(マーク・ミスキン) これはワムシです 微生物で 大きさは 髪の毛の太さぐらいです 海水 淡水 地球上のあらゆる所に 生息しています このワムシは食べ物を探しています これを初めて見たのは 8歳ぐらいの時のことで とても衝撃的でした この素晴らしい 小さな生き物は 狩りをして 泳いで 生活しているのです でもワムシの世界全体は 1滴の池の水の中に収まります (ポール・マキューエン)小さなワムシは 本当に凄いことを教えてくれます このような機械が造れるのだと― 機能的で 複雑で 賢く しかも非常に小さくまとまり 目に見えないくらい 小さい機械ができるはずなのです 技術者としての私は 本当に感心してしまいます こんな生き物が創造出来るなんて 感心する一方で 正直 少し羨ましい気持ちもあります 自然界に出来るんだから 私達にだって出来るはず 私達が小さなロボットを 造れないはずはない このアイデアを思いついたのは 私だけではありません 実際 この数年の間に 世界中の研究者が 小さなロボットを造ろうとしています 目に見えないほど小さい物です 今日私達がお話しするのは コーネル大学での試みと ペンシルバニア大学での試みです 小さなロボットを 造ろうとしています とにかく それがゴールです どうすればいいのか どうやって小さなロボットを 造ればいいのか パブロ・ピカソが 最初のヒントをくれました ピカソ曰く― [良い芸術家は真似をするが 偉大な芸術家は盗む] (笑) 「良い芸術家は真似をするが 偉大な芸術家は盗む」 (笑) 何から盗むのでしょうか 信じ難いかもしれませんが 小さなロボット造りに必要な 技術は 既に存在しています 半導体業界はどんどん進歩していて ますます小さなデバイスを 生み出しています 現時点では 100万ほどのトランジスタを 単細胞生物のゾウリムシが入る程の 大きさに収めることができます 電子部品だけではなく 小さなセンサーや LEDや 通信に必要な物全てを 見えない程小さくまとめることが可能です そこで造ることにしました そういった技術を盗むのです これがロボットです (笑) ロボットには 2つの部位があります 頭と脚です [頭脳を盗む] (笑) これを 脚なしロボットと呼びます 変な名前かもしれませんが 脚がなくても結構いけてます 実際 ほとんどの人が 今も脚なしロボットを持っています スマホは世界で最も成功した 脚なしロボットです たった15年で 世界中を席巻しました 当然ですよね 非常に美しい小さな機械です 驚くほどの知性を持ち 高度な通信技術も備えています しかも片手に収まるのです こんな物を造りたいのです ただ 細胞ぐらいのサイズで ゾウリムシの大きさにしたい これです これが 細胞サイズのスマホです 見た目は スマホと同じですが 大きさは約1万分の1です 「OWIC」と言います [光無線集積回路] 宣伝しているわけではありませんよ (笑) これだけでも素晴らしい物です OWICには いくつもの部品があります 上から見ていきましょう 小さな太陽電池があり デバイスに光を当てると 中央にある小さな回路が 反応します この回路は非常に小さなLEDを 動かすことができます LEDが点滅すると OWICと通信できます スマホとは異なり OWICは光を使って通信します いわば小さなホタルです OWICが非常に優れているのは 1つ1つ造るわけではなく ハンダ付けが不要なことです 大規模に並行して造るのです 例えば 約100万個のOWICを 1枚の4インチウエハーに 搭載できます スマホに色々なアプリを 入れられるように 色々なOWICを搭載できます 電圧を測定する物 気温を測定する物 小さなライトを点滅させて 見つけやすくしてくれる物など 小さいけど すごいのです もう少し詳しくご説明しますが その前に お話ししたいことがあります 1セント硬貨について あまり知られてないことです これは古い1セント硬貨です 裏はリンカーン記念館です まず ご存知でないと思われるのは 拡大すると その中央に リンカーンが見えることです この近くにある 実際のリンカーン記念館と同じです 絶対にご存知ないことは さらに拡大すると (笑) リンカーンの胸元に OWICがあることです (笑) すごいのは 一日中見つめていても 絶対に見えないのです 裸眼では見えません OWICは非常に小さく このように並行生産するので OWICは1個あたり 1セントもかからないのです このデモで最も高価なのは ステッカーです 「OWIC」と書いてあります (笑) ステッカーの値段は約8セントです (笑) こういった物にワクワクするのには 色々と理由があります 例えば セキュリティーのための スマート・タグとしても使えます 指紋よりも正確に 本人を特定できます 実際にOWICを 他の医療機器の中に入れて 情報を提供しています 脳内に埋め込むことも検討中です 個別のニューロンを 把握するためです ただ OWICには ひとつだけ問題があります ロボットではないのです 頭しかありません (笑) だって そうですよね 脚がないロボットなんて ロボットとは言えません 脚がないということは 何もないと同然ですから (マーク)さて ロボットを造るなら 脚も必要ですね でも ここでは単に既存の技術を 盗む訳にいきません 小さなロボットに脚を付けたければ アクチュエータという駆動装置が必要です これには 色々と要件があります 低電圧であること 低電力でもあること それから 一番大切なのは  小さいこと 細胞サイズのロボットなので 脚も細胞サイズでないといけない 誰もそんなものを 作ったことがなく 要求を全て満たす 既存の技術はありませんでした 小さなロボットの脚を造るためには 新たに造る必要がありました そこで