0:00:15.625,0:00:17.915 (ヒメナ・エレゲダ)(スペイン語)[br]こんにちは お元気ですか? 0:00:17.915,0:00:20.125 (スティーブン・ウォード)[br](英語)こんにちは 0:00:20.488,0:00:24.498 (スティーブン)[br]2人のライフワークの始まりは 22年前 0:00:24.498,0:00:27.518 ここ 日本からでした 0:00:27.518,0:00:30.754 お互いの作品に 関わりを持ち 0:00:30.754,0:00:34.396 次第に 共同制作を始めます 0:00:34.396,0:00:38.496 (ヒメナ) そして 野外で[br]誰でも自由に触れられる— 0:00:38.496,0:00:42.426 焼き物の作品を[br]作るようになりました 0:00:42.426,0:00:45.651 それは まるで 船を造りながら 0:00:45.651,0:00:48.721 海を渡っていく[br]冒険のようでした 0:00:49.933,0:00:54.500 (スティーブン)20年前の夏[br]市の許可を得て 0:00:54.500,0:00:59.027 1か月かけて 公共の場に粘土で 0:00:59.333,0:01:04.806 これぐらいの形を作り[br]廃材を使って焼きました 0:01:06.079,0:01:11.739 製作中 2度の台風に耐え[br]完成した作品は 0:01:11.763,0:01:15.369 「空の広場」と名付けました 0:01:16.021,0:01:19.215 しかし ある日 [br] 0:01:20.262,0:01:23.523 この作品は 壊されてしまいました 0:01:24.121,0:01:27.911 (ヒメナ)作品を形作っていた[br]3トンの粘土は 0:01:27.911,0:01:30.519 瓦礫になってしまったのです 0:01:30.519,0:01:33.271 あまりのショックに[br]私は子どもをおぶって 0:01:33.271,0:01:37.860 市役所の担当者まで[br]作品の破片を持っていきました 0:01:38.490,0:01:41.275 納得できる説明はなかったのですが 0:01:41.523,0:01:44.152 壊された原因のひとつは 0:01:44.152,0:01:49.000 場所と人の関係を[br]考えなかったからだと気付きました 0:01:50.197,0:01:54.959 そこで 実際に地域の人と[br]コミュニケーションを取りつつ 0:01:55.175,0:01:58.041 一緒に制作をすることで 0:01:58.042,0:02:01.502 そこでしか生み出すことの[br]できないものを 0:02:01.502,0:02:03.749 創りたいと思いました 0:02:04.969,0:02:07.756 (スティーブン)[br]この町に作品を残したいという 0:02:07.756,0:02:10.396 2人の強い思いが届き 0:02:11.467,0:02:16.984 再び 公共の公園で[br]制作する許可をもらいました 0:02:18.540,0:02:21.190 (ヒメナ)次の作品のテーマは 0:02:21.190,0:02:23.526 人と人が向き合える場 0:02:24.330,0:02:29.594 場所 人 作品の3つを[br]つなぎ合わせるビジョンです 0:02:31.695,0:02:35.456 (スティーブン) [br]この作品は 公園で制作していたので 0:02:36.000,0:02:39.250 いろいろな人が声をかけてくれました 0:02:39.985,0:02:43.444 一緒に粘土やレンガを運び 0:02:44.097,0:02:46.643 窯焚きも力を合わせたことで 0:02:47.207,0:02:50.749 作品と人の繋がりができました 0:02:52.399,0:02:56.354 3年間つくった作品は[br]その場所で焼き 0:02:57.059,0:03:01.202 熱や圧力で岩のようになり 0:03:02.496,0:03:05.846 ずっとその場所に残り続けます 0:03:06.835,0:03:09.865 「空と曙の広場」です 0:03:11.860,0:03:16.580 私たちが なぜこのような[br]空間を作ろうと思ったのか 0:03:17.032,0:03:21.943 (ヒメナ)ベネズエラにある[br]石で作られた野外劇場で感じた— 0:03:21.962,0:03:24.442 さまざまな音の響き 0:03:25.163,0:03:28.743 (スティーブン)[br]アメリカの大木の空洞で経験したー 0:03:28.763,0:03:31.697 包み込まれるような感覚から 0:03:31.697,0:03:34.494 インスピレーションを得たからです 0:03:34.719,0:03:37.685 (ヒメナ)音に包まれる不思議な空間を 0:03:37.685,0:03:40.183 粘土で表現したくなりました 0:03:40.565,0:03:44.256 そのインスピレーションに[br]鵜や鷹の群れが飛ぶ— 0:03:44.569,0:03:48.669 田んぼに囲まれた里山が繋がりました 0:03:48.898,0:03:54.562 遊び ダンス 音楽[br]劇と自然が一緒になって 0:03:54.588,0:03:57.468 新しい表現が生まれる場所 0:03:57.678,0:04:01.408 焼き物の反響板を持つ野外劇場 0:04:01.909,0:04:05.575 それが 「山の広場 野外劇場」です 0:04:07.945,0:04:11.185 (スティーブン)焼き物の歴史は古く 0:04:11.195,0:04:14.835 26,000年も前から続いています 0:04:15.673,0:04:20.976 しかし 今回私たちが 挑戦するような 0:04:20.976,0:04:25.189 巨大な焼き物の前例が ありません 0:04:26.799,0:04:29.869 ビジョンがクリアになるにつれ 0:04:29.879,0:04:35.958 自分たちの能力や[br]素材の限界に迫ることは 0:04:36.341,0:04:41.213 構造上も経済的にも 大きなリスクです 0:04:41.701,0:04:44.341 (ヒメナ)私たちはリスクを承知で 0:04:44.341,0:04:50.196 代々 窯を作ってきた陶芸家[br]建築家 測量士 0:04:50.221,0:04:55.537 そして 歯医者さんからも[br]教わりながら 制作に取り掛かりました 0:04:57.883,0:05:00.243 (スティーブン)作業をしている所で 0:05:00.243,0:05:02.841 (ヒメナ)「そこで何してるんですか? 0:05:02.841,0:05:07.401 反響板 粘土で! [br]わあ すごいですね 0:05:07.471,0:05:10.595 大変そうですね[br]いつ完成するんですか?」 0:05:10.744,0:05:13.754 (スティーブン)[br]「まあ 今日明日には終わらないな 0:05:13.754,0:05:17.261 けど 一緒にやれば早く終わりますよ」 0:05:18.113,0:05:20.558 こういう時のために 0:05:20.558,0:05:23.957 軍手はいつも用意してありました 0:05:23.957,0:05:25.047 (笑) 0:05:25.047,0:05:26.707 (ヒメナ)「サンキュー」 0:05:26.707,0:05:30.477 少しずつ一緒に作業する人が増えていき 0:05:30.477,0:05:34.675 自分たちのビジョンが[br]より現実になってきました 0:05:36.959,0:05:40.069 (スティーブン)(英語)来れる時に 0:05:40.069,0:05:43.189 (英語)出来ることを 0:05:43.189,0:05:47.057 来れる時に 出来ることを 0:05:47.494,0:05:50.364 バケツリレーで粘土を運んでる人 0:05:50.364,0:05:52.490 (ヒメナ)粘土をこねてる人 0:05:52.490,0:05:54.000 (スティーブン)おにぎりつくってる人 0:05:54.000,0:05:56.830 (ヒメナ) [br]何もしないでずっと喋ってる人 0:05:57.483,0:06:01.912 (スティーブン)大きな葉っぱを傘にして[br]走り回ってる子どもたち 0:06:01.912,0:06:04.514 (ヒメナ)すでに劇が始まってます 0:06:04.514,0:06:07.175 多くの人が参加する中で 0:06:07.175,0:06:11.405 出会いや別れ 時には対立もありました 0:06:12.032,0:06:17.622 ある時 