Psychonautsというゲームを紹介したい
2005年に発売した、知る人ぞ知る名作だ
つまり出来はいいが、買った人は少ない
だからこの動画を見ている多くの人が
このゲームの高評価の理由を知らないはずだ
インターネットの動画人間として
僕はそれを説明したい
だが、まずは背景説明だ
PsychonautsはDouble Fine Productionsの処女作だ
このスタジオはティム・シェーファーと
彼のLucasArts時代の友人たちによって結成された
彼はLucasArtsでGrim Fandangoや Day of the Tentacle
そしてFull Throttleなどのゲームを作った
Full Throttleでシェーファーは主人公の
バイク乗りベンがペヨーテを使って
自分の心の中を冒険するパートを入れようとした
だがルーカスは幻覚という題材を好まなかったので
このパートは没になった
10年ほど後、このアイデアが
Psychonautsのために使われることになった
サーカスから逃げてきた主人公ラズは
他人の心の中に入りこみ
潜在意識の中を移動する能力を持つ
だがこれはポイント&クリックアドベンチャー
ではない アイテムを使うパズルはあるが
バンジョー&カズーイのような
3Dアクションだ
この種類のゲームは
世界設定が適当なものが多いのだが
Psychonautsの面は全て他人の脳内だ
だから各ステージはキャラクターの
性格について教えてくれる
元軍人オリアンダーの心は終わりなき戦場で
社交的なミア・ヴォルデロの頭の中では
派手なパーティーが繰り広げられている
ストイックなサイコノートのサーシャ・ナインの
脳内は整理されているので、白黒のキューブだ
だが深く潜っていくと、抑圧された記憶や
心の重荷が隠されている
隠された記憶庫を見ると、オリアンダーは
実は軍に入隊したことがなく
ミアは隠し部屋に悪夢を閉じ込めていることがわかる
また緊密に敷き詰められたサーシャの心からは
暗い過去の断片が噴き出す
「ラズ、何をした?制御できていないぞ
滅茶苦茶だ!」
だがこの三人の脳はチュートリアルにすぎない
ジャンプと射撃、浮遊を教わる場所だ
キャンプを去って湖を越えた先の精神病院に入り
現実から遊離した人々の心を探索し始める
そこからが本番だ
ファンに特に人気の高いステージが
「ミルクマンの陰謀」だ
この面はボイド・クーパーの歪んだ心の中だ
文字通りに歪んでいるのだ
彼の脳内空間は閑静な郊外地区だが
ねじれて傾き、グチャグチャになっている
ボイドは偏執狂でもあるため、彼の面は
カメラや監視する目だらけだ
さらにトレンチコートを着た政府のエージェントが
バレバレな変装をして
家政婦や配管工、未亡人のフリをしている
死人は地下にいて、私は花を買った
なぜなら悲しいからだ
ボイドは見られていると感じているので…
気をつけるんだ!奴らは見ている…いつも…
ゲームプレイ的には、他のキャラクターに
プレイヤーがどう見えているかを判別するのが重要だ
エージェントをすり抜けるには変装する必要がある
この面で手に入る透視能力を使えば
他のキャラにどう見られているかがわかる
ミアの悪夢は隔離されているが
ボイドの悪夢は野放しになっていて
引きずり込まれるとボス戦になる
また他の面には不健康な思考を抑圧する
センサーという敵がいるが
ボイドの面にはこいつらがいない
彼の心がいかに病んでいるかを示している
歪んだステージの構成と
他人からの見え方に気を使うゲームプレイ
そのどちらも、ボイドの心が迫害妄想と
狂った陰謀論に歪められていることを明かしている
現実世界のボイドはブツブツ言っているだけだが
ステージをプレイすれば
彼の本当の気持ちを理解できるのだ
「ミルクマンの陰謀」はPsychonauts最高の面だが
他のステージにも同様に優れた点がある
「黒のベルべットピア」では悩める芸術家
エドガー・テグリーの心を探検する
ここでは暴走する闘牛を相手にするのだが
これはテグリーの怒りの象徴だ
闘牛は狭い街路を走り回っており
当たるとステージの前の部分に戻される
これはエドガーが心のこの部分と
戦い続けていることを表している
この面を理解するには
記憶庫を入手する必要がある
Psychonautsの各ステージには収集アイテムがある
それも大量に 多すぎるくらいだ
