0:00:00.000,0:00:03.000
私は創造性の研究をしている外科医ですが

0:00:03.000,0:00:06.000
「手術中に創造的になってください」

0:00:06.000,0:00:09.000
という患者を受け持ったことはありません

0:00:09.000,0:00:12.000
少し皮肉な感じがします

0:00:12.000,0:00:15.000
とは言っても 数々の手術をこなしてきた中で

0:00:15.000,0:00:17.000
手術は楽器の演奏に通じるものがあると感じています

0:00:17.000,0:00:20.000
音にまつわる不変の深い魅力が

0:00:20.000,0:00:22.000
私を外科医に そして

0:00:22.000,0:00:24.000
音の科学 特に音楽の研究に導きました

0:00:24.000,0:00:26.000
これから数分間

0:00:26.000,0:00:28.000
私の職歴について

0:00:28.000,0:00:30.000
実際どのように音楽を研究しているか

0:00:30.000,0:00:32.000
脳はどのようにして創造性を発揮するのか

0:00:32.000,0:00:35.000
といった問題と絡めてお話しします

0:00:35.000,0:00:37.000
研究のほとんどは　ジョンズホプキンズ大学と

0:00:37.000,0:00:39.000
以前いた国立衛生研究所で行いました

0:00:39.000,0:00:41.000
いくつかの実験を振り返って

0:00:41.000,0:00:43.000
音楽に関する実験を三つご紹介します

0:00:43.000,0:00:45.000
最初にビデオをお見せしましょう

0:00:45.000,0:00:48.000
これは有名な即興ジャズ演奏家であり

0:00:48.000,0:00:51.000
即興を高いレベルまで昇華していった

0:00:51.000,0:00:53.000
キース・ジャレットのビデオです

0:00:53.000,0:00:55.000
彼は全てのコンサートを

0:00:55.000,0:00:57.000
即興で演奏し

0:00:57.000,0:00:59.000
二度と同じ演奏はしません

0:00:59.000,0:01:01.000
ですので　 強烈な創造性を示す

0:01:01.000,0:01:03.000
素晴らしい例だと思います

0:01:03.000,0:01:05.000
ではビデオを見ていきましょう

0:01:06.000,0:01:10.000
(演奏)

