1 00:00:00,998 --> 00:00:03,001 どうして宇宙は存在するのでしょう? 2 00:00:03,001 --> 00:00:06,996 何故-はい はい(笑) 3 00:00:06,996 --> 00:00:09,838 厳粛にしてください これは広大無辺の謎なのです 4 00:00:09,838 --> 00:00:13,414 どうして世界があり 私たちはその中に居るのか 5 00:00:13,414 --> 00:00:15,293 そしてなぜ「無」ではなく 何かが「ある」のでしょう? 6 00:00:15,293 --> 00:00:19,939 つまり これは超究極の「問いかけ」なのです 7 00:00:19,939 --> 00:00:22,174 さて まさに我々が 取り掛かろうとしている 8 00:00:22,174 --> 00:00:23,730 存在の謎や存在の難問について 9 00:00:23,730 --> 00:00:26,644 それから 何故皆さんが注意を払うべきか 10 00:00:26,644 --> 00:00:28,894 -そうして頂くことを望んでいますが 11 00:00:28,894 --> 00:00:30,810 それらについてお話しましょう 12 00:00:30,810 --> 00:00:33,636 哲学者のアルトゥル・ショーペンハウアーは 13 00:00:33,636 --> 00:00:37,416 己の存在 世界の存在の測り知れなさに 14 00:00:37,416 --> 00:00:40,273 思いを巡らせない者は 15 00:00:40,273 --> 00:00:41,936 低能だと言いました 16 00:00:41,936 --> 00:00:45,883 やや辛辣ですが 言い得て妙(笑) 17 00:00:45,883 --> 00:00:47,560 ですので これは最も崇高で 18 00:00:47,560 --> 00:00:49,854 荘厳な謎- 19 00:00:49,854 --> 00:00:52,523 人類が提起できる 最も深遠で壮大な 問いかけで 20 00:00:52,523 --> 00:00:53,583 偉大な思想家を 21 00:00:53,583 --> 00:00:55,297 悩ませ続けています 22 00:00:55,297 --> 00:00:56,901 恐らく20世紀で最も偉大な哲学者 23 00:00:56,901 --> 00:00:59,231 ルートヴィッヒ・ウィトゲンシュタインは 24 00:00:59,231 --> 00:01:01,714 世界はまごうことなく あるべきことに驚嘆しました 25 00:01:01,714 --> 00:01:05,718 彼は『論理哲学論考』の命題4.66で 26 00:01:05,718 --> 00:01:08,408 「世界の中での事象の有り様が 27 00:01:08,408 --> 00:01:09,760 神秘的ではなくて 28 00:01:09,760 --> 00:01:12,095 どの様に世界が存在しているかが 神秘的なのである」 29 00:01:12,095 --> 00:01:14,313 もし哲学者からの警句を 30 00:01:14,313 --> 00:01:17,224 拝借するのが好きでなければ 科学者はどうでしょうかー 31 00:01:17,224 --> 00:01:19,825 20世紀で最も偉大な物理学者で リチャード・ファインマンの師 32 00:01:19,825 --> 00:01:21,051 20世紀で最も偉大な物理学者で リチャード・ファインマンの師 33 00:01:21,051 --> 00:01:22,976 「ブラックホール」を造語した 34 00:01:22,976 --> 00:01:25,636 ジョン・アーチボルト・ホイーラーは 35 00:01:25,636 --> 00:01:28,059 「私はどうして量子が 宇宙が 36 00:01:28,059 --> 00:01:29,792 存在が『ある』のか知りたいのです」 37 00:01:29,792 --> 00:01:32,936 と言ったのです 38 00:01:32,936 --> 00:01:34,935 そして 私の友人の マーティン・エイミス- 39 00:01:34,935 --> 00:01:37,612 すみません 講演中に多くの名前が出てきますが 40 00:01:37,612 --> 00:01:38,987 どうか慣れて下さい- 41 00:01:38,987 --> 00:01:43,963 私の友人のマーティン・エイミスは かつて 42 00:01:43,963 --> 00:01:47,183 我々は宇宙がどこから来たのか という謎に答えるには 43 00:01:47,183 --> 00:01:49,219 アインシュタインが約5人必要だと言ったのです 44 00:01:49,219 --> 00:01:51,200 そして 今夜の観客席には間違いなく 45 00:01:51,200 --> 00:01:53,387 5人のアインシュタインが居ると確信しています 46 00:01:53,387 --> 00:01:54,890 アインシュタインさん? 47 00:01:54,890 --> 00:01:56,052 手を挙げて?居ないですか? 