1 00:00:06,757 --> 00:00:11,499 ヤナ・サブチュックは ロシアの36歳の美容師です 2 00:00:11,499 --> 00:00:16,889 彼女はモスクワから 400キロ離れたオリョールに住んでおり 3 00:00:16,889 --> 00:00:19,039 自分を愛してもいない男と デートをしました 4 00:00:19,039 --> 00:00:21,769 自分が暴力を受けて 殺されるギリギリの所までー 5 00:00:21,769 --> 00:00:24,126 しかしヤナには 助かる可能性はあったのです 6 00:00:24,126 --> 00:00:26,032 11月彼女が警察に電話をして 7 00:00:26,032 --> 00:00:28,659 夫から殺されそうだと言った時 8 00:00:28,659 --> 00:00:32,744 警官は彼女の救いを求める叫びを 馬鹿げた事だと振り払いました 9 00:00:32,744 --> 00:00:37,864 「心配しないで君が殺されたら 私達は遺体を調べに来ますよ」 10 00:00:37,869 --> 00:00:40,463 そんな声が被害者の携帯に 録音されていました 11 00:00:40,463 --> 00:00:43,582 40分後 ヤナは亡くなりました 12 00:00:43,582 --> 00:00:47,842 警官が逮捕を拒否した 正にその男に殴られてのことでした 13 00:00:47,842 --> 00:00:50,746 個人的に 私の国で行われる DVや夫による妻殺し 14 00:00:50,746 --> 00:00:53,999 といったエピソードの前で 私はいつも茫然となります 15 00:00:53,999 --> 00:00:57,572 小学校の最終学年の時の事を 覚えています 16 00:00:57,572 --> 00:00:59,412 大都市に住むようになってから 17 00:00:59,412 --> 00:01:02,483 友人の中には1人きりで 帰宅する人もわずかにいました 18 00:01:02,483 --> 00:01:04,158 特にその中の1人が言いました 19 00:01:04,158 --> 00:01:08,908 母親が1人での帰宅を許さないのは 私達よりわずか2歳年上の 20 00:01:08,908 --> 00:01:11,330 少女の話を聞いていたからです 21 00:01:11,330 --> 00:01:15,091 少女はスポーツセンターから 帰宅途中に殺されたのでした 22 00:01:15,091 --> 00:01:18,765 90歳になる フォーチュナタの事も覚えています 23 00:01:18,765 --> 00:01:21,310 彼女はイタリア南部の 小さな村に住んでおり 24 00:01:21,310 --> 00:01:24,771 夫が自分を殴り続けるのは 当然だと思っていて 25 00:01:24,771 --> 00:01:27,687 結婚して70年経っても 夫の許を離れようとしませんでした 26 00:01:27,687 --> 00:01:31,055 子供達は離婚して欲しいと 望んでいたにも拘らず― 27 00:01:31,055 --> 00:01:33,199 そんな話を聞いた後 28 00:01:33,199 --> 00:01:38,586 私は初めて現実が自分の 期待していた通りではなかったとか 29 00:01:38,586 --> 00:01:41,991 両親や先生達が信じたもの ではなかったと気づきました 30 00:01:41,991 --> 00:01:44,692 つまりジェンダー平等は 必ずしも現実ではなく 31 00:01:44,692 --> 00:01:49,892 暴力の犠牲者は必ずしも援助や保護を 受けるとは限らないという事です 32 00:01:49,892 --> 00:01:51,221 数年前 33 00:01:51,221 --> 00:01:54,623 地元の新聞の見出しに ざっと目を通していると 34 00:01:54,623 --> 00:01:59,403 この問題は世界中のどの国にも 起こると分かったのです 35 00:01:59,403 --> 00:02:04,855 VPC(配偶者暴力相談支援センター)によると アメリカでは毎日3人程の女性が 36 00:02:04,855 --> 00:02:07,189 親しいパートナーに殺されています 37 00:02:07,189 --> 00:02:11,529 パキスタンのような場所では 地域に特有なこととして起きています 38 00:02:11,529 --> 00:02:15,556 記事を見ていると この酷い状況の下では 39 00:02:15,556 --> 00:02:18,765 法律でさえ不公平になり得ると 分かりました 40 00:02:18,765 --> 00:02:22,670 私はロシアで2009年に少なくとも 1万4千人の女性が 41 00:02:22,670 --> 00:02:27,310 家庭内暴力で亡くなったと知り 非常に驚きました 42 00:02:27,316 --> 00:02:30,767 これは国家会議(連邦議会の下院)下にある 社会防衛委員会による情報です 43 00:02:30,767 --> 00:02:33,823 ロシア連邦内務省の公式の統計には 44 00:02:33,823 --> 00:02:38,303 2015年に400万件の 虐待の報告が示されていました 45 00:02:38,303 --> 00:02:43,638 この統計には かなりの数があると見込まれる 未報告の事例が含まれていません 46 00:02:43,638 --> 00:02:49,527 被害者の90%が警察に 暴力事件を通報しないからです 47 00:02:49,527 --> 00:02:51,876 さてこうした犯罪が多い中で 48 00:02:51,876 --> 00:02:56,106 こんにち虐待を罰する 厳格な法律はあると思いますよね? 