0:00:07.006,0:00:08.756
かぎ爪について考えてみましょう

0:00:08.756,0:00:12.486
世界中にいる[br]４本足の動物に多く見られ

0:00:12.486,0:00:15.566
自然界で最も用途の広い[br]道具の１つです

0:00:15.566,0:00:18.888
熊はかぎ爪を穴掘りや[br]防御のために使います

0:00:18.888,0:00:23.648
鷹の針のようなかぎ爪は[br]獲物の頭蓋骨を貫くことができます

0:00:23.648,0:00:27.567
ライオンは巨大なかぎ爪を[br]平穏な動きのときにはしまい

0:00:27.567,0:00:29.940
狩りをするときに[br]さっと出すことができます

0:00:29.940,0:00:35.405
霊長類の祖先ですら[br]かぎ爪が爪に進化するまでは

0:00:35.405,0:00:39.785
この素晴らしい付属器を[br]使っていました

0:00:39.785,0:00:44.867
では進化過程において[br]何が この美しい爪への適応へと導いたのか

0:00:44.867,0:00:49.740
また 鋭いかぎ爪には出来ず[br]爪に出来ることは何でしょうか

0:00:49.740,0:00:55.570
化石により確認された最も古い爪は[br]約5580万年前のものですが

0:00:55.570,0:01:00.349
かぎ爪が哺乳類と爬虫類の祖先に登場してから[br]この時代までに

0:01:00.349,0:01:03.548
既に2億6000万年が[br]経っていました

0:01:03.548,0:01:06.540
これらの爪の登場時期の間には[br]長い間隔があるにも関わらず

0:01:06.540,0:01:10.991
これらの適応はどちらも[br]同じ仕組みで進化しています

0:01:10.991,0:01:14.253
爪とかぎ爪は両方とも[br]ケラチンという ―

0:01:14.253,0:01:20.926
頑丈で線維質のたんぱく質で[br]角 鱗 ひずめや髪にも含まれています

0:01:20.926,0:01:25.956
このたんぱく質は楔形の組織である[br]爪母で作られています

0:01:25.956,0:01:28.275
血管と栄養素が豊富な[br]このたんぱく質の工場は

0:01:28.275,0:01:32.665
絶え間なくケラチンを作り続け

0:01:32.665,0:01:36.711
角化細胞と呼ばれる[br]細胞に密に詰め込まれています

0:01:36.711,0:01:42.241
これらの高密度の細胞は[br]爪や かぎ爪の特徴である頑丈さを与えます

0:01:42.241,0:01:44.627
爪はかぎ爪から進化したため

0:01:44.627,0:01:48.588
どちらの適応においても[br]同じ方法で角化細胞を作ります

0:01:48.588,0:01:50.788
角化細胞は爪母から生え

0:01:50.788,0:01:56.297
皮膚から表層に出てきて 死んだあと[br]硬くなって防水性がある覆いとなります

0:01:56.297,0:01:59.637
ケラチンで出来た ２種類の覆いの[br]主な違いは

0:01:59.637,0:02:01.278
形のみで

0:02:01.278,0:02:06.228
これは動物の指先の骨の形に[br]依存しています

0:02:06.228,0:02:11.417
かぎ爪では角化細胞の爪床は[br]幅が狭い指の骨に合った形になっており

0:02:11.417,0:02:15.193
指先を包み[br]放射状に外側に広がり

0:02:15.193,0:02:17.497
すり鉢状の構造を作ります

0:02:17.497,0:02:21.501
その一方で 爪のある動物は[br]より幅広い指先を持ち

0:02:21.501,0:02:26.811
角化細胞は広い骨の[br]最上面のみを覆っています

0:02:26.811,0:02:30.149
霊長類の指が より幅広く[br]器用な指へと進化したことの

0:02:30.149,0:02:33.886
副次的な効果として[br]単に存在し続けた可能性があります

0:02:33.886,0:02:37.733
しかし 私たち霊長類の祖先の[br]生息地に関する知識を元にすれば

0:02:37.733,0:02:43.373
爪には固有の利点があった[br]可能性の方が高いでしょう

0:02:43.373,0:02:46.503
霊長類が住んでいた森林の林冠では

0:02:46.503,0:02:50.607
幅広い指の骨と 広い指腹は

0:02:50.607,0:02:52.744
細い枝をつかむのには理想的でした

0:02:52.744,0:02:56.367
そして爪は握る力を更に高めました

0:02:56.367,0:02:59.749
押しつけるための[br]頑丈な表面を与えられたことで

0:02:59.749,0:03:05.361
霊長類は指腹を広げ[br]木との接触部分がさらに広がりました

0:03:05.361,0:03:09.126
爪はさらに[br]木登りの最中に

0:03:09.126,0:03:14.226
圧力の変化を感じる面積が増えることで[br]指先の感度を向上させました

0:03:14.226,0:03:17.748
この敏感さと器用さの組み合わせは

0:03:17.748,0:03:22.658
祖先が虫を捕まえ 果実や種をつまみ[br]細い枝をつかむための

0:03:22.658,0:03:27.827
正確な運動制御をもたらしました

0:03:27.827,0:03:33.794
爪の進化と 親指が他の指と[br]向かい合わせとなる進化には

0:03:33.794,0:03:35.749
密接な関係があるのです

0:03:35.749,0:03:38.602
また 私たちの祖先が[br]木から降りてきたときは

0:03:38.602,0:03:44.580
柔軟性のある握る能力は 複雑な道具を作り[br]巧みに使うことを可能にしました

0:03:44.580,0:03:48.138
幅の広い指から かぎ爪への[br]突然変異が起こり得たとしても

0:03:48.138,0:03:50.830
かぎ爪の鋭さは

0:03:50.830,0:03:53.369
霊長類の日常生活の[br]邪魔になったことでしょう

0:03:53.369,0:03:56.978
かぎ爪は貫いたり 穴を空けたり[br]引っ掛けるには理想的ですが

0:03:56.978,0:04:01.938
尖っているため 物をつかむことが難しく[br]危険もあることでしょう

0:04:01.938,0:04:07.552
しかし かぎ爪と爪は どちらも[br]予期もしないような方法で使われています

0:04:07.552,0:04:10.267
マナティーは爪で食べ物をつかみますし

0:04:10.267,0:04:14.212
象の足の爪は[br]地面の振動を感知することで

0:04:14.212,0:04:16.812
音を聞くのに役立っているのではと[br]研究者は考えています

0:04:16.812,0:04:20.678
一方 マダガスカルの[br]アイアイなどの霊長類は

0:04:20.678,0:04:22.694
再獲得したかぎ爪を持っています

0:04:22.694,0:04:27.029
彼らは枝や幹をつつくため[br]このように とても長い付属器を使い

0:04:27.029,0:04:31.355
コウモリのような耳で空洞の箇所を[br]聞き当てようとします

0:04:31.355,0:04:34.050
空洞箇所を聞き当てると[br]木に穴を堀り

0:04:34.050,0:04:38.830
針のような中指でうじを刺します

0:04:38.830,0:04:43.788
私たちは動物界における[br]爪やかぎ爪の驚くべき用途を

0:04:43.788,0:04:46.463
ごくわずかしか見ていません

0:04:46.463,0:04:49.614
しかし どちらの適応が[br]より優れているのかは

0:04:49.614,0:04:52.584
爪を隠していると言ってもいいでしょう