48 00:01:56,052 --> 00:02:00,274 さて なぜ「無」ではなく 何かが「ある」のか というこの「問いかけ」 49 00:02:00,274 --> 00:02:02,242 この崇高な問いかけは 50 00:02:02,242 --> 00:02:04,552 思想史のかなり後期に提起されました 51 00:02:04,552 --> 00:02:07,031 それは17世紀末にかけて 哲学者であり 52 00:02:07,031 --> 00:02:09,993 アイザック・ニュートンから独立し 微積分学を生み出した 53 00:02:09,993 --> 00:02:11,736 アイザック・ニュートンから独立し 微積分学を生み出した 54 00:02:11,736 --> 00:02:13,886 非常に聡明なライプニッツが 55 00:02:13,886 --> 00:02:16,740 同時期に提起したのです 56 00:02:16,740 --> 00:02:19,342 なぜ「無」ではなく 何かが「ある」のか― 57 00:02:19,342 --> 00:02:21,535 彼にとっては 大した謎でもなかったのです 58 00:02:21,535 --> 00:02:23,931 彼の形而上学的な見地では 59 00:02:23,931 --> 00:02:26,687 彼はキリスト教正教徒 もしくはそのフリをしていたので 60 00:02:26,687 --> 00:02:29,702 何故 世界が存在するのかは 明らかだと言ったのです 61 00:02:29,702 --> 00:02:32,164 何故なら 神が創造したからです 62 00:02:32,164 --> 00:02:35,449 神は無から創造されたのです 63 00:02:35,449 --> 00:02:36,960 神は全知全能な存在なのです 64 00:02:36,960 --> 00:02:40,602 神は世界を形作るのに いかなる既存材料も必要としないのです 65 00:02:40,602 --> 00:02:42,762 神はまったくの無から 何もないところから 66 00:02:42,762 --> 00:02:44,236 世界を創造されたのです 67 00:02:44,236 --> 00:02:45,181 ちなみに これは 68 00:02:45,181 --> 00:02:48,020 殆どの現代のアメリカ人が信じていることです 69 00:02:48,020 --> 00:02:49,734 彼らには存在の謎はないのです 70 00:02:49,734 --> 00:02:51,302 神が創り給うたのですから 71 00:02:51,302 --> 00:02:53,888 さて これを方程式に入れてみましょう 72 00:02:53,888 --> 00:02:56,515 スライドがありませんので 身振り手振りをしますから 73 00:02:56,515 --> 00:02:57,950 想像力を働かせてください 74 00:02:57,950 --> 00:03:03,804 神+無=世界 75 00:03:03,804 --> 00:03:07,118 いいですか?これが方程式です 76 00:03:07,118 --> 00:03:08,851 皆さんは恐らく神を信じないでしょう 77 00:03:08,851 --> 00:03:10,681 科学的 または非科学的な無神論者とか 78 00:03:10,681 --> 00:03:14,015 いずれにせよ 神を信じておらず 79 00:03:14,015 --> 00:03:15,433 快く思ってはいないでしょう 80 00:03:15,433 --> 00:03:18,137 ところで 神+無=世界 81 00:03:18,137 --> 00:03:20,039 この様な方程式の場合でも 82 00:03:20,039 --> 00:03:21,725 何故 神は存在するのか? 83 00:03:21,725 --> 00:03:24,759 という問題が既にあるのです 84 00:03:24,759 --> 00:03:26,962 本体論的証明を信じれば別ですが 良いものでもなく 85 00:03:26,962 --> 00:03:28,775 信じていない方がいいのですが 86 00:03:28,775 --> 00:03:31,102 神は論理のみで存在しないのです 87 00:03:31,102 --> 00:03:34,263 ですから 神が存在するのであれば 88 00:03:34,263 --> 00:03:37,413 未来永劫 全知全能な存在であることに 神は訝しむかもしれません 89 00:03:37,413 --> 00:03:39,843 でも 我はどこから来たのだろうか? 90 00:03:39,843 --> 00:03:42,013 (笑) 91 00:03:42,013 --> 00:03:43,432 そしてでも 我はどこにいるのだろうか? 92 00:03:43,432 --> 00:03:46,640 神は「我」とか 格式ばった言葉で話しますからね 93 00:03:46,640 --> 00:03:48,629 (笑) 94 00:03:48,629 --> 00:03:51,677 そして 神は自身の 存在の謎を思案し飽き飽きし 95 00:03:51,677 --> 00:03:53,466 気晴らしに世界を想像したのだと 96 00:03:53,466 --> 00:03:56,388 そういう説があります 97 00:03:56,388 --> 00:03:58,500 とにかく 神の事は置いておきましょう 98 00:03:58,500 --> 00:03:59,857 方程式から神を除くと 99 00:03:59,857 --> 00:04:02,980 ________ +無=世界 となります 100 00:04:02,980 --> 00:04:04,761 さて もし皆さんが仏教徒なら 101 00:04:04,761 --> 00:04:06,505 ここまでで十分だと思うでしょう 102 00:04:06,505 --> 00:04:08,474 何故なら 本質的に皆さんが得たものは 103 00:04:08,474 --> 00:04:10,050 無=世界 104 00:04:10,050 --> 00:04:11,563 そして式は対称ですから 105 00:04:11,563 --> 00:04:13,918 世界=無なんです 分かりますか? 