0:02:02.000,0:02:05.000
この即興は本当に素晴らしく 驚異的です

0:02:05.000,0:02:07.000
一人の聴衆として 一人のファンとして

0:02:07.000,0:02:09.000
これを聴くといつも感動します

0:02:09.000,0:02:11.000
何がこれを可能にしているのでしょう？

0:02:11.000,0:02:13.000
脳はどのようにしてあれだけの情報や

0:02:13.000,0:02:15.000
音を同時に生み出しているのでしょう？

0:02:15.000,0:02:18.000
芸術における創造性は魔法のようですが マジックではありません

0:02:18.000,0:02:21.000
私はこの考えに従って この問題に科学的に着手しました

0:02:21.000,0:02:23.000
つまり創造性は脳によるものです

0:02:23.000,0:02:26.000
頭を使わずに芸術を創り出す人はそうそういません

0:02:26.000,0:02:28.000
この考えでいくと　芸術における創造性は

0:02:28.000,0:02:30.000
神経による産物であり

0:02:30.000,0:02:33.000
他の複雑な神経プロセスの研究と同様に

0:02:33.000,0:02:36.000
この現象も研究できると考えています

0:02:36.000,0:02:38.000
スライドに下位問題として記してありますが

0:02:38.000,0:02:40.000
創造性を科学的に研究することは本当に可能でしょうか？

0:02:40.000,0:02:42.000
これは良い設問だと思います

0:02:42.000,0:02:45.000
音楽の科学的な研究のほとんどは

0:02:45.000,0:02:47.000
非常に難解です

0:02:47.000,0:02:50.000
また それらの研究の中に音楽を見出すのは困難です

0:02:50.000,0:02:52.000
事実 音楽の研究には全く音楽らしさが無く

0:02:52.000,0:02:54.000
音楽の要点を見失っています

0:02:54.000,0:02:56.000
そして二つ目の問題が出てきます

0:02:56.000,0:02:58.000
何故私たち科学者が創造性を研究するべきなのでしょう？

0:02:58.000,0:03:00.000
私たちは適任者でないかもしれません

0:03:00.000,0:03:02.000
もしかするとそうかもしれませんが

0:03:02.000,0:03:04.000
しかし科学的見地から言わせてもらえば

0:03:04.000,0:03:06.000
本日は多くの

0:03:06.000,0:03:08.000
科学的な革新をお話ししますが

0:03:08.000,0:03:10.000
脳がどのようにして革新を可能とするかは

0:03:10.000,0:03:12.000
まだほとんど分かっていません

0:03:12.000,0:03:15.000
人がどうやって創造的になるのか ほんの少ししか明らかになっていません

0:03:15.000,0:03:17.000
今後10年 20年 30年で

0:03:17.000,0:03:19.000
創造性の科学が本当に

0:03:19.000,0:03:22.000
芽生え 花開くことになると思います

0:03:22.000,0:03:24.000
なぜなら 私たちは今 新たな手法で

0:03:24.000,0:03:26.000
複雑な即興ジャズ演奏といったプロセスを

0:03:26.000,0:03:28.000
綿密に研究できるようになったからです

0:03:28.000,0:03:30.000
こちらが脳です

0:03:30.000,0:03:32.000
私たちは皆この素晴らしい脳を持っています

0:03:32.000,0:03:35.000
未だ解明されているとは言い難いですが

0:03:35.000,0:03:37.000
神経学者は

0:03:37.000,0:03:39.000
答えより 問題の方を断然多く抱えているでしょう

0:03:39.000,0:03:41.000
私自身も 本日のお話では

0:03:41.000,0:03:43.000
ただ沢山質問をするだけです

0:03:43.000,0:03:45.000
ラボで私が基本的に行っていることです

0:03:45.000,0:03:47.000
脳がどのようにしてこれらを可能としているかを探求しています

0:03:47.000,0:03:50.000
こちらが私が主に用いている手法です これは fMRIと呼ばれるものです

0:03:50.000,0:03:53.000
MRI スキャナーとほぼ同じですが

0:03:53.000,0:03:55.000
fMRI は別の方向に特化しており

0:03:55.000,0:03:57.000
脳の画像を取るだけでなく

0:03:57.000,0:04:00.000
活発な部位の画像を取ることができます

0:04:00.000,0:04:02.000
さて 仕組みは次のようなもので

0:04:02.000,0:04:04.000
血中酸素濃度を意味する BOLD イメージング

0:04:04.000,0:04:06.000
と呼ばれるものです

0:04:06.000,0:04:08.000
fMRI スキャナーは

0:04:08.000,0:04:10.000
巨大な磁石で

0:04:10.000,0:04:12.000
体の特定の部位にある分子を並べます

0:04:12.000,0:04:15.000
