[Script Info] Title: [Events] Format: Layer, Start, End, Style, Name, MarginL, MarginR, MarginV, Effect, Text Dialogue: 0,0:00:06.62,0:00:08.34,Default,,0000,0000,0000,,「火を燃やすことは 楽しかった Dialogue: 0,0:00:08.34,0:00:11.14,Default,,0000,0000,0000,,物が飲み込まれ\N黒く変化するのを見るのは Dialogue: 0,0:00:11.14,0:00:13.94,Default,,0000,0000,0000,,格別な喜びだった」 Dialogue: 0,0:00:13.94,0:00:18.84,Default,,0000,0000,0000,,『華氏451度』は炎を見て\N恍惚感に浸るシーンで幕開けしますが Dialogue: 0,0:00:18.84,0:00:21.89,Default,,0000,0000,0000,,やがて何が燃えているのかが\N明らかになります Dialogue: 0,0:00:21.89,0:00:24.39,Default,,0000,0000,0000,,レイ・ブラッドベリの小説では Dialogue: 0,0:00:24.39,0:00:28.30,Default,,0000,0000,0000,,あらゆる生活シーンで書物が禁止され Dialogue: 0,0:00:28.30,0:00:32.18,Default,,0000,0000,0000,,蔵書や読書すら禁じられた世界を\N想像しました Dialogue: 0,0:00:32.18,0:00:37.50,Default,,0000,0000,0000,,主人公モンターグの仕事は\N本を焼き尽くしてしまうことです Dialogue: 0,0:00:37.50,0:00:39.79,Default,,0000,0000,0000,,しかし 彼が自分の仕事に\N疑問を抱くようになると Dialogue: 0,0:00:39.79,0:00:44.68,Default,,0000,0000,0000,,この物語は 自由意志や自己表現\N好奇心が非難を受ける社会で Dialogue: 0,0:00:44.68,0:00:49.88,Default,,0000,0000,0000,,どのように人の心を保つのかという\N重要な問題を提起していきます Dialogue: 0,0:00:49.88,0:00:54.05,Default,,0000,0000,0000,,モンターグの世界では\Nマスメディアが情報を独占しており Dialogue: 0,0:00:54.05,0:00:57.73,Default,,0000,0000,0000,,独自に思考する力を\Nほぼ完全に奪ってしまいます Dialogue: 0,0:00:57.73,0:01:01.17,Default,,0000,0000,0000,,地下鉄では 壁の広告がわめきたて Dialogue: 0,0:01:01.17,0:01:05.85,Default,,0000,0000,0000,,家では 妻のミルドレッドが\N一日中ずっとラジオや Dialogue: 0,0:01:05.85,0:01:10.05,Default,,0000,0000,0000,,三方の壁にはめ込まれた画面を\N視聴し続けています Dialogue: 0,0:01:10.05,0:01:14.24,Default,,0000,0000,0000,,職場では\N灯油の匂いが染みついた同僚たちが Dialogue: 0,0:01:14.24,0:01:19.23,Default,,0000,0000,0000,,タバコをくゆらし ロボット犬に\Nネズミ狩りをさせて遊んでいます Dialogue: 0,0:01:19.23,0:01:23.47,Default,,0000,0000,0000,,アラームが鳴れば\N火トカゲ型の車両で出動し Dialogue: 0,0:01:23.47,0:01:27.05,Default,,0000,0000,0000,,図書館を丸ごと焼き尽くしてしまう\Nこともあります Dialogue: 0,0:01:27.05,0:01:31.40,Default,,0000,0000,0000,,しかし 日々 本に火を放ち\N「黒い蝶」のように火の粉にしているうちに Dialogue: 0,0:01:31.40,0:01:37.27,Default,,0000,0000,0000,,モンターグは 家に隠した禁制品のせいで\N時折 気もそぞろになり Dialogue: 0,0:01:37.27,0:01:40.41,Default,,0000,0000,0000,,そして 次第に自分の仕事に\N疑問を抱くようになります Dialogue: 0,0:01:40.41,0:01:43.63,Default,,0000,0000,0000,,モンターグは 自分が常に\N不安を抱いていることに気付きますが Dialogue: 0,0:01:43.63,0:01:48.03,Default,,0000,0000,0000,,「昔々」と口にするだけでも\N命取りになる世界では Dialogue: 0,0:01:48.03,0:01:52.58,Default,,0000,0000,0000,,自分の気持ちを表現する\N方法がないのです Dialogue: 0,0:01:52.58,0:01:55.31,Default,,0000,0000,0000,,『華氏451度』は監視やロボット工学 Dialogue: 0,0:01:55.31,0:01:59.09,Default,,0000,0000,0000,,VR(仮想現実)で管理された\N世界を描いていますが Dialogue: 0,0:01:59.09,0:02:04.39,Default,,0000,0000,0000,,この視点は 先見の明の現れであるだけでなく\N当時の世相も反映していました Dialogue: 0,0:02:04.39,0:02:09.35,Default,,0000,0000,0000,,この小説は 1953年\Nまさに冷戦時代に発表されています Dialogue: 0,0:02:09.35,0:02:12.84,Default,,0000,0000,0000,,この時代は ブラッドベリの母国である米国で Dialogue: 0,0:02:12.84,0:02:16.15,Default,,0000,0000,0000,,言論統制と国家による厳しい追及で\N膨れ上がった Dialogue: 