49 00:02:56,106 --> 00:02:58,741 そうではないのです 50 00:02:58,741 --> 00:03:04,511 2016年には虐待罪に問われると 最長で2年間の禁固刑となりました 51 00:03:04,511 --> 00:03:08,796 しかし2017年に新たな法律が提案され 52 00:03:08,796 --> 00:03:11,628 賛成多数で議会を通過しました 53 00:03:11,628 --> 00:03:15,016 初犯では罰金刑が課され 54 00:03:15,016 --> 00:03:18,336 2回目の犯罪に対しては 刑事責任が重く問われます 55 00:03:18,336 --> 00:03:21,336 しかしその間隔は長くても 1年間なのです 56 00:03:21,336 --> 00:03:22,659 言い換えれば 57 00:03:22,659 --> 00:03:25,710 こんにちロシアの男性は年1回 犯罪と見なされる事なく 58 00:03:25,710 --> 00:03:28,110 妻への暴力が許されているのです 59 00:03:28,110 --> 00:03:30,297 また それに加えて 60 00:03:30,297 --> 00:03:35,227 ロシア正教会や保守的なグループは 伝統的な家族の価値を守る手段として 61 00:03:35,227 --> 00:03:39,761 この法律の正当化に合意しました 62 00:03:39,761 --> 00:03:43,674 この法律の事を初めて聞いた時 私には2つの選択肢がありました 63 00:03:43,674 --> 00:03:48,904 何事もなかったかのようにページをめくるか 又は この問題に関心を持ち 64 00:03:48,904 --> 00:03:51,732 仮に別の国や社会に住んでいて 65 00:03:51,732 --> 00:03:54,929 そんな女性達に会った事が なかったとしても 66 00:03:54,929 --> 00:03:57,359 彼女達の話や恐怖を人々に伝えるかです 67 00:03:57,359 --> 00:04:01,691 統計から分かるようにこれは 自分にも起こり得ることだからです 68 00:04:01,691 --> 00:04:05,411 私はこれを もっと調査することにしました 69 00:04:05,411 --> 00:04:08,201 ロシアに於ける この変化の真の原因が何なのか? 70 00:04:08,201 --> 00:04:11,206 それは何故私や祖国を 巻き込む可能性があるのか? 71 00:04:11,206 --> 00:04:16,756 経済学者がそれを 2017年の記事に書いています 72 00:04:16,756 --> 00:04:21,182 このような問題が露呈したプーチンの3回目の 大統領任期期間中に進められている 73 00:04:21,182 --> 00:04:23,711 国家主導の伝統主義への 転換なのだと述べています 74 00:04:23,711 --> 00:04:27,858 多くのロシア人は今 個人の権利という 自由の観念を大切にしていますが 75 00:04:27,858 --> 00:04:30,957 反対の方向に 動いている人達もいます 76 00:04:30,957 --> 00:04:34,488 このような傾向が多く見られるのは 77 00:04:34,488 --> 00:04:37,108 民主主義が完全には 肯定されていない国々や 78 00:04:37,108 --> 00:04:40,867 権威主義的な指導者が 自分たちの伝統的価値の道徳的優位性を 79 00:04:40,867 --> 00:04:44,032 他国 特に西洋の民主主義国家の前で 80 00:04:44,032 --> 00:04:46,647 証明したがっている国々においてです 81 00:04:46,647 --> 00:04:48,379 法律が承認されてから 82 00:04:48,379 --> 00:04:51,950 暴力の件数は 見かけ上は減少しています 83 00:04:51,950 --> 00:04:55,353 それが今となっては 女性が自分の夫を通報するのは 84 00:04:55,353 --> 00:04:57,098 非常に困難だからです 85 00:04:57,098 --> 00:04:59,602 警官はしばしば被害者を責め 86 00:04:59,602 --> 00:05:02,236 彼女達を 全く助けないか無視します 87 00:05:02,236 --> 00:05:05,851 助けようとする時でさえ 法律によって妨げられるのです 88 00:05:05,851 --> 00:05:08,741 もし女性が暴力を通報出来ても 89 00:05:08,741 --> 00:05:13,159 夫はおそらく妻に 罰金の支払いを強いるでしょう 90 00:05:13,159 --> 00:05:17,353 しかし通報の件数が減る一方で 91 00:05:17,353 --> 00:05:20,626 緊急電話の件数は 実際増えているのです 92 00:05:20,626 --> 00:05:24,292 これは Anna violence crisis center の データによるものです 93 00:05:24,292 --> 00:05:28,774 従ってこの法律は 現状を隠す手段となっています 94 00:05:28,774 --> 00:05:33,489 もし私が家庭内暴力を 受けているロシア女性なら 95 00:05:33,489 --> 00:05:36,528 身を守る為に 何をする事が必要でしょうか? 