0:00:01.200,0:00:04.700 子供の頃 自分には[br]特別な力があると信じていました 0:00:06.920,0:00:08.135 笑っちゃいますよね 0:00:08.160,0:00:09.256 (笑) 0:00:09.280,0:00:11.600 私って本当にすごいんだから[br]と自信満々でした 0:00:11.610,0:00:15.556 褐色肌の人たちの気持ちが[br]わかったからです 0:00:15.590,0:00:19.020 例えば保守的なムスリムである[br]祖父のような人です 0:00:19.360,0:00:24.316 また アフガニスタン人の母や[br]パキスタン人の父のような 0:00:24.330,0:00:28.210 そこまで信仰が深くない[br]リベラル派の人々も理解できました 0:00:28.480,0:00:30.096 それから もちろん 0:00:30.120,0:00:32.595 白人の気持ちだって[br]理解できました 0:00:32.610,0:00:34.560 私の故郷 ノルウェーの白人です 0:00:35.480,0:00:38.156 白人であれ 褐色人種であれ[br]どんな人であっても 0:00:38.180,0:00:39.896 みんなが大好きでしたし 0:00:39.920,0:00:41.246 みんなを理解していました 0:00:41.280,0:00:43.536 その人たち同士は[br]必ずしも理解し合えなくても 0:00:43.560,0:00:44.930 みんな私の仲間でした 0:00:45.640,0:00:48.586 それでも 父は[br]いつも私のことを心配して 0:00:48.606,0:00:52.066 私にこう言い続けました[br]最良の教育を受けたって 0:00:52.086,0:00:55.216 白人とは平等に扱われないと 0:00:55.236,0:00:58.536 賢くなったって[br]差別は受けるだろうし 0:00:58.680,0:01:01.596 認められたいなら[br]有名になるしかない というのが 0:01:01.620,0:01:03.466 父の言い分でした 0:01:03.670,0:01:06.884 7歳の時 父との会話で[br]こんなことまで言われたんです 0:01:08.440,0:01:11.476 7歳の私に向かって 父は 0:01:11.580,0:01:14.816 「認められるにはスポーツか[br]音楽をやるしかないぞ」と言いました 0:01:14.960,0:01:19.336 父は残念ながらスポーツができず[br]音楽をやる羽目になりました 0:01:19.360,0:01:23.696 7歳の時 私のおもちゃと人形は[br]父が残らず かき集めて 0:01:23.730,0:01:25.370 捨ててしまいました 0:01:26.160,0:01:30.016 代わりに与えられたのは[br]安っぽい小さなキーボードと 0:01:30.040,0:01:31.446 (笑) 0:01:31.600,0:01:33.346 そして 歌の稽古です 0:01:33.410,0:01:37.740 何時間も何時間も 毎日欠かさず[br]練習を強いられました 0:01:38.120,0:01:42.436 すぐに 人前で演奏もさせられ[br]お客さんは増えていきました 0:01:42.470,0:01:48.360 面白いことに ノルウェーの多様性を[br]象徴するような存在になりました 0:01:48.760,0:01:50.496 もちろん とても誇らしかったです 0:01:50.520,0:01:53.886 この頃は 新聞にも[br]褐色人種の人が 0:01:53.910,0:01:56.310 好意的に取り上げられるようになり 0:01:56.330,0:01:59.680 自分の特別な力が増しつつあるような[br]実感がありました 0:02:00.990,0:02:03.936 12歳の時 学校からの帰り道に 0:02:03.960,0:02:05.176 少し遠回りをして 0:02:05.200,0:02:08.735 大好きなsalty feet (しょっぱい足)[br]を買いに行きました 0:02:08.928,0:02:10.750 名前はヒドいですが 0:02:11.640,0:02:13.206 大好物でした 0:02:13.230,0:02:17.690 小さな足の形をした[br]しょっぱいリコリスのキャンディーです 0:02:18.120,0:02:23.440 こうやって口に出して説明してみると[br]気持ちの悪いお菓子ですが 0:02:24.320,0:02:26.776 