WEBVTT

00:00:00.249 --> 00:00:02.515
今日は 私にとって
特別な日です

00:00:02.539 --> 00:00:04.660
実は 誕生日なんです

NOTE Paragraph

00:00:04.684 --> 00:00:08.657
（拍手）

NOTE Paragraph

00:00:08.681 --> 00:00:12.452
本日は 誕生会にお越しいただき
ありがとうございます

NOTE Paragraph

00:00:12.452 --> 00:00:13.313
（笑）

NOTE Paragraph

00:00:13.337 --> 00:00:18.123
でもパーティーを開くと
必ず ぶち壊す人がいますよね

NOTE Paragraph

00:00:18.147 --> 00:00:19.219
（笑）

NOTE Paragraph

00:00:19.243 --> 00:00:20.732
私は物理学者です

00:00:20.732 --> 00:00:24.783
今回はもう一人 会をぶち壊してもらう
物理学者を呼びました

00:00:24.807 --> 00:00:29.369
アルベルト・アインシュタインです
こんなことを言っています

00:00:29.393 --> 00:00:35.720
「科学において 30歳までに
多大な貢献をしていない者は

00:00:35.720 --> 00:00:37.406
その後も しない」

NOTE Paragraph

00:00:37.406 --> 00:00:38.262
（笑）

NOTE Paragraph

00:00:38.286 --> 00:00:40.626
ネットで調べていただかなくとも
ご覧のとおり―

00:00:40.650 --> 00:00:42.221
私は30歳を超えてます

NOTE Paragraph

00:00:42.245 --> 00:00:43.661
（笑）

NOTE Paragraph

00:00:43.685 --> 00:00:47.291
アインシュタインはつまり
こう言ってるんです

00:00:47.315 --> 00:00:49.703
私は 科学者としては

00:00:49.703 --> 00:00:51.576
もう終わっている と

00:00:52.078 --> 00:00:57.664
幸い 私は仕事で
それなりに運がありました

00:00:58.132 --> 00:01:01.954
28歳ごろ ネットワークに
強い興味を持ち

00:01:01.978 --> 00:01:06.054
数年後には 重要な論文をいくつか
出すことができました

00:01:06.078 --> 00:01:10.175
スケールフリーネットワークの
発見を報告し

00:01:10.199 --> 00:01:14.777
そこからネットワーク科学と呼ばれる
新しい分野が誕生しました

00:01:14.801 --> 00:01:18.479
ご興味があれば ネットワーク科学で
博士号を取得することもできます

00:01:18.503 --> 00:01:20.531
ブダペストやボストンで取れますし

00:01:20.555 --> 00:01:23.073
世界中でネットワーク科学を
学ぶことができます

NOTE Paragraph

00:01:23.466 --> 00:01:25.061
その数年後

00:01:25.085 --> 00:01:28.315
最初はサバティカルとして
ハーバード大学に移りました

00:01:28.339 --> 00:01:31.431
そこで別タイプのネットワークに
興味を持ちました

00:01:31.455 --> 00:01:34.482
体内にあるネットワークです

00:01:34.506 --> 00:01:38.232
遺伝子とタンパク質と代謝物質の
関わり合いや

00:01:38.256 --> 00:01:40.749
病気との繋がりについてです

00:01:41.368 --> 00:01:45.960
これが医学において
重要な起爆剤となりました

00:01:45.984 --> 00:01:49.963
ハーバード大学の
ネットワーク医学研究所(CDNM)では

00:01:49.987 --> 00:01:53.382
300名以上の研究者が
この考えを活かし

00:01:53.406 --> 00:01:56.683
患者の治療と 新たな治療法の
開発に取り組んでます

NOTE Paragraph

00:01:57.457 --> 00:01:59.227
そして数年前

00:01:59.251 --> 00:02:02.771
私は このアイデアと
ネットワークの専門知識を

00:02:02.771 --> 00:02:04.983
別のことに活かそうと
思いました

00:02:05.007 --> 00:02:07.329
「成功」を解明することです

00:02:07.704 --> 00:02:08.914
