WEBVTT 00:00:00.992 --> 00:00:02.469 今年 ドイツでは 00:00:02.469 --> 00:00:05.556 東ドイツの平和革命の 00:00:05.556 --> 00:00:07.092 25周年を祝っています 00:00:07.092 --> 00:00:11.858 1989年 共産党政権が倒れ 00:00:11.858 --> 00:00:15.320 ベルリンの壁が崩壊し その1年後に 00:00:15.320 --> 00:00:19.485 東ドイツである 00:00:19.485 --> 00:00:21.154 ドイツ民主共和国と 00:00:21.154 --> 00:00:23.844 西ドイツである ドイツ連邦共和国が統一し 00:00:23.844 --> 00:00:27.117 今日のドイツが成立しました 00:00:27.117 --> 00:00:30.511 ドイツは東ドイツから 様々なものを継承しましたが 00:00:30.511 --> 00:00:35.104 その中には東ドイツの旧制度である 00:00:35.104 --> 00:00:38.420 シュタージという秘密警察の 文書保管庫もありました 00:00:38.420 --> 00:00:40.960 シュタージが解散してからわずか2年後に 00:00:40.960 --> 00:00:44.602 その保有文書が公開され 00:00:44.602 --> 00:00:47.677 私のような歴史学者は 00:00:47.677 --> 00:00:49.105 東ドイツの諜報活動について 00:00:49.105 --> 00:00:53.797 より詳しく知るため 00:00:53.797 --> 00:00:55.507 これらの文書の研究を始めました 00:00:55.507 --> 00:00:58.303 おそらく みなさんは 『善き人のためのソナタ』 00:00:58.303 --> 00:01:00.341 という映画を観たことがあるでしょう 00:01:00.341 --> 00:01:05.081 この映画によりシュタージは 世界中に知られるところとなりました 00:01:05.092 --> 00:01:07.942 私たちは「諜報」とか「盗聴」という言葉を 00:01:07.942 --> 00:01:11.229 新聞の一面記事で扱うような 00:01:11.229 --> 00:01:13.979 時代に生きているので 00:01:13.979 --> 00:01:16.802 シュタージが実際に どの様な活動をしたのかについて 00:01:16.802 --> 00:01:19.201 お話ししたいと思います 00:01:19.201 --> 00:01:21.970 始めに シュタージの歴史を 00:01:21.970 --> 00:01:23.928 簡単に説明します 00:01:23.928 --> 00:01:26.219 というのも その自己概念を理解することは 00:01:26.219 --> 00:01:29.706 とても重要だからです 00:01:29.706 --> 00:01:32.418 その起源はロシアに発します 00:01:32.418 --> 00:01:34.736 1917年 ロシア共産党は 00:01:34.736 --> 00:01:36.930 反革命・サボタージュ取締 全ロシア非常委員会 00:01:36.930 --> 00:01:39.731 通称チェーカーという 00:01:39.731 --> 00:01:41.950 組織を設立しました 00:01:41.950 --> 00:01:44.960 これはフェリックス・ジェルジンスキーが 率いていました 00:01:44.960 --> 00:01:48.203 チェーカーは共産党が 支配体制を築くために 00:01:48.203 --> 00:01:51.960 人々を恐怖に陥れ 00:01:51.960 --> 00:01:54.435 敵を処刑する手段として利用しました 00:01:54.435 --> 00:02:00.244 後に良く知られたKGBへと発展しました 00:02:00.244 --> 00:02:03.750 シュタージの役人たちは チェーカーを崇拝し 00:02:03.750 --> 00:02:06.822 自らをチェキストと称し 00:02:06.822 --> 00:02:09.680 ご覧の通り 00:02:09.680 --> 00:02:12.661 記章もそっくりでした 00:02:12.661 --> 00:02:16.227 実際 ロシアの秘密警察が 00:02:16.227 --> 00:02:19.518 シュタージを作り上げたのであり その指導を行っていました 00:02:19.518 --> 00:02:23.109 赤軍が1945年に東ドイツを占領した時 00:02:23.109 --> 00:02:25.497 組織は直ちに拡大し 00:02:25.497 --> 00:02:29.118 ドイツ人共産党員の訓練をすぐに始め 