WEBVTT 00:00:00.000 --> 00:00:04.000 朝の9時からスネアドラムに 00:00:04.000 --> 00:00:08.000 お目にかかりたいかは 悩むところですが… 00:00:08.000 --> 00:00:12.000 会場が満員なのは光栄です 00:00:12.000 --> 00:00:14.000 ハービー ハンコックと 00:00:14.000 --> 00:00:18.000 メンバーの演奏も見事でしたね 00:00:18.000 --> 00:00:22.000 興味深かったのは 00:00:22.000 --> 00:00:28.000 楽器を弾く手とテクノロジーとの競演と 00:00:28.000 --> 00:00:35.000 "若い人たちに耳を傾けよう" という彼の話でした NOTE Paragraph 00:00:35.000 --> 00:00:40.000 私の仕事も 聴くことが全てで 00:00:40.000 --> 00:00:46.000 世界の人々に聴くことを教えるのが目的です 00:00:46.000 --> 00:00:50.000 人生の唯一の目的と言えます 00:00:50.000 --> 00:00:56.000 簡単に聞こえますが 実際はかなりの大仕事 00:00:56.000 --> 00:01:02.000 なぜなら楽譜を見ると 例えば 00:01:02.000 --> 00:01:10.000 このバッグの中にある 00:01:10.000 --> 00:01:16.000 楽譜は小さな黒い点だらけです 00:01:16.000 --> 00:01:24.000 広げて… 楽譜を読みます 00:01:24.000 --> 00:01:29.000 楽譜は もちろん読めます 00:01:29.000 --> 00:01:33.000 速度や強弱など 指示に従い 00:01:33.000 --> 00:01:38.000 書かれたとおりに演奏します 00:01:38.000 --> 00:01:41.000 それで… 時間が限られているので 00:01:41.000 --> 00:01:50.000 仮に弾いたら…冒頭だけでも複雑な曲ではないと分かります 00:01:50.000 --> 00:01:51.000 難しくはないけど 00:01:51.000 --> 00:01:55.000 とても速い曲のようです 00:01:55.000 --> 00:01:59.000 叩く場所も 指示されてます 00:01:59.000 --> 00:02:04.000 スティックのどこを使うかも 書かれています 00:02:04.000 --> 00:02:06.000 強弱も… 00:02:06.000 --> 00:02:11.000 スネアをオフにしておくことも… 00:02:11.000 --> 00:02:14.000 これがオンで… これがオフ 00:02:14.000 --> 00:02:23.000 譜面通りに弾けば どんな曲か分かります 00:02:53.000 --> 00:02:59.000 こんな感じ… 5年もせずに職をなくすでしょう NOTE Paragraph 00:02:59.000 --> 00:03:07.000 しかし譜面にないことをするのが 音楽家の仕事です 00:03:07.000 --> 00:03:13.000 先生とのレッスンや 00:03:13.000 --> 00:03:16.000 話し合いでは得られないことを… 00:03:16.000 --> 00:03:21.000 楽器から離れている時に 気付いたことを 00:03:21.000 --> 00:03:26.000 この小さなドラムの表面を使って 00:03:26.000 --> 00:03:30.000 試していくんです 00:03:30.000 --> 00:03:36.000 譜面通りに弾いたので 今度は解釈をしてみます 00:04:25.000 --> 00:04:33.000 これなら仕事として 少し長く続きそうです NOTE Paragraph 00:04:33.000 --> 00:04:38.000 ある意味 人をみる時と同じことなんです 00:04:38.000 --> 00:04:41.000 ピンクの服を着た素敵な女性が 00:04:41.000 --> 00:04:45.000 テディベアを抱えている…とか 00:04:45.000 --> 00:04:50.000 どんな人かという基本的なことを知るんです 00:04:50.000 --> 00:04:55.000 何をする人だろう…とか 00:04:55.000 --> 00:05:01.000 これは第一印象を基にしたことでしかありません 00:05:01.000 --> 00:05:04.000 それを解釈するんですが 00:05:04.000 --> 00:05:06.000 深い洞察ではない 00:05:06.000 --> 00:05:09.000 音楽も 楽譜から基本を理解し 00:05:09.000 --> 00:05:14.000 技術的に難しい点や 弾き方を考えます 00:05:14.000 --> 00:05:16.000 基本的なことですが NOTE Paragraph 00:05:16.000 --> 00:05:18.000 それでは不十分 00:05:18.000 --> 00:05:22.000 ハービーの言っていた "聴くこと" です 00:05:22.000 --> 