なぜか？

00:02:08.938 --> 00:02:10.833
こう考えたからです

00:02:10.833 --> 00:02:14.620
成功は ある程度 自分が属する
ネットワークによって決まり

00:02:14.644 --> 00:02:18.801
それが追い風にも
向かい風にもなり得る と

00:02:18.925 --> 00:02:23.167
そこで 我々の知識や
ビッグデータや専門性を活かし

00:02:23.167 --> 00:02:28.160
成功が起こる過程を定量化する
ネットワークを作れないかと考えました

NOTE Paragraph

00:02:28.404 --> 00:02:29.746
これがその結果です

00:02:29.770 --> 00:02:32.717
美術館とギャラリーのネットワークです

00:02:32.741 --> 00:02:34.723
互いの繋がりを示してます

00:02:34.806 --> 00:02:38.861
昨年 作った
このマップを使えば

00:02:38.885 --> 00:02:43.733
とても正確に 芸術家の成功を
予測することができます

00:02:43.757 --> 00:02:48.068
その人の最初の５回の展覧会を
教えてくれれば分かります

NOTE Paragraph

00:02:49.404 --> 00:02:52.110
とはいえ 成功について考えるにつれ

00:02:52.134 --> 00:02:55.201
ネットワークが全てではないと
分かりました

00:02:55.225 --> 00:02:58.031
成功はもっと多面的です

00:02:58.145 --> 00:03:01.326
成功するために必要な要因の一つは

00:03:01.326 --> 00:03:02.586
実力ですよね

00:03:02.610 --> 00:03:06.114
では実力と成功の違いを
考えましょう

00:03:06.355 --> 00:03:08.612
実力とは 何をするかということ

00:03:08.612 --> 00:03:11.518
どれだけ速く走るか
どんな絵を描くか

00:03:11.542 --> 00:03:13.903
どんな論文を発表するか など

00:03:13.903 --> 00:03:16.449
一方で 私たちの仮の定義では

00:03:16.473 --> 00:03:19.402
成功とは その人が
実力で為したことを

00:03:19.402 --> 00:03:22.314
コミュニティがどう
受け止めるかということ

00:03:22.338 --> 00:03:26.470
周りがそれをどう認め
どう報いるか です

00:03:26.494 --> 00:03:27.676
言い方を変えれば

00:03:27.700 --> 00:03:32.866
実力は本人に関することですが
成功はみんなに関することだということです

00:03:33.392 --> 00:03:36.726
これは研究する上で
大事な発想の転換でした

00:03:36.750 --> 00:03:42.748
成功は コミュニティが与える
集合的な尺度だと定義した瞬間から

00:03:42.748 --> 00:03:44.608
測定可能になったからです

00:03:44.608 --> 00:03:48.896
コミュニティの中にあるので
いろいろデータを取れる場所があります

00:03:48.896 --> 00:03:54.260
私たちが学校に行き
運動や練習をするのは

00:03:54.260 --> 00:03:57.831
実力が成功に繋がると
信じているからです

00:03:57.832 --> 00:03:59.847
でも こうして探求してみて

00:03:59.871 --> 00:04:03.708
実力と成功は
全く異なるものだと分かりました

00:04:03.708 --> 00:04:06.486
数学的な観点からするとそうです

00:04:06.486 --> 00:04:07.861
ご説明しましょう

NOTE Paragraph

00:04:08.329 --> 00:04:13.706
こちらは世界最速の男
ウサイン・ボルト選手です

00:04:13.832 --> 00:04:17.742
出場する試合は
ほぼ全て勝ちます

00:04:18.393 --> 00:04:20.202
彼が世界最速と分かるのは

00:04:20.202 --> 00:04:22.752
ストップウォッチで
計測できるからです

00:04:22.776 --> 00:04:26.895
興味深いのは
彼が勝つとき

00:04:26.919 --> 00:04:32.421
圧倒的な大差で
勝つわけではないということ

00:04:32.445 --> 00:04:36.964
最大でも１％ほど
２位より速いだけです

00:04:37.631 --> 00:04:41.103