106 00:04:13,918 --> 00:04:16,337 仏教徒にとって世界は ただの無の集積なんです 107 00:04:16,337 --> 00:04:19,442 それは広大無辺の空虚なのです 108 00:04:19,442 --> 00:04:21,995 そこに多くの何かがあると考えるのですが 109 00:04:21,995 --> 00:04:24,560 それは我々が自身の欲望の虜に なっているからです 110 00:04:24,560 --> 00:04:27,271 もし我々が欲望を消滅させるなら 111 00:04:27,271 --> 00:04:30,151 世界は真にどんなものか 知ることが出来るでしょう 112 00:04:30,151 --> 00:04:32,131 -虚空 -無 113 00:04:32,131 --> 00:04:34,313 そして我々は今世の命は成仏(死後)を 114 00:04:34,313 --> 00:04:36,136 楽しむ為のものである というような 115 00:04:36,136 --> 00:04:39,454 解脱による至福の境地に至るでしょう(笑) 116 00:04:39,454 --> 00:04:41,333 それが仏教徒の考えです 117 00:04:41,333 --> 00:04:44,832 しかし 私は西洋人なので 118 00:04:44,832 --> 00:04:46,815 まだ存在の難問に関心があるので 119 00:04:46,815 --> 00:04:48,423 ________ + — 120 00:04:48,423 --> 00:04:50,581 直にエライことになりますよ いいですか? 121 00:04:50,581 --> 00:04:53,607 ________ + 無 = 世界 122 00:04:53,607 --> 00:04:54,830 そこの空白には何を入れましょうか? 123 00:04:54,830 --> 00:04:56,678 科学はどうでしょう 124 00:04:56,678 --> 00:05:00,229 科学は現実の自然現象を 最も紐解いてくれますし 125 00:05:00,229 --> 00:05:03,244 科学の根本は物理学なのです 126 00:05:03,244 --> 00:05:06,214 それは我々に素の現実が 本当はどんなものか 127 00:05:06,214 --> 00:05:08,840 「TAUFOTU」-宇宙の真実と究極の構成物- The True And Ultimate Furniture Of The Universe 128 00:05:08,840 --> 00:05:11,830 というものを明らかにするのです 129 00:05:11,830 --> 00:05:14,482 ですので 恐らく物理学はこの空白を埋められます 130 00:05:14,482 --> 00:05:19,544 そして実際 1960年代後半か1970年頃から 131 00:05:19,544 --> 00:05:23,207 物理学者は全くの虚無- 132 00:05:23,207 --> 00:05:26,327 空間からの量子変動から 133 00:05:26,327 --> 00:05:29,322 どのようにして このような宇宙が存在することとなったかの 134 00:05:29,322 --> 00:05:31,201 純粋な科学的説明を 135 00:05:31,201 --> 00:05:34,281 口にし始めたのです 136 00:05:34,281 --> 00:05:36,339 スティーヴン・ホーキングは そんな物理学者の1人で 137 00:05:36,339 --> 00:05:38,645 近頃では アレックス・ビレンケンや 138 00:05:38,645 --> 00:05:40,378 その他 実に優秀な物理学者の友人で 139 00:05:40,378 --> 00:05:42,571 『宇宙が始まる前には何があったのか?』 140 00:05:42,571 --> 00:05:45,103 の著者であるローレンス・クラウスなどが 141 00:05:45,103 --> 00:05:47,229 人気を博しています 142 00:05:47,229 --> 00:05:49,445 ちなみにローレンスは 143 00:05:49,445 --> 00:05:51,526 闘争的な無神論者なので 144 00:05:51,526 --> 00:05:53,150 神を枠から外しています 145 00:05:53,150 --> 00:05:55,531 最新技術の物理学である 146 00:05:55,531 --> 00:05:57,432 場の量子論の法則は 147 00:05:57,432 --> 00:05:58,750 どの様に全くの無から- 148 00:05:58,750 --> 00:06:00,975 空間も時間も何もかもの無から- 149 00:06:00,975 --> 00:06:04,420 偽真空の小さな塊が 150 00:06:04,420 --> 00:06:06,393 実在へと変化していき 151 00:06:06,393 --> 00:06:08,375 そして膨張の奇跡によって 152 00:06:08,375 --> 00:06:11,460 我々の周りにある この巨大で多様な宇宙へと 153 00:06:11,460 --> 00:06:13,215 変貌を遂げるのかを示してくれます 154 00:06:13,215 --> 00:06:16,769 さて これは実に独創的な筋書です 155 00:06:16,769 --> 00:06:19,537 