毎月、何百もの新作ゲームが Steam や Switch eShop や PlayStation Store に登場している中 ゲーム制作で最も難しいことと言えば 自分のゲームの存在を人々に知ってもらうことかもしれない 現在、強力な広報活動には 多くのものが関わっているが 重要な要素の1つは 優れた「予告映像」だ これは約 90 秒の 途切れないゲーム映像で 潜在的なプレイヤーの眼球に 直接送ることができる だからこの機会を無駄にせず 次のことを考えるときだ 「優れた予告編の要素とは?」 予告編は何のためにあるのか 知ることが重要だ 予告編はゲームプレイ映像の デタラメな寄せ集めではない 機能の退屈な要約でもない 冒頭のカットシーンでもない そして間違いなく営業トークでもない 「よお、この画面を見てるアンタ 質問していいか?」 「スゴイやつのスゴイの好きか? だったら兄ちゃんこのゲームやってみろ」 「べらぼうにクールでヤバイ中毒性」 うわ… こんなのではなく、予告編の一番の目的は プレイヤーにゲームの独自性を伝えることだ 人気の独立系ゲームには 必ず「フック」があり 『Crypt of the Necrodancer』の開発者 Ryan Clark はこれを次のように説明する 「人々に試したい、議論したいと思わせるような ゲームについての興味深い情報です」 それは巧みなゲーム仕様かもしれない 音楽の拍子に合わせて移動する ダンジョン探検ゲームや 敵と会話して戦闘を避ける RPG などだ 刺激的なジャンルの融合かもしれない デッキ構築ローグライクや ステルス・プラットフォーマーなど 見たことのない独特な設定や 物語かもしれない または特に強烈なアートスタイル 予告編はプレイヤーや報道陣に フックを説明するチャンスだ どちらも雑談、ツイート、記事の見出しなどで ゲームのアイデアを広めてくれる Derek Lieu は最も多作な 予告編制作者の1人で 「予告編を見た人が、そのゲームについて どう話すのかを考えることが重要だと思います」 「共有するアイデアを単純にするほど より広く共有されると思います」と述べている 現在『GRIS』のようなゲームは ほぼその美しさを売りにしている だがゲームのフックが巧みなゲームシステムであるなら それを説明する必要がある アイデアが特に複雑で 見た目だけでは簡単に伝えられない場合—— 例えば分岐する物語や 手続き型生成などの場合は 明示的な伝え方が最適かもしれない それはテキストを表示することかもしれない または録音した朗読など 例えばこの『Heaven’s Vault』の 予告編を聞いてみてくれ 「私は考古学者、発掘が仕事」 「解読した碑文は、全てがパズルの一部」 「月へと航海するたびに、新たな道が明らかになる」 「そして新たな発見をするたびに 物語が完全に変わっていく」 これは短い文章だがゲームの核を 端的に表現している プレイヤーは考古学者だ 碑文を翻訳して宇宙を旅する そして物語が行動によって変化する これはデタラメな台詞の断片ではなく ゲームアイデアの明確な説明だ 何より最高なのは、主人公を演じる女優に 台本を朗読させていることだ より自然で、営業トークっぽい感じもなく 同時に登場人物の1人を紹介している だがゲームがそれ自体を説明できるなら そのままにしておくのが最善だ 視聴者は、何が起きてるのか自力で理解するしかないとき より積極的に予告編を見ると思う より惹きつけられるのだ これはゲームがどうプレイされるのかを 単純明快に示すことで実現できる これは狂気のルール変化パズル 『Baba is You』の予告編だ 「Baba is You」という文が 「Rock is You」に変わった後 岩が動き出す これはプレイヤーがゲームの最も根本的なルールを いじくる様子を簡潔に要約している 別の例だ 『Way of the Passive Fist』は 敵が疲れ果てるまで攻撃をパリィして その後、敵を一発で叩きのめす これを表現するために、予告編は主人公が 攻撃を 10 秒間受け流すところから始まる その後、アクションが遅くなり 音楽が止まり 主人公が疲れ果てた敵をつついて 画面の向こうへブッ飛ばす それから『Return of the Obra Dinn』の予告編では 遺体、懐中時計、いくつかの死の場面と そして最後に 遺体の死の情報を 日誌に記録する様子が映る 