WEBVTT 00:00:01.000 --> 00:00:05.320 Psychonautsというゲームを紹介したい 00:00:05.320 --> 00:00:09.540 2005年に発売した、知る人ぞ知る名作だ 00:00:09.560 --> 00:00:14.460 つまり出来はいいが、買った人は少ない 00:00:15.700 --> 00:00:22.860 だからこの動画を見ている多くの人が このゲームの高評価の理由を知らないはずだ 00:00:22.860 --> 00:00:27.080 インターネットの動画人間として 僕はそれを説明したい 00:00:27.080 --> 00:00:29.600 だが、まずは背景説明だ 00:00:29.600 --> 00:00:33.360 PsychonautsはDouble Fine Productionsの処女作だ 00:00:33.360 --> 00:00:38.340 このスタジオはティム・シェーファーと 彼のLucasArts時代の友人たちによって結成された 00:00:38.340 --> 00:00:42.960 彼はLucasArtsでGrim Fandangoや Day of the Tentacle そしてFull Throttleなどのゲームを作った 00:00:42.960 --> 00:00:47.820 Full Throttleでシェーファーは主人公の バイク乗りベンがペヨーテを使って 00:00:47.820 --> 00:00:52.100 自分の心の中を冒険するパートを入れようとした 00:00:52.100 --> 00:00:57.560 だがルーカスは幻覚という題材を好まなかったので このパートは没になった 00:00:57.560 --> 00:01:03.640 10年ほど後、このアイデアが Psychonautsのために使われることになった 00:01:03.640 --> 00:01:08.540 サーカスから逃げてきた主人公ラズは 他人の心の中に入りこみ 00:01:08.540 --> 00:01:11.460 潜在意識の中を移動する能力を持つ 00:01:11.460 --> 00:01:15.410 だがこれはポイント&クリックアドベンチャー ではない アイテムを使うパズルはあるが 00:01:15.410 --> 00:01:19.229 バンジョー&カズーイのような 3Dアクションだ 00:01:19.229 --> 00:01:25.720 この種類のゲームは 世界設定が適当なものが多いのだが 00:01:25.720 --> 00:01:29.700 Psychonautsの面は全て他人の脳内だ 00:01:29.700 --> 00:01:35.040 だから各ステージはキャラクターの 性格について教えてくれる 00:01:35.049 --> 00:01:40.950 元軍人オリアンダーの心は終わりなき戦場で 00:01:40.950 --> 00:01:45.310 社交的なミア・ヴォルデロの頭の中では 派手なパーティーが繰り広げられている 00:01:45.310 --> 00:01:51.250 ストイックなサイコノートのサーシャ・ナインの 脳内は整理されているので、白黒のキューブだ 00:01:51.250 --> 00:01:57.660 だが深く潜っていくと、抑圧された記憶や 心の重荷が隠されている 00:01:57.920 --> 00:02:02.500 隠された記憶庫を見ると、オリアンダーは 実は軍に入隊したことがなく 00:02:02.500 --> 00:02:06.040 ミアは隠し部屋に悪夢を閉じ込めていることがわかる 00:02:06.040 --> 00:02:12.300 また緊密に敷き詰められたサーシャの心からは 暗い過去の断片が噴き出す 00:02:12.300 --> 00:02:16.620 「ラズ、何をした?制御できていないぞ 滅茶苦茶だ!」 00:02:16.620 --> 00:02:22.480 だがこの三人の脳はチュートリアルにすぎない ジャンプと射撃、浮遊を教わる場所だ 00:02:22.480 --> 00:02:27.440 キャンプを去って湖を越えた先の精神病院に入り 00:02:27.450 --> 00:02:33.769 現実から遊離した人々の心を探索し始める そこからが本番だ 00:02:33.769 --> 00:02:37.460 ファンに特に人気の高いステージが 「ミルクマンの陰謀」だ 00:02:37.460 --> 00:02:41.120 この面はボイド・クーパーの歪んだ心の中だ 00:02:41.120 --> 00:02:43.520 文字通りに歪んでいるのだ 00:02:43.540 --> 00:02:50.600 彼の脳内空間は閑静な郊外地区だが ねじれて傾き、グチャグチャになっている 00:02:50.640 --> 00:02:57.800 ボイドは偏執狂でもあるため、彼の面は カメラや監視する目だらけだ 00:02:57.800 --> 00:03:01.700 さらにトレンチコートを着た政府のエージェントが バレバレな変装をして 00:03:01.700 --> 00:03:04.640 家政婦や配管工、未亡人のフリをしている 00:03:04.640 --> 00:03:09.489 死人は地下にいて、私は花を買った なぜなら悲しいからだ 00:03:09.489 --> 00:03:11.720 ボイドは見られていると感じているので… 00:03:11.720 --> 00:03:15.700 気をつけるんだ!