1
00:00:06,791 --> 00:00:11,044
あなたの周りはバクテリアだらけだと
言ったらどうしますか？

2
00:00:11,044 --> 00:00:12,523
本当の事です

3
00:00:12,523 --> 00:00:16,622
バクテリアと呼ばれる微生物は

4
00:00:16,622 --> 00:00:18,262
地上に最初に現れた生命体のひとつで

5
00:00:18,262 --> 00:00:20,857
たった一つの細胞からできているのですが

6
00:00:20,857 --> 00:00:25,811
その生物量は
全ての植物と動物を合わせた量よりも多く

7
00:00:25,811 --> 00:00:29,071
文字通り いたる所に住んでいるのです

8
00:00:29,071 --> 00:00:33,555
地上に 水中
食卓の上に 皮膚の表面

9
00:00:33,555 --> 00:00:35,945
あなたの体の中にも住んでいます

10
00:00:35,945 --> 00:00:38,276
どうか落ち着いて下さい

11
00:00:38,276 --> 00:00:42,096
体内にいるバクテリアの数は
人の体にある細胞の10倍以上の数ですが

12
00:00:42,096 --> 00:00:46,293
バクテリアの大半は無害であり

13
00:00:46,293 --> 00:00:50,738
それどころか有用で
消化や免疫に役立ちます

14
00:00:50,738 --> 00:00:54,895
しかし悪い奴もいて
感染症を引き起こすのです

15
00:00:54,895 --> 00:00:58,093
ちょっとした体調不良から
死を招くものもいます

16
00:00:58,093 --> 00:01:04,221
幸いバクテリアと闘う
素晴らしい医薬品があります

17
00:01:04,221 --> 00:01:08,128
化学的に合成したり
カビといったもので自然に作られた―

18
00:01:08,128 --> 00:01:13,975
抗生物質はヒトの細胞には害を及ぼさずに
バクテリアの細胞壁を壊したり

19
00:01:13,975 --> 00:01:18,276
生命の維持に必要なタンパク質の
合成を阻害することで

20
00:01:18,276 --> 00:01:21,062
バクテリアを殺したり 無害化します

21
00:01:21,062 --> 00:01:24,454
抗生物質の発達は20世紀を通じて

22
00:01:24,454 --> 00:01:27,974
かつては危険であった病気を
簡単に治療できるようにしました

23
00:01:27,974 --> 00:01:30,871
しかし現在 抗生物質は


24
00:01:30,871 --> 00:01:32,987
だんだん効き目が弱くなってきています

25
00:01:32,987 --> 00:01:35,588
何かまずいことが起きているのでしょうか？

26
00:01:35,588 --> 00:01:40,447
実は 抗生物質ではなく バクテリアが
抵抗できるようになったことが問題で

27
00:01:40,447 --> 00:01:44,587
その理由はダーウィンの自然選択にあるのです

28
00:01:44,587 --> 00:01:49,620
他の生命体と同様に
個々のバクテリアにも変異が起こります

29
00:01:49,620 --> 00:01:53,235
たいていの変異はバクテリアに
有害だったり 役立ちませんが

30
00:01:53,235 --> 00:01:56,479
時に この変異によって

31
00:01:56,479 --> 00:01:59,065
生存が有利になることがあります

32
00:01:59,065 --> 00:02:01,745
バクテリアにとってはこの変異によって
抗生物質に対する抵抗力が付き

33
00:02:01,745 --> 00:02:05,208
有利になります

34
00:02:05,208 --> 00:02:08,000
病院のような抗生物質にあふれた環境では

35
00:02:08,000 --> 00:02:11,374
抵抗力のないバクテリアは
あっという間に死滅していまうため

36
00:02:11,374 --> 00:02:13,904
変異を起こしたバクテリアのみに
生き残る余地が生まれ

37
00:02:13,904 --> 00:02:17,884
変異を起こしたバクテリアのみに
