「Every Frame a Painting」の
トニーです
今日は過去20年で
最も偉大な人物の話です
日本の映像制作者
今敏(こん さとし)です
彼の作品は知らなくとも
これらのイメージは見たことがあるでしょう
アロノフスキーやノーランに
影響を与えた人物なのです
アニメ好きな人はみな
彼のファンと言えるでしょう
彼は10年で長編映画4本
TVアニメ1本を制作
いずれも首尾一貫して
現代人の生の多重性を扱っています
公と私
画面の中と外
覚醒と夢
いずれの作品にも
現実と空想の境界のぼやけが見られます
今日は今敏監督の
編集技法にだけ注目しましょう
私も編集者として
いろいろなカットを試しています
特に実写ではできないことを
考えています
今敏監督の手法は魅惑的です
よく使われるのはまず
似たシーンをつないだ転換
エドガー・ライトが
ビジュアル・コメディで用いています
「シンプソンズ」もそうですね
バスター・キートンでも
よく現れます
今監督の手法は微妙に違います
彼の原点は
劇場版「スローターハウス5」にあります
あなたがタイムトリップをすれば分かるのよ
ディックやギリアムなど
SFの伝統でもあります
今監督はこの手法を
さらに突き詰めました
「スローターハウス5」には
3タイプの場面転換があります
似たような見た目のマッチ
まったく同じ場所でのマッチ
2つの時間軸から
似た構図を取り出すマッチ
今監督はこれらすべてを用いており
さらには巻き戻したり
ラインをクロスさせたり
TVからズームアウトしたり
空白フレームを入れて
転換させたり
レンズの前に何かを横切らせたり
これはなんて呼べばいいか分かりませんが……
この転換の回数はすごいものがあります
「パプリカ」のオープニングでは
4分で5つの夢を通り過ぎます
そしてそれら全てがマッチカットで
転換していきます
第6シーンは
マッチカットには見えませんが
似た構図のシーンどうしでつないでいます
ちなみに「インセプション」では
最初の15分で4つの夢をつないでいます
マッチカットの数?
1個だけです
最も強力な寄生虫は?
このようなカットは非凡ではありますが
これを常用している人はいないでしょう
「ハズシ」の効果で使われることが
多いのではないでしょうか
最も有名な例はこれらですね
これもそうですね
素晴らしかった
今監督の作品では夢・記憶・悪夢・映画・人生が
相互に影響しあいます
これらの違う世界を
マッチカットでつないでいきます
時にはこうして場面転換を密接させ
あるシーンを認識すると
即次のシーンに移っていきます
これらの場面転換は
まさに驚くべきですね
まばたきをすると
あるシーンを見逃してしまうかもしれません
これらを別にしても
今監督の編集は異才を放っています
省略を多用するのも特徴です
例えばこのキャラは鍵を見ていて
鍵を手に取りそうなのですが
それは写さず次のシーンに移ります
その後他のシーンで……
男が窓から飛び出して
フェードアウトします
そして意味不明なシーンにつながり
夢であることが分かります
そのまま後ろに下がって
先のカットの結果が出ます
殺人シーンでもビルドアップして
カットアウェイします
血みどろの結果を見せるのも
ためらいません
人物の死を描く方法が
特にいいですね
ここでは老人が死に
風車が止まります
しかし実は死んでおらず
風車も回り出します
そしてシーンの最後
風車が止まっているので彼の死が描かれます
ズームアウトからシーンを始める手法も
よく使われています
観客はまず 何が起こっているのかを
理解しなければいけません
このような状況全体を見せる
構図もよく使いますが
じつはこれが人物の視点だったりします
観客は気づかれないうちに
登場人物の世界に入り込んでいるのです
あるイメージを見せて想像させた後
実はまったく違うものを写していることを見せたり
こうして観客の時間・空間の感覚が
主観的なものになっていくのです
また実写では不可能な編集も行います
彼はインタビューで「実写はやらない」と
言っていました
1カットが短すぎるからです
例えば……
このバッグのショットは
わずか6フレームです
比較してみましょう
これが10フレームです
ノートをポケットに入れる仕草は……
10フレームです
実写では……
49フレームです
今監督はまた 場面の情報量を減らし
読み取りやすくしています
ウェス・アンダーソンのような
製作者も同じようなことをしています
視覚的インプットを減らして
読むのを速くするのです
もちろんこれよりも
ずっと速くカットすることはできます
しかしこれではサブリミナルになります
1フレームのカットも出るでしょう
これらはもちろんチープな
エフェクトではありません
人は個人として そして集団として
時間、空間、現実、空想を感じると今監督はいいます
彼のスタイルは
これをイメージと音で表現するものです
この10年間の彼のスタイルを
実写で実現することはできるのでしょうか
イメージからイメージ シーンからシーンへの
変化を再現できるでしょうか
彼はマッドハウスとともにこの旅を歩みました
彼の代表作として
最後の作品を推したいと思います
1分で人々の朝を描いている
「オハヨウ」
さようなら 今敏