♪ [音楽] ♪ [アレックス] 前回の動画では、 利潤が最大化される生産量を 求める方法を学びました。 今回の動画では、平均費用曲線を用いて 利潤がどれくらいか求める方法を見ていきます。 前回の動画でお話しした通り、 平均費用とは生産物1単位あたりにかかる 費用のことを指します。 平均費用とは総費用をQで割った値です。 総費用は、固定費用と変動費用の 二つに分けられますね。 ここから、平均費用の定義を もう少し展開することができます。 平均費用は固定費用を 供給量Qで割った値と 変動費用をQで割った値の合計です。 先ほどの定義より 使いやすくなってきました。 典型的な平均費用曲線の形を 想像しやすくなりました。 固定費用はQが変わっても一定の値ですね。 だから「固定」費用なのです。 なので、Qの値が小さい時、 例えば固定費用を100とした時に Qの値が小さければ、 この分数の値は大きくなります。 例えば100を1で割った時のように。 しかし、Qの値が大きくなるにつれ、 固定費用をQで割った値は どんどん小さくなります。 Qが10だとしたら、 100÷10で10になります。 なので、この分数は100から どんどん小さくなるのです。 Qの値が大きくなるにつれ、 分数は小さくなるのです。 一方、変動費用は、 生産量が増えると、増加します。 加えて、限界費用曲線でも見たように、 変動費用は生産量よりも、 より急激に増加します。 どういうことが起きるかというと、 変動費用をQで割った値は ある時点からどんどん大きくなるのです。 平均費用は、一方は増加し、一方は減少する、 二つの作用からなっているのです。 Qが小さいうちは、減少する 作用の方が強く働きます。 しかし、Qが大きくなると、 増加する作用の方が強くなり、 平均費用は増加するのです。 つまり、典型的な平均費用曲線は、 最初に減少していきますが、 ある時点から増加に転じるのです。 そういう具合の線を描いてみましょう。 これは典型的な限界費用曲線です。 そしてこれが限界収益曲線です。 価格と同じ曲線です。 利潤が最大になるのは、 限界収益が限界費用と同値になる時ですね。 これが平均費用曲線です。 高いところから始まって、 どんどん下に落ちていきます。 そしてある時点から増加していきます。 心に留めておくべき点として、 平均費用が最小の時は、 限界費用曲線と交わる点だということです。 平均費用曲線と限界費用曲線の交点が 平均費用曲線の最小値なのです。 数学的な内容になりました。 もう少し直感的な説明も加えましょう。 費用の代わりに、成績の話をしましょう。 成績の平均と限界の話です。 あなたの試験の平均点が80点だとします。 結構いい成績です。 でも、次の試験の成績は、 60点、平均より低い点です。 すると、平均はどうなるでしょうか? 平均点は下がります。 限界点が平均点より低い時、 平均点は減少傾向にあるのです。 今度は、平均点が80点だったとして、 次の試験で90点を取ったとします。 平均点はどうなりますか? 平均点は上がります。 限界点が平均点より高い場合、 平均点は上昇傾向にあります。 今度は、平均点が80点だったとして、 次の試験で80点を取ったとします。 限界点が平均点と同値の場合、 平均点は変わりません。 限界費用と平均費用で起きることは、 限界点と平均点で 起こったことと変わりません。 限界費用が平均費用より低い場合、 平均費用は減少します。 限界費用が平均費用より高い場合、 平均費用は上昇します。 限界費用が平均費用と同値の場合、 平均費用は変わりません。 つまりこれが、平均費用曲線の 最小値にあたります。 前回の動画では、平均費用曲線を使って 図の上で利潤を求めることが できると言いました。 この図を少し変えるだけで、 利潤を求められるようになります。 利潤πは総収益TRから総費用TCを引いた値で、 総収益TRは価格Pに生産量Qを掛けた値。 覚えていますか? 平均費用ACは総費用TCを生産量Qで割った値、 これも知っていますね。 総費用TCは平均費用ACに生産量Qを掛けた値です。 先ほどの知識を整理して、 これを求めてみましょう。 平均費用ACは総費用TC÷生産量Q この両辺にQを掛けます。 この二つの式を利潤の式に代入しましょう。 すると、利潤πは、 総収益TR、つまり、 価格P×生産量Qから、 総費用TC、つまり、平均費用AC×生産量Q を引いた値となります。 各項をQでまとめてみましょう。 すると、利潤πは (価格P−平均費用AC)×生産量Q で表せます。 この式に出てくる値は全て、 この図から求められるので、 非常に便利です。 価格Pはここ、 平均費用ACは、利潤最大の 生産量の時の平均費用です。 書き入れましょう。 価格Pはここ、 平均費用ACは、利潤最大の 生産量の時の平均費用です。 平均費用が利潤最大の 生産量にある時の利潤は この緑の部分です。 (価格P−平均費用AC)×生産量Qです。 これで、図を用いて、 利潤がどれくらいか 求めることに成功しました。 別の図でも試してみましょう。 新しい平均費用曲線です。 