96 00:05:36,528 --> 00:05:39,948 おそらく何度も 警察に 電話を入れる必要があるでしょう 97 00:05:39,948 --> 00:05:43,169 自分のことを責めない人と話が出来て 98 00:05:43,169 --> 00:05:45,679 始めて暴力を通報出来るようにと 願いながら― 99 00:05:45,679 --> 00:05:50,739 その後私の夫はおそらく私の金で 罰金の支払いをするよう強いるでしょう 100 00:05:50,743 --> 00:05:54,101 それで私を非難しない誰かと 話せるよう願いながら 101 00:05:54,101 --> 00:05:57,746 もう一度警察に 電話する必要が出てきます 102 00:05:57,746 --> 00:06:01,054 それから2度目の暴力を 通報する必要があり 103 00:06:01,054 --> 00:06:05,496 多分その後 夫は逮捕され 私に刑務所から手紙を送ります 104 00:06:05,496 --> 00:06:09,360 そこには釈放されたらすぐに お前を殺したいと書かれています 105 00:06:09,360 --> 00:06:14,330 これらの段階のわずか1つでさえ 何が遂行に必要なのか想像し難いのです 106 00:06:14,330 --> 00:06:20,228 私なら そんな人生の決断を下すでしょうか? そうは思いません 107 00:06:20,228 --> 00:06:23,954 友人達がいつものように 私をすぐに助けてくれるでしょうか? 108 00:06:23,954 --> 00:06:27,365 分かりませんが そうは思いません 109 00:06:27,365 --> 00:06:31,965 このような法律が2018年に未だに 存在するもう一つの理由は 110 00:06:31,965 --> 00:06:36,230 不運にも社会の進歩が必ずしも 科学的進歩のように 111 00:06:36,230 --> 00:06:38,139 直線的だとは限らないからです 112 00:06:38,139 --> 00:06:42,280 私は皆がよくこう言うのを耳にします 「さあ!2018年になった」 113 00:06:42,280 --> 00:06:43,911 それはどういう意味でしょうか? 114 00:06:43,911 --> 00:06:48,209 彼等はこう考えています 「2018年なのだから 皆に人権が与えられており 115 00:06:48,209 --> 00:06:51,301 皆が常に尊重されていて 差別もなく 116 00:06:51,301 --> 00:06:53,872 社会は不断の進歩を遂げている筈だ」と 117 00:06:53,872 --> 00:06:56,712 私も実際にそう願います 118 00:06:56,712 --> 00:06:59,271 科学に於いて もし新たな発見が正しければ 119 00:06:59,271 --> 00:07:01,944 それは次の発見への 基礎となるでしょう 120 00:07:01,944 --> 00:07:04,890 しかし社会は常に 後戻りしているのかもしれません 121 00:07:04,890 --> 00:07:09,490 19世紀のフランスや 他のヨーロッパ諸国でそれは起こりました 122 00:07:09,490 --> 00:07:12,945 ブルボン王朝復古時代には ナポレオン時代に導入された ― 123 00:07:12,945 --> 00:07:15,345 多くの進歩的な法律が 抑圧されたのです 124 00:07:15,345 --> 00:07:21,505 それは今ロシアで起きていて 他のどこでも 起こりうるから 私は危惧するのです 125 00:07:21,505 --> 00:07:26,468 私は被害者が単に数で表される という事実にも耐えられません 126 00:07:26,468 --> 00:07:28,638 なぜなら アナスタシア・ポテンキナという芸術家が 127 00:07:28,638 --> 00:07:31,911 素晴らしい芸術作品のプロジェクトを 128 00:07:31,911 --> 00:07:35,061 全てのDV被害者の為に創設し こう言っているからです 129 00:07:35,061 --> 00:07:38,894 「私は彼女達の為に声を上げようと しているのでは断じてありません 130 00:07:38,894 --> 00:07:42,310 彼女達のことが数字として 表れていないことを憂慮しているのです」 131 00:07:42,310 --> 00:07:46,219 今日私がここにいるのは これが私の信じる世界でもなければ 132 00:07:46,219 --> 00:07:49,553 両親や先生達が教えてくれた世界でも 133 00:07:49,553 --> 00:07:51,346 大好きなYouTuberや 134 00:07:51,346 --> 00:07:55,567 「ロシア女性の危機を救う施設」の創設者が 作ろうと努力している世界でもないからです 135 00:07:55,567 --> 00:08:00,127 今日私はヤナ、ベロニカ スベトラナ、イリナ 136 00:08:00,127 --> 00:08:04,266 マルガリータや 声を上げる事の出来ない 137 00:08:04,266 --> 00:08:07,023 他の女性達の為にここにいるのです 138 00:08:07,023 --> 00:08:08,243 ありがとうございました