WEBVTT 00:00:01.640 --> 00:00:08.320 ビデオゲームを作りたいとしよう 何から始めればいい? 00:00:08.320 --> 00:00:12.820 開発者によっては、物語やテーマから始める 00:00:12.830 --> 00:00:18.039 プレイヤーに味わわせたい感情から始める者もいる 00:00:18.039 --> 00:00:19.810 例えば恐怖や達成感だ 00:00:19.810 --> 00:00:25.150 また、技術に物を言わせて何かをシミュレートすることから 始める人もいる 惑星とか、宇宙とかを 00:00:25.150 --> 00:00:30.369 そして言うまでもなく、多くの開発者は すでにあるゲームを出発点として 00:00:30.369 --> 00:00:33.120 いくつかの要素を追加する 00:00:33.120 --> 00:00:36.739 しかしもう予想済みと思うが 任天堂はかなり違っている 00:00:36.739 --> 00:00:41.370 全く新しい作品を作る時も、長い伝統のある スーパーマリオシリーズの新作を作る時も 00:00:41.370 --> 00:00:47.649 任天堂は常に同じ目標から始める 新しいプレイ方法を考えることだ 00:00:47.649 --> 00:00:53.579 つまりプレイヤーがゲーム内で何をどうやるかが 他の全要素を導く触媒として使われるのだ 00:00:53.579 --> 00:00:58.690 メインキャラクターのデザインから敵の倒し方 音楽のジャンルまで 00:00:58.690 --> 00:01:00.690 00:01:00.690 --> 00:01:06.450 「それが任天堂のゲーム作りです」 と宮本茂は言う 00:01:06.450 --> 00:01:12.110 マリオ、ゼルダ、ピクミン等々のクリエイターだ 「まず基本的な部分を固めて、その核となるコンセプトを」 00:01:12.110 --> 00:01:15.500 「時間と意欲の許す限り広げていくんです」 00:01:15.500 --> 00:01:20.100 というわけでGame Maker's Toolkitの今回の エピソードでは、世界最高のゲーム開発会社の1つが 00:01:20.100 --> 00:01:27.450 プレイ方法を最優先することによって どのように成功を築きあげたかを見ていこう 00:01:27.450 --> 00:01:32.520 任天堂は多くの作品で、主人公が繰り出す 面白いアクションを考えることから始めている 00:01:32.520 --> 00:01:36.010 晩年の横井軍平はこう言っている 00:01:36.010 --> 00:01:40.430 「私はまず操作することになるキャラクターを とりあえずドットで代用します」 00:01:40.430 --> 00:01:45.170 「それからどんな動きをしたら面白いだろうかと 考えるわけです」 00:01:45.170 --> 00:01:52.719 このような考え方の成果として最も有名なのがこの男だ マリオとして知られているが 00:01:52.719 --> 00:01:58.270 最初に登場した時、彼はただ「ジャンプマン」と呼ばれていた なぜならこの太ったイタリア人の配管工は 00:01:58.270 --> 00:02:01.020 その跳躍を本質とするからだ 00:02:01.020 --> 00:02:07.840 彼はあらゆるゲームの中で最も躍動的で 表情豊かなジャンプを持っている――2Dでも、3Dでもだ 00:02:07.840 --> 00:02:12.010 出世作であるスーパーマリオブラザーズは ジャンプが全てだ 00:02:12.010 --> 00:02:17.330 マリオは足場に飛び乗り、土管を飛び越える ジャンプでブロックを破壊し、パワーアップを出現させる 00:02:17.330 --> 00:02:22.280 ファイアフラワーも例外ではない 厄介な45°の発射角のおかげで 00:02:22.280 --> 00:02:27.519 ジャンプしないと正確に狙えないからだ 旗も地上から常に1ブロック分浮いている 00:02:27.519 --> 00:02:30.879 クリアするにはジャンプする必要があるのだ 00:02:30.880 --> 00:02:36.180 宮本はシューティング面など他のアイデアも試したが 破棄することにした その理由は 00:02:36.190 --> 00:02:38.590 「ジャンプというアクションに集中したかった」からだ 00:02:38.590 --> 00:02:44.620 そうだ、それからジャンプで敵を踏んで倒すという点も 忘れてはいけない これは攻撃法として当たり前に思える 00:02:44.620 --> 00:02:50.019 ソニックやアラジン、その他大勢の ジャンプアクションの主人公もやっている 00:02:50.019 --> 00:02:53.839 だが考えてみてほしい マリオ以前にこれをやったゲームはないのだ 00:02:53.840 --> 00:02:58.860 宮本がこれを思いついたのは、こう問いかけたからだ ジャンプするゲームで、敵を倒すための 00:02:58.870 --> 00:03:01.160 最も論理的な方法は何だろう? 