00:05:26.000 まず自分自身に耳を傾けること 00:05:26.000 --> 00:05:36.000 もしスティックを握ったら… 力強く握りしめたら 00:05:36.000 --> 00:05:40.000 腕から かなりの衝撃が感じられます 00:05:40.000 --> 00:05:42.000 しかし 意外にも 00:05:42.000 --> 00:05:45.000 楽器やスティックとの一体感がない 00:05:45.000 --> 00:05:51.000 ギュッと握っているにも関わらずです 00:05:51.000 --> 00:05:55.000 強く握るほど 距離が感じられるんです 00:05:55.000 --> 00:06:02.000 力を抜いと 手や腕を支えとして使うと 00:06:02.000 --> 00:06:11.000 苦労せず もっと大きな音が出せるし 00:06:11.000 --> 00:06:16.000 スティックやドラムと一体に感じられます 00:06:16.000 --> 00:06:18.000 ずっと小さな力で NOTE Paragraph 00:06:18.000 --> 00:06:21.000 楽器を知るのに時間が必要なように 00:06:21.000 --> 00:06:27.000 人を知るためにも時間が必要です 00:06:27.000 --> 00:06:29.000 表面上の理解を深めるために 00:06:29.000 --> 00:06:37.000 曲を数小節 弾いてみましょう 00:06:37.000 --> 00:06:42.000 技術者として… 00:06:42.000 --> 00:06:47.000 つまりパーカッション プレイヤーとして… 00:06:59.000 --> 00:07:03.000 音楽家として弾くと… 00:07:25.000 --> 00:07:32.000 両者には 考えるに値する (会場: 拍手) 00:07:32.000 --> 00:07:34.000 若干の違いがあります NOTE Paragraph 00:07:34.000 --> 00:07:37.000 私は12歳の時 00:07:37.000 --> 00:07:43.000 打楽器を始めましたが 先生に言われました 00:07:43.000 --> 00:07:49.000 "どうしたものかな… 音楽は聴くことだからね" 00:07:49.000 --> 00:07:53.000 私は "そうですけど?" と聞き返しました 00:07:53.000 --> 00:07:58.000 "どうやってこれを聞くんだい? これは?" 00:07:58.000 --> 00:08:00.000 私は "先生は?" と尋ねました 00:08:00.000 --> 00:08:04.000 "耳を通して聞くよ" と言うので 00:08:04.000 --> 00:08:09.000 "私もそうですけど…それ以外に手や" 00:08:09.000 --> 00:08:16.000 "腕 頬骨 頭 おなか 胸 脚でも聞きます" と答えました NOTE Paragraph 00:08:16.000 --> 00:08:22.000 …毎回レッスンはドラムのチューニングからでした 00:08:22.000 --> 00:08:25.000 特にティンパニのチューニングから 00:08:25.000 --> 00:08:34.000 このぐらいの狭い音程からです 00:08:34.000 --> 00:08:41.000 それから少しずつ 少しずつ… 00:08:41.000 --> 00:08:46.000 身体を開き 手を開いて 00:08:46.000 --> 00:08:50.000 振動が伝わってくるようにすると 00:08:50.000 --> 00:08:54.000 ごくわずかな違いを 00:08:54.000 --> 00:09:00.000 指の小さな部分で 感じ取ることができます NOTE Paragraph 00:09:00.000 --> 00:09:04.000 そこでレッスン室の壁に手を置いて 00:09:04.000 --> 00:09:11.000 先生と一緒に 楽器の音を聴きました 00:09:11.000 --> 00:09:14.000 単に耳で聴くよりも 00:09:14.000 --> 00:09:19.000 音とより広く一体になろうとしたのです 00:09:19.000 --> 00:09:23.000 耳は いろんなものに影響されますから 00:09:23.000 --> 00:09:28.000 その時の部屋や音の増幅 楽器の質 00:09:28.000 --> 00:09:38.000 スティックの種類などに… 00:09:38.000 --> 00:09:46.000 すべて違うんです 00:09:46.000 --> 00:09:51.000 重さは同じですが 音の"色"が違います 00:09:51.000 --> 00:09:53.000 人間と同じです 私たちも 00:09:53.000 --> 00:09:56.000 それぞれが自分の色を持っています 00:09:56.000 --> 00:09:59.000 それが その人独自の個性や 00:09:59.000 --> 00:10:02.000 性格や魅力を作り出します NOTE Paragraph 00:10:02.000 --> 00:10:08.000 その後私は