしてください 282 00:12:52,000 --> 00:12:55,000 統制群の実験で アーティストに暗記してもらったのはこちらです 283 00:12:55,000 --> 00:12:57,000 コンピュータ: ♫ 覚えてください 「衝撃」 ♫ 284 00:12:57,000 --> 00:13:00,000 CL: ♫ ビートの衝撃を既知の繰り返しで ♫ 285 00:13:00,000 --> 00:13:03,000 ♫ リズムとライム が俺を満たす♫ 286 00:13:03,000 --> 00:13:05,000 ♫ マイクを持つと高まりは圧倒的 ♫ 287 00:13:05,000 --> 00:13:08,000 ♫ シビれるライムを届ける ♫ 288 00:13:08,000 --> 00:13:10,000 ♫ 無限の探求の中で真実を探す ♫ 289 00:13:10,000 --> 00:13:13,000 ♫ 情熱は格好じゃない この格好が見えるだろう ♫ 290 00:13:13,000 --> 00:13:16,000 ♫ ブッ飛んだ言葉が脳裏に浮かび ♫ 291 00:13:16,000 --> 00:13:19,000 ♫ 俺だけに聞こえる詩をささやく ♫ 292 00:13:19,000 --> 00:13:21,000 ♫ 発見の術と 自由な発想の ♫ 293 00:13:21,000 --> 00:13:24,000 ♫ 中に浮かぶ発見 ♫ 294 00:13:24,000 --> 00:13:27,000 ♫ 雨のように降り注いでくる言葉 ♫ 295 00:13:27,000 --> 00:13:30,000 ♫ 俺の脳を診てくれるマッドサイエンティストを呼んでくれ♫ 296 00:13:30,000 --> 00:13:39,000 (拍手) 297 00:13:39,000 --> 00:13:42,000 約束します 二度とやりませんよ 298 00:13:42,000 --> 00:13:44,000 (笑い) 299 00:13:44,000 --> 00:13:46,000 さて フリースタイルアーティストの凄いところは 300 00:13:46,000 --> 00:13:48,000 まず彼らは別々の言葉を呈示されます 301 00:13:48,000 --> 00:13:50,000 突然呈示され また彼らは何が呈示されるか分かりません 302 00:13:50,000 --> 00:13:52,000 右のサウンドアイコンをクリックしてください 303 00:13:52,000 --> 00:13:55,000 四角で囲われた三つの言葉「like」「not」「head」が呈示されますが 304 00:13:55,000 --> 00:13:57,000 彼はそのことを知りません 305 00:13:57,000 --> 00:13:59,000 フリースタイラー: ♫ 俺は [...] のようなもので ♫ 306 00:13:59,000 --> 00:14:02,000 ♫ この世のものとは思えない素晴らしい景色 ♫ 307 00:14:02,000 --> 00:14:05,000 ♫ 以前はピラミッドに座って ♫ 308 00:14:05,000 --> 00:14:08,000 ♫ 頭上に浮かぶ二つのマイクを介していた ♫ 309 00:14:08,000 --> 00:14:11,000 ♫ もし音を紡ぎつつ まだ聞こえたなら ♫ 310 00:14:11,000 --> 00:14:13,000 ♫ 何に微笑んでいるだろうか ♫ 311 00:14:13,000 --> 00:14:15,000 ♫ 教室の後ろの子供に教える ♫ 312 00:14:15,000 --> 00:14:18,000 ♫ 啓示的なメッセージを ♫ 313 00:14:18,000 --> 00:14:21,000 ♫ いやでも シンプルにやらなきゃいけないから ♫ 314 00:14:21,000 --> 00:14:23,000 ♫ [...] 楽器 ♫ 315 00:14:23,000 --> 00:14:26,000 ♫ 害するものがスーパーマリオをする ♫ 316 00:14:26,000 --> 00:14:30,000 ♫ 箱 [...] ヒップホップ ♫ 317 00:14:30,000 --> 00:14:32,000 CL: 繰り返しますが 信じられないことが起きています 318 00:14:32,000 --> 00:14:34,000 神経学的に驚くべきことをしています 319 00:14:34,000 --> 00:14:36,000 この音楽が好きか否かは問題ではありません 320 00:14:36,000 --> 00:14:38,000 創作という点で これはとにかく驚異的なことです 321 00:14:38,000 --> 00:14:41,000 こちらのビデオはスキャナーでの模様です 322 00:14:41,000 --> 00:14:44,000 (笑い) 323 00:14:44,000 --> 00:14:46,000 (ビデオ) CL: エマニュエルに来て頂いています 324 00:14:46,000 --> 00:14:48,000 CL: ちなみにこれはスキャナーで録画したものです 325 00:14:48,000 --> 00:14:50,000 (ビデオ) CL: あちらがスキャナー内のエマニュエルです 326 00:14:51,000 --> 00:14:54,000 詩を暗記して頂きました 327 00:14:57,000 --> 00:15:00,000 エマニュエル: ♫ 繰り返しのないビートの頂点 ♫ 328 00:15:00,000 --> 00:15:03,000 ♫ リズムとライムが俺を満たす ♫ 329 00:15:03,000 --> 00:15:06,000 ♫ マイクを持つと高まりは圧倒的 ♫ 330 00:15:06,000 --> 00:15:08,000 ♫ シビれるライムを届ける ♫ 331 00:15:08,000 --> 00:15:11,000 ♫ 無限の探求の中で真実を探す ♫ 332 00:15:11,000 --> 00:15:14,000 ♫ 情熱は格好じゃない この格好が見えるだろう ♫ 333 00:15:14,000 --> 00:15:17,000 CL: ここで止めます 彼の脳内で何が起きているでしょう? 334 00:15:17,000 --> 00:15:19,000 こちらは実はラッパー 4 名の脳のデータです 335 00:15:19,000 --> 00:15:21,000 言語野が活性化しているのは分かりますが 336 00:15:21,000 --> 00:15:23,000 閉眼条件において 337 00:15:23,000 --> 00:15:26,000 暗記したものをラップするのに比べ 338 00:15:26,000 --> 00:15:28,000 フリースタイルでは視覚野が活性化しています 339 00:15:28,000 --> 00:15:31,000 運動協調に関わっている小脳が活性しています 340 00:15:31,000 --> 00:15:34,000 類似しているタスクを行っているとき 341 00:15:34,000 --> 00:15:37,000 暗記に比べ 創造性に関わっているタスクでは脳がより活発になっています 342 00:15:38,000 --> 00:15:40,000 まだまだ初期段階ですが 私は素晴らしいと思います 343 00:15:40,000 --> 00:15:43,000 締めに入ります 私たちはさまざまな問題を抱えています 344 00:15:43,000 --> 00:15:46,000 先に触れたとおり質問するだけで 私たちは答えを持っていません 345 00:15:46,000 --> 00:15:49,000 ただ 創造の才とは何か 神経学的に突き止めたいのです 346 00:15:49,000 --> 00:15:52,000 ご紹介した手法で近づきつつあると思います 347 00:15:52,000 --> 00:15:54,000 そして願わくばこの先 10年 20年で 348 00:15:54,000 --> 00:15:56,000 科学が芸術に追いついたといえるような 349 00:15:56,000 --> 00:16:00,000 実のある研究が出てくればと思います 350 00:16:00,000 --> 00:16:02,000 私たちはおそらく 今 出発したばかりです 351 00:16:02,000 --> 00:16:04,000 ご拝聴頂きありがとうございました 352 00:16:04,000 --> 00:16:09,000 (拍手)