奴らは見ている…いつも… 00:03:15.709 --> 00:03:20.870 ゲームプレイ的には、他のキャラクターに プレイヤーがどう見えているかを判別するのが重要だ 00:03:20.870 --> 00:03:24.780 エージェントをすり抜けるには変装する必要がある 00:03:24.780 --> 00:03:30.320 この面で手に入る透視能力を使えば 他のキャラにどう見られているかがわかる 00:03:30.320 --> 00:03:35.160 ミアの悪夢は隔離されているが ボイドの悪夢は野放しになっていて 00:03:35.160 --> 00:03:38.100 引きずり込まれるとボス戦になる 00:03:38.100 --> 00:03:42.900 また他の面には不健康な思考を抑圧する センサーという敵がいるが 00:03:42.900 --> 00:03:47.040 ボイドの面にはこいつらがいない 彼の心がいかに病んでいるかを示している 00:03:47.050 --> 00:03:52.629 歪んだステージの構成と 他人からの見え方に気を使うゲームプレイ 00:03:52.629 --> 00:03:58.840 そのどちらも、ボイドの心が迫害妄想と 狂った陰謀論に歪められていることを明かしている 00:03:58.840 --> 00:04:02.420 現実世界のボイドはブツブツ言っているだけだが 00:04:02.420 --> 00:04:08.600 ステージをプレイすれば 彼の本当の気持ちを理解できるのだ 00:04:08.600 --> 00:04:12.460 「ミルクマンの陰謀」はPsychonauts最高の面だが 00:04:12.460 --> 00:04:15.220 他のステージにも同様に優れた点がある 00:04:15.239 --> 00:04:21.810 「黒のベルべットピア」では悩める芸術家 エドガー・テグリーの心を探検する 00:04:21.810 --> 00:04:27.180 ここでは暴走する闘牛を相手にするのだが これはテグリーの怒りの象徴だ 00:04:27.180 --> 00:04:32.440 闘牛は狭い街路を走り回っており 当たるとステージの前の部分に戻される 00:04:32.520 --> 00:04:36.220 これはエドガーが心のこの部分と 戦い続けていることを表している 00:04:36.220 --> 00:04:41.389 この面を理解するには 記憶庫を入手する必要がある 00:04:41.389 --> 00:04:47.650 Psychonautsの各ステージには収集アイテムがある それも大量に 多すぎるくらいだ 00:04:47.650 --> 00:04:52.500 空想や心の荷物、心のクモの巣など 00:04:52.500 --> 00:04:57.740 しかし記憶庫は重要性が高い キャラクターについての情報だからだ 00:04:57.740 --> 00:05:03.580 テグリーの記憶庫は、この男の恋人は アメフト選手に奪われてしまったこと 00:05:03.580 --> 00:05:06.850 傷ついたテグリーは次のレスリング試合で 敗北したことを見せてくれる 00:05:06.850 --> 00:05:11.920 この記憶庫を見れば 敵が四人のレスラーである理由がわかる 00:05:11.920 --> 00:05:14.560 彼らはテグリーを責めるチームメイトの象徴だ 00:05:14.560 --> 00:05:20.320 さらにエドガーの高校時代の思い出は 闘牛ドラマの妄想の下に埋められている 00:05:20.320 --> 00:05:25.460 高校の一部が文字通り街の地下水道に 埋まっているのだ 00:05:25.820 --> 00:05:31.060 テグリーが悩みを克服するのを助けるためには アートを利用する必要がある 00:05:31.060 --> 00:05:37.940 絵を扉や魔法の道具として使うのだ これは現実世界でのエドガーの行動を反映している 00:05:37.940 --> 00:05:41.540 あとひとつステージを紹介しよう 「グロリアの劇場」だ 00:05:41.540 --> 00:05:44.820 グロリア・フォン・グートンは落ちぶれた女優で 00:05:44.820 --> 00:05:49.860 双極性障害による激しい気分の変調に苦しんでいる 00:05:49.860 --> 00:05:55.420 ステージは劇場となっており、彼女の 辛い成長物語を再現する演目が流れている 00:05:55.420 --> 00:06:03.720 「お前のママは仕事とボーイフレンドで忙しい お前みたいな醜い娘の相手するヒマはないのだ」 00:06:03.920 --> 00:06:10.360 双極性障害なので、スイッチを叩くと 喜びと悲しみの気分が切り替わる 00:06:10.360 --> 00:06:15.840 これにより演劇の雰囲気が変わり 舞台上に敵が出現するようになる 00:06:15.980 --> 00:06:21.410 面をクリアするには、両方の側面を利用して パズルを解く必要がある 00:06:21.410 --> 00:06:25.480 演劇と舞台のセットを使って屋根裏に上がり 00:06:25.480 --> 00:06:29.600 