1 00:00:19,072 --> 00:00:20,497 みなさん こんにちは 2 00:00:20,667 --> 00:00:25,773 本日は 誰にでも使える シンプルな英語についてお話します 3 00:00:26,583 --> 00:00:29,603 ご覧の通り 私はノンネイティブです 4 00:00:30,642 --> 00:00:32,478 もともとは 英語を話すことも 5 00:00:32,648 --> 00:00:34,613 書くこともできませんでした 6 00:00:34,773 --> 00:00:37,770 でも 今日ここで 自分の仕事や その重要性を 7 00:00:37,940 --> 00:00:41,770 みなさんに英語で伝えることが できています 8 00:00:43,052 --> 00:00:45,762 実際 難しい内容について書くこともできます 9 00:00:45,968 --> 00:00:48,698 私の仕事は「技術」を描写することです 10 00:00:49,542 --> 00:00:55,458 LEDやスマートフォンや他 複雑な構造物について書く仕事です 11 00:00:56,605 --> 00:01:03,070 シンプルな英語 つまり 簡単で平易な英語を 話したり 書いたりすることによって 12 00:01:03,282 --> 00:01:05,912 私のコミュニケーションが 変わりました 13 00:01:06,109 --> 00:01:09,089 そして 私のキャリアがすっかり変わりました 14 00:01:10,727 --> 00:01:14,697 今日のお話を すべてのノンネイティブに 贈りたいと思います 15 00:01:14,886 --> 00:01:16,276 特に 日本人に 16 00:01:16,422 --> 00:01:21,045 そして ネイティブの方にとっても 興味深い話かもしれません 17 00:01:21,225 --> 00:01:24,785 ノンネイティブの私たちが どのように英語で苦戦しているのか 18 00:01:24,990 --> 00:01:27,235 また ネイティブの「高度な英語」 や 19 00:01:27,430 --> 00:01:29,820 ノンネイティブの「複雑な英語」が 20 00:01:30,030 --> 00:01:34,708 シンプルで明快な英語に変わる様子を 見ていただけると思います 21 00:01:36,974 --> 00:01:39,786 私自身の話から 始めさせてください 22 00:01:41,191 --> 00:01:46,619 1993年 私は京都で大学に通っていました 23 00:01:47,239 --> 00:01:54,362 毎日がつまらなく 落ち込んでいて 将来に希望はありませんでした 24 00:01:55,397 --> 00:01:59,727 英語を勉強していましたが 話せませんでした 25 00:01:59,974 --> 00:02:03,774 人生はこんなはずじゃないと思っていました 26 00:02:05,466 --> 00:02:12,476 大学を卒業して 化学薬品を作っている会社に入りました 27 00:02:12,708 --> 00:02:16,532 日本語を英語に翻訳する仕事をしましたが 28 00:02:16,823 --> 00:02:21,713 相変わらず 毎日がつまらなくて やはり落ち込んでいました 29 00:02:22,346 --> 00:02:24,317 仕事が楽しくありませんでした 30 00:02:25,771 --> 00:02:30,926 良い英文がかけず 人生は苦しいと感じていました 31 00:02:34,956 --> 00:02:40,615 2000年 転職して 特許翻訳者になりました 32 00:02:41,703 --> 00:02:44,733 そして技術的な内容について 書きはじめました 33 00:02:45,758 --> 00:02:50,018 LEDランプ技術の発明について 書きはじめました 34 00:02:50,228 --> 00:02:53,533 自動車のスマートキーや 35 00:02:53,753 --> 00:02:57,553 コピー機やデジタルカメラについて 書くようになりました 36 00:02:58,063 --> 00:03:00,023 とても専門的な内容です 37 00:03:00,818 --> 00:03:05,444 そういった専門的な内容について書く中で 38 00:03:05,662 --> 00:03:08,214 気付いたのは 39 00:03:08,424 --> 00:03:13,824 高度で複雑な英語ではなく 40 00:03:14,784 --> 00:03:19,564 シンプルで簡単な英語が必要だ ということでした 41 00:03:19,784 --> 00:03:22,914 難しいことを説明するために 簡単な英語が必要なのです 42 00:03:24,724 --> 00:03:29,515 「テクニカルライティング」という分野の 本を読みはじめました 43 00:03:29,745 --> 00:03:31,815 そこに書かれている考えが気に入りました 44 00:03:32,625 --> 00:03:34,085 例えば 次のようなことです 45 00:03:34,336 --> 00:03:38,396 「能動態を使いましょう」 「肯定形で表しましょう」 46 00:03:38,569 --> 00:03:40,239 「具体的な言葉を使いましょう」 47 00:03:40,451 --> 00:03:44,051 「不要な言葉は除きましょう」 「大げさな言葉を避けましょう」 