しかも それだけではなく

00:04:41.103 --> 00:04:44.016
彼でも私の10倍速くは
走れないんです

00:04:44.016 --> 00:04:46.737
へなちょこランナーの この私より

NOTE Paragraph

00:04:46.737 --> 00:04:47.568
（笑）

NOTE Paragraph

00:04:47.592 --> 00:04:51.094
実力の測定ができるたびに

00:04:51.118 --> 00:04:53.168
面白いことに気づきます

00:04:53.192 --> 00:04:55.703
それは 実力は有限だということ

00:04:55.727 --> 00:04:59.484
つまり 人間の実力に
大した違いはなく

00:04:59.508 --> 00:05:02.940
狭い範囲内で異なるだけです

00:05:02.964 --> 00:05:06.243
違いを測るには
高精度の計測器がいるほどです

00:05:06.267 --> 00:05:09.435
まあまあの人とトップの人の
見分けがつかないわけではなく

00:05:09.459 --> 00:05:12.192
トップを見分けるのは
とても難しいということです

00:05:12.216 --> 00:05:19.088
しかも ほとんどの人は 実力を
正確に計測できない分野で働いてます

NOTE Paragraph

00:05:19.088 --> 00:05:20.742
実力は有限です

00:05:20.766 --> 00:05:24.162
実力に関して
私たちに大差はありません

00:05:24.162 --> 00:05:25.959
では 成功はどうでしょう？

00:05:25.995 --> 00:05:28.925
分野を変えて
本はどうでしょう

00:05:28.949 --> 00:05:34.344
作家の成功を測る方法の一つは
読者の数ですね

00:05:34.662 --> 00:05:39.072
私は2009年に
前作の本を出しました

00:05:39.096 --> 00:05:40.998
ヨーロッパで
編集者と話していて

00:05:41.022 --> 00:05:43.754
ライバルは誰か
気になりました

00:05:44.253 --> 00:05:46.988
強者ぞろいでした

00:05:47.012 --> 00:05:48.451
その週に出たのは―

NOTE Paragraph

00:05:48.451 --> 00:05:49.229
（笑）

NOTE Paragraph

00:05:49.253 --> 00:05:52.294
ダン・ブラウンの
『ロスト・シンボル』や

00:05:52.294 --> 00:05:57.269
ニコラス・スパークスの
『ラスト・ソング』でした

00:05:57.293 --> 00:06:00.105
これらの本を比べても

00:06:00.105 --> 00:06:02.822
実力に関しては
その性質上

00:06:02.822 --> 00:06:05.304
そんなに違いがある
わけではありません

00:06:05.304 --> 00:06:06.579
ですよね？

00:06:06.603 --> 00:06:11.185
ニコラス側が
もう少し頑張っていたら

00:06:11.185 --> 00:06:13.017
１位になれたかもしれません

00:06:13.041 --> 00:06:16.499
１位になるのは
ほとんど偶然ですから

00:06:16.499 --> 00:06:19.639
そこで数字を見ることにしました
私はデータ人間なので

00:06:19.663 --> 00:06:23.981
ニコラス・スパークスの
売上はどうだったか

00:06:24.005 --> 00:06:26.059
最初の週末で なんと―

00:06:26.083 --> 00:06:29.058
10万部以上を
売り上げていました

00:06:29.082 --> 00:06:30.787
すごい数です

00:06:30.811 --> 00:06:34.207
ニューヨーク・タイムズの
ベストセラーリストの１位でも

00:06:34.231 --> 00:06:36.341
１週間に１万部くらいです

00:06:36.365 --> 00:06:40.117
その10倍以上を売ったニコラスは
当然１位だと思うでしょうが

00:06:40.141 --> 00:06:41.571
違いました

00:06:41.595 --> 00:06:42.903
なぜか？

00:06:42.927 --> 00:06:47.005
ダン・ブラウンが 同時期に
120万部 売り上げたからです

NOTE Paragraph

00:06:47.029 --> 00:06:49.165
（笑）

NOTE Paragraph

00:06:49.189 --> 00:06:52.744
この数字を見て