00:02:29.118 --> 00:02:32.366 自ら秘密警察を作り上げました 00:02:32.366 --> 00:02:35.886 さて 我々がいるこのホールで 00:02:35.886 --> 00:02:41.566 1946年に東ドイツの与党が設立されました 00:02:41.566 --> 00:02:44.950 その5年後にシュタージが組織され 00:02:44.950 --> 00:02:47.569 抑圧という汚い仕事を 00:02:47.569 --> 00:02:50.111 徐々に担っていきます 00:02:50.111 --> 00:02:52.542 たとえばロシアによって作られた 00:02:52.542 --> 00:02:53.856 政治犯を収容する 00:02:53.856 --> 00:02:56.604 中央刑務所は 00:02:56.604 --> 00:02:58.864 シュタージの手に管理が渡り 00:02:58.864 --> 00:03:02.048 共産主義が終焉するまで 使われていました 00:03:02.048 --> 00:03:03.850 こちらをご覧ください 00:03:03.850 --> 00:03:07.485 初めのころは すべての重要な手続きが 00:03:07.485 --> 00:03:11.040 ロシア人が同席する中で 行なわれました 00:03:11.040 --> 00:03:14.141 しかしとても効率的なことで知られる ドイツ人なので 00:03:14.141 --> 00:03:17.519 シュタージは急速に成長し 00:03:17.519 --> 00:03:21.207 すでに1953年には ナチの秘密警察の 00:03:21.207 --> 00:03:22.905 ドイツのゲシュタポよりも 00:03:22.905 --> 00:03:25.695 多くの構成員を抱えていました 00:03:25.695 --> 00:03:28.133 10年ごとにその数は倍になり 00:03:28.133 --> 00:03:31.558 1989年にはシュタージには 00:03:31.558 --> 00:03:33.223 9万人以上の構成員が働いていました 00:03:33.223 --> 00:03:35.597 つまり1人あたり 00:03:35.597 --> 00:03:38.810 180人の住民を監視するという 00:03:38.810 --> 00:03:42.809 他国で例を見ないものでした 00:03:42.809 --> 00:03:45.405 このとてつもない組織の トップに立っていたのが 00:03:45.405 --> 00:03:49.189 エーリッヒ・ミールケという人物です 00:03:49.189 --> 00:03:51.450 彼は30年以上もの間 00:03:51.450 --> 00:03:53.769 国家安全省を支配下に置いていました 00:03:53.769 --> 00:03:56.400 彼は用心深い役人でした - 00:03:56.400 --> 00:03:59.122 ここからさほど遠くない場所で 00:03:59.122 --> 00:04:01.130 警察官を2人を殺害し 00:04:01.130 --> 00:04:05.197 シュタージを私物化していた人物です 00:04:05.197 --> 00:04:09.690 しかし シュタージの何が 特別なのでしょう? 00:04:09.690 --> 00:04:12.600 先ず何よりも とてつもない権力を有していました 00:04:12.600 --> 00:04:16.089 というのも いくつかの異なる役割を 1つの組織に 00:04:16.089 --> 00:04:18.365 集約したものだったからです 00:04:18.365 --> 00:04:20.476 第1にシュタージは 00:04:20.476 --> 00:04:23.571 諜報機関でした 00:04:23.571 --> 00:04:26.050 情報を密かに収集するために 00:04:26.050 --> 00:04:28.333 想像し得る限りのあらゆる手段を 用いました 00:04:28.333 --> 00:04:31.934 たとえば 密告や電話の盗聴などです 00:04:31.934 --> 00:04:34.802 こんな写真も残されています 00:04:34.802 --> 00:04:37.806 東ドイツだけでなく 00:04:37.806 --> 00:04:40.543 世界中で活動していました 00:04:40.543 --> 00:04:44.506 第2に シュタージは秘密警察でした 00:04:44.506 --> 00:04:46.650 街角で人々の前に立ちはだかり 00:04:46.650 --> 00:04:51.078 逮捕し 私設の牢獄に 投獄することができました 00:04:51.078 --> 00:04:52.580 第3にシュタージには 00:04:52.580 --> 00:04:55.435 