予告編を完全なチュートリアルにする必要はないが ゲームで何をするのか分からず 混乱したままにするのはダメだ 予告編制作者の M Joshua 曰く 「これが最初の大きなハードルだと考えてください」 「プレイヤーは理解していないゲームの中にいる自分を 想像することができないのです」 さて、すでに視聴者が興味を失っているなら ゲームを説明しても意味がない ペース配分は重要で これを正しく理解していない場合は 視聴者は『Fallout 76』を見捨てた時よりも 早く予告編を閉じるだろう これを正しく理解するためには、Derek Lieu の 「強度グラフ」をカンニングするのが良い こういう感じだ… 段階1は「Cold Open」だ (訳註 題名より先に見せる導入部分のこと) 予告編の始まりは 正しくやるために重要で Derek は強く始めるために、激しいアクションの場面や ゲームプレイの断片を使うことが多い 時には冗談すらも 「そこは立ち入りを禁止されているわ とても危険よ」 「そこにいるのよね?」 「そんなに危険そうには…」 「うわああ! 助けて!」 「ヘンリー!」 「なんてことない こちら全く異常なし」 「もう このバカ!」 冒頭から説明を出して 視聴者を退屈させるのはダメだ それから余程の権威がない限り スタジオのロゴも控えた方がいい 「FTL の制作者が作った」は それ自体がフックだ だが「便秘ゴリラスタジオ」は何の意味もない たった今、僕が作ったスタジオだ ところで、予告編全体でこの強度を 維持することはできない 休みなしのアクションは疲れるし—— 視聴者はボーッとして 注意を払わなくなる そこで段階2 「内容紹介」の時間だ この時点で、Derek は少しテンポを遅くし 視聴者の注意を穏やかなものに向けさせる ここは物語や世界の紹介のほか、前述のように 主なゲームシステムの説明に適した時間だ 視聴者の注意は 「Cold Open」で確保され 説明でゲーム内容の基本的な理解は 達成されたので 次は段階3に進む 「強度上昇」だ ここでは物事を積み重ねていく 少しずつ強度を上げたり、システムを追加したり アクションを増やしたり 爆発をたくさん見せたり カット間隔を短くしたりできる ここでは変化に富むことが とても重要だ 同じ種類の敵や 同じステージをずっと見ていると 視聴者は「それしかないの?」と 思い始める カットするたびに 異なる要素を見せてくれ 多くの予告編制作者が使う編集技がある 主人公の位置は変えず—— 背景、敵、衣装などを変えて 大量のコンテンツを表示する 少し使い古されているが、それでも 「60個のステージ!」の文字に比べればマシだ 段階4は「ヤマ場」だ ここでアクションの激しさが最大まで増え そこで止まる 全てを見せるのではなく、視聴者の心に 長くひっかかる疑問を残すのが理想だ この『Hyper Light Drifter』の予告編は 不気味なボス戦で幕を閉じる 『Firewatch』の予告編は謎を上手に作り上げることで 実際にプレイして次の展開を見たいと思わせている 「待って そこにいるの?」 「監視塔じゃないの?」 「いいや」 「なら あれは誰なの?」 ここでついにゲームの題名や、ロゴや—— 対応機種や発売日などの関連情報が 明らかになる それと「呼びかけ」があるかもしれない ただ視聴者の判断を麻痺させてはダメだ 視聴者への呼びかけは1つだけだ (訳註 Steamで今すぐ買おう!など) 時には段階5「仕上げ」がある 追加の可愛い冗談や、ちょっとしたアクション 予告編が終わった後のじらしなどだ 結局は、高揚感を保ったまま終わりたい 予告編の見栄えは特に重要だ 予告編は短くて高速カットが多いし 文字通り、第一印象が全てなので 全フレームを有意義に使うことが これまで以上に重要だ 最も重要なことは 予告編を読みやすくすることだ これは乱雑さを減らすことで、視聴者の注意を 一番重要なものだけに集中させることだ Lucas Pope は『Papers, Please』を こう見せることもできただろう これが実際のゲーム画面だ 3種類の画面があり、どれも大量の雑多な情報で 注目を得ようと競い合っている だが全体を映すのではなく、Lucas は 自分が見せたいものだけをトリミングしている 移民の行列、顔、書類、証印 規則書、写真だ 一般的には HUD やマウスカーソルなどの インターフェースを非表示にした方がいい