48 00:03:44,557 --> 00:03:46,597 こういった考えが 気に入りました 49 00:03:47,878 --> 00:03:54,998 "The gas does not have any odor." ではなく 50 00:03:56,401 --> 00:03:58,766 ―odorは「におい」という意味です― 51 00:03:59,536 --> 00:04:03,706 "The gas is odorless." と 52 00:04:04,276 --> 00:04:06,734 肯定形を使って 書くわけです 53 00:04:08,096 --> 00:04:11,727 "It is interesting to note that there are seven steps 54 00:04:11,727 --> 00:04:16,034 that must be completed in order to make a successful presentation." 55 00:04:16,712 --> 00:04:17,868 のような文は短くします 56 00:04:18,300 --> 00:04:23,821 "To make a successful presentation seven steps must be completed." 57 00:04:25,942 --> 00:04:31,418 実際 今の修正は 私の愛読書である スタイルガイドに従ったもので 58 00:04:31,875 --> 00:04:36,262 そこには「空っぽのフレーズを取り除こう」 と書いてあります 59 00:04:36,262 --> 00:04:40,448 "it is interesting…(興味深いことに)" などのことです 60 00:04:41,482 --> 00:04:46,260 興味深いことに 「興味深いことに」 という表現は 61 00:04:46,433 --> 00:04:48,608 「空っぽ」のフレーズだというのです 62 00:04:49,772 --> 00:04:51,696 興味深い考え方だと 思いました 63 00:04:51,886 --> 00:04:53,696 (笑) 64 00:04:54,476 --> 00:04:57,191 ほかにも 「不要な言葉を避けましょう」 65 00:04:57,336 --> 00:05:02,479 「1つの単語で簡潔に書きましょう」 と書かれています 66 00:05:04,505 --> 00:05:09,984 例えば「~するために」と言いたいときに "in order to"を使う人も 67 00:05:10,431 --> 00:05:13,035 多いかもしれませんが 68 00:05:13,181 --> 00:05:16,231 代わりに「to」だけを使おう というのです 69 00:05:16,941 --> 00:05:20,725 私はこの考え方が 気に入りました 70 00:05:22,604 --> 00:05:24,594 もう一つ例をあげます 71 00:05:24,804 --> 00:05:28,954 これは先週 私の生徒が書いた文です 72 00:05:29,224 --> 00:05:33,485 "According to recent study, 73 00:05:33,485 --> 00:05:36,735 it has been shown that stress 74 00:05:36,965 --> 00:05:39,585 can be a trigger of Alzheimer's disease." 75 00:05:39,815 --> 00:05:44,372 ―現代人はストレスが溜まりがちですからね― 76 00:05:45,382 --> 00:05:47,085 これはこれで 素晴らしい文です 77 00:05:47,924 --> 00:05:51,154 文法的にも正しい 高度な文章ですが 78 00:05:51,374 --> 00:05:53,025 私は書き直しました 79 00:05:53,975 --> 00:05:57,137 "Recent research shows 80 00:05:57,137 --> 00:06:01,177 that stress can trigger Alzheimer's disease." 81 00:06:01,987 --> 00:06:05,154 このような作業を繰り返すうちに 82 00:06:05,384 --> 00:06:09,424 一筋の光が見えてきました 83 00:06:10,524 --> 00:06:14,327 私は働きながら 一所懸命勉強して 1年で 84 00:06:14,524 --> 00:06:17,862 工業英語検定試験1級に合格し 85 00:06:18,233 --> 00:06:22,758 幸運にも 首位を取って 86 00:06:22,779 --> 00:06:25,201 文部科学省から表彰されました 87 00:06:25,201 --> 00:06:26,608 ラッキーでした 88 00:06:27,260 --> 00:06:31,115 その頃から 私の状況は変わりはじめました 89 00:06:32,882 --> 00:06:39,651 日本工業英語協会(JSTC)の 専任講師になり 90 00:06:40,239 --> 00:06:46,823 フリーランスの特許翻訳者として 10年働きました 91 00:06:47,311 --> 00:06:49,067 本を2冊出版しました 92 00:06:49,396 --> 00:06:51,509 1冊はテクニカルライティングの基礎 