脳の ある神経部位が活性化すると

0:04:15.000,0:04:18.000
その部位には血液が流れ込みます

0:04:18.000,0:04:20.000
その血流によって

0:04:20.000,0:04:22.000
その部位の血液量が増加し

0:04:22.000,0:04:25.000
デオキシヘモグロビン濃度が変化します

0:04:25.000,0:04:27.000
デオキシヘモグロビンは MRI で検出できますが

0:04:27.000,0:04:29.000
オキシヘモグロビンはできません

0:04:29.000,0:04:31.000
神経活動ではなく血流を測定する

0:04:31.000,0:04:33.000
この推論手法によって

0:04:33.000,0:04:35.000
特定の作業中 より多くの血流が認められる部位は

0:04:35.000,0:04:37.000
より活発であると私たちは判断します

0:04:37.000,0:04:39.000
以上が fMRI の仕組みの要点です

0:04:39.000,0:04:41.000
これは 90 年代からずっと

0:04:41.000,0:04:44.000
非常な複雑なプロセスの研究に用いられてきました

0:04:44.000,0:04:46.000
では私の過去の研究を振り返っていきます

0:04:46.000,0:04:48.000
fMRI スキャナー内でのジャズ演奏の研究です

0:04:48.000,0:04:50.000
私の同僚である NIH のアラン・ブラウンと共同で行われました

0:04:50.000,0:04:53.000
このショートビデオはその研究の様子です

0:04:53.000,0:04:55.000
(ビデオ) チャールス・リム: こちらはジャズの実験に用いる

0:04:55.000,0:04:57.000
MIDI キーボードです

0:04:57.000,0:04:59.000
鍵盤の数は 35

0:04:59.000,0:05:01.000
スキャナーに入るサイズで

0:05:01.000,0:05:03.000
磁気内でも動作し

0:05:03.000,0:05:05.000
芸術を創り出す為の

0:05:05.000,0:05:07.000
最低限のインタフェースがあり

0:05:07.000,0:05:10.000
スキャナー内で 仰向けで演奏する奏者の

0:05:10.000,0:05:13.000
足の上に置けるよう クッションが付いています

0:05:13.000,0:05:16.000
仕組みはこうです これ自体は何も音を鳴らしませんが

0:05:16.000,0:05:18.000
楽器のデジタル信号である

0:05:18.000,0:05:20.000
MIDI 信号を

0:05:20.000,0:05:23.000
この箱を経由しコンピュータへ送ります

0:05:23.000,0:05:26.000
そしてこのような高音質のピアノ音を鳴らします

0:05:26.000,0:05:29.000
(演奏)

0:05:32.000,0:05:52.000
(演奏)

0:05:54.000,0:05:56.000
CL: ちゃんと動いています

0:05:56.000,0:05:58.000
このキーボードを通じて

0:05:58.000,0:06:00.000
音楽のプロセスを研究する手法が得られました

0:06:00.000,0:06:03.000
ではこの格好良いキーボードで何ができるでしょう？

0:06:03.000,0:06:05.000
単に「キーボードが手に入って良かった」ではいけません

0:06:05.000,0:06:07.000
科学的な実験を考案しなくてはなりません

0:06:07.000,0:06:10.000
実験は次のような問題に基づいたものとなります

0:06:11.000,0:06:14.000
暗記および復習したものを演奏しているとき

0:06:14.000,0:06:16.000
また 即興演奏をしているとき

0:06:16.000,0:06:18.000
脳内では何が起こっているでしょうか？

0:06:18.000,0:06:20.000
運動との一致や

0:06:20.000,0:06:23.000
感覚運動機能レベルの観点ではどうでしょう？

0:06:23.000,0:06:26.000
こちらはパラダイムと呼ばれるものです

0:06:26.000,0:06:29.000
暗記して 単に音階を上下に演奏していくスケールパラダイムです

0:06:29.000,0:06:31.000
次に スケールに即興を加えたものです

0:06:31.000,0:06:33.000
四分音符 メトロノーム 右手

0:06:33.000,0:06:35.000
科学的には堅実ですが

0:06:35.000,0:06:37.000
音楽としてはとてもつまらないものです

0:06:37.000,0:06:39.000
一番下はジャズパラダイムと呼ばれるものです

0:06:39.000,0:06:41.000
実験として我々はプロのジャズ奏者を NIH へ招いて

0:06:41.000,0:06:44.000
私が演奏していた左下の楽譜を

0:06:44.000,0:06:46.000
暗記してもらい

0:06:46.000,0:06:49.000
全く同じコード進行で即興してもらいました

0:06:49.000,0:06:51.000
右下の音のアイコンをクリックして頂けますか

0:06:51.000,0:06:53.000
スキャナー内で録音したものを聴いてみましょう

0:06:53.000,0:06:58.000
(演奏)