検察のような役割もありました 00:04:55.435 --> 00:04:58.565 仮の調査を開始し 00:04:58.565 --> 00:05:02.262 公式に人々を尋問する権利がありました 00:05:02.262 --> 00:05:04.353 最後に といっても大事なことですが 00:05:04.353 --> 00:05:08.218 シュタージは自ら軍備を備え 00:05:08.218 --> 00:05:10.222 11,000人以上の兵士が 00:05:10.222 --> 00:05:13.732 「衛兵連隊」として務めていました 00:05:13.732 --> 00:05:18.148 抗議運動や反乱を鎮圧するために 設立されたのです 00:05:18.148 --> 00:05:20.875 このように権力が集中していたので 00:05:20.875 --> 00:05:25.940 シュタージは「国家の中にある国家」と 呼ばれていました 00:05:25.940 --> 00:05:28.199 シュタージが用いたツールを 00:05:28.199 --> 00:05:30.816 もっと詳しく見てみましょう 00:05:30.816 --> 00:05:32.459 覚えておいて頂きたいのは 00:05:32.459 --> 00:05:36.284 当時はインターネットもスマートフォーンも 発明されていなかった時代です 00:05:36.284 --> 00:05:39.525 シュタージは人々を調査するために もちろん 00:05:39.525 --> 00:05:42.598 ありとあらゆる 技術的な道具を用いました 00:05:42.598 --> 00:05:44.711 電話には盗聴器が仕掛けられました 00:05:44.711 --> 00:05:48.850 西ドイツの首相の電話も対象でした 00:05:48.850 --> 00:05:51.802 またアパートも盗聴していました 00:05:51.802 --> 00:05:55.195 毎日 9万通の手紙が 00:05:55.195 --> 00:05:58.541 この器械で開封されました 00:05:58.541 --> 00:06:02.239 シュタージは特訓を受けたスパイや 00:06:02.239 --> 00:06:05.471 隠しカメラで何万人もの人々の 00:06:05.471 --> 00:06:09.006 行動を逐一記録していました 00:06:09.006 --> 00:06:11.674 この写真には私たちが今ここにいる 00:06:11.674 --> 00:06:15.154 建物の前に立っている 若者としての私をご覧になれますが 00:06:15.154 --> 00:06:18.908 これはシュタージのスパイによって 撮影されたものです 00:06:18.908 --> 00:06:23.304 シュタージは人々の臭いですら 収集していました 00:06:23.304 --> 00:06:26.563 密閉した瓶に保存されたサンプルが 00:06:26.563 --> 00:06:31.022 平和革命の後に発見されました 00:06:31.022 --> 00:06:35.258 このような各任務は 非常に専門家された部署によって 00:06:35.258 --> 00:06:37.626 行なわれていました 00:06:37.626 --> 00:06:39.806 電話の盗聴は 00:06:39.806 --> 00:06:41.696 手紙を検閲する部署とは 00:06:41.696 --> 00:06:44.242 完全に独立していました 00:06:44.242 --> 00:06:45.540 これには理由がありました 00:06:45.540 --> 00:06:50.217 あるスパイがシュタージをやめても 彼の知る情報を 00:06:50.217 --> 00:06:52.131 僅かなものに限定できるからです 00:06:52.131 --> 00:06:56.119 これは例えば スノーデンのケースと 対照的です 00:06:56.119 --> 00:06:59.196 一方 組織の縦の役割を 特殊化することも 00:06:59.196 --> 00:07:01.501 観察の対象に 00:07:01.501 --> 00:07:04.496 いかなる感情移入をも 防ぐ意味で重要でした 00:07:04.496 --> 00:07:06.800 私を追尾していたスパイは 00:07:06.800 --> 00:07:08.657 私が誰であり 何のために 00:07:08.657 --> 00:07:10.522 追尾するのか知りませんでした 00:07:10.522 --> 00:07:12.136 実際 私は西側から東ドイツへ 00:07:12.136 --> 00:07:15.028 禁書を持ち込みました 00:07:15.028 --> 00:07:18.220 しかしシュタージはとりわけ 00:07:18.220 --> 00:07:21.384 スパイ つまり 組織に密かに通報する人間を 