93 00:06:51,699 --> 00:06:54,831 もう1冊は特許翻訳についての本です 94 00:06:55,692 --> 00:06:59,556 そして昨年 京都で会社を設立しました 95 00:07:00,734 --> 00:07:04,112 2000年まで 96 00:07:04,372 --> 00:07:09,862 私は落ち込み 人生に迷っていました 97 00:07:10,092 --> 00:07:12,542 希望がないとさえ 感じていました 98 00:07:13,192 --> 00:07:16,084 本を書く日が来るなんて 夢にも思っていませんでした 99 00:07:16,923 --> 00:07:20,894 人前で話す方法なんて 全く 分かりませでした 100 00:07:22,810 --> 00:07:27,332 「シンプルな英語」が私を変えたのです 101 00:07:28,166 --> 00:07:31,829 「シンプルな英語」が勇気付けてくれたのです 102 00:07:32,384 --> 00:07:33,595 私は諦めませんでした 103 00:07:34,003 --> 00:07:38,382 「シンプルな英語」が 私の全人生を 変えたのです 104 00:07:40,283 --> 00:07:47,222 「シンプルな英語」が他の人にも役立つのでは という思いから 私はここに立っています 105 00:07:50,416 --> 00:07:56,509 さて今から シンプルな英語のコツを みなさんにお伝えします 106 00:07:57,021 --> 00:08:00,009 誰にでも使える簡単なコツです 107 00:08:00,764 --> 00:08:04,271 同時通訳のヘッドセットを付けている人は 108 00:08:04,271 --> 00:08:05,995 外してみてください 109 00:08:05,995 --> 00:08:10,922 「シンプルな英語」の美しさや パワーを感じてください 110 00:08:11,500 --> 00:08:12,750 さて 始めます 111 00:08:15,784 --> 00:08:17,354 「動詞を 生かしましょう!」 112 00:08:18,247 --> 00:08:21,350 動詞 とは「動作」を表す単語です 113 00:08:22,350 --> 00:08:25,197 「笑う」「食べる」「走る」などです 114 00:08:25,844 --> 00:08:30,849 動詞は パワフルです 静的な動詞よりも動きのある動詞を使いましょう 115 00:08:31,362 --> 00:08:37,043 例えば "I am a teacher of English." ではなく 116 00:08:37,474 --> 00:08:41,417 "I teach English." と言い 117 00:08:41,894 --> 00:08:45,051 "I belong to a soccor team." より 118 00:08:45,307 --> 00:08:48,517 "I play soccer" と言いましょう 119 00:08:48,950 --> 00:08:53,967 "It is difficult for me to speak in front of many people." は 120 00:08:55,353 --> 00:08:59,426 "I cannot speak in front of many people." に 121 00:09:00,752 --> 00:09:07,723 "The number of non-natives at TEDxKyotoUniversity ― 122 00:09:07,842 --> 00:09:09,777 ― 世界全体でもそうですけれど ― 123 00:09:09,880 --> 00:09:13,878 ― is greater than the number of natives." 124 00:09:16,016 --> 00:09:17,912 という文は 125 00:09:18,072 --> 00:09:23,822 "Non-natives outnumber natives." 126 00:09:24,582 --> 00:09:27,510 と3語だけで 言えます 127 00:09:28,189 --> 00:09:32,322 「主語」「動詞」「目的語」を並べるのです 128 00:09:33,598 --> 00:09:36,067 「誰かが何かをする」という文で書くのです 129 00:09:39,640 --> 00:09:45,030 また私は 可能な限り 「能動態」を使います 130 00:09:47,597 --> 00:09:51,477 「能動態」では 主語が動作の主体です 131 00:09:51,641 --> 00:09:56,360 「受動態」では 主語は動作の対象です 132 00:09:58,064 --> 00:10:00,641 次の2つの文を比べてみてください 133 00:10:01,196 --> 00:10:05,206 悲しいことですが "In the year 2011, 134 00:10:07,086 --> 00:10:10,499 Tohoku was hit by the great earthquake." 135 00:10:12,202 --> 00:10:16,992 と "In the year 2011, the great earthquake hit Tohoku." 