空想や心の荷物、心のクモの巣など
しかし記憶庫は重要性が高い
キャラクターについての情報だからだ
テグリーの記憶庫は、この男の恋人は
アメフト選手に奪われてしまったこと
傷ついたテグリーは次のレスリング試合で
敗北したことを見せてくれる
この記憶庫を見れば
敵が四人のレスラーである理由がわかる
彼らはテグリーを責めるチームメイトの象徴だ
さらにエドガーの高校時代の思い出は
闘牛ドラマの妄想の下に埋められている
高校の一部が文字通り街の地下水道に
埋まっているのだ
テグリーが悩みを克服するのを助けるためには
アートを利用する必要がある
絵を扉や魔法の道具として使うのだ
これは現実世界でのエドガーの行動を反映している
あとひとつステージを紹介しよう
「グロリアの劇場」だ
グロリア・フォン・グートンは落ちぶれた女優で
双極性障害による激しい気分の変調に苦しんでいる
ステージは劇場となっており、彼女の
辛い成長物語を再現する演目が流れている
「お前のママは仕事とボーイフレンドで忙しい
お前みたいな醜い娘の相手するヒマはないのだ」
双極性障害なので、スイッチを叩くと
喜びと悲しみの気分が切り替わる
これにより演劇の雰囲気が変わり
舞台上に敵が出現するようになる
面をクリアするには、両方の側面を利用して
パズルを解く必要がある
演劇と舞台のセットを使って屋根裏に上がり
グロリアの心の中の批評家を倒し
彼女を治療してしまうのだ
そう、精神病院の各ステージの目的は
先へ進むためにキャラクターの障害を治すことだ
Psychonautsには
心の病を単純化し過ぎている部分がある
ステレオタイプに頼っていたり
簡単に治してしまったり、といった点だ
だがこうしたキャラたちを悪人にしたり
ジョークの種にしていないことは注目に値する
Psychonautsは非常に笑えるゲームだが
精神病院の患者たちは笑いのオチではない
むしろ彼らの心の中を覗くことで
こうした人々に共感できるようになる
僕が思うに、Psychonautsの良さはこの点にある
ステージの見た目とその中でのプレイヤーの行動が
キャラクターについて学ばせてくれる
そうしたステージデザインを用いていることだ
これはカットシーンや会話ツリーで
ストーリーを語るよりもずっと面白いと思う
それぞれの要素が何を表しているのかを考えて
それがステージに散りばめられた手がかりと
どうつながるかを推測するのだ
プレイヤーは考古学と精神治療、英文学をに
取り組むのだ 巨大魚にパンチしながら
要するに、ステージデザインは物語を伝えられるのだ
他人の脳の中に入らなくてもそれは可能だ
フォート・フロリックのエピソードでも述べたが
バイオショックのサンダー・コーエンは
心の病の描写としては遥かに劣るキャラではあるが
ステージデザインとプレイヤーの
行動を通じて表現している
つまりカメラとダンスだ
多くの優れたゲームはこの種の物語に満ちている
環境でストーリーを語ったり、システムが
メタファーにもなっているといった具合だ
こうした要素はこれからも扱っていくつもりだ
だがPsychonautsに戻ろう
この作品はジャンプアクションとしても
パズルゲームとしても理想的な出来ではない
だがステージデザインとキャラクター描写を統合し
プレイするだけで複雑なキャラクターたちを
理解できるようにしているところは
隠れた名作たるにふさわしい要素だと思う
「ドーガン、あいつらは来るかもしれない
けどな、あいつらが探してるのは子供のラズだ」
「でもあいつらが見つけるのは別の人間
サイコノートのラズってわけさ」
「それで、あいつらの頭を爆発させるの?」
「させないよ!お前そんなことするのか?」
「しないよ!ていうか、まあ…一度だけ」
Game Maker's Toolkitはクラウドファンディングの
ウェブサイト、Patreonによって運営されている
これがトップレベルの支援者たちだ
実は、PsychonautsはGamerClubで最初に
プレイしたゲームだ
GamerClubは僕と支援者たちで投票して
ゲームを選び、プレイしてデザインを議論する場だ
参加して意見をくれたみんなに感謝する
今回はみんなのおかげで
実際よりも賢い気分になれた
More smartとSmarter、どっちなんだ?
こういうところでボロが出る