00:07:21.384 --> 00:07:25.577 重視した点が特徴的でした 00:07:25.577 --> 00:07:27.379 国家安全省大臣にとって 00:07:27.379 --> 00:07:30.291 いわゆる非公式要員が 00:07:30.291 --> 00:07:33.186 最も重要でした 00:07:33.186 --> 00:07:38.509 1975年以降 20万人 00:07:38.509 --> 00:07:41.346 つまり人口の1%以上の人々が 00:07:41.346 --> 00:07:46.222 シュタージと常時 協力していました 00:07:46.222 --> 00:07:48.950 ある意味 大臣のやり方は 理が適っていました 00:07:48.950 --> 00:07:50.891 技術的な装置は 00:07:50.891 --> 00:07:54.463 人々の行動を記録することしかできませんが 00:07:54.463 --> 00:07:57.771 密告者やスパイは 00:07:57.771 --> 00:07:59.474 人々が企んでいることや 00:07:59.474 --> 00:08:01.834 考えていることを報告できるからです 00:08:01.834 --> 00:08:06.615 それが故に シュタージはこれほど多くの 密告者を雇っていました 00:08:06.615 --> 00:08:09.459 彼らを雇い 00:08:09.459 --> 00:08:12.491 「教育」する方法は -そのように言われていましたが- 00:08:12.491 --> 00:08:15.181 とても洗練されたものでした 00:08:15.181 --> 00:08:18.088 ここから遠くない場所に 00:08:18.088 --> 00:08:19.608 シュタージの大学がありました 00:08:19.608 --> 00:08:21.535 そこでは役人を対象とした 00:08:21.535 --> 00:08:24.204 方法論が考え出され 教えられました 00:08:24.204 --> 00:08:27.955 このガイドラインには 00:08:27.955 --> 00:08:30.578 知り合いを裏切らせるための 00:08:30.578 --> 00:08:32.940 知り合いを裏切らせるための 00:08:32.940 --> 00:08:36.919 一つ一つのステップが 詳細に書かれています 00:08:36.919 --> 00:08:40.264 圧力をかけられ密告者になったと 00:08:40.264 --> 00:08:41.720 よく耳にしますが 00:08:41.720 --> 00:08:44.314 それは多くの場合正しくありません 00:08:44.314 --> 00:08:48.225 無理強いされた密告者の働きは 芳しくありません 00:08:48.225 --> 00:08:51.312 求められている情報を 教えたがる者こそ 00:08:51.312 --> 00:08:53.973 効率的な密告者なのです 00:08:53.973 --> 00:08:58.830 シュタージに協力した者達には大抵 00:08:58.830 --> 00:09:04.330 政治的信念や報奨がありました 00:09:04.330 --> 00:09:07.440 役人たちは密告者たちとの 00:09:07.440 --> 00:09:10.848 個人的なつながりを作ろうとしており 00:09:10.848 --> 00:09:16.000 正直いえば シュタージの例が示すように 00:09:16.000 --> 00:09:19.392 他人を裏切らせることは 00:09:19.392 --> 00:09:22.835 難しいことではありません 00:09:22.835 --> 00:09:26.586 イブラヒム・ベーメのように 東ドイツの反体制派の 00:09:26.586 --> 00:09:28.421 トップでありながら 00:09:28.421 --> 00:09:32.166 シュタージに協力するものもいました 00:09:32.166 --> 00:09:34.956 彼は1989年の平和革命の リーダーであり 00:09:34.956 --> 00:09:39.330 彼が密告者であったことが 明らかになるまで 00:09:39.330 --> 00:09:44.475 自由体制になって初の東ドイツ首相に 選ばれようとされていたのです 00:09:44.475 --> 00:09:48.404 スパイのネットワークは実に 広範囲でした 00:09:48.404 --> 00:09:50.110 ほとんどすべての組織に 00:09:50.110 --> 00:09:53.355 教会や 西ドイツにさえも 00:09:53.355 --> 00:09:55.543 多くの密告者がいました 00:09:55.543 --> 00:09:59.032 こんな事がありました シュタージのリーダー的な役人に 