トリミングや拡大、カスタムエリアさえも使って 重要な部分を強調する ノイズに注目されたらダメなのだ 映像クリップ間の明瞭さも大切だ 視聴者は画面の何かに注目しようとする 大抵は操作キャラだ だがカットが変わると 再び注目点を見つけないといけない 疲れるし時間の無駄だ 代わりに、焦点をカット間の ほぼ同じ位置に保つようにする 予告編は読みやすさ以上に 魅力的なものにしたい だから構図を考えたり 三分割法を使ったり 美しい風景映像、追尾カメラ 主人公キャラの肖像画を使ったりして ゲームを魅力的に見せるのだ また予告編を作るなら、自分が監督や編集者だけでなく 役者でもあることを忘れないでくれ だから超上手いゲームプレイを 見せつけたい Derek は同じ行動のテイクを 数十回も録画する 例えば『Firewatch』で 完璧なボトル投げシーンを撮るためだ またパーマデスを強調したい場合を除けば ダメージを受けたり死んだりした映像は欲しくない 音も超重要だ 音楽は理想的には、画面上の出来事の強度と 一致するべきだ そのため作曲家が予告編専用の 楽曲を書くこともあるだろう OST(サントラ)が宣伝に合わせて 細かく刻まれることもある 楽曲に合わせて 映像が編集されることもある 拍子に合わせてカットするのは楽しいし 拍子とアクションを重ねるのも楽しい ただし効果音を忘れちゃダメだ M Joshua 曰く—— 「プレイヤーは音を通じてゲームを感じていますが それを意識してないかもしれません」 「音楽だけで効果音のない予告編を見せると ほぼ確実に無味乾燥で活気がないと感じるでしょう」 ゲーム本編での効果音の重要性は ご存知なのだから 予告編では効果音を 消さないようにしてくれ では、これら全てを実際に見てみよう これは『Subnautica』の予告編で 作者は Derek Lieu だ まず 12 秒間の激しいアクションから始まる 爆発、火災、船の崩壊 音楽のテンポは速く カットも高速だ その後「内容紹介」に向けてギアが変わる 今、事態は落ち着つき 実際のプレイで何をするのか分かる 海へ飛び込んだり、泳ぎ回ったり 何かを突いたり、作ったりする しばらくするとナレーションが始まる 脱出ポッドの AI 音声のように聞こえる そしてゲームのコアループを 簡潔に説明する 「異星資源の活用は生存戦略として 実証済みです」 「探索、研究、新種を分類」 「食糧とエネルギーの確保 異常現象に関するデータの収集」 事態は「強度上昇」と共に 激しくなっていく 音楽で盛り上げながら このゲームでは色んなことができると示す 作れる全ての要素 プレイヤーを殺そうとする全ての生命体 深海の骨 さらに、批評の引用! 評価されたら見せびらかそう そして、ヤマ場だ 不吉な台詞が… 「深入りすべきじゃなかった」 …謎めいた部屋 それから、題名とロゴ うお! これは本当にペース配分の良い予告編だ プレイ内容を説明し、未解決の疑問を残して 自分でプレイするように促している 映像は多様性に富み、このゲームには 多くの発見があることを示唆している そして『Subnautica』のフックが 異星の水中世界で—— 生存のために巨大建築をするゲームであることを 明確に表現している 最高評価の予告編だ 1つ考慮しなければならないのは このルールに厳密に従いすぎると—— 他の予告編と同じに見えてしまう という点だ そして最初の問題に戻る 有象無象の中から目立つことだ だから創造的で異彩を放つことが大切だ これらのアイデアは「ひな型」ではなく 「指針」として使ってほしい 例えば『Factorio』の 素晴らしい予告編を見てみよう ゲームのフックを見せ、ゲームの仕組みを伝え 時間と共に強度が上がっていくが それが1本のノーカット撮影で 行われている 迷ったら専門家を雇えばいい 概要欄に優秀な予告編制作者の サイトリンクを貼っておく さらに追加情報も載せておく 例えば高品質な映像の撮影方法や ESRB・PEGI ロゴの使い方などだ (訳註 北米や欧州の対象年齢審査) (字幕翻訳:Nekofloor) やあ! ご視聴ありがとう! もちろん今回は ゲーム設計そのものではないが それでも独立系ゲーム開発という恐ろしい世界に 足を踏み入れる人にとっては超重要だ 僕も自分の助言を参考にして 1回は行動に移すべきだと思う 今回は…本当に素敵な一日を 過ごしてもらいたい Okay さよなら