0:07:21.000,0:07:23.000
結局 とても不自然な環境ではありましたが

0:07:23.000,0:07:25.000
彼らは演奏できました

0:07:25.000,0:07:27.000
そのソロを 200 回は聴きましたが

0:07:27.000,0:07:29.000
未だに気に入っています

0:07:29.000,0:07:31.000
ミュージシャンたちにも 最終的には慣れてもらえました

0:07:31.000,0:07:33.000
さて 私たちは初めに音符の数を数えました

0:07:33.000,0:07:35.000
彼らは即興演奏中に 単により多くの音を出しただけだったのでしょうか？

0:07:35.000,0:07:37.000
そうではありませんでした

0:07:37.000,0:07:39.000
次に脳の活動を調べてみました

0:07:39.000,0:07:41.000
こちらの画像について説明していきます

0:07:41.000,0:07:44.000
これらは脳の対比画像で

0:07:44.000,0:07:46.000
即興演奏時と 暗譜演奏時との

0:07:46.000,0:07:48.000
活動の差を示しています

0:07:48.000,0:07:50.000
活性化している赤い部位は前頭前皮質と

0:07:50.000,0:07:52.000
前頭皮質です

0:07:52.000,0:07:54.000
青いところは非活性化している部位です

0:07:54.000,0:07:56.000
内側前頭前皮質と呼ばれる領域が

0:07:56.000,0:07:58.000
演奏中に活性化していることが分かりました

0:07:58.000,0:08:01.000
外側前頭前皮質と呼ばれる領域が

0:08:01.000,0:08:04.000
演奏中に非活性化しており これについて説明します

0:08:04.000,0:08:06.000
以上の部位は脳の中でも多機能な領域で

0:08:06.000,0:08:09.000
ジャズを担当している領域というわけではありません

0:08:09.000,0:08:11.000
反省 内省 ワーキングメモリなど

0:08:11.000,0:08:13.000
その他さまざまなことと

0:08:13.000,0:08:15.000
関連している領域です

0:08:15.000,0:08:18.000
実は 意識は前頭葉に座しています

0:08:18.000,0:08:20.000
ところがここでは

0:08:20.000,0:08:23.000
内省など 抑制に関わっている部位と

0:08:23.000,0:08:25.000
自伝的あるいは自己表現といった 促進に関わっている部位との

0:08:25.000,0:08:27.000
連携が見られます

0:08:27.000,0:08:29.000
予備実験的な段階ですが 私たちが考えているのは --

0:08:29.000,0:08:31.000
一つの実験の結果です 間違っているかもしれません

0:08:31.000,0:08:33.000
それでも 一つの実験結果です

0:08:33.000,0:08:36.000
筋が通った説明として私たちが考えているのは

0:08:36.000,0:08:38.000
創造的になるには

0:08:38.000,0:08:40.000
前頭葉において奇妙な解離が必要であるということです

0:08:40.000,0:08:42.000
一方の領域が活性化し 別の大きな領域は沈静化します

0:08:42.000,0:08:45.000
その結果 人は間違えることを恐れなくなり

0:08:45.000,0:08:47.000
新たな創造の神経活動を

0:08:47.000,0:08:50.000
停止させない ということになります

0:08:50.000,0:08:53.000
さて 多くの方がご存じの通り 音楽はソロだけでなく

0:08:53.000,0:08:55.000
コミュニーケーションの中でも行われます

0:08:55.000,0:08:57.000
従って次の問題です

0:08:57.000,0:08:59.000
ジャズ演奏において通常行われるような

0:08:59.000,0:09:01.000
トレーディングフォースと呼ばれる

0:09:01.000,0:09:03.000
ミュージシャンたちが交互に演奏している時には何が起こっているのでしょうか？

0:09:03.000,0:09:05.000
こちらは 12 小節のブルースです

0:09:05.000,0:09:07.000
どこで交代するか分かるように

0:09:07.000,0:09:09.000
4 小節グループに分割しました

0:09:09.000,0:09:11.000
実験では先ほどと同様 ミュージシャンをスキャナーに入れ

0:09:11.000,0:09:13.000
メロディーを記憶してもらい

0:09:13.000,0:09:15.000
制御室の別のミュージシャンと

0:09:15.000,0:09:18.000
交互に演奏してもらいました

0:09:18.000,0:09:20.000
こちらはミュージシャンのマイク・ポープです

0:09:20.000,0:09:23.000
世界最高のベーシストの一人で 素晴らしいピアノ奏者です

0:09:28.000,0:09:30.000
先ほどの楽譜を

0:09:30.000,0:09:32.000
彼が弾いてくれています

0:09:32.000,0:09:34.000
私が楽譜に書いたものより少し良くね

0:09:34.000,0:09:36.000
(ビデオ) CL: マイク どうぞ (男性: フォースと共にあらんことを)