00:03:01.160 --> 00:03:06.440 1つの力強いシステムを中心として ゲームを構築することには、大きな利点がある 00:03:06.440 --> 00:03:11.060 そのシステムでゲーム内のほぼ全てのものに 干渉することができる時 00:03:11.060 --> 00:03:16.370 任天堂が作るゲームはプレイヤーの アクションの幅は非常に狭く、覚えやすいが 00:03:16.370 --> 00:03:20.069 それによって干渉できる対象は膨大だ 00:03:20.069 --> 00:03:25.470 ピクミンについての話で、宮本は 「プレイヤーが行う基本的アクションは非常に単純です」 00:03:25.470 --> 00:03:30.739 「問題があったらピクミンを投げつけて、呼び戻せば いいだけですからね」 00:03:30.739 --> 00:03:35.850 「でもピクミンの能力と、幅広い戦術が用意されている おかげで、アプローチの取り方には」 00:03:35.850 --> 00:03:38.860 「多くの可能性が開かれているんです」 00:03:38.860 --> 00:03:45.340 固有のアクションの他の例としては、水鉄砲や インクを撃つ、絵に変身する 00:03:45.340 --> 00:03:48.819 地面から物を引っこ抜く 掃除機で吸う、などがある 00:03:48.819 --> 00:03:53.480 ゲームキューブのルイージマンションでは ルイージがゲーム世界に関わる方法は 00:03:53.480 --> 00:03:58.379 ほぼ掃除機だけだ ジャンプもできない 彼の兄は大ジャンプで全てを解決するが 00:03:58.379 --> 00:04:03.849 ルイージは掃除機でパズルを解き、ゴーストを吸い込み アイテムを回収し 00:04:03.849 --> 00:04:07.299 ブービートラップのドアを調べる、といったことをするのだ 00:04:07.299 --> 00:04:12.680 自分たちのゲームのテーマは偏見とかイデオロギーとか アメリカのフロンティアの没落だとか言う開発者もいるが 00:04:12.680 --> 00:04:20.080 文字通り掃除機で吸うのがテーマです、なんていう ゲームがどれだけあるだろうか? 00:04:20.080 --> 00:04:25.860 そして任天堂はシステムを追加する必要が生じた時 それをメインのアクションに組み込む 00:04:25.860 --> 00:04:31.760 例えばスプラトゥーンは基本的にインクを撃ち インクの中を泳ぐゲームだ 00:04:31.760 --> 00:04:36.790 だからインクを撃ってその中を泳ぐことで 銃をリロードしたり、壁を昇ったりできる 00:04:36.790 --> 00:04:39.480 追加のボタンは不要だ 00:04:39.480 --> 00:04:42.520 実に見事だ 00:04:42.520 --> 00:04:47.750 もちろん、全ての作品が新しいシステムに 基づいているわけではない 00:04:47.750 --> 00:04:53.390 任天堂は全く新しいゲームやキャラクター、つまり 業界用語で言う「新IP」ばかり作っているわけではない 00:04:53.390 --> 00:04:58.430 マリオやルイージの背中に物をくっつけるのにも 限りがあるだろう 00:04:58.430 --> 00:05:03.880 それでも任天堂のゲームは新たなプレイ方法に 導かれているし、それは時として 00:05:03.880 --> 00:05:07.410 すでに確立されたシステムに新たな工夫を加える という形で現れる 00:05:07.410 --> 00:05:13.980 それはマリオ64やゼルダ時のオカリナのように 2Dのゲームプレイを3D世界に作り替えることだったり 00:05:13.980 --> 00:05:19.070 マリオギャラクシーのように昔のシステムを 新たな文脈の中に組み込むことだったりする 00:05:19.070 --> 00:05:24.320 ギャラクシーはやはり根本的には ジャンプするゲームだが、重力の要素がある 00:05:24.320 --> 00:05:29.470 ピクミン3もやはりピクミンに命令を出すゲームだが 00:05:29.470 --> 00:05:32.090 3人の主人公を入れ替える要素が追加されている 00:05:32.090 --> 00:05:36.320 また時として、任天堂はプレイ方法を制御する 新たなシステムを考案することもある 00:05:36.320 --> 00:05:42.950 ムジュラの仮面の3日間の時間制限や メトロイドの相互に接続したマップなどだ 00:05:42.950 --> 00:05:47.690 いずれにせよ、全体を導くための 新しいゲームプレイがなければならない 00:05:47.690 --> 00:05:50.350 そうでなければゲームを作る意味がない、と任天堂は言う 00:05:50.350 --> 