それでも[br]大好きでした 0:02:26.960,0:02:28.896 お店に入る途中で 0:02:28.920,0:02:33.506 大きな白人男性が[br]入り口を塞いでいました 0:02:33.520,0:02:39.416 避けて通ろうとしたら[br]今度は私の前に立ち塞がり 0:02:39.440,0:02:41.410 ジロジロ見てきました 0:02:42.200,0:02:44.236 そして 私の顔に唾を吐きかけ 0:02:44.260,0:02:45.376 「邪魔なんだよ 0:02:45.400,0:02:48.656 黒人のクソガキ[br]パキのクソガキ 0:02:48.680,0:02:50.680 国に帰りやがれ」 0:02:51.600,0:02:54.696 私は完全に恐怖で凍りつき 0:02:54.720,0:02:56.156 その男をじっと見たまま 0:02:56.166,0:02:59.240 怖さのあまり 顔についた唾を[br]拭うことさえできずにいました 0:02:59.910,0:03:01.976 自分の涙が男の唾に[br]混じってもです 0:03:02.000,0:03:04.630 周りを見渡しながら[br]こう願っていました 0:03:04.660,0:03:09.426 今すぐ 誰か大人が駆けつけて来て[br]この男を止めてくれればと 0:03:09.450,0:03:13.720 でも 周りの人は見ないフリをして[br]急ぎ足で通り過ぎて行きました 0:03:14.160,0:03:17.830 私は非常に混乱し[br]こんなことを思っていました 0:03:18.640,0:03:21.936 「白人の仲間たち 何とかしてよ![br]どこにいるの? 何が起こってるの? 0:03:21.960,0:03:24.210 どうして誰も[br]助けに来てくれないの?」 0:03:24.760,0:03:27.016 当然ですが[br]お菓子は買いませんでした 0:03:27.140,0:03:29.310 全速力で家に帰りました 0:03:30.040,0:03:32.260 その時は もう大丈夫だと思いましたが 0:03:32.960,0:03:35.506 時が経ち[br]音楽活動が軌道に乗るにつれて 0:03:35.940,0:03:40.070 褐色肌の人たちからも[br]嫌がらせを受けるようになりました 0:03:41.520,0:03:44.816 両親と同じコミュニティーの[br]一部の男性にとっては 0:03:44.854,0:03:49.800 女性が音楽活動をしたり[br]メディアでもてはやされるなんて 0:03:49.820,0:03:51.790 不名誉だし言語道断だったのです 0:03:53.280,0:03:58.726 間もなく 自分のコンサートで[br]襲撃を受けるようになりました 0:03:58.750,0:04:03.766 あるコンサートでの出来事です[br]舞台から乗り出した私の目に 0:04:03.790,0:04:07.076 最後に映ったのは[br]褐色肌の若者の顔でした 0:04:07.090,0:04:11.316 次の瞬間 私の目をめがけて[br]薬品のようなものが飛んで来て 0:04:11.350,0:04:14.526 ほとんど何も見えなくなり[br]目からは涙が溢れましたが 0:04:14.540,0:04:16.240 それでも歌い続けました 0:04:16.899,0:04:21.680 オスロの街角で 今度は褐色肌の男性から[br]顔に唾を吐かれたこともありました 0:04:22.360,0:04:25.576 誘拐されそうになったことさえあります 0:04:25.700,0:04:27.736 殺しの脅迫は後を絶たず 0:04:27.756,0:04:30.976 髭を生やした中年男性から[br]街角で呼び止められて 0:04:31.000,0:04:33.176 こう言われました[br]「お前が心底憎らしい 0:04:33.200,0:04:35.230 お前のせいで 俺の娘まで 0:04:35.260,0:04:37.060 好き勝手できると思ってるんだ」 0:04:38.610,0:04:41.426 若い男性から[br]警告されたこともありました 0:04:41.460,0:04:44.446 音楽はイスラームの教えに反するし[br]売春婦の仕事だ 0:04:44.480,0:04:47.296 活動を続けるならば[br]レイプしてやる 0:04:47.320,0:04:52.160 そして私のような売春婦が[br]再び生まれないように腹を切り裂いてやるぞと 0:04:53.560,0:04:55.256 私はここでも 非常に戸惑いました 0:04:55.270,0:04:56.969 事態が理解できませんでした 0:04:56.979,0:05:00.899 褐色肌の仲間にも こんな扱いを[br]受けるようになるなんて 一体なぜなの? 