とても推論的で魅惑的です 156 00:06:19,537 --> 00:06:21,865 しかし ここでちょっと問題があります 157 00:06:21,865 --> 00:06:23,750 宗教がかった見解が 158 00:06:23,750 --> 00:06:25,221 問題なのです 159 00:06:25,221 --> 00:06:27,217 さて ローレンスは自分が無神論者だと思っていますが 160 00:06:27,217 --> 00:06:29,965 彼は未だに宗教的世界観に 囚われているのです 161 00:06:29,965 --> 00:06:34,734 彼は物質の法則は神の命令のように 見なしているのです 162 00:06:34,734 --> 00:06:36,784 彼にとって 場の量子論の法則は 163 00:06:36,784 --> 00:06:39,395 まるで神の思召し- 「光あれ」なのです 164 00:06:39,395 --> 00:06:43,834 その法則はある種の力や影響力があり 165 00:06:43,834 --> 00:06:45,941 実在を孕んだ 天地創造以前の混沌を 166 00:06:45,941 --> 00:06:47,781 形作れるのです 167 00:06:47,781 --> 00:06:50,688 その法則により無から世界を実在させたのです 168 00:06:50,688 --> 00:06:52,635 しかし それは自然界の法則に関する 169 00:06:52,635 --> 00:06:54,108 非常に原始の見解ですよね 170 00:06:54,108 --> 00:06:57,363 我々は物理法則は実際に 世界の様式と規則性の 171 00:06:57,363 --> 00:07:00,407 一般化された記述である 172 00:07:00,407 --> 00:07:01,612 と知っています 173 00:07:01,612 --> 00:07:03,985 それらは世界の外には存在しません 174 00:07:03,985 --> 00:07:05,965 それ自体 存在論的な 不透明さもありません 175 00:07:05,965 --> 00:07:07,960 だから その法則では無から世界を 176 00:07:07,960 --> 00:07:09,278 創造できないのです 177 00:07:09,278 --> 00:07:10,809 それは科学の法則が何たるかの 178 00:07:10,809 --> 00:07:12,993 非常に原始的な見立てなのです 179 00:07:12,993 --> 00:07:14,988 そして もしあなたがこのことを信じないなら 180 00:07:14,988 --> 00:07:16,790 いかなる外界の要因も 181 00:07:16,790 --> 00:07:20,825 創造主も必要としない自己完結型の 宇宙モデルを周知させた 182 00:07:20,825 --> 00:07:21,901 創造主も必要としない自己完結型の 宇宙モデルを周知させた 183 00:07:21,901 --> 00:07:25,539 スティーヴン・ホーキングに 話を聞いてみてください 184 00:07:25,539 --> 00:07:27,267 彼はこのモデルは 185 00:07:27,267 --> 00:07:29,681 方程式に過ぎないと述べ 186 00:07:29,681 --> 00:07:32,993 未だに途方に暮れていることも認めました 187 00:07:32,993 --> 00:07:35,852 方程式に命を与え 188 00:07:35,852 --> 00:07:38,774 描くべき世界を創造するのは何であるのか? 189 00:07:38,774 --> 00:07:39,907 彼は困惑させられました 190 00:07:39,907 --> 00:07:43,712 方程式それ自体は魔法を起こせません 191 00:07:43,712 --> 00:07:45,850 存在の難問を解決できません 192 00:07:45,850 --> 00:07:48,763 しかも 法則が解決出来たとしても 193 00:07:48,763 --> 00:07:50,586 どうしてこの法則の組合せでしょうか? 194 00:07:50,586 --> 00:07:53,150 どうして場の量子論の法則が 195 00:07:53,150 --> 00:07:54,850 特定量の力と分子などで世界を 196 00:07:54,850 --> 00:07:55,899 描写するのでしょう? 197 00:07:55,899 --> 00:07:58,190 どうして全く異なる法則の組合せではないのか? 198 00:07:58,190 --> 00:08:01,478 多くの 数学的に矛盾のない 法則の組合せがあります 199 00:08:01,478 --> 00:08:04,917 どうして他の法則が何もないのか? どうして全くの無でないのか? 