WEBVTT 00:00:00.650 --> 00:00:02.898 ポルトガルに友人がいます 00:00:02.898 --> 00:00:05.322 友人の おじいさんは 自転車と洗濯機を使って 00:00:05.322 --> 00:00:08.474 家族のために 自動車を作りました 00:00:08.474 --> 00:00:11.018 車を買う余裕が なかったからですが 00:00:11.018 --> 00:00:13.922 実は 車の作り方も 知っていました 00:00:13.922 --> 00:00:17.058 皆が 物の仕組みを 理解していて 00:00:17.058 --> 00:00:20.890 物を作り 修繕できる 時代がありました 00:00:20.890 --> 00:00:22.017 そうでなかったとしても 00:00:22.017 --> 00:00:25.497 何を購入するか 十分な情報に 基づいて 意思決定しました 00:00:25.497 --> 00:00:27.889 こういった日曜大工(DIY)のような慣習は 00:00:27.889 --> 00:00:31.098 20世紀後半には 大方失われてしまいました 00:00:31.098 --> 00:00:34.770 しかし今日 DIYのコミュニティや オープンソース・モデルが 00:00:34.770 --> 00:00:37.918 物の機能や それが何から できているかと言った知識を 00:00:37.918 --> 00:00:41.113 身近なものに してくれます 00:00:41.113 --> 00:00:44.137 私は これを次のステップに 進める必要性を感じています 00:00:44.137 --> 00:00:47.105 製品を作り上げる 部品に注目しています NOTE Paragraph 00:00:47.105 --> 00:00:49.257 私たちは 00:00:49.257 --> 00:00:52.779 紙や生地といった伝統的な 材料が何からできていて 00:00:52.779 --> 00:00:54.808 どうやって作られるか だいたい理解しています 00:00:54.808 --> 00:00:58.871 しかし 今は素晴らしい 未来的な複合材料があります― 00:00:58.871 --> 00:01:01.074 変形自在のプラスチック 00:01:01.074 --> 00:01:03.426 電気を通す塗料 00:01:03.426 --> 00:01:07.842 色が変わる絵具 光る布地などです 00:01:07.842 --> 00:01:11.213 いくつかの例を お見せしましょう NOTE Paragraph 00:01:14.169 --> 00:01:17.885 導電性インクは これまでの プリント基板や 00:01:17.885 --> 00:01:19.828 ワイヤを使わずに 00:01:19.828 --> 00:01:22.426 電気回路を塗って 作ることが出来ます 00:01:22.426 --> 00:01:24.815 例として こちらをご覧ください 00:01:24.815 --> 00:01:28.696 皮膚に反応する タッチセンサーに使いました 00:01:28.696 --> 00:01:31.411 小さなライトを点けることができます 00:01:31.411 --> 00:01:34.506 導電性インクは これまで 芸術家が使用してきました 00:01:34.506 --> 00:01:37.881 しかし 近年開発が進んでおり 00:01:37.881 --> 00:01:42.376 近々レーザープリンターや ペンに利用されるでしょう 00:01:42.376 --> 00:01:44.706 こちらのアクリル板には 00:01:44.706 --> 00:01:47.502 光を拡散する 無色の粒子が注入されています 00:01:47.502 --> 00:01:50.119 通常のアクリル板は 00:01:50.119 --> 00:01:52.467 縁の辺りでのみ 光を拡散させるのに対して 00:01:52.467 --> 00:01:55.737 こちらは周囲のライトを点ければ 00:01:55.737 --> 00:01:58.650 表面全体に光が 拡散されます 00:01:58.650 --> 00:02:00.952 この素材に考えられている利用法は 00:02:00.952 --> 00:02:06.065 インテリアデザインや マルチタッチシステムなどです 00:02:06.065 --> 00:02:08.066 また サーモクロミック色素は 00:02:08.066 --> 00:02:10.679 温度によって色が変化します 00:02:10.679 --> 00:02:13.465 ホットプレートに乗せてみましょう 00:02:13.465 --> 00:02:16.970 外気より 少しだけ 高い温度に設定しています 00:02:16.970 --> 00:02:22.816 どうなるかは ご覧のとおりです 00:02:22.816 --> 00:02:25.576 この素材の利用先を一つあげれば 00:02:25.576 --> 00:02:28.818 いろいろありますが 哺乳瓶に利用できます 00:02:28.818 --> 00:02:34.172 中のミルクが 適温かどうか分かります NOTE Paragraph 00:02:34.172 --> 00:02:36.928 これらは スマート素材として 00:02:36.928 --> 00:02:38.837 知られている物の ごく一部です 00:02:38.837 --> 00:02:41.777 これから数年の内に 私たちが日常的に使用する 00:02:41.777 --> 00:02:45.136 多くの物や技術に利用されるでしょう 00:02:45.136 --> 00:02:49.350 SFに出てくるような 空を飛ぶ車は まだありませんが 00:02:49.350 --> 00:02:51.719 温度によって 00:02:51.719 --> 00:02:53.481 色が変わる壁や 00:02:53.481 --> 00:02:55.375 ロールアップできる キーボード 00:02:55.375 --> 00:02:59.807 スイッチ一つで 不透明になる窓は可能です NOTE Paragraph 00:02:59.807 --> 00:03:02.312 私は社会科学を学んできました 00:03:02.312 --> 00:03:06.169 なぜスマート素材の話をしているのかと お思いでしょうね 00:03:06.169 --> 00:03:08.882 まず 私がDIYをするからです 00:03:08.882 --> 00:03:11.288 物の仕組みや その作り方に 00:03:11.288 --> 00:03:12.915 興味があります 00:03:12.915 --> 00:03:16.223 また 私たちの世界を 築いている 物について 00:03:16.223 --> 00:03:19.044 十分に理解する必要があると考えています 00:03:19.044 --> 00:03:21.524 今のところ 未来を築いていく ハイテク材料について 00:03:21.524 --> 00:03:25.213 私たちは十分に知りません 00:03:25.213 --> 00:03:28.738 スマート素材を 少量だけ入手するのは困難です 00:03:28.738 --> 00:03:32.778 使用方法についての情報も ほとんどありません 00:03:32.778 --> 00:03:36.675 どうやって作られるかも分かりません 00:03:36.675 --> 00:03:39.342 ですから 今のところスマート素材は 00:03:39.342 --> 00:03:42.054 大学や企業だけがアクセスできる 00:03:42.054 --> 00:03:46.166 企業秘密や専売特許の域を出ません NOTE Paragraph 00:03:46.166 --> 00:03:49.015 約3年前 私とカースティ・ボイルは 00:03:49.015 --> 00:03:52.232 「オープンマテリアルズ」という プロジェクトを立ち上げました 00:03:52.232 --> 00:03:54.039 ウェブサイトなんですが― 00:03:54.039 --> 00:03:56.551 誰でも自由に参加できて 00:03:56.551 --> 00:03:59.607 実験を共有したり 情報を公開したり 00:03:59.607 --> 00:04:02.807 他の人に 貢献を呼びかけたり 00:04:02.807 --> 00:04:06.816 私たちのような DIY愛好家による 00:04:06.816 --> 00:04:10.156 研究論文や手引書などの 資料を集めています 00:04:10.156 --> 00:04:12.778 このウェブサイトを 00:04:12.778 --> 00:04:15.316 スマート素材についてのDIY情報を 00:04:15.316 --> 00:04:19.609 共同で発信できる データベースにしたいと思っています NOTE Paragraph 00:04:19.609 --> 00:04:21.829 なぜスマート素材の仕組みや材料を 00:04:21.829 --> 00:04:25.592 知っておくべきなのでしょうか? 