台風で 30トン[br]積み上げていた反響板から 0:06:17.622,0:06:20.753 7トンが崩れる出来事がありました 0:06:21.065,0:06:24.985 より早く直そうと[br]工場のラインのようなやり方を 0:06:24.998,0:06:27.878 押しつけてきた人がいましたが 0:06:27.878,0:06:31.893 多くの人は機械的な作業に反対でした 0:06:32.402,0:06:36.162 (スティーブン)何故なら 土と関わり 0:06:36.452,0:06:41.818 その場でしか出来ない時間を[br]体験するために 0:06:42.458,0:06:45.768 参加したい人が多かったからです 0:06:46.685,0:06:50.155 ただ早くできればいい と考えている人は 0:06:50.155,0:06:52.265 ほとんどいませんでした 0:06:53.549,0:06:56.769 (ヒメナ)ようやく窯を作る段階 0:06:56.769,0:07:02.687 ひとつ 28キロのレンガを[br]積み重ねて窯を作ります 0:07:03.478,0:07:08.576 5メートルの高さまで熱が[br]逃げないように 組み上げていきます 0:07:08.639,0:07:13.063 それはまさに 200トンのパズルです 0:07:13.696,0:07:18.526 ここまで来るのに すでに[br]周りの田んぼの稲刈りを 0:07:18.526,0:07:21.223 14回も見てしまいました 0:07:22.006,0:07:26.176 終わりが見えない 延々と続く労働の中 0:07:26.176,0:07:29.515 ビジョンを失ってしまいそうでした 0:07:29.908,0:07:35.714 同時に この時期は[br]仲間が あまり集まりませんでした 0:07:36.500,0:07:40.449 休みの日に レンガ運びたい人って[br]いないでしょ? 0:07:40.449,0:07:41.449 (笑) 0:07:41.449,0:07:43.809 (スティーブン) あれ?[br](ヒメナ)あ! いるかもしれない 0:07:43.809,0:07:44.807 いるかな? 0:07:44.807,0:07:45.825 (笑) 0:07:45.825,0:07:49.950 それでもまた覗きに来る人もいました 0:07:51.436,0:07:53.246 (スティーブン) [br]「まだ終わってないの?」 0:07:53.356,0:07:55.336 (ヒメナ)「軍手ならありますよ」 0:07:55.495,0:07:57.255 (スティーブン)「お! サンキュー」 0:07:57.364,0:07:58.514 (笑) 0:07:58.784,0:08:02.594 (ヒメナ)こうして いよいよ[br]窯が完成しました 0:08:02.968,0:08:09.068 粘土は 高い温度で焼かれると 石になり[br]二度と土へは戻りません 0:08:09.617,0:08:11.989 この反響板を焼き固めるには 0:08:12.079,0:08:15.886 40日かけて 1,200度上がるまで 0:08:15.886,0:08:18.706 焼き続ける必要がありました 0:08:19.723,0:08:24.230 窯焚きは一発勝負[br]失敗は許されません 0:08:24.541,0:08:28.784 もしも 焼いている途中で爆発したら? 0:08:28.784,0:08:31.495 うまく温度が上がらなかったら? 0:08:31.713,0:08:34.933 今までビジョンを共にしてきた人たち 0:08:34.940,0:08:40.008 そして 自分たちが費やした[br]資金や時間を考えると 0:08:40.038,0:08:43.052 不安で落ち着きませんでした 0:08:44.003,0:08:47.803 (スティーブン)[br]40日間の窯焚きはマラソンです 0:08:48.413,0:08:54.383 火を入れて 最初は[br]音楽で言う「モデラート」 0:08:54.485,0:08:57.555 低温をじっくりキープします 0:08:57.761,0:09:03.861 そして 窯の温度はだんだん[br]アレグロのように速く上げていき 0:09:04.542,0:09:07.892 最後には全力で熱し上げます 0:09:09.176,0:09:13.420 