200 00:08:04,917 --> 00:08:06,649 信じようが信じまいが これは問題です 201 00:08:06,649 --> 00:08:09,647 思慮深い物理学者が再三考え 202 00:08:09,647 --> 00:08:12,755 そしてこの点においては 彼らは形而上学に傾倒しがちで 203 00:08:12,755 --> 00:08:14,970 例えば- 我々の宇宙を描写する 204 00:08:14,970 --> 00:08:16,217 法則の組合せは 205 00:08:16,217 --> 00:08:17,952 一組だけで 206 00:08:17,952 --> 00:08:19,988 それは現実のある一面を描写しているが 207 00:08:19,988 --> 00:08:22,784 すべて矛盾のない法則は 208 00:08:22,784 --> 00:08:24,570 現実の他の側面を描写し 209 00:08:24,570 --> 00:08:28,503 そしてすべての有り得る物質界は 210 00:08:28,503 --> 00:08:30,954 実際にそこに存在していて 「ある」のである 211 00:08:30,954 --> 00:08:33,236 我々は場の量子論の法則によって描写された 212 00:08:33,236 --> 00:08:35,780 小さな現実の一部を見るだけだが 213 00:08:35,780 --> 00:08:37,511 非常に異なる仮説で語られる 214 00:08:37,511 --> 00:08:39,278 多くの別の世界や 215 00:08:39,278 --> 00:08:41,235 現実の要素は 216 00:08:41,235 --> 00:08:44,251 想像できない程 我々のものとは違うので 217 00:08:44,251 --> 00:08:47,996 想像を絶するほどに異世界なのです 218 00:08:47,996 --> 00:08:49,733 一般的な素粒子物理学の父とされる 219 00:08:49,733 --> 00:08:52,174 スティーヴン・ワインバーグは 220 00:08:52,174 --> 00:08:55,000 全ての可能な現実は実際に存在しているという 221 00:08:55,000 --> 00:08:59,243 このアイデアに実に魅了されました 222 00:08:59,243 --> 00:09:02,332 また 若手の物理学者のマックス・テグマークは 223 00:09:02,332 --> 00:09:06,708 全ての数理的な構造は存在し 224 00:09:06,708 --> 00:09:08,845 そして数理的な存在は物理的な存在と 225 00:09:08,845 --> 00:09:10,612 同じであると信じているので 226 00:09:10,612 --> 00:09:12,930 我々は全ての理論的な可能性を包括する 227 00:09:12,930 --> 00:09:16,371 この広大で豊かな多元宇宙論を有するのです 228 00:09:16,371 --> 00:09:19,881 さて この形而上学的なものはさて置き 229 00:09:19,881 --> 00:09:22,153 これらの物理学者や哲学者は 230 00:09:22,153 --> 00:09:24,675 事実 非常に昔のアイデア -プラトーまで 231 00:09:24,675 --> 00:09:26,132 立ち戻っています 232 00:09:26,132 --> 00:09:29,330 それは充足や繁殖力の原則 233 00:09:29,330 --> 00:09:31,243 あるいは 現実が出来る限り満たさている 234 00:09:31,243 --> 00:09:35,110 大いなる存在の連鎖です 235 00:09:35,110 --> 00:09:36,811 それは虚無から 236 00:09:36,811 --> 00:09:39,706 出来る限り遠くに移されます 237 00:09:39,706 --> 00:09:42,200 ですから 我々には 二つの極論があるのです 238 00:09:42,200 --> 00:09:45,499 一方は全くの空虚で 最も簡素な現実です 239 00:09:45,499 --> 00:09:47,997 もう一方は対極で 240 00:09:47,997 --> 00:09:51,180 全ての想像し得る 241 00:09:51,180 --> 00:09:53,909 世界を包含する 242 00:09:53,909 --> 00:09:56,802 満ち溢れた現実―なのです 243 00:09:56,802 --> 00:09:59,681 さて この二つの極論の間には何があるのでしょうか? 244 00:09:59,681 --> 00:10:01,708 これらは あらゆる種類の中間の現実で 245 00:10:01,708 --> 00:10:04,655 幾つかだけを含み それ以外は除外されています 246 00:10:04,655 --> 00:10:06,251 ですので これらの中間現実の1つ- 247 00:10:06,251 --> 00:10:11,946 例えば 数学的にエレガントな現実が そうでないもの 248 00:10:11,946 --> 00:10:13,621 -不格好な非対称なもの等を 249 00:10:13,621 --> 00:10:16,267 除外するのです 250 00:10:16,267 --> 00:10:18,593 さて 我々が最もエレガントな現実に住んでいると 251 00:10:18,593 --> 00:10:22,227 そう言う物理学者も中にはいます 252 00:10:22,227 --> 00:10:25,174 私はブライアン・グリーンが -観客席に居ると思いますが 253 00:10:25,174 --> 00:10:28,787 『エレガントな宇宙』という著書で 254 00:10:28,787 --> 00:10:31,058 我々が住んでいる宇宙は数学的に 255 00:10:31,058 --> 00:10:32,767 非常にエレガントだと主張しています 256 00:10:32,767 --> 00:10:34,450 彼を信じないでください(笑) 257 00:10:34,450 --> 00:10:37,537 願わくば という 信心深い望みですが 258 00:10:37,537 --> 00:10:39,450 ある日 彼が私に 実は不格好な宇宙だと 259 00:10:39,450 --> 00:10:42,514 認めました 260 00:10:42,514 --> 00:10:43,890 それは さほど考えもせずに作られ 261 00:10:43,890 --> 00:10:47,144 多すぎる任意の結合定数と 262 00:10:47,144 --> 00:10:48,810 質量比や 263 00:10:48,810 --> 00:10:51,588 不必要な基礎素粒子の族です 264 00:10:51,588 --> 00:10:53,736 ダークエネルギーとは何なのでしょうか? 