00:09:59.032 --> 00:10:02.461 「私に密告者を送っても 00:10:02.461 --> 00:10:05.091 きっと気が付くさ」と言いました 00:10:05.091 --> 00:10:06.950 すると彼はこう答えました 00:10:06.950 --> 00:10:08.393 「誰も送りつけてはいないね 00:10:08.393 --> 00:10:11.415 君の周りの人間を利用しただけさ」 00:10:11.415 --> 00:10:14.070 実際 私の2人の親友が 00:10:14.070 --> 00:10:18.401 シュタージに密告していたのでした 00:10:18.401 --> 00:10:20.990 私の場合に限らず 密告者はとても近くにいたのです 00:10:20.990 --> 00:10:24.693 たとえば 別の反体制派のリーダー ヴェラ・ラングスフェルドの場合 00:10:24.693 --> 00:10:28.906 夫が彼女をスパイしていました 00:10:28.906 --> 00:10:32.259 有名な作家が兄弟に裏切られていた ケースもあります 00:10:32.259 --> 00:10:36.151 これはジョージ・オーウェルの小説 『1984』を思い起こさせます 00:10:36.151 --> 00:10:39.230 この話では 一見 唯一の信頼に足ると 思われた人物が 00:10:39.230 --> 00:10:42.043 密告者でした 00:10:42.043 --> 00:10:45.740 ではなぜシュタージは全ての情報を 00:10:45.740 --> 00:10:47.661 資料保管庫に保存したのでしょうか 00:10:47.661 --> 00:10:51.720 主な目的は社会を管理することでした 00:10:51.720 --> 00:10:54.303 シュタージの長官はことあるごとに 00:10:54.303 --> 00:10:57.025 「誰が何者か確かめろ」 と言っていました 00:10:57.025 --> 00:11:00.119 つまり「誰が何を考えているか調べろ」 ということです 00:11:00.119 --> 00:11:01.870 彼は誰かが反体制ののろしを上げるまで 00:11:01.870 --> 00:11:04.390 待つことをしませんでした 00:11:04.390 --> 00:11:06.280 誰が何を考え 企んでいるのか 00:11:06.280 --> 00:11:09.175 予め知りたがっていたのです 00:11:09.175 --> 00:11:11.997 東ドイツの国民は 不信感と 00:11:11.997 --> 00:11:15.167 恐怖の広まった状態を作りだす 全体主義体制において 00:11:15.167 --> 00:11:19.140 周りは密告者だらけであることを 00:11:19.140 --> 00:11:22.234 もちろん知っていました 00:11:22.234 --> 00:11:25.750 これはいかなる独裁政権においても 人々を抑圧する 00:11:25.750 --> 00:11:27.909 最も重要な手段であったのです 00:11:27.909 --> 00:11:30.512 それゆえに 共産党体制に 00:11:30.512 --> 00:11:34.796 立ち向かおうとする東ドイツの人々は あまりいませんでした 00:11:34.796 --> 00:11:39.378 そういう者に対し シュタージはしばしば 00:11:39.378 --> 00:11:42.050 実に残虐な手段をとりました 00:11:42.050 --> 00:11:44.236 「チェルゼッツン」と呼ばれたもので 00:11:44.236 --> 00:11:47.907 もう1つのガイドラインに 記述されていました 00:11:47.907 --> 00:11:50.707 この意味を正確に訳すことは 難しいのですが 00:11:50.707 --> 00:11:54.605 「生物分解」という意味からきています 00:11:54.605 --> 00:11:57.959 しかし これは実際のところ 意味をとても正確に表しています 00:11:57.959 --> 00:12:01.518 目的は人々のもつ自信を 00:12:01.518 --> 00:12:04.408 密かにぶち壊すことです 00:12:04.408 --> 00:12:07.521 例えば 評判を貶めたり 00:12:07.521 --> 00:12:10.990 仕事で失敗するように仕向けたり 00:12:10.990 --> 00:12:15.620 人間関係を壊すのです 00:12:15.620 --> 00:12:20.995 東ドイツは とても現代的な 専制政治だったともいえるでしょう 00:12:20.995 --> 00:12:25.366 シュタージは反体制派の人々を 全員逮捕しようとはしませんでした 00:12:25.366 --> 00:12:28.457 