0:09:36.000,0:09:38.000
看護師: ポケットの中には何も入っていませんね？

0:09:38.000,0:09:41.000
マイク・ポープ: 入っていません (看護師: OK)

0:09:50.000,0:09:52.000
CL: スキャナーに入るにはそれなりの姿勢が必要なんです

0:09:52.000,0:09:54.000
(笑い)

0:09:54.000,0:09:56.000
実際おもしろいですよ

0:09:56.000,0:09:59.000
私たちは交互に演奏しています

0:09:59.000,0:10:02.000
彼はあの中です 足が見えるでしょう

0:10:03.000,0:10:06.000
私はこちらの制御室で交互に演奏しています

0:10:06.000,0:10:09.000
(音楽)

0:10:18.000,0:10:21.000
(ビデオ) マイク・ポープ: これはなかなか良く

0:10:21.000,0:10:23.000
トレーディングフォースを再現しています

0:10:23.000,0:10:25.000
早すぎず丁度いい

0:10:25.000,0:10:27.000
繰り返し演奏することで

0:10:27.000,0:10:30.000
環境にも慣れます

0:10:31.000,0:10:34.000
私にとって難しかったのは運動まわりのことです

0:10:34.000,0:10:36.000
手元を見るのに

0:10:36.000,0:10:38.000
二つの鏡を介していることや

0:10:38.000,0:10:40.000
仰向けでいることで

0:10:40.000,0:10:42.000
手以外動かすことができなかったことです

0:10:42.000,0:10:44.000
難しかったです

0:10:44.000,0:10:46.000
それでも

0:10:46.000,0:10:49.000
確かにありました

0:10:49.000,0:10:51.000
確かに

0:10:51.000,0:10:55.000
本当の 純粋な音楽の相互作用がありました

0:10:55.000,0:10:57.000
CL: ここでいったん止めます

0:10:57.000,0:10:59.000
科学でこれをするのは大罪なのですが

0:10:59.000,0:11:01.000
こちらにお見せしているのは

0:11:01.000,0:11:03.000
予備データです

0:11:03.000,0:11:05.000
一人の被験者のデータ

0:11:05.000,0:11:07.000
マイク・ポープのデータです

0:11:07.000,0:11:09.000
これはどういう画像かというと

0:11:09.000,0:11:12.000
彼と私 即興対暗譜の演奏では

0:11:12.000,0:11:15.000
左脳の下前頭回にある

0:11:15.000,0:11:17.000
言語野 ブローカ野が活性化しています

0:11:17.000,0:11:19.000
実は右脳でも同様の活性が見られたのですが

0:11:19.000,0:11:22.000
ここがコミュニケーション表現に関わっているとされている領域です

0:11:22.000,0:11:24.000
音楽は言語であるということで

0:11:24.000,0:11:27.000
実際そのような神経基盤があるのかもしれませんが

0:11:27.000,0:11:30.000
二人のミュージシャンが音楽の会話をしている時にこのようなデータが取れました

0:11:30.000,0:11:32.000
現在までに 8 名の被験者でデータが取れており

0:11:32.000,0:11:34.000
今はそれをまとめているところです

0:11:34.000,0:11:36.000
何か意味のある報告ができればと思っています

0:11:36.000,0:11:39.000
さて 即興 言語ときたら次は何でしょう？

0:11:39.000,0:11:41.000
ラップ そうそう ラップです

0:11:41.000,0:11:43.000
フリースタイルです

0:11:43.000,0:11:45.000
私は以前からフリースタイルに惹かれていました

0:11:45.000,0:11:47.000
早速こちらのビデオを見てみましょう

0:11:47.000,0:11:49.000