面白いと思うのは

00:06:52.744 --> 00:06:56.914
成功に関しては
際限がないということです

00:06:56.938 --> 00:07:02.799
１番が ２番をわずかに
上回るというのでなく

00:07:02.823 --> 00:07:05.520
桁違いの大差を
つけるんです

00:07:05.544 --> 00:07:08.338
成功は 集合的な尺度だからです

00:07:08.362 --> 00:07:12.738
実力で得るというより
他者が与えるものなんです

NOTE Paragraph

00:07:12.762 --> 00:07:18.138
つまり 我々の認識だと 実力—
自分が何をするかは 有限ですが

00:07:18.162 --> 00:07:20.844
成功は集合的なもので
際限がないということ

00:07:20.868 --> 00:07:22.180
そこで こう思うでしょう

00:07:22.204 --> 00:07:25.115
実力では わずかな差なのに

00:07:25.139 --> 00:07:28.575
どうして成功に
大差が出るのか？

00:07:28.575 --> 00:07:32.308
私は最近 まさにこの問いを
追求した本を出しました

00:07:32.308 --> 00:07:35.367
じっくり解説する時間は
もらえなかったので

00:07:35.367 --> 00:07:37.282
はじめの問い

00:07:37.286 --> 00:07:40.661
「成功は いつ現れるのか」
に戻りましょう

NOTE Paragraph

00:07:40.661 --> 00:07:44.493
ぶち壊し役の
アインシュタイン氏ですが

00:07:45.215 --> 00:07:48.554
彼は なぜあんなバカげたことを
言ったのか？

00:07:48.578 --> 00:07:51.734
「人は 30歳を超えたら創造的では
なくなる」

00:07:51.758 --> 00:07:56.438
彼は 周りの偉大な物理学者を
見ていたからです

00:07:56.462 --> 00:07:59.279
量子力学や現代物理学を
生み出した人たちは皆

00:07:59.279 --> 00:08:03.229
20～30代前半で
偉業を成し遂げていました

00:08:03.670 --> 00:08:06.807
これはアインシュタインの
観察者バイアスというわけではなく

00:08:06.807 --> 00:08:10.618
天才についての研究をする分野で

00:08:10.642 --> 00:08:12.898
こんな事実が示されています

00:08:12.922 --> 00:08:16.082
これまでの偉人たちについて

00:08:16.106 --> 00:08:19.464
最大の業績を為したのは
何歳のときか見ると

00:08:19.488 --> 00:08:21.584
音楽であれ 科学であれ

00:08:21.608 --> 00:08:23.227
工学であれ

00:08:23.251 --> 00:08:29.374
そのほとんどが 20代 30代
遅くとも40代前半でした

00:08:29.914 --> 00:08:33.205
でも この天才に関する研究には
問題があります

00:08:33.205 --> 00:08:36.477
第一に これが私たちに
ある印象を与えること

00:08:36.501 --> 00:08:39.980
「創造性は 若さに等しい」

00:08:40.004 --> 00:08:41.614
グサッときますね

NOTE Paragraph

00:08:41.638 --> 00:08:43.589
（笑）

NOTE Paragraph

00:08:43.613 --> 00:08:47.701
これには観察者バイアスもあります

00:08:47.725 --> 00:08:52.687
普通の科学者は含まず
天才だけを見ているんです

00:08:52.711 --> 00:08:54.676
科学者全員を観察して

00:08:54.700 --> 00:08:58.335
「本当に 年齢とともに創造性は
消えるのか」と問うべきです

00:08:58.382 --> 00:09:00.259
これこそが我々の試みでした

00:09:00.283 --> 00:09:04.086
それには資料が
あることが重要です

NOTE Paragraph

00:09:04.110 --> 00:09:06.753
私のような普通の科学者はどうか

00:09:06.777 --> 00:09:08.299
私の経歴を見てみましょう

00:09:08.323 --> 00:09:11.525
これは私が発表した
すべての論文です

00:09:11.549 --> 00:09:16.664
1989年の最初の論文から—
当時はまだルーマニアにいました—

00:09:16.688 --> 00:09:18.931