彼らを麻痺させることを優先したのです 00:12:28.457 --> 00:12:30.960 大量の個人情報を有し 00:12:30.960 --> 00:12:34.310 多くの組織に通じていたことから 00:12:34.310 --> 00:12:38.240 成し得たことです 00:12:38.240 --> 00:12:40.512 人々を拘束することは 00:12:40.512 --> 00:12:43.042 あくまで最終手段でした 00:12:43.042 --> 00:12:46.347 拘束のために シュタージは各州に1つずつ 00:12:46.347 --> 00:12:48.864 17の再拘束のための牢獄を 有していました 00:12:48.864 --> 00:12:51.538 ここでは シュタージは 00:12:51.538 --> 00:12:55.980 とても現代的な拘束手段すら 開発しました 00:12:55.980 --> 00:12:57.763 尋問する役人は たいてい 00:12:57.763 --> 00:13:01.226 囚人を拷問にかけたりせず 00:13:01.226 --> 00:13:03.802 かわりに 洗練された方法で 00:13:03.802 --> 00:13:05.940 精神的な圧力をかけました 00:13:05.940 --> 00:13:10.034 中心となるのは完全な隔離です 00:13:10.034 --> 00:13:12.318 ほとんど全ての囚人が 00:13:12.318 --> 00:13:15.547 証言へと追いやられました 00:13:15.547 --> 00:13:17.609 ベルリンにある 00:13:17.609 --> 00:13:21.060 旧シュタージの牢獄を訪れて 00:13:21.060 --> 00:13:24.649 元政治犯の囚人による ガイドツアーに参加すれば 00:13:24.649 --> 00:13:27.505 これがどのように行われたか 説明してくれるでしょう 00:13:27.505 --> 00:13:30.664 もう1つ答えるべき問題があります 00:13:30.664 --> 00:13:33.106 シュタージがそれほどまでに上手く 00:13:33.106 --> 00:13:37.439 機能していたのならば なぜ共産党体制は崩壊したのでしょうか? 00:13:37.439 --> 00:13:41.570 まず第1に 1989年 東ドイツの首脳部は 00:13:41.570 --> 00:13:43.831 広がる抗議運動に 00:13:43.831 --> 00:13:46.768 どう対処したらいいか分りませんでした 00:13:46.768 --> 00:13:49.119 特に 社会主義の生みの親である 00:13:49.119 --> 00:13:51.890 ソビエト連合で 00:13:51.890 --> 00:13:53.410 より自由な政策が 00:13:53.410 --> 00:13:56.793 とられたことから困惑しました 00:13:56.793 --> 00:13:59.210 それに加え 体制は 00:13:59.210 --> 00:14:02.602 西ドイツからの借款に依存していました 00:14:02.602 --> 00:14:05.150 それゆえ 反乱を鎮圧せよという命令が 00:14:05.150 --> 00:14:08.227 シュタージに出されませんでした 00:14:08.227 --> 00:14:11.860 第2に 共産主義者のイデオロギーに対し 00:14:11.860 --> 00:14:14.513 批判することはできませんでした 00:14:14.513 --> 00:14:16.820 逆に指導者たちは 00:14:16.820 --> 00:14:19.614 社会主義は完全であるという 信条に縛られ 00:14:19.614 --> 00:14:23.865 もちろんシュタージも これに倣わなければなりませんでした 00:14:23.865 --> 00:14:26.226 その結果 00:14:26.226 --> 00:14:28.722 体制側はせっかく収集したデータから 00:14:28.722 --> 00:14:32.886 真の問題を洗い出すことができず 00:14:32.886 --> 00:14:35.571 よって 問題を解決することが できませんでした 00:14:35.571 --> 00:14:38.275 そしてついに シュタージは 00:14:38.275 --> 00:14:40.068 自らを防御する 00:14:40.068 --> 00:14:43.788 組織体制が原因となって死に至りました 00:14:43.788 --> 00:14:45.858 シュタージの最期は 00:14:45.858 --> 00:14:47.905 悲劇的でした 00:14:47.905 --> 00:14:49.964 役人たちは 00:14:49.964 --> 00:14:53.032 平和革命が進行する中で