0:05:01.560,0:05:04.656 2つの世界の[br]橋渡しになるのではなく 0:05:04.680,0:05:07.680 2つの世界の間の溝に[br]落ちていくような感覚でした 0:05:07.950,0:05:10.590 唾を吐かれて[br]私の力は奪われたのでしょう 0:05:12.560,0:05:14.606 17歳になっても 0:05:14.620,0:05:17.616 殺しの脅迫は後を絶たず[br]嫌がらせも続いていました 0:05:17.640,0:05:20.402 状況があまりにも悪化したので[br]ついに 母が口を開きました 0:05:20.426,0:05:24.156 「もうあなたを守りきれないし[br]安全も保証できないの 0:05:24.170,0:05:25.766 逃げるしか道はないのよ」 0:05:25.786,0:05:31.200 私はロンドンへの片道切符を手にし[br]荷物をまとめて国を去りました 0:05:32.230,0:05:35.856 あの頃 1番辛かったのは[br]誰も何も言ってくれなかったことです 0:05:35.880,0:05:38.500 私のノルウェー脱出は[br]大きく報じられたのに 0:05:39.120,0:05:42.656 褐色肌の仲間も 白人の仲間も[br]誰も何も言いませんでした 0:05:42.800,0:05:44.980 「待って おかしいよ 0:05:46.010,0:05:49.706 この子を応援しようよ 守ろうよ[br]私たちの仲間なんだから」だなんて 0:05:49.720,0:05:51.296 誰も言いませんでした 0:05:51.320,0:05:54.810 それどころか こんな気持ちでした[br]空港の手荷物引取所で 0:05:55.120,0:05:57.976 ベルトコンベアーの上を[br]様々なスーツケースが 0:05:58.000,0:05:59.256 回り続けていますが 0:05:59.280,0:06:01.730 必ず ポツンと1つ残る[br]スーツケースがあります 0:06:01.750,0:06:04.856 誰も持って行こうとしないし[br]所有者も現れません 0:06:04.880,0:06:06.730 そんな荷物みたいでした 0:06:07.110,0:06:10.550 あれほどまでの孤独や喪失感は[br]感じたことがありませんでした 0:06:12.430,0:06:16.360 ロンドンに移住してから[br]結局また音楽活動を再開しました 0:06:17.000,0:06:20.200 国が変わっても 残念ながら[br]同じような状況でした 0:06:20.840,0:06:23.320 ある時 届いた脅迫文は[br]こんな感じでした 0:06:23.350,0:06:27.836 お前を殺して[br]川ができるほどの血を流させてやると 0:06:27.860,0:06:31.256 そして死ぬ前には[br]何度もレイプしてやると 0:06:31.300,0:06:32.696 この頃にもなると 0:06:32.720,0:06:35.176 こんな言葉にはもう[br]慣れっこになっていましたが 0:06:35.200,0:06:39.480 今度は 私の家族までもが[br]脅され始めたのです 0:06:40.760,0:06:46.000 そこで再び 荷物をまとめて[br]音楽を辞め アメリカに移り住みました 0:06:46.520,0:06:47.776 もう うんざりでした 0:06:47.800,0:06:50.416 こんな思いをするのは[br]もう嫌でした 0:06:50.440,0:06:53.096 音楽を選んだのは[br]私ではなく 父なのに 0:06:53.120,0:06:55.930 そのせいで殺されるのは[br]絶対に嫌でした 0:06:58.200,0:07:01.396 なんだか 自分を見失い 0:07:01.430,0:07:03.056 全てを失った気分でした 0:07:03.080,0:07:05.296 でも次にやりたいことは決まりました 0:07:05.320,0:07:08.656 これからの人生[br]どれだけ時間がかかってもいいから 0:07:08.680,0:07:10.336 若者を支援すること 0:07:10.360,0:07:13.256 どんな方法でもいいから 少しでも 0:07:13.280,0:07:14.976 寄り添ってあげることでした 