WEBVTT 00:00:07.080 --> 00:00:10.586 地震はいつの世も 恐ろしい現象でしたが 00:00:10.586 --> 00:00:14.051 都市が発達して ビル崩壊の危険性が増すと 00:00:14.051 --> 00:00:17.720 ますます命にかかわるようになりました 00:00:17.720 --> 00:00:20.279 なぜ 地震でビルは崩壊するのでしょうか 00:00:20.279 --> 00:00:22.756 またそれを防ぐにはどうしたら いいのでしょうか? 00:00:22.756 --> 00:00:24.994 パニック映画を見たことがあれば 00:00:24.994 --> 00:00:26.101 ビルの崩壊は 00:00:26.101 --> 00:00:29.573 その足元の地面が 激しく揺れたり ひび割れたりすることで 00:00:29.573 --> 00:00:32.977 起こるのだと考えるでしょう 00:00:32.977 --> 00:00:35.298 でも 実はそうではありません 00:00:35.298 --> 00:00:39.374 まず ビルの多くは断層線上に あるわけではなく 00:00:39.374 --> 00:00:43.966 移動する構造プレートはビルの基盤より さらに深いところにあります 00:00:43.966 --> 00:00:46.316 では 本当は何が起きているのでしょうか? 00:00:46.316 --> 00:00:50.077 地震の実態や ビルにもたらされる影響は 00:00:50.077 --> 00:00:52.065 もう少し複雑なのです 00:00:52.065 --> 00:00:55.282 建築家やエンジニアは 00:00:55.282 --> 00:00:59.778 柱と梁の代わりに 平面上に配列されたラインや 00:00:59.778 --> 00:01:05.432 ビルの質量を表す球がついた 棒付キャンディ型のモデルを使います 00:01:05.432 --> 00:01:09.280 ここまで単純化しても こういったモデルはとても役立ちます 00:01:09.280 --> 00:01:12.009 それは地震に対して 建物がどう反応するかは 00:01:12.009 --> 00:01:14.553 基本的に物理学の問題だからです 00:01:14.553 --> 00:01:16.868 地震によって引き起こされる ビルの崩壊は 00:01:16.868 --> 00:01:20.332 実は地震そのものが 原因なのではありません 00:01:20.332 --> 00:01:23.259 そうではなく ビルの下にある地面が動くと 00:01:23.259 --> 00:01:26.284 ビルの基盤と 低い階にずれが生じて 00:01:26.284 --> 00:01:28.975 残りの構造に衝撃波を送るので 00:01:28.975 --> 00:01:31.834 ビル全体が左右に揺れ動くのです 00:01:31.834 --> 00:01:36.136 この振動の強さは 主に2つの要素に依存しています 00:01:36.136 --> 00:01:39.196 底部に集中したビルの質量と 00:01:39.196 --> 00:01:40.568 ビルの剛性 00:01:40.568 --> 00:01:44.595 つまり 一定の変位を生じさせるのに 必要な力です 00:01:44.595 --> 00:01:48.155 ビルの剛性は材質や 柱の形にも左右されますが 00:01:48.155 --> 00:01:51.207 主に高さが関わってきます 00:01:51.207 --> 00:01:54.105 比較的低いビルは固くて しなりませんが 00:01:54.105 --> 00:01:57.347 高層ビルは もっと曲がりやすくなっています 00:01:57.347 --> 00:02:00.557 それなら なるべく しなることがないように 00:02:00.557 --> 00:02:02.843 低いビルを建てればいいと思うかもしれませんね 00:02:02.843 --> 00:02:08.699 しかし 1985年のメキシコシティの地震は そうではない事を教えてくれます 00:02:08.699 --> 00:02:09.812 地震の最中に崩壊したのは 00:02:09.812 --> 00:02:14.022 6階から15階の高さのビルが 多かったのです 00:02:14.022 --> 00:02:17.999 ここで不思議なことは 周囲の低い建物は崩壊せず 00:02:17.999 --> 00:02:22.405 また15階より高い建物も 比較的被害は小さく 00:02:22.405 --> 00:02:24.555 中間の高さの建物が 00:02:24.555 --> 00:02:28.730 地震そのものよりも もっと激しく振れて 崩壊したことです 00:02:28.730 --> 00:02:30.590 なぜそんなことが 起こったのでしょうか? 