ロンドンの王立音楽院を受験しました 00:10:08.000 --> 00:10:12.000 学校側は "将来性が不透明だ" と拒みました 00:10:12.000 --> 00:10:17.000 いわゆる"聴覚障害ミュージシャン"の将来性が 00:10:17.000 --> 00:10:21.000 これは…納得しかねましたね 00:10:21.000 --> 00:10:28.000 そこで言いました "もし…" 00:10:28.000 --> 00:10:31.000 "断る理由がそれだけで" 00:10:31.000 --> 00:10:40.000 "演奏技術や音を紡ぎ出すことへの" 00:10:40.000 --> 00:10:43.000 "情熱を評価しないなら" 00:10:43.000 --> 00:10:49.000 "そもそもの合格の意味を考える必要がありますね" 00:10:49.000 --> 00:10:55.000 その結果… ハードルを越え 試験を2回受け 00:10:55.000 --> 00:10:59.000 合格しました しかも 00:10:59.000 --> 00:11:03.000 これをうけて 全英の音楽院での 00:11:03.000 --> 00:11:07.000 その後の方針が変わりました NOTE Paragraph 00:11:07.000 --> 00:11:16.000 どんな事情があっても 願書を受理するようになったんです 00:11:16.000 --> 00:11:18.000 腕や脚がなくてもです 00:11:18.000 --> 00:11:22.000 支えがあれば 楽器が吹けるかもしれない 00:11:22.000 --> 00:11:29.000 どんな場合も 入学拒否の理由にならなくなった 00:11:29.000 --> 00:11:34.000 受験者の演奏を聴き 実際に見て 00:11:34.000 --> 00:11:42.000 実力に基づいて 合否を決めるようになったんです 00:11:42.000 --> 00:11:48.000 その結果 とても興味深い学生たちが 00:11:48.000 --> 00:11:52.000 音楽院に入るようになりました 00:11:52.000 --> 00:11:55.000 彼らの多くは今 00:11:55.000 --> 00:11:59.000 プロとして世界中のオーケストラで活躍しています 00:11:59.000 --> 00:12:01.000 ここでも興味深いのは 00:12:01.000 --> 00:12:06.000 (拍手) 00:12:06.000 --> 00:12:12.000 人は誰でも 音と通じ合えるというだけでなく 00:12:12.000 --> 00:12:19.000 音楽は 私たちを日々癒してくれる薬なのです NOTE Paragraph 00:12:19.000 --> 00:12:22.000 音楽が というより音が ですね 00:12:22.000 --> 00:12:25.000 音楽家として貴重な経験をしてきました 00:12:25.000 --> 00:12:30.000 15歳ぐらいの生徒たちがいました 00:12:30.000 --> 00:12:35.000 とてつもない障害を抱えていて 00:12:35.000 --> 00:12:38.000 身体を動かすのも ままならず 00:12:38.000 --> 00:12:41.000 目や耳が不自由だったり… 00:12:41.000 --> 00:12:47.000 彼が 楽器のそばに座ったり 00:12:47.000 --> 00:12:50.000 マリンバの下に横たわる 00:12:50.000 --> 00:12:56.000 そこで パイプオルガンのように弾きます 00:12:56.000 --> 00:12:59.000 ピッタリのスティックがないんですが… 00:12:59.000 --> 00:13:03.000 こんな感じです 00:13:53.000 --> 00:13:54.000 シンプルですが 00:13:54.000 --> 00:14:00.000 彼は私とは全く異なる体験をするでしょう 00:14:00.000 --> 00:14:02.000 私は音の真上なので 00:14:02.000 --> 00:14:05.000 音は 上がってきます 00:14:05.000 --> 00:14:08.000 彼は共鳴管から音を感じるでしょう 00:14:08.000 --> 00:14:18.000 共鳴管がなければ 音はこんなです 00:14:18.000 --> 00:14:22.000 下なら音に包まれます 会場の最前列や 00:14:22.000 --> 00:14:26.000 後ろの何列かでも感じられません 00:14:26.000 --> 00:14:29.000 座っている場所に応じ 00:14:29.000 --> 00:14:33.000 まったく違う音を経験するんです 00:14:33.000 --> 00:14:36.000 もちろん 音を出す人間としては 00:14:36.000 --> 00:14:42.000 まず どんな音を出したいか考えます 00:14:42.000 --> 00:14:45.000 例えば この音… NOTE Paragraph 00:14:51.000 --> 00:14:54.000 聞こえます? 