265 00:10:53,736 --> 00:10:57,135 それは棒と風船ガムの奇妙な仕掛けです 266 00:10:57,135 --> 00:11:01,138 それはエレガントな宇宙ではありません(笑) 267 00:11:01,138 --> 00:11:03,881 そして倫理学上の意識の中に 268 00:11:03,881 --> 00:11:05,471 最善の世界があるのです 269 00:11:05,471 --> 00:11:06,650 厳粛にお願いします 270 00:11:06,650 --> 00:11:09,845 何故なら 感覚のある生き物が 271 00:11:09,845 --> 00:11:11,465 いわれなく苦しまない世界- 272 00:11:11,465 --> 00:11:13,334 小児がんや大虐殺などのない世界 273 00:11:13,334 --> 00:11:15,549 なのですから 274 00:11:15,549 --> 00:11:16,800 これは倫理的な概念です 275 00:11:16,800 --> 00:11:18,865 ともかく 虚無と 276 00:11:18,865 --> 00:11:20,498 充足した可能現実 277 00:11:20,498 --> 00:11:22,043 種々の特別な現実の間なんです 278 00:11:22,043 --> 00:11:24,323 空虚は特別で 最も単純です 279 00:11:24,323 --> 00:11:27,833 そして 最もエレガントな可能現実があるのです 280 00:11:27,833 --> 00:11:29,197 それは特別です 281 00:11:29,197 --> 00:11:31,849 充足した可能現実 実に特別です 282 00:11:31,849 --> 00:11:33,365 でも 我々はここで何を取りこぼすのでしょうか? 283 00:11:33,365 --> 00:11:36,101 そこには ただ下らなく 284 00:11:36,101 --> 00:11:37,856 どうあがいても 特別にはなり得ない 285 00:11:37,856 --> 00:11:40,477 ある意味 手当り次第の 286 00:11:40,477 --> 00:11:42,029 ごく一般的な現実もあります 287 00:11:42,029 --> 00:11:44,756 それらは永遠に虚無から取り除かれていますが 288 00:11:44,756 --> 00:11:48,682 完全な充足が永遠に足りないのです 289 00:11:48,682 --> 00:11:51,202 それらは混沌と 数理的なエレガンスと醜さの 290 00:11:51,202 --> 00:11:55,400 道理が混在しているのです 291 00:11:55,400 --> 00:11:57,185 ですので 私はこれらの現実を 292 00:11:57,185 --> 00:12:01,312 果てしない 二流の 不完全な混乱で 包括的な現実で 293 00:12:01,312 --> 00:12:04,692 ある種の宇宙の下らない 試みだと述べましょう 294 00:12:04,692 --> 00:12:06,876 そしてこれらの現実には 295 00:12:06,876 --> 00:12:09,142 神性なるものがあるのでしょうか? 296 00:12:09,142 --> 00:12:11,553 恐らく- しかしユダヤ教やキリスト教の神のように 297 00:12:11,553 --> 00:12:13,889 神性なるものは完璧ではありません 298 00:12:13,889 --> 00:12:17,196 それは完璧に善良で万能ではありません 299 00:12:17,196 --> 00:12:20,527 代わりに100%の悪意あるもので 300 00:12:20,527 --> 00:12:22,630 でも80%しか効いてないような 301 00:12:22,630 --> 00:12:28,767 まるで 我々を取り巻く この世界のようなものかも知れません(笑) 302 00:12:28,767 --> 00:12:31,499 ですから存在の謎の決意は 303 00:12:31,499 --> 00:12:33,335 我々が存在している現実が 304 00:12:33,335 --> 00:12:37,425 これらの包括的な現実の1つである 305 00:12:37,425 --> 00:12:39,481 ということだと提案したいわけです 306 00:12:39,481 --> 00:12:42,136 現実は 何とか判明しないとなりません 307 00:12:42,136 --> 00:12:44,206 それは全く何でもない とか その通りだったとか 308 00:12:44,206 --> 00:12:47,887 どちらとも言えない とかでしょう 309 00:12:47,887 --> 00:12:51,578 ですからそれが例えば 実にエレガントだとか充足しているとか 310 00:12:51,578 --> 00:12:53,768 虚無のように実に単純だとか 311 00:12:53,768 --> 00:12:55,376 何か特別な特徴を備えていると 312 00:12:55,376 --> 00:12:57,177 説明が必要になるでしょう 313 00:12:57,177 --> 00:13:00,336 しかし 気まぐれな包括的な 現実の内の1つに過ぎなけば 314 00:13:00,336 --> 00:13:02,486 それ以上の説明はないでしょう 315 00:13:02,486 --> 00:13:03,870 実に言うなれば 316 00:13:03,870 --> 00:13:05,850 それが我々の生きる現実なのです 317 00:13:05,850 --> 00:13:08,107 それが科学が我々に教えてくれることです 318 00:13:08,107 --> 00:13:09,438 今週始めに宇宙の膨張説の 319 00:13:09,438 --> 00:13:12,554 胸躍る情報を得たのです 320 00:13:12,554 --> 00:13:15,693 それは大きくて 無限で ごたまぜであり 321 00:13:15,693 --> 00:13:19,663 気まぐれで 良く分からない現実を予言します 322 00:13:19,663 --> 00:13:23,488 それはボトルから溢れ出る 323 00:13:23,488 --> 00:13:26,172 シャンペンの大きな泡のようで 324 00:13:26,172 --> 00:13:28,264 魅力と秩序と平和の 小さなポケット付きの 325 00:13:28,264 --> 00:13:32,530 大概は不毛な 広大無辺の宇宙で 326 00:13:32,530 --> 00:13:34,895 この膨張説は 327 00:13:34,895 --> 00:13:37,797 南極大陸にある電波望遠鏡による 328 00:13:37,797 --> 00:13:39,890 観測によって確認されています 329 00:13:39,890 --> 00:13:42,713 それはビッグバンの直前に 330 00:13:42,713 --> 00:13:44,637 重力の波の兆しを捉えました 331 00:13:44,637 --> 00:13:46,482 皆さんもご存知のことと思いますが 332 00:13:46,482 --> 00:13:49,306 いずれにせよ この現実というのは 333 00:13:49,306 --> 00:13:52,793 我々に押し付けられた現実であるという 証拠があると思うのです 334 00:13:52,793 --> 00:13:55,900 さて 我々はどうして懸念すべきなのでしょうか? 335 00:13:55,900 --> 00:13:57,136 えーと (笑) 336 00:13:57,136 --> 00:14:00,560 「なぜ世界は存在するのか?」 というその問い 337 00:14:00,560 --> 00:14:02,239 それは広大無念な問いで 338 00:14:02,239 --> 00:14:03,693 もっと身近な問いを呼び起こします 339 00:14:03,693 --> 00:14:06,776 「どうして私は存在するのか?」 「どうしてあなたは存在するのか?」 340 00:14:06,776 --> 00:14:10,376 遺伝子的に誕生可能な人間の数は膨大で 341 00:14:10,376 --> 00:14:14,695 我々の存在は驚異の賜物のようなのです 342 00:14:14,695 --> 00:14:16,099 もし遺伝子の数と 343 00:14:16,099 --> 00:14:18,441 その対立遺伝子をを見積もると 344 00:14:18,441 --> 00:14:20,737 概算して 約10から10,000乗の 345 00:14:20,737 --> 00:14:22,892 遺伝的に誕生可能な人間が 346 00:14:22,892 --> 00:14:24,552 いるわけです 347 00:14:24,552 --> 00:14:28,020 それは100の10乗と天文学的数字の間なのです 348 00:14:28,020 --> 00:14:29,636 そして実際に存在している人間の数は 349 00:14:29,636 --> 00:14:32,130 1000億人とか50億人でしょうか 350 00:14:32,130 --> 00:14:34,195 ごく僅かな割合です ですから我々全員は 351 00:14:34,195 --> 00:14:36,125 驚異的な広大無辺のくじを引き当てたのです 352 00:14:36,125 --> 00:14:38,244 我々はここにいるのです いいですね 353 00:14:38,244 --> 00:14:41,165 どんな種類の現実に我々は住みたいのか? 354 00:14:41,165 --> 00:14:43,415 我々は特殊な現実に住みたいのか? 355 00:14:43,415 --> 00:14:47,644 もし我々が最もエレガントな 可能現実に住んでいるとしたら? 356 00:14:47,644 --> 00:14:50,153 エレガントであろうと その期待に応えようとする 357 00:14:50,153 --> 00:14:51,992 我々の実存のプレッシャーを 358 00:14:51,992 --> 00:14:53,858 想像してみてください 359 00:14:53,858 --> 00:14:56,939 あるいは もし我々が最も充実した 可能現実に住んでいるとしたら? 