0:07:15.000,0:07:18.326 様々な団体で[br]ボランティアを始めて 0:07:18.340,0:07:22.920 ヨーロッパに住む[br]ムスリムの若者を支援しました 0:07:24.080,0:07:26.130 すると 驚いたことに 0:07:26.150,0:07:31.750 あまりにも多くの若者が[br]苦しみや葛藤を抱えていたのです 0:07:32.440,0:07:35.976 家族やコミュニティーに関する問題を[br]本当にたくさん抱えていました 0:07:36.000,0:07:39.616 そういった環境では[br]子供にとっての幸せや人生は 0:07:39.640,0:07:42.400 大人の名誉や評判に比べて[br]軽視されているようでした 0:07:43.760,0:07:47.800 もしかしたら自分はそこまで孤独でも[br]変でもないのかなと 思い始めました 0:07:48.280,0:07:50.680 私みたいな人は[br]もっといるんじゃないかと 0:07:51.280,0:07:53.496 実は 世間にはあまり[br]理解されていないのですが 0:07:53.520,0:07:57.876 ヨーロッパで育った[br]私のような子供に本当によくあるのが 0:07:57.910,0:08:00.326 自分らしくいられる自由がないことです 0:08:00.340,0:08:02.410 自分らしく 生きさせてもらえないのです 0:08:03.310,0:08:06.550 自分が選んだ人と 0:08:06.790,0:08:10.376 結婚したり交際することは[br]許されません 0:08:10.400,0:08:12.256 人生の進路も 自分で選べません 0:08:12.266,0:08:15.856 ヨーロッパに住むムスリムにとっては[br]これが当たり前なのです 0:08:15.880,0:08:19.200 世界で一番自由な社会にいても[br]束縛を受けています 0:08:19.640,0:08:23.566 人生 夢 将来[br]どれも私たちのものではありません 0:08:23.590,0:08:26.836 親やムスリムコミュニティーの[br]所有物なのです 0:08:26.850,0:08:30.080 若者から数え切れないほどの[br]話を聞きました 0:08:30.880,0:08:33.775 社会で行き場を失い 0:08:33.789,0:08:35.594 周囲の目にはつきませんが 0:08:35.607,0:08:38.510 苦しみを抱えているのです[br]それもたった1人で 0:08:39.520,0:08:43.960 子供たちは強制結婚をさせられ[br]名誉の名の下に暴力や虐待を受けます 0:08:45.280,0:08:48.976 このような若者を支援する仕事を始めて[br]何年か経ってから 0:08:49.000,0:08:51.146 もう逃げるわけにはいかないと悟り 0:08:51.170,0:08:55.766 怖がったり 身を隠しながら[br]残りの人生を過ごすわけにはいかないし 0:08:55.786,0:08:58.420 実際に行動を[br]起こさないといけないと思いました 0:08:59.640,0:09:02.736 私だけでなく 似たような境遇の人々が[br]口を閉ざしたままでは 0:09:02.760,0:09:05.150 こんな悪習が続くだけだとも悟りました 0:09:06.000,0:09:10.496 それで 決めたんです[br]子供の頃の特別な力を呼び起こして 0:09:10.520,0:09:15.216 こういった問題に別の側面から関わる[br]当事者の大人たちに 0:09:15.240,0:09:20.380 家族と生まれた国の間で板挟みになる[br]若者の気持ちを理解してもらおうと 0:09:21.010,0:09:24.480 そこで私は映画を作り始め[br]若者に聞いた話を語り始めました 0:09:24.880,0:09:29.296 もう一つ 理解してもらいたかったのは[br]このような問題に真剣に向き合わないと 0:09:29.320,0:09:31.440 恐ろしい事態に陥ることです 0:09:32.000,0:09:34.620 一作目で題材にしたのは[br]バナズという少女です 0:09:35.440,0:09:38.700 バナズはロンドンに住む[br]クルド系の17歳で 0:09:39.520,0:09:42.320 聞き分けが良く[br]両親の言うことは何でもしました 0:09:42.840,0:09:45.256 何もかもを正しくこなそうとしたのです 0:09:45.330,0:09:47.956 