00:14:54.000 --> 00:14:57.000 その通り 触っていませんから 00:14:57.000 --> 00:15:03.000 それでも何かが起こるのを感じ取ります 00:15:03.000 --> 00:15:05.000 木の揺れるのを見て 00:15:05.000 --> 00:15:09.000 葉擦れの音を想像するのと一緒です 00:15:09.000 --> 00:15:11.000 分かります? 00:15:11.000 --> 00:15:15.000 何かを見る時 そこには音がある 00:15:15.000 --> 00:15:19.000 いつもいつも 大きな 00:15:19.000 --> 00:15:24.000 万華鏡の中にいるかのような… NOTE Paragraph 00:15:24.000 --> 00:15:30.000 私の演奏は 自分の経験が基になってます 00:15:30.000 --> 00:15:34.000 楽譜から学ぶのでも 誰かの解釈に従うのでも 00:15:34.000 --> 00:15:39.000 弾く曲のCDを買い集めるのでもありません 00:15:39.000 --> 00:15:45.000 それらは素のままの根源的なものを与えず 00:15:45.000 --> 00:15:51.000 作り上げる過程を 堪能するには不十分なのです 00:15:51.000 --> 00:16:00.000 ホールによっては この強さでも十分でしょう 00:16:09.000 --> 00:16:13.000 別のホールでは全然聞こえないかも… 00:16:13.000 --> 00:16:16.000 だから 条件に合わせて弾き方も 00:16:16.000 --> 00:16:18.000 変えるんです 00:16:43.000 --> 00:16:50.000 分かります? 現代では 音は体全体で感じるものになりました 00:16:50.000 --> 00:16:52.000 特に聴覚障害者の間では… 00:16:52.000 --> 00:16:57.000 この音の扱いの変化は 音楽院や 00:16:57.000 --> 00:17:03.000 養護学校に影響を与えました 治療の手段以外でも… 00:17:03.000 --> 00:17:06.000 音楽の関係者からすると 00:17:06.000 --> 00:17:09.000 もちろん治療目的もありますが… 00:17:09.000 --> 00:17:16.000 この変化で 音響技師はホールの音響設計を考える必要が出てきました 00:17:16.000 --> 00:17:21.000 本当に良い音響の会場は 00:17:21.000 --> 00:17:25.000 世界でも少ないんですよ 00:17:25.000 --> 00:17:31.000 本当に良い会場なら何でもできます 00:17:31.000 --> 00:17:36.000 とても小さい柔らかい音から 厚みのある 00:17:36.000 --> 00:17:41.000 大きい音まで…素晴らしいです 普通は 00:17:41.000 --> 00:17:43.000 ここは良くても あっちはイマイチ… 00:17:43.000 --> 00:17:45.000 あっちは良くても こっちは最悪… 00:17:45.000 --> 00:17:49.000 こっちはヒドくても あっちは…という具合 NOTE Paragraph 00:17:49.000 --> 00:17:54.000 思い通りに弾ける会場に 00:17:54.000 --> 00:17:58.000 出合えたら最高です 00:17:58.000 --> 00:18:01.000 何も細工のない会場に… 00:18:01.000 --> 00:18:08.000 聴覚障害者たちや音楽家の意見を 00:18:08.000 --> 00:18:14.000 音響技師は取り入れています 00:18:14.000 --> 00:18:16.000 興味深いですよ 00:18:16.000 --> 00:18:22.000 ここでは詳細に触れませんが 00:18:22.000 --> 00:18:28.000 音響技師たちは意見を聞くんです 00:18:28.000 --> 00:18:32.000 長年 こう言われてきた人々に 00:18:32.000 --> 00:18:35.000 "音楽がどう分かるの? 聞こえずに?" 00:18:35.000 --> 00:18:39.000 聴覚障害に対する固定観念があります 00:18:39.000 --> 00:18:41.000 視覚障害に対しても 00:18:41.000 --> 00:18:46.000 車椅子に乗っている人は 歩けないと思いがちです 00:18:46.000 --> 00:18:53.000 でも 数歩でも歩ければ 彼らにとっては歩けるということ 00:18:53.000 --> 00:18:57.000 一年後にはもう2歩 00:18:57.000 --> 00:19:00.000 その次の年には もう3歩 NOTE Paragraph 00:19:00.000 --> 00:19:05.000 これはとても大事な考え方です 00:19:05.000 --> 00:19:09.000 だから 聴く時は 00:19:09.000 --> 00:19:17.000 どれだけ聴く力があるか試されます 00:19:17.000 --> 00:19:22.000 