00:05:54.730 宮本はファンが新しいF-Zeroゲームを求めていると 聞いた時、こう言った 00:05:54.730 --> 00:06:00.960 「その人たちに聞きたいのだけど、なぜF-Zeroなんだろう 何かまだやっていないことがあるのかな」 00:06:00.960 --> 00:06:08.180 宮本にとって、グラフィックを綺麗にしただけの レースゲームをもう1つ作るのは、考えられないことなのだ 00:06:10.580 --> 00:06:17.160 任天堂のデザイナーは「機能を形で表現する」という デザイン原則の信奉者だ 00:06:17.160 --> 00:06:23.090 これは物の見た目はそれがどういう動きをするかに よって決定されることを意味する 00:06:23.090 --> 00:06:27.180 おそらく宮本が学校で工業デザインを学んでいた 時に身につけた考えだろう 00:06:27.180 --> 00:06:32.030 テレサが見つめられると顔を赤らめるのも マリオワールドで突進してくる敵がアメフト選手に見えるのも 00:06:32.030 --> 00:06:36.910 最初のマリオブラザースが再リリースされた時に 00:06:36.910 --> 00:06:42.350 任天堂が亀をトゲゾーに変えたのもそれが理由だ みんなこの亀野郎を踏もうとしてしまうのだ 00:06:42.350 --> 00:06:47.380 00:06:47.380 --> 00:06:52.080 だが任天堂はさらに先まで進んで、新しい ゲームプレイをゲームの核心部分に用いる 00:06:52.080 --> 00:06:55.370 表現のあらゆる側面をそれに基づいて決めるのだ 00:06:55.370 --> 00:07:00.830 スプラトゥーンのシステムが開発された後 プロデューサーの野上恒によると 00:07:00.830 --> 00:07:04.890 「そこからゲームプレイに完璧にマッチする キャラクターと世界像を考えたんです」 00:07:04.890 --> 00:07:09.520 スプラトゥーンのプロトタイプでは 操作するキャラクターは大きな白いブロックだった 00:07:09.520 --> 00:07:14.810 デザイナーたちがイカを考案したのはその後だ 00:07:14.810 --> 00:07:19.270 インクの中を泳ぐことができて、かつ インク塗りと泳ぎのシステムを明確に分離できるような 00:07:19.270 --> 00:07:21.470 そういうキャラクターが必要だったからだ 00:07:21.470 --> 00:07:26.921 キャラクター全体がシステムの延長という場合もある 00:07:26.921 --> 00:07:33.210 例えばナビは時のオカリナのZ注目システムを キャラクター化したものだ 00:07:33.210 --> 00:07:36.050 またマリオ64のジュゲムはカメラの運び役だ 00:07:36.050 --> 00:07:41.990 チコはマリオの帽子に隠れることで スピンアタックのチャージ完了を知らせる 00:07:41.990 --> 00:07:49.710 この手法を使えば、ゲームプレイは抽象的な システムではなく、ゲーム世界の一部になる 00:07:49.710 --> 00:07:55.180 スプラトゥーンのプロデューサーはまた、インクを 撃つのがグラフィティを描くのに似ていることから 00:07:55.180 --> 00:08:01.280 音楽をパンクロックに、美術は90年代風にした 同様に、マリオサンシャインの舞台が南国の島なのは 00:08:01.280 --> 00:08:05.650 ただ水鉄砲のゲームプレイが デザイナーたちに夏を思わせたからだ 00:08:05.650 --> 00:08:07.120 00:08:07.120 --> 00:08:12.720 システムはストーリーを導くことさえできる 夢を壊して申し訳ないが 00:08:12.720 --> 00:08:18.050 ゼルダ作品のストーリーは全体を貫く 壮大な物語の一部ではない 00:08:18.050 --> 00:08:23.600 ストーリーはただ「最も楽しいゲームプレイ要素を 引き出すためにある」と、任天堂の前社長である 00:08:23.600 --> 00:08:24.690 岩田聡は言っている 00:08:24.690 --> 00:08:29.620 神々のトライフォース2は敵として狂気の芸術家がいるが 00:08:29.620 --> 00:08:35.110 これはリンクが絵に変わる理由が必要だったからだ 時のオカリナのストーリーですら、こういうプロセスの産物だ 00:08:35.110 --> 00:08:41.000 宮本は子供リンクと青年リンクの両方が同じゲームに いることを望んだので 00:08:41.000 --> 00:08:45.070 ライターたちは時間旅行の筋書きを考えなければ ならなかったのだ 00:08:45.070 --> 00:08:49.820 こんな風にストーリーを考えるなんて おかしいと思うかもしれないが 00:08:49.820 --> 00:08:54.900 これによりゲーム内におけるプレイヤーの行動と