たった1つのことに 00:14:53.032 --> 00:14:55.007 専念しなければ ならなかったからです 00:14:55.007 --> 00:14:57.660 数十年間の間に 00:14:57.660 --> 00:15:01.351 書き続けてきた文書を破棄することです 00:15:01.351 --> 00:15:03.269 幸いにも 00:15:03.269 --> 00:15:06.806 人権擁護者たちに これは阻止されました 00:15:06.806 --> 00:15:09.732 そのおかげで今日 ファイルを調べることにより 00:15:09.732 --> 00:15:11.356 諜報国家がどう機能するのか 00:15:11.356 --> 00:15:14.136 より良く理解することが出来ます 00:15:14.136 --> 00:15:16.133 有難うございました 00:15:16.133 --> 00:15:20.439 (拍手) 00:15:24.518 --> 00:15:30.578 ブルーノ・ジュッサーニ: 有難う 本当に有難うございます 00:15:30.578 --> 00:15:33.302 フバタスさん いくつか質問があります 00:15:33.302 --> 00:15:36.090 先週から (元シュタージの) スピーゲル氏がここに来ていて 00:15:36.090 --> 00:15:40.964 「NSAはシュタージの同類」 と発言しています 00:15:40.964 --> 00:15:43.595 先ほど私の祖国(スイス)の隣国である 00:15:43.595 --> 00:15:46.583 東ドイツのスパイと密告者について 語られましたが 00:15:46.583 --> 00:15:49.283 この2つの話に直接的な関連が ありますか 00:15:49.283 --> 00:15:51.161 それとも ありませんか? 00:15:51.161 --> 00:15:53.183 これを見て歴史家として どう思われましたか? 00:15:53.183 --> 00:15:54.908 クナーベ: 私は様々な観点から 00:15:54.908 --> 00:15:56.811 述べる必要があると思いますが 00:15:56.811 --> 00:15:59.877 まず最初に 同じくデータを収集する行為であっても 00:15:59.877 --> 00:16:03.965 目的が異なっていると思います 00:16:03.965 --> 00:16:06.283 テロリストの攻撃から 00:16:06.283 --> 00:16:07.830 国民を守るためなのか 00:16:07.830 --> 00:16:10.600 それとも国民を抑圧するためなのか? 00:16:10.600 --> 00:16:12.542 これは根本的に異なっています 00:16:12.542 --> 00:16:14.891 しかし一方で 00:16:14.891 --> 00:16:19.210 民主主義社会においても こういった手段が濫用される可能性があり 00:16:19.210 --> 00:16:21.376 注意を払ってこれを 00:16:21.376 --> 00:16:22.761 阻止しなければなりません 00:16:22.761 --> 00:16:25.634 また諜報機関は 00:16:25.634 --> 00:16:28.755 ルールを守らなければなりません 00:16:28.755 --> 00:16:30.255 3つ目のポイントは 00:16:30.255 --> 00:16:33.543 我々は民主主義の国にいて とても幸せで有り得ることです 00:16:33.543 --> 00:16:37.223 一方 ロシアや中国はともに きっと同じようなこと(諜報)を 00:16:37.223 --> 00:16:38.755 行なっているのですから 00:16:38.755 --> 00:16:40.321 でも誰もそれを語ったりしません 00:16:40.321 --> 00:16:42.612 そんな(危険な)ことは 出来ないのですから 00:16:42.612 --> 00:16:47.576 (拍手) 00:16:49.398 --> 00:16:51.451 昨年7月に 00:16:51.451 --> 00:16:53.646 シュタージの件が初めて暴露された時 00:16:53.646 --> 00:16:56.474 あなたはドイツ法廷で 00:16:56.474 --> 00:16:59.454 刑事告訴しましたね どうしてですか? 