00:04:25.592 --> 00:04:29.770 まず 自分が理解していない材料で 物を作ることはできません 00:04:29.770 --> 00:04:32.122 そして 理解しないままに使っている物が 00:04:32.122 --> 00:04:34.330 結局は 私たちを形作っていくのです 00:04:34.330 --> 00:04:37.082 つまり 私たちが使う物 着る服 住む家などが 00:04:37.082 --> 00:04:40.646 行動や健康 生活の質に 00:04:40.646 --> 00:04:44.229 大きな影響を与えています 00:04:44.229 --> 00:04:47.370 ですから スマート素材で作られた 世界に住むのであれば 00:04:47.370 --> 00:04:50.729 それを知り 理解する必要が あると思うのです 00:04:50.729 --> 00:04:53.073 次に 同じく重要なことですが― 00:04:53.073 --> 00:04:56.433 技術革新を進めてきたのは 素人です 00:04:56.433 --> 00:04:59.818 多くの場合 物作りの専門家ではなく 愛好家が 00:04:59.818 --> 00:05:02.137 発明家や 改良者として 貢献してきました 00:05:02.137 --> 00:05:04.617 その例として マウンテンバイク 00:05:04.617 --> 00:05:07.929 半導体 パソコン 00:05:07.929 --> 00:05:10.868 飛行機などがあります NOTE Paragraph 00:05:10.868 --> 00:05:14.897 材料科学は複雑で 00:05:14.897 --> 00:05:17.393 器具が高価なのが課題ですが 00:05:17.393 --> 00:05:19.561 必ずしも そうとは限りません 00:05:19.561 --> 00:05:23.149 イリノイ大学の2人の科学者が 00:05:23.149 --> 00:05:25.749 導電性インクを簡単に作る方法について 00:05:25.749 --> 00:05:28.169 論文を出版した際の出来事です 00:05:28.169 --> 00:05:30.081 化学の知識が全く無かった 00:05:30.081 --> 00:05:33.041 ジョーダン・バンカーが 00:05:33.041 --> 00:05:35.828 この論文を読み 00:05:35.828 --> 00:05:40.217 趣味の作業場にあった 材料と道具を利用して 00:05:40.217 --> 00:05:41.809 この実験を再現しました 00:05:41.809 --> 00:05:43.410 オーブントースターも使いましたし 00:05:43.410 --> 00:05:46.376 ボルテックスミキサーは手作りしました 00:05:46.376 --> 00:05:50.411 他の科学者や DIY愛好家の 手引きを参考にしてです 00:05:50.411 --> 00:05:53.163 ジョーダンは この成果を オンラインで発表しました 00:05:53.163 --> 00:05:56.651 試してみて失敗した例も 発表しました 00:05:56.651 --> 00:05:59.795 おかげで他の人が 学習して 再現できました 00:05:59.795 --> 00:06:02.467 ジョーダンが成し遂げた革新は 00:06:02.467 --> 00:06:06.346 設備の整った大学のラボで 00:06:06.346 --> 00:06:07.848 行われた実験を 00:06:07.848 --> 00:06:11.035 シカゴのガレージで再現したことです 00:06:11.035 --> 00:06:15.296 それも 安価な材料と 自作の道具を利用してです 00:06:15.296 --> 00:06:17.569 彼が自分の作業を公開したことで 00:06:17.569 --> 00:06:19.293 他の人が仕事を引き継げます 00:06:19.293 --> 00:06:23.837 より簡単な方法や 改善点が 見つかるかもしれません NOTE Paragraph 00:06:23.837 --> 00:06:26.053 もう一つ ご紹介したい例があります 00:06:26.053 --> 00:06:29.718 ハンナ・パーナー・ウィルソンの 「キット・オブ・ノー・パーツ」です 00:06:29.718 --> 00:06:32.598 このプロジェクトの目的は 00:06:32.598 --> 00:06:35.070 作り手の創造性と技術に 焦点を当てながら 00:06:35.070 --> 00:06:40.094 材料の表情豊かな 性質に注目します 00:06:40.094 --> 00:06:42.534 市販の電子機器キットは とてもパワフルで 00:06:42.534 --> 00:06:45.086 物の仕組みについて 教えてくれます 00:06:45.086 --> 00:06:48.062 ただし その学習法は 00:06:48.062 --> 00:06:50.222 画一化されています 00:06:50.222 --> 00:06:52.710 一方で ハンナは 00:06:52.710 --> 00:06:55.926 部品そのものについての理解を促し 00:06:55.926 --> 00:06:58.625 設計図通りに作る必要のない 00:06:58.625 --> 00:07:01.430 変わった物を作るテクニックを 00:07:01.430 --> 00:07:04.841 まとめようとしています 00:07:04.841 --> 