グロリアの心の中の批評家を倒し 彼女を治療してしまうのだ 00:06:29.600 --> 00:06:35.940 そう、精神病院の各ステージの目的は 先へ進むためにキャラクターの障害を治すことだ 00:06:35.940 --> 00:06:41.640 Psychonautsには 心の病を単純化し過ぎている部分がある 00:06:41.640 --> 00:06:45.850 ステレオタイプに頼っていたり 簡単に治してしまったり、といった点だ 00:06:45.850 --> 00:06:51.349 だがこうしたキャラたちを悪人にしたり ジョークの種にしていないことは注目に値する 00:06:51.349 --> 00:06:57.060 Psychonautsは非常に笑えるゲームだが 精神病院の患者たちは笑いのオチではない 00:06:57.060 --> 00:07:02.940 むしろ彼らの心の中を覗くことで こうした人々に共感できるようになる 00:07:03.100 --> 00:07:06.640 僕が思うに、Psychonautsの良さはこの点にある 00:07:06.680 --> 00:07:12.400 ステージの見た目とその中でのプレイヤーの行動が キャラクターについて学ばせてくれる 00:07:12.400 --> 00:07:15.300 そうしたステージデザインを用いていることだ 00:07:15.300 --> 00:07:20.500 これはカットシーンや会話ツリーで ストーリーを語るよりもずっと面白いと思う 00:07:20.500 --> 00:07:24.479 それぞれの要素が何を表しているのかを考えて 00:07:24.479 --> 00:07:28.819 それがステージに散りばめられた手がかりと どうつながるかを推測するのだ 00:07:28.819 --> 00:07:36.639 プレイヤーは考古学と精神治療、英文学をに 取り組むのだ 巨大魚にパンチしながら 00:07:36.639 --> 00:07:39.630 要するに、ステージデザインは物語を伝えられるのだ 00:07:39.630 --> 00:07:43.569 他人の脳の中に入らなくてもそれは可能だ 00:07:43.569 --> 00:07:49.330 フォート・フロリックのエピソードでも述べたが バイオショックのサンダー・コーエンは 00:07:49.330 --> 00:07:52.280 心の病の描写としては遥かに劣るキャラではあるが 00:07:52.280 --> 00:07:56.220 ステージデザインとプレイヤーの 行動を通じて表現している 00:07:56.220 --> 00:07:58.580 つまりカメラとダンスだ 00:07:58.580 --> 00:08:02.180 多くの優れたゲームはこの種の物語に満ちている 00:08:02.180 --> 00:08:06.320 環境でストーリーを語ったり、システムが メタファーにもなっているといった具合だ 00:08:06.320 --> 00:08:10.220 こうした要素はこれからも扱っていくつもりだ 00:08:10.220 --> 00:08:11.480 だがPsychonautsに戻ろう 00:08:11.480 --> 00:08:15.240 この作品はジャンプアクションとしても パズルゲームとしても理想的な出来ではない 00:08:15.240 --> 00:08:19.400 だがステージデザインとキャラクター描写を統合し 00:08:19.419 --> 00:08:24.800 プレイするだけで複雑なキャラクターたちを 理解できるようにしているところは 00:08:24.800 --> 00:08:29.340 隠れた名作たるにふさわしい要素だと思う 00:08:29.340 --> 00:08:35.950 「ドーガン、あいつらは来るかもしれない けどな、あいつらが探してるのは子供のラズだ」 00:08:35.950 --> 00:08:42.920 「でもあいつらが見つけるのは別の人間 サイコノートのラズってわけさ」 00:08:42.920 --> 00:08:46.100 「それで、あいつらの頭を爆発させるの?」 00:08:46.100 --> 00:08:48.380 「させないよ!お前そんなことするのか?」 00:08:48.380 --> 00:08:52.380 「しないよ!ていうか、まあ…一度だけ」 00:08:52.380 --> 00:08:57.620 Game Maker's Toolkitはクラウドファンディングの ウェブサイト、Patreonによって運営されている 00:08:57.630 --> 00:09:01.300 これがトップレベルの支援者たちだ 00:09:01.300 --> 00:09:05.201 実は、PsychonautsはGamerClubで最初に プレイしたゲームだ 00:09:05.201 --> 00:09:09.990 GamerClubは僕と支援者たちで投票して ゲームを選び、プレイしてデザインを議論する場だ 00:09:09.990 --> 00:09:13.180 参加して意見をくれたみんなに感謝する 00:09:13.180 --> 00:09:17.780 今回はみんなのおかげで 実際よりも賢い気分になれた 00:09:17.790 --> 00:09:20.450 More smartとSmarter、どっちなんだ? こういうところでボロが出る