生き残る余地が生まれ

38
00:02:17,884 --> 00:02:19,722
変異した遺伝子を伝えていく
助けとなります

39
00:02:19,722 --> 00:02:22,352
その方法は繁殖だけではありません

40
00:02:22,352 --> 00:02:26,596
死んだときにDNAを放つものがあり
それを他のバクテリアが摂取する事や

41
00:02:26,596 --> 00:02:29,182
あるいは接合という

42
00:02:29,182 --> 00:02:32,459
線毛を結合する方法で
遺伝子を共有します

43
00:02:32,459 --> 00:02:38,293
時を経て抵抗のある遺伝子は増殖し
スーパーバクテリアを作り上げるのです

44
00:02:38,293 --> 00:02:43,109
このままスーパーバグに
乗っ取られてしまうのでしょうか？

45
00:02:43,109 --> 00:02:46,736
実はバクテリアによっては
もう既に起こっている事なのです

46
00:02:46,736 --> 00:02:50,376
例えば一部の黄色ブドウ球菌は―

47
00:02:50,376 --> 00:02:54,181
皮膚の感染症や肺炎
敗血症を起こすのですが

48
00:02:54,181 --> 00:02:57,465
MRSAに発達し

49
00:02:57,465 --> 00:03:02,326
ペニシリン メチシリン オキサシリンなどの
β-ラクタム系抗生物質に耐性があります

50
00:03:02,326 --> 00:03:04,598
遺伝子により
β-ラクタムが通常 標的にする

51
00:03:04,598 --> 00:03:07,401
タンパク質が入れ替わったため

52
00:03:07,401 --> 00:03:10,860
MRSAでは細胞壁を作り続けます

53
00:03:10,860 --> 00:03:13,909
他のスーパーバクテリアである
サルモネラといったものは

54
00:03:13,909 --> 00:03:17,079
β-ラクタマーゼといった酵素を
生成する事もあります

55
00:03:17,079 --> 00:03:20,702
これでダメージを受ける前に
抗生物質を分解します

56
00:03:20,702 --> 00:03:25,047
大腸菌という多様なバクテリアのグループは

57
00:03:25,047 --> 00:03:28,185
下痢や腎不全を起こす株ですが

58
00:03:28,185 --> 00:03:31,033
バクテリアに侵入した
キノロン系のような抗生物質を

59
00:03:31,033 --> 00:03:34,566
積極的にはじき出すことでその機能を妨げます

60
00:03:34,566 --> 00:03:36,392
良い知らせもあります

61
00:03:36,392 --> 00:03:39,610
科学者はバクテリアに一歩先んじようと
研究を続けています

62
00:03:39,610 --> 00:03:43,087
近年新しい抗生物質の開発は
そのスピードが落ちましたが

63
00:03:43,087 --> 00:03:47,988
世界保健機関(WHO)は
新しい治療法の開発を最優先にしました

64
00:03:47,988 --> 00:03:51,273
ファージ療法や感染予防のワクチンで

65
00:03:51,273 --> 00:03:54,055
代替方法を探る科学者もいます

66
00:03:54,055 --> 00:03:56,837
一番大切なことは

67
00:03:56,837 --> 00:03:59,621
自己回復力で治る軽い感染に対する
治療でのように

68
00:03:59,621 --> 00:04:02,684
過剰で不必要な抗生物質の利用を抑える事です

69
00:04:02,684 --> 00:04:06,344
病院での感染を防ぐ
医療行為への切り替えも

70
00:04:06,344 --> 00:04:10,360
耐性のないバクテリアを

71
00:04:10,360 --> 00:04:13,082
耐性菌の競争相手として利用することで
大きな影響力があります

72
00:04:13,082 --> 00:04:16,840
スーパーバクテリアに対する戦いでは
時に攻撃力を弱めるほうが

73
00:04:16,840 --> 00:04:19,625
耐性菌との進化的な軍備競争をするよりも
上手くいくことがあるのです