00:07:07.574 ハンナの数々の  素晴らしい実験の内― 00:07:07.574 --> 00:07:09.544 これが 私のお気に入りです 00:07:09.544 --> 00:07:12.961 「紙のスピーカー」 00:07:12.961 --> 00:07:16.239 ご覧いただいているのは 銅テープを貼った紙切れで 00:07:16.239 --> 00:07:20.681 MP3プレーヤーに 接続されています 00:07:20.681 --> 00:07:22.334 そこに 磁石を近づけています 00:07:22.334 --> 00:07:29.983 (音楽:Happy Together) 00:07:32.931 --> 00:07:36.767 MIT(マサチューセッツ工科大学)の マルセロ・コエーリョの研究を参考に 00:07:36.767 --> 00:07:39.550 ハンナは 銅テープや 00:07:39.550 --> 00:07:41.953 導電性の布やインクなど 様々な素材から 00:07:41.953 --> 00:07:46.228 紙のスピーカーを作成しました 00:07:46.228 --> 00:07:48.964 先ほどのジョーダンや 多くのDIY愛好家と同様 00:07:48.964 --> 00:07:50.591 ハンナは このレシピを発表しました 00:07:50.591 --> 00:07:55.725 誰でも真似し 再現することができるのです NOTE Paragraph 00:07:55.725 --> 00:07:58.929 紙を使用した電子装置は 00:07:58.929 --> 00:08:00.736 材料科学の中でも 最も有望です 00:08:00.736 --> 00:08:04.938 安価で柔軟な 電子装置を作れるからです 00:08:04.938 --> 00:08:07.494 ですから このハンナの職人技は― 00:08:07.494 --> 00:08:09.742 彼女が その成果を共有したことで 00:08:09.742 --> 00:08:13.562 魅力的で かつ革新的な 00:08:13.562 --> 00:08:19.002 新しい可能性への 扉が開かれたのです NOTE Paragraph 00:08:19.002 --> 00:08:21.907 DIY愛好家の面白い点は 00:08:21.907 --> 00:08:24.950 情熱と好奇心から 物を作ることです 00:08:24.950 --> 00:08:27.029 そして 失敗を恐れません 00:08:27.029 --> 00:08:30.917 今までにない角度から 問題に取り組み 00:08:30.917 --> 00:08:33.906 その過程で 代用品や 00:08:33.906 --> 00:08:36.338 より良い方法を 発見します 00:08:36.338 --> 00:08:40.106 ですから より多くの人が物を使って 実験することで 00:08:40.106 --> 00:08:43.582 より多くの研究者が 彼らの成果を共有し 00:08:43.582 --> 00:08:46.022 製造業者も 知識を共有するでしょう 00:08:46.022 --> 00:08:48.862 すべての人々に 本当に必要な 00:08:48.862 --> 00:08:51.800 技術を生み出す 機会が得られるのです NOTE Paragraph 00:08:51.800 --> 00:08:54.293 今 少しだけ テッド・ネルソンのような 気持ちでいます 00:08:54.293 --> 00:08:58.004 彼は1970年初期に こう言いました 00:08:58.004 --> 00:09:01.002 「皆さんは 今コンピューターを 理解しなければなりません」 00:09:01.002 --> 00:09:04.856 当時 コンピューターは 科学者にしか関係のない 00:09:04.856 --> 00:09:06.986 大きなメインフレームでした 00:09:06.986 --> 00:09:09.706 一家に一台持つなんて 誰も思っていませんでした 00:09:09.706 --> 00:09:12.682 ですから 今日ここで 皆さんに お伝えするのは 妙な気分ですが― 00:09:12.682 --> 00:09:15.722 「皆さんは 今スマート素材を 理解しなければいけません」 00:09:15.722 --> 00:09:19.458 これから出てくる 新しい技術について 00:09:19.458 --> 00:09:21.722 知識を持つよう 心に留めてみてください 00:09:21.722 --> 00:09:24.119 そうすることで 私たちの手で 00:09:24.119 --> 00:09:26.282 私たちの未来を創ることができます NOTE Paragraph 00:09:26.282 --> 00:09:28.753 ありがとうございました NOTE Paragraph 00:09:28.753 --> 00:09:32.753 (拍手)