136 00:10:19,393 --> 00:10:26,150 能動態のほうが より直接的で 明快ですし 137 00:10:26,400 --> 00:10:30,300 語数も少ないでしょう 138 00:10:33,449 --> 00:10:36,692 このような書き直しの過程を経て 139 00:10:36,952 --> 00:10:43,602 私の頭の中の そして心の中の 「真っ黒な雲」はすっかり消えました 140 00:10:45,452 --> 00:10:47,374 人生が良くなりました 141 00:10:49,339 --> 00:10:51,341 だから 英語に自信の持てない人に 142 00:10:51,551 --> 00:10:55,856 このアイディアを伝えねば と思ったのです 143 00:10:56,927 --> 00:11:00,376 ブリティッシュ・カウンシルの調査によると 144 00:11:00,645 --> 00:11:07,069 日本のビジネス人口の72%が 英語に自信を持てないと考えているそうです 145 00:11:07,273 --> 00:11:12,377 私の生徒の90%が 英語に自信を持てないと言っています 146 00:11:16,189 --> 00:11:18,185 2006年から 147 00:11:18,185 --> 00:11:24,726 私はこのシンプル英語を伝えるために どこにでも行くようになりました 148 00:11:26,235 --> 00:11:31,400 ビジネスマンに 149 00:11:33,460 --> 00:11:37,090 翻訳者や技術者 150 00:11:38,310 --> 00:11:41,494 そして 大学生にも 教えています 151 00:11:42,234 --> 00:11:44,154 大学生は素晴らしいです 152 00:11:44,884 --> 00:11:48,304 ここ京都大学でも教えています 153 00:11:49,678 --> 00:11:56,877 授業では自分のアイディアを書いたり プレゼンをしてもらいます 154 00:11:57,424 --> 00:12:01,322 彼らの「専門技術」を シンプルな英語で表現してもらいます 155 00:12:01,848 --> 00:12:05,108 学生の飲み込みは驚くほど早いです 156 00:12:05,581 --> 00:12:11,256 彼らの自信を持った笑顔を見ると 感動します 157 00:12:13,054 --> 00:12:19,182 「シンプルな英語のおかげで 自分の コミュニケーションが変わった」と言われます 158 00:12:20,036 --> 00:12:22,888 見てください すごく幸せそうでしょう 159 00:12:25,672 --> 00:12:28,105 さて みなさんへの 最後のメッセージです 160 00:12:28,528 --> 00:12:30,969 シンプルな英語を 使ってみてください 161 00:12:32,140 --> 00:12:33,438 周りの人に話しかけましょう 162 00:12:33,438 --> 00:12:36,431 特に この後はお昼休みですから 163 00:12:36,896 --> 00:12:39,881 シンプルな英語で自己紹介してください 164 00:12:40,651 --> 00:12:43,254 繰り返しますが 難しい言い方をしなくても良いのです 165 00:12:43,524 --> 00:12:49,750 "I am a student at Kyoto University, I belong to a polymer department." 166 00:12:50,090 --> 00:12:55,949 "I work for a manufacturing company for diesel engines. 167 00:12:55,949 --> 00:12:58,475 I am, by the way, an engineer." 168 00:13:01,596 --> 00:13:03,046 みたいに言うよりも 169 00:13:03,656 --> 00:13:10,529 "I study polymers."や "I develop diesel engines." と言いましょう 170 00:13:13,961 --> 00:13:18,980 また ここTEDx会場で 講演者にも話しかけてください 171 00:13:18,980 --> 00:13:21,450 講演者を見かけたら 話しかけてみてください 172 00:13:22,936 --> 00:13:25,618 何度も言いますが 173 00:13:26,268 --> 00:13:33,249 "I was interested in your talk." とか "I found your idea great." 174 00:13:34,160 --> 00:13:35,774 のような言い方をしなくても 175 00:13:35,774 --> 00:13:42,786 "Your talk interests me." と短く言えるのです 176 00:13:44,503 --> 00:13:47,061 「主語」「動詞」「目的語」 を並べるだけです 177 00:13:48,002 --> 00:13:53,707 私にも言ってもらえると嬉しいのですが こんな風に言ってみてください 178 00:13:55,665 --> 00:13:57,680 "I like your idea!" 179 00:13:58,600 --> 00:13:59,869 ありがとうございました 180 00:14:00,008 --> 00:14:02,924 (拍手)