00:16:59.454 --> 00:17:02.667 先ほど申し上げた 2つ目のポイントにあります 00:17:02.667 --> 00:17:05.564 とりわけ民主主義において 00:17:05.564 --> 00:17:09.021 ルールは皆のためにあると 考えています 00:17:09.021 --> 00:17:11.386 皆のためのルールですから 00:17:11.386 --> 00:17:15.176 いかなる組織もこれを破ってはなりません 00:17:15.176 --> 00:17:17.155 ドイツの刑法には 00:17:17.155 --> 00:17:19.010 裁判所の許可がない限り 00:17:19.010 --> 00:17:21.397 盗聴してはならないと書かれています 00:17:21.397 --> 00:17:25.219 幸いにもドイツの刑法に 明記されているのですから 00:17:25.219 --> 00:17:29.150 これが守られていないのならば 00:17:29.150 --> 00:17:31.046 捜査されるべきでしょう 00:17:31.046 --> 00:17:33.025 ドイツの検察官が 本件の捜査を始めるまで 00:17:33.025 --> 00:17:35.131 かなりの時間がかかり 00:17:35.131 --> 00:17:38.702 アンゲラ・メルケル首相の件が 初の事例となりましたが 00:17:38.702 --> 00:17:41.658 国内に住む他の人々の 捜査は始まっていません 00:17:41.658 --> 00:17:44.131 驚きはしませんよ 00:17:44.131 --> 00:17:46.254 (拍手)- 00:17:46.254 --> 00:17:49.697 お話を伺った後ですからね 00:17:49.697 --> 00:17:52.180 外部から見れば ドイツに住んでいない者から見れば 00:17:52.180 --> 00:17:53.957 ドイツ人は 00:17:53.957 --> 00:17:57.177 もっと力強く 迅速に行動すべきでしょう 00:17:57.177 --> 00:17:59.789 しかし メルケル首相が 盗聴されていると発覚して 00:17:59.789 --> 00:18:01.646 初めて人々は反応しました 00:18:01.646 --> 00:18:05.201 なぜでしょうか? 00:18:05.201 --> 00:18:07.064 国民がドイツの民主主義を 00:18:07.064 --> 00:18:11.394 安全だと感じている証拠です 00:18:11.394 --> 00:18:13.608 逮捕されるのだと恐れることもなく 00:18:13.608 --> 00:18:16.771 このカンファレンスの後 ホールを後にする時 00:18:16.771 --> 00:18:19.335 秘密警察が立ちはだかって 00:18:19.335 --> 00:18:21.773 自分を逮捕するなどと 誰も思っていないでしょう 00:18:21.773 --> 00:18:23.367 ですから良い兆候だと思います 00:18:23.367 --> 00:18:26.242 国民は以前の様に恐れていません 00:18:26.242 --> 00:18:30.596 しかし勿論のこと 公共機関は 00:18:30.596 --> 00:18:33.163 ドイツ国内であれどこであれ 00:18:33.163 --> 00:18:36.281 不法な行動を抑止する義務があるでしょう 00:18:36.281 --> 00:18:39.474 個人的な質問ですが これで最後にします 00:18:39.474 --> 00:18:41.740 ドイツでは エドワード・スノーデンの亡命を 00:18:41.740 --> 00:18:43.281 認めようという議論がありました 00:18:43.281 --> 00:18:46.046 これに賛成ですか それとも反対ですか? 00:18:46.046 --> 00:18:47.734 これは難しい質問ですね 00:18:47.734 --> 00:18:49.420 でも質問されたので 00:18:49.420 --> 00:18:51.075 正直に答えますと 00:18:51.075 --> 00:18:52.841 亡命を認めて良いと思います 00:18:52.841 --> 00:18:54.890 というのも 彼はとても勇敢で 00:18:54.890 --> 00:18:57.502 自分の人生や家族 そして全てを 00:18:57.502 --> 00:18:59.171 犠牲にしたからです 00:18:59.171 --> 00:19:02.380 このような人々のために 何かをすべきだと考えます 00:19:02.380 --> 00:19:06.534 とりわけ ドイツの歴史を振り返ってみると 00:19:06.534 --> 00:19:09.031 多くの人々が国外に脱出し 00:19:09.031 --> 00:19:11.347 亡命を求めましたが 00:19:11.347 --> 00:19:12.730 これは叶いませんでした 00:19:12.730 --> 00:19:15.567 ですからスノーデンの亡命を認めることは 良いことなのです 00:19:15.567 --> 00:19:17.378 (拍手) 00:19:17.378 --> 00:19:23.680 フベタスさん どうも有難うございました