両親が選んだ男性と[br]結婚もしましたが 0:09:47.970,0:09:51.120 夫には日常的に殴られ[br]レイプされました 0:09:51.880,0:09:54.350 家族に助けを求めると[br]こう言われました 0:09:54.380,0:09:56.976 「家に帰って[br]旦那さんにもっと尽くしなさい」 0:09:57.010,0:09:59.856 娘が離婚して出戻るなんて[br]もってのほかだったのです 0:09:59.870,0:10:02.800 当然 家名に泥を塗ることに[br]なりますからね 0:10:03.680,0:10:06.280 夫の暴力はひどく[br]耳から流血するほどでした 0:10:07.200,0:10:12.296 そんな夫の元からやっと逃げ出し[br]自分が選んだ若い男性と 0:10:12.320,0:10:14.136 恋に落ちましたが 0:10:14.160,0:10:16.416 コミュニティーや家族に知れ渡ると 0:10:16.440,0:10:18.060 バナズは行方不明になり 0:10:18.440,0:10:20.340 発見されたのは3ヵ月後 0:10:21.200,0:10:25.380 自宅の下に埋められていた[br]スーツケースの中から発見されました 0:10:28.040,0:10:31.650 首を絞められ 死ぬまで殴られたのです 0:10:32.760,0:10:37.370 実の父親と叔父の命令を受けた[br]3人の従兄弟による犯行でした 0:10:37.960,0:10:40.206 これだけでも酷い事件ですが 0:10:40.220,0:10:46.056 さらに バナズは地元の警察に[br]5回も足を運んで 助けを求め 0:10:46.080,0:10:49.136 家族に殺されそうだと[br]相談に行っていたそうです 0:10:49.160,0:10:52.040 警察は真面目に取り合わず[br]何の対処もしませんでした 0:10:53.080,0:10:54.366 この事件から言えるのは 0:10:54.380,0:10:58.736 あまりにも多くの若者が[br]家族や周囲のコミュニティーの中で 0:10:58.760,0:11:01.906 こうした問題を抱えているにとどまらず 0:11:01.920,0:11:05.520 自分が生まれ育った国でも 0:11:06.640,0:11:10.160 誤解や無関心の憂き目に[br]遭ったりしていることです 0:11:11.760,0:11:16.336 自分の家族に裏切られた若者は[br]社会に拠り所を求めます 0:11:16.440,0:11:18.496 社会が理解してあげないと 0:11:18.500,0:11:19.770 若者は行き場を失います 0:11:21.120,0:11:24.296 この映画の製作中[br]何人かに こう言われました 0:11:24.320,0:11:26.856 「ディーヤ これって[br]単に そういう文化なんだよ 0:11:26.880,0:11:29.111 単に この種の人たちが[br]自分の子供にすることだ 0:11:29.135,0:11:30.785 部外者には何もできないよ」 0:11:31.880,0:11:35.150 殺人は決して私の文化ではありません 0:11:36.280,0:11:37.270 そうですよね? 0:11:37.290,0:11:39.216 私のような見た目で 0:11:39.240,0:11:41.736 似たような生い立ちの[br]若い女性だって 0:11:41.760,0:11:45.896 住んでいる国で[br]誰もが与えられる権利を持ち 0:11:45.896,0:11:48.990 同じ保護を受けられるべきじゃありませんか? 0:11:50.360,0:11:55.096 次に作った映画では[br]イスラム過激派と暴力に 0:11:55.120,0:11:57.976 ヨーロッパに住む[br]ムスリムの若者の一部が 0:11:58.000,0:12:00.220 引き寄せられる理由を[br]理解したかったのですが 0:12:00.880,0:12:02.136 このテーマでは 0:12:02.160,0:12:05.430 自分が一番恐れていたものと[br]向き合うことになりました 0:12:07.040,0:12:08.800 褐色肌で髭の生えた男性です 0:12:10.970,0:12:16.676 人生の大半を こういう男性に[br]怯えながら生きてきました 0:12:17.560,0:12:20.316 人生の大半にわたって[br]恐れてきたタイプです 0:12:20.340,0:12:23.136 心底嫌いだと 思っていました 