キャンプ生活しながら[br]無心に焚き続けました 0:09:15.102,0:09:20.243 連日の寝不足で — ふぅ![br]みんな 頭がおかしくなりそう 0:09:20.418,0:09:23.974 というか 実際におかしくなりました 0:09:23.974,0:09:25.033 (笑) 0:09:25.354,0:09:31.473 (ヒメナ)そして最後に[br]一本の赤松を投げ入れ 窯焚きは終了 0:09:31.814,0:09:34.811 本当に上手く焼けているかどうかは 0:09:35.076,0:09:40.056 さらに冷めるまで[br]40日間 待たなければなりません 0:09:40.701,0:09:45.744 2年の試作 3年の反響板 10年の窯 0:09:46.003,0:09:50.157 そして 1年をかけて窯を解体すると 0:09:50.509,0:09:53.955 蛹から蝶が羽ばたくように 0:09:53.955,0:09:58.308 オカリナのような反響板が[br]姿を現しました 0:09:59.918,0:10:03.183 (スティーブン)[br]「山の広場 野外劇場」は当初 0:10:03.183,0:10:07.373 完成には2年を予定していましたが 0:10:07.373,0:10:11.316 結局16年もかかってしまいました 0:10:12.626,0:10:18.312 時には 想定外だからこそ[br]達成できることもあります 0:10:19.827,0:10:24.857 (ヒメナ)このプロジェクトに関わった[br]のべ2,000人もの人びと 0:10:24.857,0:10:29.631 それぞれが 自分なりに劇場の[br]イメージを持ってたでしょう 0:10:29.631,0:10:33.933 しかし ビジョンは[br]単なるイメージとは違います 0:10:34.584,0:10:37.394 ビジョンは未来を創る力です 0:10:37.638,0:10:43.798 その力で 3つの可能性をつなぎ合わせ[br]このプロジェクトは実現しました 0:10:44.814,0:10:48.796 (スティーブン)[br]場所の可能性 そこだから出来る 0:10:48.796,0:10:52.097 (ヒメナ)人の可能性[br]誰にでも出来ることがある 0:10:52.737,0:10:56.562 (スティーブン)時間の可能性[br]時間をかければ出来る 0:10:57.433,0:11:03.139 この里山に人が集まり 劇場が完成し 0:11:03.563,0:11:06.664 新しい表現が生まれることで 0:11:07.814,0:11:11.065 生きた場所に生まれ変わりました 0:11:11.637,0:11:16.386 それは 私たちが目指したビジョン[br]そのものでした 0:11:18.163,0:11:21.595 (ヒメナ)(英語)人のために[br]人が創った場所 0:11:21.655,0:11:25.226 人のために 人が創った場所 0:11:27.986,0:11:30.946 (音楽) 0:12:01.128,0:12:04.071 (音楽終わり) 0:12:07.943,0:12:10.239 (ヒメナ) この巨大な反響板は 0:12:10.239,0:12:15.037 空から見ると 小石のようにしか 映りません 0:12:15.037,0:12:20.749 しかし その小石に 造った[br]みんなの手の跡が確かに残り 0:12:20.749,0:12:25.544 この経験を通して生まれた[br]一人ひとりの思いが 0:12:25.558,0:12:30.408 これからも新たな物語を[br]紡ぎ出していくでしょう 0:12:30.408,0:12:34.251 みなさんも 自分の持っている[br]ビジョンに向かって 0:12:34.251,0:12:37.549 自分の船をひとりで漕ぐもよし 0:12:37.549,0:12:40.239 (スティーブン)[br]みんなで協力して漕ぐもよし 0:12:40.239,0:12:42.503 (ヒメナ) さあ 新たな物語を 0:12:42.503,0:12:45.366 (ヒメナ&スティーブン)[br]創る冒険を始めましょう! 0:12:45.366,0:12:49.010 (ヒメナ)(英語)ありがとうございます[br](スティーブン)(スペイン語)ありがとう 0:12:49.010,0:12:51.022 (拍手)