00:02:30.590 --> 00:02:34.322 答えは固有振動数として知られる 特性に関係しています 00:02:34.322 --> 00:02:35.988 周期的に振動するシステムにおいて 00:02:35.988 --> 00:02:41.581 周波数とは1秒間における往復運動の 回数を意味します 00:02:41.581 --> 00:02:43.731 これは周期 つまり1回のサイクルにかかる 00:02:43.731 --> 00:02:47.520 秒数の逆数になります 00:02:47.520 --> 00:02:51.763 ビルの質量と剛性によって 固有振動数が決まり 00:02:51.763 --> 00:02:55.330 その振動数付近に 振動が集中しがちなのです 00:02:55.330 --> 00:03:00.277 ビルの質量が増すと 固有振動の振動数が低下しますが 00:03:00.277 --> 00:03:03.835 一方で 剛性が増すと 振動が速くなります 00:03:03.835 --> 00:03:06.192 ですから 次の方程式は 双方の関係を表しています 00:03:06.192 --> 00:03:09.911 剛性と固有振動数は お互いに比例し 00:03:09.911 --> 00:03:14.184 反対に質量と固有振動数は 反比例します 00:03:14.184 --> 00:03:17.658 メキシコシティで起こったのは 共振と呼ばれる現象で 00:03:17.658 --> 00:03:20.198 地震波の持つ振動数が 00:03:20.198 --> 00:03:24.535 中高層ビルの固有振動数と たまたま一致したのです 00:03:24.535 --> 00:03:27.456 すると振り子のタイミングあわせて 揺らした時のように 00:03:27.456 --> 00:03:31.211 1回ごとの地震の波が 現在の揺れている方向に向かって 00:03:31.211 --> 00:03:33.052 ビルの振動を増幅するため 00:03:33.052 --> 00:03:36.616 振れがさらに大きくなり 00:03:36.616 --> 00:03:41.303 最初のずれよりも 遥かに大きくなってしまいます 00:03:41.303 --> 00:03:44.685 現在 エンジニアは 地質学者や地震学者と共に 00:03:44.685 --> 00:03:48.702 共振によるビルの崩壊を防ぐために 00:03:48.702 --> 00:03:51.626 ビルを建てる場所の 00:03:51.626 --> 00:03:55.023 土質や断層タイプといった 要因を考慮し 00:03:55.023 --> 00:03:57.947 過去の地震データを基に 地震の振動数を予測します 00:03:57.947 --> 00:04:00.997 低周波の揺れだと 00:04:00.997 --> 00:04:02.865 高層で柔軟性の高いビルの方が ダメージを受け 00:04:02.865 --> 00:04:05.789 反対に高周波の揺れは 00:04:05.789 --> 00:04:08.553 低く より固いビルにとっての 脅威となります 00:04:08.553 --> 00:04:11.316 エンジニアは衝撃を吸収する 方法も考案し 00:04:11.316 --> 00:04:14.947 画期的なシステムで 変形を防ぎます 00:04:14.947 --> 00:04:17.423 基礎免震は 柔軟なレイヤーを採用する事で 00:04:17.423 --> 00:04:21.346 基礎がずれても 他の部分に影響することを防ぎます 00:04:21.346 --> 00:04:25.225 同調質量ダンパシステムは 位相をずらして 00:04:25.225 --> 00:04:28.536 固有振動数の振動を与えることで 振動を相殺させることで 00:04:28.536 --> 00:04:30.303 共振を防ぐのです 00:04:30.303 --> 00:04:33.835 つまり 倒れないのは 一番頑丈な建物ではなく 00:04:33.835 --> 00:04:35.477 よく考えて設計されたビルなのです