ストーリーで起きていることとの深いつながりが生まれる 00:08:54.900 --> 00:08:59.910 ヨッシーアイランドがいい例だ ストーリーは赤ちゃんマリオを守ることで 00:08:59.910 --> 00:09:02.550 システムも赤ちゃんマリオを守るのが目的だ 00:09:02.550 --> 00:09:08.300 多くの開発者は逆の仕方で進行する ストーリーやキャラクター、世界観を思い描き 00:09:08.300 --> 00:09:13.720 それから後退して、どんなゲームシステムなら うまく機能するかを考える 00:09:13.720 --> 00:09:16.900 これでは滅多に成功しないのも当然だ 00:09:18.280 --> 00:09:24.311 しかしまあ、任天堂をゲームデザインの神に祭り上げて 他の開発者は全員間違っているなんて風に 00:09:24.311 --> 00:09:28.180 言うべきではないだろう ひょっとすると、そうかもしれないが… 00:09:28.180 --> 00:09:34.680 いやいや、任天堂も道を誤ることはある 他の開発者が大成功していることもある 00:09:34.680 --> 00:09:38.570 例えばインディー系開発者たちは 独特なゲームプレイを中心にゲームを作るのが上手い 00:09:38.570 --> 00:09:44.180 また、僕は新しいDoomが全面的に近接攻撃を 中心に機能している点を非常に気に入った 00:09:44.180 --> 00:09:49.690 戦闘システムの中核になっている 回復できるし、移動手段としても機能する 00:09:49.690 --> 00:09:56.051 近接ボタンで扉を開けることもできる サムスが撃って扉を開けるのと同様だ 00:09:56.051 --> 00:10:00.840 Doomは非常に任天堂らしい作品だ 任天堂がこれを作ることは決してないだろうが 00:10:00.840 --> 00:10:05.470 それからPortalのようなゲームもある 非常に賢い操作法1つに基づいて作られた美しい作品だ 00:10:05.470 --> 00:10:10.310 このゲームを宮本が「素晴らしい」と評したのも納得だろう 00:10:10.310 --> 00:10:15.810 なぜなら任天堂にとって、プレイ方法は 他の何よりも重要だからだ 00:10:15.810 --> 00:10:20.530 それは新しいプロジェクトのための単なる出発点ではなく 他のあらゆる要素に関係する 00:10:20.530 --> 00:10:25.240 敵やグラフィックのスタイル、舞台、音楽 ストーリーやキャラクター、これら全てが 00:10:25.240 --> 00:10:29.270 ゲームの最も基本的な側面を彩るために選ばれ、作られる 00:10:29.270 --> 00:10:34.650 そしてゲームのあらゆる側面がプレイの仕方を 暗示するようになれば 00:10:34.650 --> 00:10:40.430 そのゲームは簡単に手に取って遊ぶことができる 任天堂のゲームが多くの場合 00:10:40.430 --> 00:10:44.280 市場にある他のどのゲームとも違う 感じがするのは、これが大きな理由だ 00:10:44.280 --> 00:10:50.220 任天堂作品はより遊び心に満ちており、おもちゃのような 雰囲気がある 遊びやすく、親切だが 00:10:50.220 --> 00:10:55.320 それと同じくらい複雑でもある そして端的に言って 任天堂作品はゲーム史上最も優雅なデザインを持っている 00:10:55.320 --> 00:11:02.760 だから失敗や誤算があった後でも 僕たちは期待して待ち続ける 00:11:02.760 --> 00:11:06.880 この日本のゲーム会社が次に何を思いつくのかを 00:11:09.180 --> 00:11:13.860 やあみんな、視聴してくれてありがとう このエピソードはかなり大変だったが 00:11:13.870 --> 00:11:18.800 ゲーム開発者としての任天堂の魅力に 新たな光を当てられればと思う 00:11:18.800 --> 00:11:24.840 チャンネル登録者が10万人に到達する手助けを してくれて、本当に感謝している 00:11:24.840 --> 00:11:29.480 それから字幕を他の言語に翻訳するために 時間を費やしてくれている人たちにも感謝したい 00:11:29.480 --> 00:11:31.180 00:11:31.180 --> 00:11:35.860 Game Maker's ToolkitはPatreonのファンたちによって 資金を得ている 00:11:35.860 --> 00:11:40.220 支援者は独立系のゲーム批評界を支援することで 気分が良くなるだけではなく 00:11:40.220 --> 00:11:45.550 ボーナス動画やお勧め動画、ゲームレビューなどの 特典にアクセスできる 00:11:45.550 --> 00:11:51.510 5ドル以上支援してくれれば、自分の名前が 動画の最後に表示される そう…こんな風に!