身体全体に反響させて 即断はしない 00:19:22.000 --> 00:19:26.000 私は扱う曲の99%が新曲なので 00:19:26.000 --> 00:19:29.000 簡単に言い切れます "この曲は好き" 00:19:29.000 --> 00:19:31.000 "これは好きじゃない" と… 00:19:31.000 --> 00:19:37.000 でも こうした曲にも時間をかけるべきだと気付きました 00:19:37.000 --> 00:19:42.000 曲との相性が良くなかったのかも知れない 00:19:42.000 --> 00:19:47.000 だからといって悪い作品だと言う権利はない 00:19:47.000 --> 00:19:52.000 それに 音楽家であることの利点は 00:19:52.000 --> 00:19:56.000 とても自由なことです 00:19:56.000 --> 00:20:00.000 これが正しいという決まりもない NOTE Paragraph 00:20:00.000 --> 00:20:05.000 ちょっと… 手を叩いてもらえますか? 00:20:05.000 --> 00:20:11.000 手を叩いて雷の音を作って下さい 00:20:11.000 --> 00:20:14.000 雷は分かりますよね? 00:20:14.000 --> 00:20:16.000 音だけじゃありませんよ 00:20:16.000 --> 00:20:21.000 自分の内で雷を聴いて下さい 00:20:21.000 --> 00:20:26.000 それを拍手で表すんです さあどうぞ 00:20:26.000 --> 00:20:33.000 (拍手) NOTE Paragraph 00:20:33.000 --> 00:20:43.000 いいですね! 今度は雪です… 雪を聞いた事は? NOTE Paragraph 00:20:43.000 --> 00:20:44.000 (会場 "ないです") NOTE Paragraph 00:20:44.000 --> 00:20:50.000 じゃあ叩かないで (会場 笑) もう一度… 00:20:50.000 --> 00:20:56.000 もう一度 雪です NOTE Paragraph 00:20:56.000 --> 00:20:58.000 ね? 意識したでしょう? NOTE Paragraph 00:20:58.000 --> 00:21:07.000 では雨を… 悪くないですね NOTE Paragraph 00:21:07.000 --> 00:21:11.000 興味深いのは… 子供たちに 00:21:11.000 --> 00:21:15.000 最近同じ質問をしたんです 00:21:15.000 --> 00:21:19.000 皆さんも見事でした 有難うございます 00:21:19.000 --> 00:21:22.000 でも誰も席を立って 00:21:22.000 --> 00:21:24.000 "じゃあ どう叩こう? "と 00:21:27.000 --> 00:21:30.000 アクセサリーを使ったり 00:21:30.000 --> 00:21:34.000 体の他の部分を使わなかった 00:21:34.000 --> 00:21:39.000 誰も違う叩き方をしなかったですね 00:21:39.000 --> 00:21:43.000 座って両手を使う以外には? 00:21:43.000 --> 00:21:45.000 音楽を聴く時も 00:21:45.000 --> 00:21:49.000 全て耳を通すと思いがちです 00:21:49.000 --> 00:21:53.000 これが音楽の感じ方だと… 違うんです NOTE Paragraph 00:21:53.000 --> 00:21:57.000 雷を感じる時は… 考えるんです 00:21:57.000 --> 00:22:04.000 聴いて聴いて聴くんです さあどうします? 00:22:04.000 --> 00:22:09.000 私の最初のレッスンはこうでした 00:22:09.000 --> 00:22:13.000 スティックを用意し準備万端でした 00:22:13.000 --> 00:22:18.000 こうは言われませんでした "両足を開いて" 00:22:18.000 --> 00:22:24.000 "腕は約90度 スティックはV字で" 00:22:24.000 --> 00:22:27.000 "脇を充分開いて" 00:22:27.000 --> 00:22:29.000 "背筋も伸ばす" とは… 00:22:29.000 --> 00:22:33.000 きっと様々なことを考えてしまい 00:22:33.000 --> 00:22:35.000 身体が硬直し 00:22:35.000 --> 00:22:37.000 上手く叩けなかったでしょう 00:22:37.000 --> 00:22:42.000 代わりにドラムを一週間持ち帰るよう言われました NOTE Paragraph 00:22:42.000 --> 00:22:47.000 "どうしよう? スティックもなしで? " 00:22:47.000 --> 00:22:49.000 スティックは禁止です 00:22:49.000 --> 00:22:53.000 そこで このドラムをじっくり眺め 00:22:53.000 --> 00:22:58.000 つまみやスネアなど 構造を調べました 00:22:58.000 --> 00:23:05.000 裏返したり ドラムの上や周りを叩いたり 00:23:05.000 --> 00:23:11.000 身体もアクセサリーも使いました 00:23:11.000 --> 00:23:13.000 使えるもの全て 00:23:23.000 --> 00:23:26.000 アザだらけになりましたが 00:23:26.000 --> 00:23:31.000 信じ難いほど素晴らしい経験をしました 00:23:31.000 --> 00:23:36.000 どうやったら こんな経験が楽譜から得られます? 