今年の論文まですべてです

00:09:18.940 --> 00:09:21.458
縦軸は 各論文の影響度です

00:09:21.482 --> 00:09:26.897
どれくらい多く
他の論文で引用されたか です

00:09:27.397 --> 00:09:28.697
ご覧のとおり

00:09:28.721 --> 00:09:31.534
私の経歴には 大まかに
３つの段階があります

00:09:31.558 --> 00:09:33.907
最初の10年は
仕事量が多いわりに

00:09:33.907 --> 00:09:35.293
さほど結果が出てません

00:09:35.317 --> 00:09:37.435
私のしてることなんか
誰も関心がなく

00:09:37.459 --> 00:09:39.490
ほとんど影響力がありません

NOTE Paragraph

00:09:39.490 --> 00:09:40.568
（笑）

NOTE Paragraph

00:09:40.592 --> 00:09:43.479
この頃は 材料科学を
研究していました

00:09:43.503 --> 00:09:47.194
それから ネットワークにたどり着き

00:09:47.218 --> 00:09:49.165
ネットワークの論文を
出し始めました

00:09:49.189 --> 00:09:52.262
そして影響力のある論文を
連発しました

00:09:52.286 --> 00:09:55.390
気分は最高
舞い上がってる時期です

NOTE Paragraph

00:09:55.414 --> 00:09:56.696
（笑）

NOTE Paragraph

00:09:56.720 --> 00:10:00.208
では 現在の影響力はどうか？

00:10:00.587 --> 00:10:02.940
真相は定かではありません

00:10:02.940 --> 00:10:06.571
実際にその論文が
影響力を見せ始めるには

00:10:06.571 --> 00:10:07.942
時間がかかるので

00:10:07.942 --> 00:10:09.681
それでも このデータを見ると

00:10:09.705 --> 00:10:12.559
アインシュタインや天才の研究は
どうやら正しく―

00:10:12.583 --> 00:10:14.704
私は 生ける屍（しかばね）です

NOTE Paragraph

00:10:14.704 --> 00:10:16.726
（笑）

NOTE Paragraph

00:10:16.750 --> 00:10:22.724
そこで このメカニズムを
探ることにしました

00:10:22.748 --> 00:10:24.526
まず科学分野からです

00:10:24.550 --> 00:10:29.543
対象を選ぶとき
天才だけに偏らないように

00:10:29.567 --> 00:10:33.283
科学者を一人残らず対象にし
経歴を再現しました

00:10:33.307 --> 00:10:35.809
1900年から現在まで
全員です

00:10:35.833 --> 00:10:39.545
そして各人の最大の業績を
明らかにしました

00:10:39.569 --> 00:10:42.381
ノーベル賞を取ったか
取らなかったか

00:10:42.405 --> 00:10:45.812
あるいは 最大の業績すら
知られていないのか など

00:10:45.836 --> 00:10:47.751
そして このスライドにしました

00:10:47.775 --> 00:10:49.348
各線が経歴です

00:10:49.372 --> 00:10:52.375
経歴の頂点に見える青い点は

00:10:52.399 --> 00:10:54.439
各人の最大の業績です

00:10:54.463 --> 00:10:55.618
ここで問いたいのは

00:10:55.642 --> 00:10:59.210
その人が
最大の発見をした時期です

00:10:59.234 --> 00:11:00.399
それを定量化すべく

00:11:00.423 --> 00:11:06.495
最大の発見をするのが 経歴の
１年目の確率、２年目の確率、･･･を調べました

00:11:06.519 --> 00:11:07.999
年齢ではなく

00:11:08.023 --> 00:11:10.157
我々が「アカデミック・エイジ」と
呼ぶものを見ます

00:11:10.181 --> 00:11:13.165
最初の論文を出したときから
数えます

00:11:13.165 --> 00:11:15.714
皆さんの中には
まだ赤ちゃんの方もいますね

NOTE Paragraph

00:11:15.714 --> 00:11:16.655
（笑）

NOTE Paragraph

00:11:16.679 --> 00:11:21.475