♫(ビデオ) モス・デフ: 5:10 に起きているだろうか♫

0:11:49.000,0:11:52.000
♫お前の近くで Rockしてやる♫

0:11:52.000,0:11:54.000
♫丸ごとシナジーに対称性が見えるか♫

0:11:54.000,0:11:57.000
♫俺を傷つけてみろ 化学的に崩壊させて♫

0:11:57.000,0:11:59.000
♫最高のMCじゃないか 俺がどうしていたかって話か♫

0:11:59.000,0:12:02.000
♫ケネディースタイルで 夜更けの 2:50 ♫

0:12:02.000,0:12:05.000
♫俺がそこにいるとき 女たちが合鍵を曲げろと言う♫

0:12:05.000,0:12:07.000
CL: フリースタイルラップとジャズには

0:12:07.000,0:12:09.000
多くの共通点があります

0:12:09.000,0:12:11.000
この二つの音楽は異なる時代にあって

0:12:11.000,0:12:13.000
お互いに関係があると思います

0:12:13.000,0:12:15.000
かつてジャズが担っていた社会的機能を

0:12:15.000,0:12:17.000
ラップも同様に持っています

0:12:17.000,0:12:19.000
ではどうしたらラップを科学的に研究できるでしょうか？

0:12:19.000,0:12:21.000
同僚は 私が狂っていると思っていますが

0:12:21.000,0:12:23.000
私は可能だと考えています

0:12:23.000,0:12:25.000
実験手続きはこうです フリースタイルアーティストを招いて

0:12:25.000,0:12:27.000
彼らが聞いたことのない

0:12:27.000,0:12:29.000
新しく書き下ろしたラップを記憶してもらい

0:12:29.000,0:12:31.000
フリースタイルラップをしてもらいます

0:12:31.000,0:12:33.000
私はラボのメンバーに TED でラップをすると言ってきました

0:12:33.000,0:12:35.000
彼らは「嘘だろ」と言ったのですが

0:12:35.000,0:12:37.000
私は --

0:12:37.000,0:12:43.000
(拍手)

0:12:43.000,0:12:45.000
こうします

0:12:45.000,0:12:48.000
巨大スクリーンを見て 皆さん一緒にラップしてください

0:12:48.000,0:12:50.000
実験として行ったことは

0:12:50.000,0:12:52.000
左下のサウンドアイコンをクリックしてください

0:12:52.000,0:12:55.000
統制群の実験で アーティストに暗記してもらったのはこちらです

0:12:55.000,0:12:57.000
コンピュータ: ♫ 覚えてください 「衝撃」 ♫

0:12:57.000,0:13:00.000
CL: ♫ ビートの衝撃を既知の繰り返しで ♫

0:13:00.000,0:13:03.000
♫ リズムとライム が俺を満たす♫

0:13:03.000,0:13:05.000
♫ マイクを持つと高まりは圧倒的 ♫

0:13:05.000,0:13:08.000
♫ シビれるライムを届ける ♫

0:13:08.000,0:13:10.000
♫ 無限の探求の中で真実を探す ♫

0:13:10.000,0:13:13.000
♫ 情熱は格好じゃない この格好が見えるだろう ♫

0:13:13.000,0:13:16.000
♫ ブッ飛んだ言葉が脳裏に浮かび ♫

0:13:16.000,0:13:19.000
♫ 俺だけに聞こえる詩をささやく ♫

0:13:19.000,0:13:21.000
♫ 発見の術と 自由な発想の ♫

0:13:21.000,0:13:24.000
♫ 中に浮かぶ発見 ♫

0:13:24.000,0:13:27.000
♫ 雨のように降り注いでくる言葉 ♫

0:13:27.000,0:13:30.000
♫ 俺の脳を診てくれるマッドサイエンティストを呼んでくれ♫

0:13:30.000,0:13:39.000
(拍手)

0:13:39.000,0:13:42.000
約束します 二度とやりませんよ

0:13:42.000,0:13:44.000
(笑い)