0:12:23.160,0:12:24.670 それも ずっと長い間です 0:12:25.210,0:12:29.136 それから2年間にわたり[br]犯罪を犯したテロリストや戦闘員 0:12:29.160,0:12:31.736 元過激派に取材をしました 0:12:31.760,0:12:35.196 私も元々知っていた[br]歴然たる事実としては 0:12:35.200,0:12:40.276 宗教や政治問題や[br]植民地時代の爪痕や 0:12:40.290,0:12:44.496 近年に見られる[br]ヨーロッパの外交政策の失敗なども 0:12:44.520,0:12:46.570 全て 背景の一部でしたが 0:12:46.590,0:12:49.916 それ以上に興味を持って探ったのは[br]当事者である人間についてで 0:12:49.940,0:12:51.526 人によってどんな事情があり 0:12:51.546,0:12:55.800 若者の一部がなぜ こうした組織に[br]巻き込まれるのか でした 0:12:57.000,0:13:01.790 本当に驚いたのが 心に傷を負った[br]人間の姿を見いだしたことです 0:13:03.760,0:13:06.216 私が探し求め[br]見つけようとしていたような 0:13:06.240,0:13:07.616 極悪人は見当たらず— 0:13:07.640,0:13:10.836 はっきり言ってその方が[br]スッキリしたでしょうが 0:13:10.850,0:13:12.670 出てきたのは傷ついた人々でした 0:13:13.520,0:13:15.086 バナズと同じように 0:13:15.110,0:13:18.356 過激派に転じた若者も[br]苦しんでいたのです 0:13:18.390,0:13:20.856 家族と生まれた国の違いを 0:13:20.880,0:13:24.400 乗り越えようとして[br]心に傷を負ったのです 0:13:25.720,0:13:29.096 それから[br]過激派組織やテロ組織は 0:13:29.120,0:13:32.576 こうした若者の感情を[br]巧く利用して 0:13:32.600,0:13:36.456 皮肉にも その感情を[br]暴力に向かわせているのです 0:13:36.480,0:13:38.216 「仲間においで」と誘います 0:13:38.230,0:13:41.126 「家族も生まれた国も[br]どちらも捨てなさい 0:13:41.140,0:13:42.786 どちらも受け入れてくれないよ 0:13:42.810,0:13:45.886 家族にとっては[br]お前よりも名誉が大切なんだ 0:13:45.906,0:13:47.136 国にしてみれば 0:13:47.160,0:13:53.140 本物のノルウェー人 イギリス人[br]フランス人は白人だけだ」 0:13:54.040,0:13:57.576 そして若者が欲しくて仕方がないものを[br]与えてやると約束するのです 0:13:57.586,0:14:01.856 重要感 英雄感[br]連帯感や目的だけでなく 0:14:01.880,0:14:04.380 自分たちを愛し 認めてくれる[br]コミュニティーです 0:14:05.200,0:14:08.136 無力に感じている若者も[br]力を持ったような気分になります 0:14:08.260,0:14:13.040 周囲の目につかず 口を閉ざしていた若者が[br]やっと注目され 思いを聞いてもらえるのです 0:14:15.120,0:14:17.716 若者が望むような扱いをしてくれるのは 0:14:17.730,0:14:21.690 私たちではなく こういう組織なのです[br]なぜこうなってしまったのでしょうか 0:14:22.760,0:14:24.336 つまり 0:14:24.360,0:14:27.696 暴力を正当化したり 0:14:27.720,0:14:31.456 容認するつもりはありませんが 0:14:31.480,0:14:35.056 一部の若者が なぜ[br]こうした組織に惹かれるのか 0:14:35.080,0:14:38.240 理解しなければならない[br]と言いたいのです 0:14:39.680,0:14:42.076 こちらをご覧ください 0:14:42.096,0:14:45.450 私の映画に出てきた男性たちの[br]幼少期の写真です 0:14:47.320,0:14:50.300 非常に興味深いことに[br]彼らの多くには共通点があり— 0:14:50.960,0:14:52.706 考えもしなかったことでした— 0:14:52.730,0:14:56.130 