最も影響力のある論文を出す年を
分析したグラフを見ると

00:11:21.499 --> 00:11:24.570
まさに 天才に関する研究が
正しいと分かります

00:11:24.594 --> 00:11:27.618
傾向として
最も影響力のある論文を出すのは

00:11:27.642 --> 00:11:30.541
ほとんどの科学者が
10～15年目です

00:11:30.565 --> 00:11:33.698
それ以降は下がります

00:11:33.722 --> 00:11:38.829
あまりに急激に下がるので
私は今 経歴上30歳ですが

00:11:38.853 --> 00:11:44.357
これから過去の自分を上回る
影響力ある論文を出す可能性は

00:11:44.381 --> 00:11:45.734
１％にも満たないのです

00:11:45.758 --> 00:11:49.647
このデータによると
私はその段階にいるわけです

00:11:49.648 --> 00:11:51.491
でも この予測には問題があります

00:11:51.515 --> 00:11:55.190
対照群を調べていません

00:11:55.214 --> 00:11:56.631
適切に調べるとすれば

00:11:56.655 --> 00:12:01.262
ランダムな貢献をする科学者は
どう見えるかでしょう

00:12:01.286 --> 00:12:04.175
その科学者の生産性はどうで

00:12:04.175 --> 00:12:06.481
論文を書くのはいつか
ということです

00:12:06.481 --> 00:12:08.779
生産性を測ってみると

00:12:08.803 --> 00:12:10.855
驚くことに 生産性―

00:12:10.879 --> 00:12:15.010
つまり 論文を書く
可能性の高い時期と

00:12:15.034 --> 00:12:18.640
経歴上で影響力を持つ
可能性の高い時期とが

00:12:18.664 --> 00:12:21.009
区別できないほど
そっくりだったのです

NOTE Paragraph

00:12:21.026 --> 00:12:22.809
簡単に言うと

00:12:22.833 --> 00:12:27.061
多くの仮説検定をした結果
可能な説明はひとつで

00:12:27.085 --> 00:12:29.979
科学者の仕事において

00:12:30.003 --> 00:12:33.636
「書く論文や 
行うプロジェクトはどれも

00:12:33.660 --> 00:12:37.820
自己ベストになる可能性が等しい」

00:12:37.844 --> 00:12:42.797
つまり 発見は
宝くじのようなものなのです

00:12:42.821 --> 00:12:45.172
買えば買うほど

00:12:45.196 --> 00:12:46.703
チャンスも増えます

00:12:46.727 --> 00:12:51.029
そして ほとんどの科学者が
最も 宝くじを買う時期が

00:12:51.053 --> 00:12:53.513
経歴上 10～15年目です

00:12:53.537 --> 00:12:56.950
その後は 生産性が落ちます

00:12:57.411 --> 00:12:59.495
宝くじを買わなくなるので

00:12:59.519 --> 00:13:02.963
あたかも創造性を
失ったかのように見えますが

00:13:02.987 --> 00:13:05.576
実際には
頑張らなくなったんです

00:13:05.576 --> 00:13:09.424
なので データをまとめたら
結論はシンプルでした

00:13:09.448 --> 00:13:11.779
「成功はいつでも起こり得る」

00:13:11.803 --> 00:13:15.538
最初の論文かもしれないし
最後の論文かもしれない

00:13:15.562 --> 00:13:19.850
プロジェクトの空間に
ランダムに分布しています

00:13:19.874 --> 00:13:21.805
変化するのは生産性の方です

NOTE Paragraph

00:13:21.829 --> 00:13:23.081
例を挙げましょう

00:13:23.105 --> 00:13:26.374
フランク・ウィルチェックは
ノーベル物理学賞を受賞しましたが

00:13:26.398 --> 00:13:30.499
大学院生のときに書いた
経歴上 最初の論文が当たりました

NOTE Paragraph

00:13:30.523 --> 00:13:31.530
（笑）

NOTE Paragraph

00:13:31.554 --> 00:13:34.772
もっと興味深いのは
ジョン・フェンです

00:13:34.796 --> 00:13:39.394
70歳で イェール大学を
退職させられ