0:13:44.000,0:13:46.000
さて フリースタイルアーティストの凄いところは

0:13:46.000,0:13:48.000
まず彼らは別々の言葉を呈示されます

0:13:48.000,0:13:50.000
突然呈示され また彼らは何が呈示されるか分かりません

0:13:50.000,0:13:52.000
右のサウンドアイコンをクリックしてください

0:13:52.000,0:13:55.000
四角で囲われた三つの言葉「like」「not」「head」が呈示されますが

0:13:55.000,0:13:57.000
彼はそのことを知りません

0:13:57.000,0:13:59.000
フリースタイラー: ♫ 俺は [...] のようなもので ♫

0:13:59.000,0:14:02.000
♫ この世のものとは思えない素晴らしい景色 ♫

0:14:02.000,0:14:05.000
♫ 以前はピラミッドに座って ♫

0:14:05.000,0:14:08.000
♫ 頭上に浮かぶ二つのマイクを介していた ♫

0:14:08.000,0:14:11.000
♫ もし音を紡ぎつつ まだ聞こえたなら ♫

0:14:11.000,0:14:13.000
♫ 何に微笑んでいるだろうか ♫

0:14:13.000,0:14:15.000
♫ 教室の後ろの子供に教える ♫

0:14:15.000,0:14:18.000
♫ 啓示的なメッセージを ♫

0:14:18.000,0:14:21.000
♫ いやでも シンプルにやらなきゃいけないから ♫

0:14:21.000,0:14:23.000
♫ [...] 楽器 ♫

0:14:23.000,0:14:26.000
♫ 害するものがスーパーマリオをする ♫

0:14:26.000,0:14:30.000
♫ 箱 [...] ヒップホップ ♫

0:14:30.000,0:14:32.000
CL: 繰り返しますが 信じられないことが起きています

0:14:32.000,0:14:34.000
神経学的に驚くべきことをしています

0:14:34.000,0:14:36.000
この音楽が好きか否かは問題ではありません

0:14:36.000,0:14:38.000
創作という点で これはとにかく驚異的なことです

0:14:38.000,0:14:41.000
こちらのビデオはスキャナーでの模様です

0:14:41.000,0:14:44.000
(笑い)

0:14:44.000,0:14:46.000
(ビデオ) CL: エマニュエルに来て頂いています

0:14:46.000,0:14:48.000
CL: ちなみにこれはスキャナーで録画したものです

0:14:48.000,0:14:50.000
(ビデオ) CL: あちらがスキャナー内のエマニュエルです

0:14:51.000,0:14:54.000
詩を暗記して頂きました

0:14:57.000,0:15:00.000
エマニュエル: ♫ 繰り返しのないビートの頂点 ♫

0:15:00.000,0:15:03.000
♫ リズムとライムが俺を満たす ♫

0:15:03.000,0:15:06.000
♫ マイクを持つと高まりは圧倒的 ♫

0:15:06.000,0:15:08.000
♫ シビれるライムを届ける ♫

0:15:08.000,0:15:11.000
♫ 無限の探求の中で真実を探す ♫

0:15:11.000,0:15:14.000
♫ 情熱は格好じゃない この格好が見えるだろう ♫

0:15:14.000,0:15:17.000
CL: ここで止めます 彼の脳内で何が起きているでしょう？

0:15:17.000,0:15:19.000
こちらは実はラッパー 4 名の脳のデータです

0:15:19.000,0:15:21.000
言語野が活性化しているのは分かりますが

0:15:21.000,0:15:23.000
閉眼条件において

0:15:23.000,0:15:26.000
暗記したものをラップするのに比べ

0:15:26.000,0:15:28.000
フリースタイルでは視覚野が活性化しています

0:15:28.000,0:15:31.000
運動協調に関わっている小脳が活性しています

0:15:31.000,0:15:34.000
類似しているタスクを行っているとき

0:15:34.000,0:15:37.000
暗記に比べ 創造性に関わっているタスクでは脳がより活発になっています

0:15:38.000,0:15:40.000
まだまだ初期段階ですが 私は素晴らしいと思います

0:15:40.000,0:15:43.000
締めに入ります 私たちはさまざまな問題を抱えています

0:15:43.000,0:15:46.000
先に触れたとおり質問するだけで 私たちは答えを持っていません

0:15:46.000,0:15:49.000
ただ 創造の才とは何か 神経学的に突き止めたいのです

0:15:49.000,0:15:52.000
ご紹介した手法で近づきつつあると思います

0:15:52.000,0:15:54.000
そして願わくばこの先 10年 20年で

0:15:54.000,0:15:56.000
科学が芸術に追いついたといえるような

0:15:56.000,0:16:00.000
実のある研究が出てくればと思います

0:16:00.000,0:16:02.000
私たちはおそらく 今 出発したばかりです

0:16:02.000,0:16:04.000
ご拝聴頂きありがとうございました

0:16:04.000,0:16:09.000
(拍手)