父親がいない人や[br]父親に虐待を受けていた人ばかりでした 0:14:56.800,0:14:58.736 そんな若者の中には 0:14:58.760,0:15:02.896 過激派組織内に[br]優しく愛情深い父親的な存在を 0:15:02.920,0:15:04.690 見いだしている者もいたのです 0:15:05.920,0:15:09.200 人種差別的な暴力により[br]残忍になってしまった男性もいました 0:15:09.800,0:15:12.056 その人は[br]被害者意識から逃れるために 0:15:12.080,0:15:13.596 暴力を振るう側になったのでした 0:15:13.606,0:15:18.896 また あることに身に覚えがあり[br]震えあがりました 0:15:18.990,0:15:25.240 17歳でノルウェーを去った時の[br]私が抱いていたのと同じ感情です 0:15:26.160,0:15:29.586 同じような混乱[br]同じような深い悲しみ 0:15:29.600,0:15:33.170 同じように 周りに裏切られ 0:15:34.760,0:15:36.530 孤立しているという感覚です 0:15:38.560,0:15:41.750 2つの文化に引き裂かれ[br]行き場を失ったような気持ちです 0:15:42.760,0:15:45.296 そうは言っても[br]私は暴力を選ばず 0:15:45.320,0:15:48.226 銃の代わりに[br]カメラを選びました 0:15:48.250,0:15:51.416 例の特別な力のおかげです 0:15:51.500,0:15:56.336 暴力ではなく[br]理解することが答えだとわかったのです 0:15:56.360,0:15:58.056 その人を人間として見て 0:15:58.080,0:16:01.816 長所も全て 短所も全て[br]認めることです 0:16:01.890,0:16:03.746 皮肉な現状に終止符を打つこと 0:16:03.770,0:16:06.436 悪者と被害者という二極的な[br]考え方はやめることです 0:16:06.450,0:16:08.566 私自身 ようやく受け入れられた[br]事実があります 0:16:08.570,0:16:12.196 2つの文化は[br]衝突し合うものではなく 0:16:12.220,0:16:15.490 むしろ2つの文化のおかげで[br]自分自身の声を見つけられたことです 0:16:15.840,0:16:18.686 片方だけを選ばなければなんて[br]思わなくなりましたが 0:16:18.700,0:16:21.080 非常に長い時間がかかりました 0:16:21.640,0:16:23.656 今でも[br]本当に多くの若者が 0:16:23.680,0:16:25.696 同じ問題による葛藤を抱え 0:16:25.720,0:16:27.840 たった一人で苦しんでいます 0:16:29.440,0:16:32.130 そんな状況では[br]まるで生の傷口のように 0:16:32.560,0:16:35.676 人によっては[br]イスラム過激派による世界観が 0:16:35.690,0:16:39.060 傷ついた心に入り込んで[br]さらに蝕んでしまうのです 0:16:41.160,0:16:44.300 アフリカに伝わることわざがあります 0:16:45.960,0:16:49.016 「若者が村の一員として[br]迎えられなければ 0:16:49.040,0:16:51.910 村を焼き払って[br]暖かみを感じようとするだろう」 0:16:53.240,0:16:54.830 お願いがあります 0:16:55.760,0:16:58.226 ムスリムの親やコミュニティーの皆さん 0:16:58.240,0:17:00.736 子供に期待を押し付けることなく 0:17:00.760,0:17:03.416 愛情を注ぎ[br]思いやってあげてください 0:17:03.440,0:17:06.030 自分の名誉ではなく[br]子供を選んであげてください 0:17:06.400,0:17:09.444 子供の幸せよりも[br]自分の名誉を優先すると なぜ 0:17:09.464,0:17:12.450 子供が怒りや疎外感を[br]感じるのか理解してください 0:17:12.520,0:17:15.096 子供にとって友達のような[br]存在になってください 0:17:15.117,0:17:16.945 信頼が得られるばかりでなく 0:17:16.950,0:17:19.214 日々の出来事も[br]気軽に話してもらえるようになり 0:17:19.240,0:17:22.280 子供が