子ども博物館で6~8才の 子供300人と話す機会があって ここにあるような義足を カバンいっぱい持って行き 机の上に並べたの 子供は本来見知らぬものや 異質なものに対して 好奇心旺盛 大人が恐怖心を植えつけたり 失礼がないようにと 子供の好奇心を押さえ込んだり 質問を遮ったりするから 子供は異質なものを恐れてしまう 実際先生がはしゃぐ子供たちに言ったわ 「間違ってもエミーさんの足を」 「じろじろ見ないこと」 でも大切なのはそこ 義足に触れてもらうのが目的 そこで私は先生にこう持ちかけた 「2分間だけ子供たちと話がしたい」 「大人抜きで」 扉が開き、子供たちは義足に群がった つついたり、つま先を動かしたり 短距離走用の義足に 全体重をかけてみたり 私は尋ねた「今朝ふと思ったの」 「家を跳び越えてみたいって」 「2、3階建ての家よ」 「動物、スーパーヒーロー、アニメキャラ」 「何でもいいの」 「どんな足なら跳べるかしら」 「カンガルー!」と誰かが叫んだ 「だめだめ!カエル!」 「ガジェット警部がいいよ!」 「ちがうよ!Mr.インクレディブルだよ!」 私が聞いたことのないものまで すると8才の子が 「ねえ、空を飛びたいとは思わないの?」 みんな口をそろえて言ったわ「もちろん!」 (笑) しつけられた子供の目には 障害者として映ったであろう私は 今や未知の可能性を秘めた体の持ち主 超人にだってなれる おもしろいでしょ 私は11年前もこの場に立ちました TEDで人生が変わったという声を 何度も耳にしますが、私もそのひとり TEDはその後の人生探求の出発点だった その時紹介したのが当時画期的とされた義足 チーターの後肢をモデルに 炭素繊維で作った 短距離走用の義足です そしてこの本物さながらのシリコンの足 従来の医療の枠を越えて 革新者を集め、科学と技術を駆使した 義足作りを目指した 形、機能、美の価値を 別々に追求するのをやめるには いいチャンス 幸い多くの人が賛同してくれて TED参加者のチー・パールマンを知ったのもこの頃 今日も会場にいるはずよ チーは当時『ID』誌の編集者で トップ記事で私を紹介してくれた これが大きなきっかけとなり 心躍る出会いが次々と生まれた チーター義足のデザインについて 世界中から講演依頼が殺到 講演の後は男性も女性も みんな集まってきた そしてこんな風に言われるの 「エミー 、すごく魅力的だよ」 「とても身体障害者に見えない」 私だって そんな風に感じたことないわ と心の中で思いながら だけどこの会話で、美しさには探求の余地があることを 気づかされました 美しい女性ってどんな姿? 魅力的な体って? アイデンティティという視点から 障害を持つことにはどんな意味がある? パメラ・アンダーソンの体は人工的でも 障害者とは呼ばれないでしょ (笑) 『ID』の記事はグラフィックデザイナーのピーター・サヴィルから ファッションデザイナーのアレキサンダー・マックイーンと 写真家のニック・ナイトに渡った TEDの3ヶ月後、初のモデル撮影を ロンドンで行いました それがこの表紙 見出しは「ファッション化?」 3ヶ月後にはマックイーンのショーでモデルを務め トネリコ製の手彫りの義足を履いたら 観客は木のブーツだと勘違い これが実物です ブドウのつるとモクレンの見事な美 詩も大切よ 詩は平凡でなおざりになったものを 芸術に変える 詩は人々が恐れていたものを 興味深くし もう少しだけ見てみたい 理解したいものに変える マシュー・バーニーの「クレマスター・サイクル」が 私にそのことを教えてくれた 私の義足は履く彫刻なのだと 心から痛感した そのとき私は人間らしさの復元だけに美の理想を見出す視点から 解放されつつありました 「ガラスの脚」として親しまれた義足は 実はボーリング玉の素材と同じ 透明なポリウレタン製 重いのよ! これは土の中で鋳造した義足 ジャガイモとテンサイが根を張ってるわ つま先は真ちゅう これが拡大画像 次は上半身が女性、下半身がチーター アスリート人生への感謝の印 特殊メイクに14時間かけ 本格的な足や爪としなやかな尻尾を持つ 生き物になりきりました ヤモリみたいに (笑) もう一つ共同制作したのがこちら クラゲの足のよう これもポリウレタンです 映画以外での この足の使い道は 感覚に訴え想像力を刺激すること 奇抜さも大事よ 私は義足を12足以上持ってます 多くの人が手がけ それぞれが違った感覚を足もとに与えてくれる 身長だって変えられる 私の身長は5種類 (笑) 今日は185cm 1年前、英国ドーセット州の整形外科で 作ってもらったものを マンハッタンに持ち帰り パーティーに行った時のこと 普段173cmの私を知る 長年の友人が 私を見てビックリ 「すごい背が高いじゃない!」 私はすかさず「ねぇ!面白いでしょ?」 竹馬に竹馬で乗る感覚よ 想定外だったのは ドア枠に頭を打ってしまうこと それすらも楽しかった しかも友人が言うの 「でも、エミーそんなのずるいわ」 (笑) (拍手) ウソみたいだけど友人は本気だった 自由に身長を変えられるなんて ずるいでしょ その瞬間―― 社会の反応がこの10年で 大きく変わったと 実感した もはやハンディは克服するものではなく プラスに増幅していくもの 社会は可能性に溢れている 義肢はもはや失ったものを補うのではない 新たに生まれた空間に 装着者が自由な創作を実現する 力の象徴 身体障害者とされてきた人々は 今や自分の個性を演出できるんです 自分が秘めた可能性を信じ 身体をデザインすることにより 新たな個性を生み出し続ける 今、私が心待ちにしているのが ロボットやバイオニクスなどの最先端技術と 昔からある詩を 組み合わせることで 私たちが人類全体の人間らしさを理解し始めていること 私たちが持つ人間らしさに最大の可能性を 見出したければ 誰もが持っているすばらしい長所や 偉大な欠陥を褒め称える必要があります 『ヴェニスの商人』でシャイロックが言ってるでしょ 「針で刺せば血が出る」 「くすぐられれば笑いもする」 それが私たちの人間らしさであり そこに潜むすべての可能性が 私たちを美しくするのです ありがとうございました (拍手)