360 00:14:56,939 --> 00:14:58,950 すると 我々の存在は保証されるでしょう 361 00:14:58,950 --> 00:15:00,728 何故ならすべての可能なことは 362 00:15:00,728 --> 00:15:02,094 現実に存在しているのです 363 00:15:02,094 --> 00:15:04,255 しかし 我々の選択は意味をなさないでしょう 364 00:15:04,255 --> 00:15:07,250 もし私が本当に道徳的に苦しみもがき 365 00:15:07,250 --> 00:15:09,330 正しい行いをしようと決めたら どんな違いが 366 00:15:09,330 --> 00:15:10,525 あるというのでしょうか 367 00:15:10,525 --> 00:15:12,550 そこには無限の私のバージョンが存在し 368 00:15:12,550 --> 00:15:13,564 そして正しい行いをし 369 00:15:13,564 --> 00:15:14,961 また 無限の数の私が 370 00:15:14,961 --> 00:15:16,616 悪いことを行っているのです 371 00:15:16,616 --> 00:15:18,456 ですから私の選択は無意味で 372 00:15:18,456 --> 00:15:20,740 我々はそんな特殊な現実に住みたくありません 373 00:15:20,740 --> 00:15:23,327 無の特殊な現実については 374 00:15:23,327 --> 00:15:25,554 もうお話しすることはないでしょう 375 00:15:25,554 --> 00:15:32,489 ですから この平凡でありきたりの 現実に住むということは 376 00:15:32,489 --> 00:15:34,385 良いことも嫌なこともありますが 377 00:15:34,385 --> 00:15:35,927 我々は良いことはもっと多く 378 00:15:35,927 --> 00:15:38,266 そして嫌なことはもっと少なくすることで 379 00:15:38,266 --> 00:15:41,157 人生の目的のようなものを得るのです 380 00:15:41,157 --> 00:15:42,563 宇宙は滑稽ですが 381 00:15:42,563 --> 00:15:44,290 我々はまだ目的を掲げることができ 382 00:15:44,290 --> 00:15:45,230 それはとても良いモノで 383 00:15:45,230 --> 00:15:47,895 全体的な現実の平凡さのようなものは 384 00:15:47,895 --> 00:15:50,500 我々の存在のコアで感じるような平凡さと 385 00:15:50,500 --> 00:15:52,812 きちんと共鳴しているのです 386 00:15:52,812 --> 00:15:54,446 皆さんも感じておられるはずです 387 00:15:54,446 --> 00:15:55,550 皆さんは全員特別なのですが 388 00:15:55,550 --> 00:15:57,872 ある種 密かに平凡なのです 389 00:15:57,872 --> 00:15:59,261 そうですよね? 390 00:15:59,261 --> 00:16:01,198 (笑)(拍手) 391 00:16:01,198 --> 00:16:05,250 さて ともかく 皆さんはこう言うかもしれませんね 存在の謎の難問は 392 00:16:05,250 --> 00:16:06,668 馬鹿らしい謎を煽っているだけだと 393 00:16:06,668 --> 00:16:10,535 皆さんは宇宙の存在に驚きませんし 394 00:16:10,535 --> 00:16:12,170 良い仲間に恵まれています 395 00:16:12,170 --> 00:16:14,386 バートランド・ラッセルが言うには 396 00:16:14,386 --> 00:16:18,041 「宇宙はただそこにあるんだ それだけさ」 397 00:16:18,041 --> 00:16:19,442 どうしようもない事実です 398 00:16:19,442 --> 00:16:22,276 偉大な達観したおどけ者であり 私の教授でコロンビア大学の 399 00:16:22,276 --> 00:16:23,985 シドニー・モーゲンベッサーは 400 00:16:23,985 --> 00:16:25,602 「モーゲンベッサー先生 なぜ無ではなく 401 00:16:25,602 --> 00:16:28,098 何かが『ある』のでしょう?」と尋ねると 402 00:16:28,098 --> 00:16:30,248 「えー もし何も無かったとしても 403 00:16:30,248 --> 00:16:32,244 君は満足しないだろうからね」 と答えました 404 00:16:32,244 --> 00:16:35,993 ですので―(笑)―はいはい 405 00:16:35,993 --> 00:16:38,355 皆さんは驚かなくても 私は気にしません 406 00:16:38,355 --> 00:16:41,328 でも結論として 407 00:16:41,328 --> 00:16:43,606 皆さんが絶対に驚くようなことを お話しします 408 00:16:43,606 --> 00:16:46,273 それは このTEDカンファレンスで出会った 409 00:16:46,273 --> 00:16:48,586 全ての輝くばかりの素晴らしい人々を 410 00:16:48,586 --> 00:16:50,800 驚かしたものなのです  ―それは― 411 00:16:50,800 --> 00:16:55,302 「私は人生で一度も携帯電話を持ったことがない」 412 00:16:55,302 --> 00:16:57,179 ありがとうございました 413 00:16:57,179 --> 00:17:01,179 (拍手)