00:13:39.418 --> 00:13:41.474
研究室が閉鎖されたので

00:13:41.498 --> 00:13:45.164
バージニア・コモンウェルス大学に
移りました

00:13:45.188 --> 00:13:46.974
新たに研究室を開き

00:13:46.998 --> 00:13:50.031
72歳で論文を発表し

00:13:50.055 --> 00:13:54.300
15年後 その論文で
ノーベル化学賞を受賞したのです

NOTE Paragraph

00:13:54.940 --> 00:13:57.982
科学分野は特別だと
思うかもしれません

00:13:58.006 --> 00:14:01.469
創造性を要求される
ほかの分野を考えてみましょう

00:14:01.493 --> 00:14:06.429
代表例として
起業家はどうか

00:14:06.834 --> 00:14:08.413
シリコンバレーです

00:14:08.437 --> 00:14:10.503
若者の地ですね

00:14:10.527 --> 00:14:12.122
起業家の場合は

00:14:12.146 --> 00:14:16.788
最も大きな賞に
TechCrunch賞などがありますが

00:14:16.812 --> 00:14:18.985
これらの賞の受賞者は

00:14:19.009 --> 00:14:24.024
平均して
20代後半～30代前半です

00:14:24.465 --> 00:14:28.441
ベンチャーキャピタルの
投資先を見ると

00:14:28.441 --> 00:14:32.552
30代前半に絞っている
大手もあります

00:14:32.951 --> 00:14:34.216
ご存知のように

00:14:34.240 --> 00:14:39.093
「若さは成功に等しい」という風潮が
シリコンバレーにはあります

00:14:39.653 --> 00:14:41.836
でも データを見ると
違うんです

00:14:41.860 --> 00:14:44.164
会社の設立が成功では
ないからです

00:14:44.188 --> 00:14:47.328
会社を作るのは
生産性のようなものであり

00:14:47.352 --> 00:14:49.650
実際に 会社を成功させ

00:14:49.650 --> 00:14:53.642
成功裏にイグジットしたのは誰かを
見る必要があります

00:14:53.666 --> 00:14:57.386
最近 我々の同僚が
これについて調べました

00:14:57.410 --> 00:15:00.566
すると 今言ったように
20代、30代は

00:15:00.590 --> 00:15:03.938
とても多くの会社を
設立していますが

00:15:03.962 --> 00:15:05.963
ほとんどが
倒産しています

00:15:06.009 --> 00:15:10.284
一方 成功裏のイグジットを示す
このグラフによると

00:15:10.308 --> 00:15:14.003
年齢が上がるほど
株式上場にこぎ着けたり

00:15:14.027 --> 00:15:16.899
会社をうまく売却している
傾向があります

00:15:16.899 --> 00:15:19.960
この傾向は強いもので
50代になると

00:15:19.984 --> 00:15:23.572
成功裏のイグジットの確率が
30代のときと比べ

00:15:23.596 --> 00:15:25.676
２倍にもなります

NOTE Paragraph

00:15:26.613 --> 00:15:30.938
（拍手）

NOTE Paragraph

00:15:31.645 --> 00:15:34.654
さて 終わりになりますが
結論は何か

00:15:34.678 --> 00:15:38.761
それは 創造性に
年は関係なく

00:15:38.785 --> 00:15:41.447
関係あるのは生産性だ
ということです

00:15:41.447 --> 00:15:45.559
つまり こういう事なんです

00:15:45.583 --> 00:15:48.083
挑戦し続ける限り―

NOTE Paragraph

00:15:48.083 --> 00:15:50.010
（笑）

NOTE Paragraph

00:15:50.034 --> 00:15:53.606
何度だって成功することはできる と

00:15:53.630 --> 00:15:56.021
なので 私の結論はシンプルです

00:15:56.045 --> 00:15:58.138
「おしゃべりはやめて
研究室に戻ろう」

NOTE Paragraph

00:15:58.162 --> 00:15:59.333
ありがとうございました

NOTE Paragraph

00:15:59.357 --> 00:16:02.666
（拍手）