0,0:02:16.15,0:02:21.25,Default,,0000,0000,0000,,パラノイアや恐怖が\N野火のように広がった時でした Dialogue: 0,0:02:21.25,0:02:23.90,Default,,0000,0000,0000,,この魔女狩りのような考え方は特に Dialogue: 0,0:02:23.90,0:02:28.73,Default,,0000,0000,0000,,共産主義者の疑いをかけられた芸術家や\N作家を精神的に追い詰めました Dialogue: 0,0:02:28.73,0:02:31.93,Default,,0000,0000,0000,,ブラッドベリは この文化弾圧に\N危機感を抱きました Dialogue: 0,0:02:31.93,0:02:35.55,Default,,0000,0000,0000,,彼は これを検閲が広がる\N危険な前触れだと信じており Dialogue: 0,0:02:35.55,0:02:38.92,Default,,0000,0000,0000,,アレクサンドリア図書館の破壊や Dialogue: 0,0:02:38.92,0:02:41.99,Default,,0000,0000,0000,,ファシスト政権での焚書を\N思い起こしたのです Dialogue: 0,0:02:41.99,0:02:45.91,Default,,0000,0000,0000,,彼は このぞっとするような関係を\N紙が燃える温度を書名にした― Dialogue: 0,0:02:45.91,0:02:49.22,Default,,0000,0000,0000,,『華氏451度』で追求しました Dialogue: 0,0:02:49.22,0:02:52.68,Default,,0000,0000,0000,,この温度の正確性については\N疑問が呈されているものの Dialogue: 0,0:02:52.68,0:02:55.01,Default,,0000,0000,0000,,そのことにより この作品の Dialogue: 0,0:02:55.01,0:02:57.76,Default,,0000,0000,0000,,ディストピア小説としての名声が\N揺らぐことはありません Dialogue: 0,0:02:57.76,0:03:03.06,Default,,0000,0000,0000,,ディストピア小説とは 社会にある\N諸問題を切り取り 誇張して Dialogue: 0,0:03:03.06,0:03:07.14,Default,,0000,0000,0000,,それを極限的な設定にした時の\N結末を想像するというものです Dialogue: 0,0:03:07.14,0:03:08.85,Default,,0000,0000,0000,,ディストピア小説の多くでは Dialogue: 0,0:03:08.85,0:03:12.80,Default,,0000,0000,0000,,政府が いやがる国民を無理やり\N締め付けていますが Dialogue: 0,0:03:12.80,0:03:14.97,Default,,0000,0000,0000,,『華氏451度』では Dialogue: 0,0:03:14.97,0:03:17.93,Default,,0000,0000,0000,,モンターグは 人々の無関心こそが Dialogue: 0,0:03:17.93,0:03:20.34,Default,,0000,0000,0000,,現在の体制を生み出したと知るのです Dialogue: 0,0:03:20.34,0:03:23.28,Default,,0000,0000,0000,,政府は 人々の飽きっぽさや Dialogue: 0,0:03:23.28,0:03:25.83,Default,,0000,0000,0000,,くだらない娯楽への渇望を利用し Dialogue: 0,0:03:25.83,0:03:29.36,Default,,0000,0000,0000,,思想が流布することなく\N忘れ去られるようにしただけなのです Dialogue: 0,0:03:29.36,0:03:33.71,Default,,0000,0000,0000,,まず文化が消え その後を想像力や\N自己表現が続いていきます Dialogue: 0,0:03:33.71,0:03:36.40,Default,,0000,0000,0000,,人々の話し方まで\N短絡的になっていきます Dialogue: 0,0:03:36.40,0:03:42.29,Default,,0000,0000,0000,,それは 上司のビーティが\N大衆文化の広がりを話す時のようです Dialogue: 0,0:03:42.29,0:03:47.23,Default,,0000,0000,0000,,「フィルムを早送りだ 急げ\Nカチッ?写真?見ろ 注目 今だ 弾け ここだ Dialogue: 0,0:03:47.23,0:03:52.77,Default,,0000,0000,0000,,そこ 急げ ゆっくり 上 下 イン アウト\Nなぜ どう 誰 何 どこ えっ?ああ! Dialogue: 0,0:03:52.77,0:03:58.48,Default,,0000,0000,0000,,バン!バシ!ブン!ビン!ボン!バン!\Nダイジェストの要約 要約のそのまた要約版 Dialogue: 0,0:03:58.48,0:04:03.63,Default,,0000,0000,0000,,政治問題?1段2行の見出しで十分!\Nどのみち 忘れ去られるさ!」 Dialogue: 0,0:04:03.63,0:04:08.25,Default,,0000,0000,0000,,支えとなるものが何も残っていない\Nこの荒廃した世界では Dialogue: 0,0:04:08.25,0:04:10.70,Default,,0000,0000,0000,,抗うことが難しいことを\Nモンターグは 悟るのです Dialogue: 0,0:04:10.70,0:04:15.01,Default,,0000,0000,0000,,総じて『華氏451度』は\N風前の灯火状態の Dialogue: 0,0:04:15.01,0:04:16.43,Default,,0000,0000,0000,,独自の思想の描写であり Dialogue: 0,0:04:16.43,0:04:19.82,Default,,0000,0000,0000,,社会自体が燃やされてしまうことに\N加担してしまうような Dialogue: 0,0:04:19.82,0:04:21.98,Default,,0000,0000,0000,,社会のたとえ話でもあるのです