こうした関係を外に[br]求めなくなります 0:17:22.358,0:17:25.710 過激派に惹かれている[br]若者にも言いたいことがあります 0:17:26.680,0:17:30.450 あなたの怒りを駆り立てているのは[br]苦しみだと気づいてください 0:17:31.640,0:17:35.146 あなたの血を私欲のために[br]利用しようとする偏狭な大人たちに 0:17:35.170,0:17:38.280 抵抗できるような[br]強さを見つけてください 0:17:39.040,0:17:41.070 生きていく術を見つけてください 0:17:41.880,0:17:44.136 あなたにできる最高の復讐は 0:17:44.160,0:17:47.616 幸せで自由な人生を[br]全うすることだと気づいてください 0:17:47.640,0:17:50.280 他の誰でもない自分が決めた人生です 0:17:50.560,0:17:54.490 なぜ ムスリムの若者として[br]自分も死に急ごうとするのですか? 0:17:55.080,0:17:59.490 その他大勢の私たちに問います[br]いつ若者の声に耳を傾けるのでしょうか? 0:18:00.520,0:18:01.776 若者の苦しみを 0:18:01.800,0:18:05.760 もっと前向きな感情に変えられるよう[br]どうすれば支えてあげられるでしょうか? 0:18:06.760,0:18:08.216 自分は世間から嫌われている— 0:18:08.240,0:18:11.016 自分の身に何があっても[br]誰も気にしないし 0:18:11.040,0:18:12.866 誰も認めてくれないという思いとは 0:18:12.880,0:18:15.880 違う感情を抱かせてあげる方法を[br]見つけてあげてください 0:18:17.280,0:18:20.216 ムスリムの若者が死傷したり[br]暴力を振るう側になる前に 0:18:20.240,0:18:25.176 どうにかして 彼らの存在に目を向け[br]認識してあげてください 0:18:25.176,0:18:28.822 このような若者を気にかけ[br]自分たちの同胞として扱ってください 0:18:28.840,0:18:33.656 同じ人種の人が被害を受けた時だけ[br]憤るのはやめてください 0:18:33.680,0:18:38.696 憎しみを寄せ付けず[br]亀裂を埋める方法を見つけてください 0:18:38.720,0:18:42.696 お互い そして若者たちを[br]見限るわけにはいきません 0:18:42.720,0:18:44.856 向こうがこちらに[br]愛想を尽かしたとしてもです 0:18:44.880,0:18:47.106 私たち誰もがこの問題の一部です 0:18:47.140,0:18:52.750 長期的に考えても[br]復讐や暴力では過激派に立ち向かえません 0:18:53.480,0:18:57.256 テロリストの望みは[br]私たちが恐怖のあまり家に閉じこもり 0:18:57.280,0:18:59.456 玄関だけでなく心も閉ざすことです 0:18:59.480,0:19:03.296 そうやって社会に[br]傷を負った若者がさらに増えればいい 0:19:03.320,0:19:06.856 そこから過激派の思想を[br]さらに広めてやろうという目論見なのです 0:19:06.880,0:19:09.576 テロリストの望みは[br]私たちも彼らのように 0:19:09.600,0:19:12.200 憎しみに溢れ 偏狭で残酷になることです 0:19:14.200,0:19:16.656 パリでのテロ事件の翌日 0:19:16.680,0:19:20.110 友人の1人が[br]娘さんの写真を送ってくれました 0:19:20.800,0:19:23.256 白人とアラブ系の2人の少女です 0:19:23.280,0:19:24.640 2人は親友同士です 0:19:25.120,0:19:28.630 こんな光景が[br]過激派の力を奪うのです 0:19:31.240,0:19:34.296 この2人の少女たちに[br]備わった特別な力から 0:19:34.320,0:19:35.906 進むべき道が見えてきます 0:19:35.920,0:19:39.240 私たちが力を合わせて[br]作る必要のある社会です 0:19:40.120,0:19:43.590 若者を受け入れない社会ではなく 0:19:44.480,0:19:46.760 若者を受け入れ 支援する社会です 0:19:47.960,0:19:49.296 ありがとうございました 0:19:49.320,0:19:52.002 (拍手)