00:23:36.000 --> 00:23:40.000 どうやったら教本から得られます? 00:23:40.000 --> 00:23:43.000 結局 教本は使いませんでした 00:23:43.000 --> 00:23:46.000 レッスンでは たとえば 00:23:46.000 --> 00:23:52.000 音楽家ではなくプレイヤーになるための基礎として 00:23:52.000 --> 00:23:56.000 シングルストロークを学ぶものです NOTE Paragraph 00:23:59.000 --> 00:24:06.000 こんな… 少しずつ早くしていきます 00:24:06.000 --> 00:24:09.000 この曲を弾くには? 00:24:09.000 --> 00:24:17.000 …シングルストローク 当時私にこの技術がなかったのは 00:24:17.000 --> 00:24:20.000 まさに先生の意図でした 00:24:20.000 --> 00:24:25.000 成長して正規の学生になって 00:24:25.000 --> 00:24:31.000 いわゆる音大生になると レッスンも変わりました 00:24:31.000 --> 00:24:33.000 教本に沿うようになった 00:24:33.000 --> 00:24:37.000 いつも疑問でした "何と関係あるの?" 00:24:37.000 --> 00:24:41.000 "曲を弾きたい" と言うと "そのために必要だ"と 00:24:41.000 --> 00:24:46.000 曲と通い合うのに なぜそれが必要なのか? 00:24:46.000 --> 00:24:49.000 私は表現したかったのに NOTE Paragraph 00:24:49.000 --> 00:24:51.000 なぜパラディドルの練習? 00:24:55.000 --> 00:25:00.000 スティックを操る目的なんて? 00:25:00.000 --> 00:25:03.000 私には意味づけが必要でした 00:25:03.000 --> 00:25:08.000 それが音楽で語ることに どう関わるのか? 00:25:08.000 --> 00:25:13.000 音楽を通して語ることによって 00:25:13.000 --> 00:25:18.000 あらゆる人に あらゆることを伝えられるんです 00:25:18.000 --> 00:25:21.000 皆さんの内面には立ち入りません 00:25:21.000 --> 00:25:23.000 個人の問題ですから 00:25:23.000 --> 00:25:29.000 それが個人個人の聴き方を決めるんです 00:25:29.000 --> 00:25:35.000 演奏する時の私の感情も 様々なものですが 00:25:35.000 --> 00:25:37.000 必ずしも皆さんに 00:25:37.000 --> 00:25:41.000 同じように感じることは望みません 00:25:41.000 --> 00:25:44.000 次回コンサートに行く時は 00:25:44.000 --> 00:25:51.000 身体を開き 中で響かせてみて下さい 00:25:51.000 --> 00:25:56.000 奏者と同じ体験ではありませんよ NOTE Paragraph 00:25:56.000 --> 00:26:00.000 奏者は音を聴くのに最悪の場所にいます 00:26:00.000 --> 00:26:06.000 スティックがドラムに当たる音や 00:26:06.000 --> 00:26:10.000 鍵盤に当たるマレットや 弦をこする弓や 00:26:10.000 --> 00:26:14.000 吹く時の呼吸が聞こえるんです 00:26:14.000 --> 00:26:16.000 "素"のものなんです 00:26:16.000 --> 00:26:20.000 とても純粋なものでもありますが 00:26:20.000 --> 00:26:24.000 実際の音になる前の段階なんです 00:26:24.000 --> 00:26:30.000 音の誕生から消滅までの過程を意識して 00:26:30.000 --> 00:26:37.000 その全過程を感じてみて下さい 00:26:37.000 --> 00:26:41.000 私もそのようにTEDの全てに触れたかった 00:26:41.000 --> 00:26:46.000 でも着いたのが昨日の夜だったので… 00:26:46.000 --> 00:26:50.000 まだ何か共有できると良いですが… 00:26:50.000 --> 00:26:53.000 それでも参加できて光栄でした 00:26:53.000 --> 00:27:03.000 (拍手)