前回言った通り、利潤を最大化しても もうけが出ているとは限りません。 損失を最小化することが次善の策、 という場合もあるのです。 損失を受ける場合もあるのです。 価格が$17より小さいとしましょう。 市場価格と限界収益は 同じですね。 企業はどのようにして 利潤を最大化できるのでしょうか。 限界収益が限界費用と同値の時の 生産量を選択するのでした。 今回の場合、その生産量は1です。 では、利潤はどれくらいでしょうか。 利潤πの求め方を覚えていますか? (価格P−平均費用AC)×生産量Qですね。 今回の生産量は 利潤最大時の1ですから、 価格Pは平均費用ACよりも 小さくなります。 ということは、価格P−平均費用ACは マイナスになります。 損をするということです。 図によると、採算が取れる時の 価格は$17です。 平均費用曲線の最小値も$17ですね。 つまり、企業が利益を出すためには、 平均費用曲線の最小値の分だけ 生産する必要があるのです。 価格が$17より小さければ、 限界費用と同値の時に 利潤が最大化されていると言え、 価格はどの時点でも 平均費用より小さいので、 限界費用曲線より下の部分は、 利潤最大の時の生産量であっても、 損失が出るというわけです。 ただ、価格が$17以上、つまり、 平均費用曲線の最小値以上であれば、 価格が限界費用と同値になります。 価格が限界費用と同値になる時の 生産量を選択すればよいのです。 価格は平均費用より大きくなるので、 利益が出ます。 平均費用曲線の最小値、 この表では$17を、 損益分岐点と言います。 価格が平均費用曲線の 最小値よりも少なければ、損失が出ます。 価格が平均費用曲線の 最小値以上であれば、利益が出ます。 企業の産業への参入・退出は どのタイミングがいいのでしょうか? 長期的な話をすると、 企業が参入するのは 価格が平均費用以上の時です。 価格が平均費用以上であれば、 参入すれば利潤が得られます。 企業の目的は利潤の追求です。 企業は利潤が得られるときに、 参入します。 企業が退出するのは、 価格が平均費用曲線よりも小さい場合です。 この場合、損失が出てしまうので、 企業は退出という行動をとります。 価格が平均費用曲線と同値、 つまり、平均費用曲線の 最小値と同値の時、利潤はゼロなので、 企業にとって、参入・退出の インセンティブはありません。 ここで疑問に思う方もいるでしょう。 利潤がゼロなのに、 企業はなぜ留まるのでしょう? 利潤ゼロというのは、つまり、 市場価格に設定することで、 労働力や資本、機会費用など全ての費用を、 賄うことが出来ているという意味です。 言ってみれば、利潤ゼロというのは、 みんなが満足している状態です。 利潤ゼロというのは、一般的な感覚でいう 「利益が出ている」のと同じ状態なのです。 経済学者の言う「利潤ゼロ」とは 利益が出ている状態だという 理解をして構いません。 企業の参入・退出についてもう一点。 価格が平均費用より 小さくなったからといって、 即座に退出すべきである とは限りません。 価格が平均費用以上になった時の 参入も同じです。 なぜかというと、参入・退出にも 費用がかかるからです。 例えば、今、油の価格が 平均費用以上であるとします。 あなたは油井を所有しています。 参入すべきでしょうか? 参入すべきとは限りません。 参入するとなれば、 油井を掘らなくてはいけません。 地中深く掘る油井の掘削は、 文字通り埋没費用になります。 埋没費用とは、一旦発生すると、 回収できない費用のことです。 つまり、参入を選択して、 油井を掘削すれば、 後々退出するときに、 掘削費用が戻ってこないということです。 参入費用を回収できるくらいの期間、 油の価格が平均費用以上で あり続ける保証がなければ、 参入すべきではないということです。 価格が平均費用より 少し多くなったからと言って、 即座に参入に飛びつけば いい訳ではないのです。 参入費用を回収できるだけの期間、 価格が平均費用以上であることが 期待できないといけないのです。 同様に、退出費用というのもあります。 原油産業から退出するときに、 油井にセメントを流し込むなどして 閉鎖する必要があります。 価格が平均費用より小さくなった時は、 すぐに退出を決める前に、 少し耐えた方がいい場合もあります。 退出を選択するのは、 油の価格が長期間に渡って 平均費用よりも少なくなると 踏める場合に限るべきです。 油の価格が少しの間平均価格より小さくなって、 あとで平均価格以上になれば、 長期的な利潤は期待できます。 企業の参入・退出には 様々な要素が絡んできます。 即時的な利潤だけではなく、 長期的な利潤についても 考える必要があるからです。 とはいえ、そこまで複雑ではありません。 要するに、企業は利潤を追求し、 損失を避けようとします。 なので、価格が平均費用以上であって、 利潤が得られるときに企業は参入し、 平均費用より少ないときに 企業は退出するのです。 ありがとうございました。 [告知] 自分の知識を確認したい方は、 「練習問題」をクリックしてください 次の動画を見たい方は、 「次の動画」をクリックしてください。 ♪ [音楽] ♪