これを造りました これはアクチュエータで 電圧をかけているところです そうすると ご覧の通り 丸まります 大したことないと思うでしょうが 赤血球をスクリーンに写すと こんなに大きいのです 丸まっている部分は 驚くほど小さいのです こんなに小さいのに このデバイスは問題なく曲がったり 伸びたりして 壊れません どうやって造るのか? アクチュエータは プラチナの層から造ります 原子10個分ほどの厚さです プラチナを水に入れて 電圧をかけると 水の原子が プラチナの表面から 離れたり くっついたりします 水の原子が プラチナの表面から 離れたり くっついたりします かける電圧によって変わります これが力となるので この力を使って 電圧で作動制御ができます ここで大切だったのは すべてを超薄くすることでした 薄ければ アクチュエータが柔軟なので 小さく曲げても壊れず 僅かな力でも動きます たった1つの原子層の着脱の力で 十分なのです これも1つずつ造る必要はありません 実際 OWICと同様に 並行して大量に生産できます こちらは約数千個の アクチュエータで 電圧をかけるだけで 全部が波打ちます まるで未来のロボット軍団の脚のようですね (笑) これで頭も脚も揃いました 頭脳もアクチュエータも確保しました OWICが頭脳です OWICには センサーと動力源があり 双方向の光通信システムがあります プラチナ層が脚で ロボットを動かしてくれます これで 2つの部分をくっつけて 小さな 小さなロボットを 造り始められます 最初は 単純な物を造りました このロボットは ユーザー制御で歩き回ります 中央に太陽電池があり 配線が繋がっています これがOWICです プラチナ層を付けた 2本の脚に繋がっていて 上に載せた硬いパネルで 脚の曲がり具合や形を 指示します 特定の太陽電池に レーザーを照射し どの脚を動かすかを選択すると ロボットが歩き回ります 当然 これらも1つずつ造らず 並行して大量に生産します 1枚の4インチウエハー上に 約100万のロボットを造れます 例えば この左側の画像に 写っているチップに 約1万個のロボットが 搭載されています 私たちの世界はマクロですので 新しいマイクロプロセッサかと 思うでしょう でも このチップを顕微鏡で見ると 何千もの小さなロボットが見えるのです ロボットはまだ固定され ウエハー表面に付着したままです 歩き回るためには 解放する必要があります ロボット軍団を解放するところを ライブでお見せしたかったのですが そのためには非常に危険な 化学物質が必要です 本当に危険な物質です しかも ここはホワイトハウスまで たった1.6キロ程 だから ダメだと言われました そこでー (笑) 代わりにビデオをお見せします(笑) ここに写っているのは ロボット展開の最終段階です 化学物質を使って ロボットの下の基板を エッチングします 基板が溶解すると ロボットは解き放たれ 最終的な形になります ご覧の通り 収率は約90%ですので 造った1万個のロボットの ほとんど全部が 展開・制御可能になるのです このロボットは 色々な所で使えます 左側の動画をご覧いただくと 水の中にロボットがあります ピペットを使えば 全部吸い上げることができます ピペットから 再度ロボットを放出しても 皆 大丈夫です ロボットは非常に小さいので 最も細い皮下注射針も 通ることができます もし お望みなら ロボットを沢山注射することも可能です (笑) 試してもいいみたいですね (笑) 右側は 池の水の中に入れたロボットです ちょっとだけお待ちください わっ! 見えましたか? サメではなく ゾウリムシでした こんな世界で生きているのです それはいいとして まだ知りたいことが残っていますね 「実際に歩くの?」 歩けるという話でしたよね 実際に確かめてみましょう ロボットの中央に 太陽電池があります 小さな長方形です スライドの一番上の太陽電池を ご覧ください 小さい白い点が見えますよね? レーザーの点です レーザーを切り換えると どうなるかご覧ください ロボットの別の太陽電池に当てます さあ 動いた! (拍手) やった! (拍手) ロボットがミクロの世界を 行進して行きます この動画で ご覧いただきたいのは 私が実際にロボットを 動かしている点です 6ヶ月間 小さなロボットに レーザーを当てることが僕の仕事で ミクロの世界を歩かせていました 実際に僕の仕事だったのです 世界中で 一番カッコいい仕事でした (笑) 興奮に浸っていました 不可能を実現しているって 驚嘆の気持ちは 初めて顕微鏡を覗いて ワムシを見た 子供のときと同じでした 僕は父親で 息子がいます  今3歳です ある日 彼も同じように 顕微鏡を覗くでしょう こう考えることがあります 息子は何を見るのだろう?と ミクロの世界を観察するだけでなく 人間は 今やミクロの世界を形成する 技術を作ることができます ミクロと交流し 操作する 技術を作れるのです 30年後 息子が大人になった時 その能力をどう使っているか? 小さなロボットが 細菌と同じように 血流に住んでいるのでしょうか? 農作物に住み 害虫駆除を しているでしょうか? 感染症を察知したり がん細胞をやっつけているでしょうか? (ポール)すごいことに 皆さんはこの革命に参加できるのです 今から10年後に 新しいiPhone 15x Motoか何かを 購入すると (笑) 小さな瓶に入った 数千の小さなロボットがついてきて 携帯電話のアプリで コントロールできるかもしれません ゾウリムシに乗りたいなら 乗ってみるのも良し 世界最小のロボットの ダンスパーティーのDJをするも良し 何だって できます (笑) 私は その日が来るのを 楽しみにしています (マーク)ありがとうございました (拍手)