0:00:00.903,0:00:07.804 (舌を鳴らす音) 0:00:07.804,0:00:12.420 私は生まれつき[br]両眼性網膜芽細胞腫― 0:00:12.420,0:00:14.353 網膜がんを患っていました 0:00:15.313,0:00:18.419 右目は7ヶ月のときに 0:00:18.419,0:00:21.336 摘出されました 0:00:21.336,0:00:25.053 13ヶ月のときには[br]左目が摘出されました 0:00:26.003,0:00:31.148 この手術から目を覚ますとすぐに 0:00:31.148,0:00:34.780 私はベビーベッドから降りて 0:00:34.780,0:00:38.889 小児用集中治療室を[br]歩き回り始めたといいます 0:00:39.829,0:00:43.208 こんな仕打ちをした張本人を[br]探していたのでしょう 0:00:43.208,0:00:45.066 (笑) 0:00:46.966,0:00:50.127 明らかに 両目がなくても 0:00:50.127,0:00:53.702 集中治療室を歩き回るのに[br]問題はなかったようです 0:00:53.702,0:00:56.337 問題は誰かに見つかることでした 0:00:57.557,0:01:00.731 目が見えないことそのものよりも 0:01:00.731,0:01:04.221 「盲目」の与える印象の方がずっと― 0:01:04.221,0:01:07.753 目が不自由な人々にとっては [br]恐ろしいものです 0:01:09.283,0:01:13.230 「盲目」に対する印象について[br]考えてみて下さい 0:01:13.230,0:01:17.296 私が舞台に上がってきたときの[br]あなたの反応について― 0:01:17.296,0:01:21.347 自分やあなたの愛する人の目が[br]見えなくなることについて 0:01:21.347,0:01:25.264 考えてみて下さい 0:01:25.264,0:01:30.704 その恐怖とは 私たち多くの者にとって[br]理解出来ないことです 0:01:30.704,0:01:33.159 なぜなら 盲目であることは 0:01:33.159,0:01:38.829 無知や無自覚の縮図であり 0:01:38.829,0:01:46.630 未知の暗闇という荒廃に[br]憐れにも晒されることだからです 0:01:46.630,0:01:48.460 なんと詩的なのでしょう 0:01:49.440,0:01:52.801 幸いなことに[br]私の両親は詩的ではなく 0:01:52.801,0:01:54.676 実際的でした 0:01:54.676,0:02:01.293 両親は無知や恐れは[br]考え方の問題に過ぎず 0:02:01.293,0:02:05.282 考え方は変えられると[br]理解していました 0:02:05.282,0:02:08.983 両親は私が皆と同じような 0:02:08.983,0:02:13.814 自由と責任を享受して育つべきだと[br]考えていました 0:02:13.814,0:02:16.275 両親に言わせれば[br]いつか私は実家を出ていき― 0:02:16.275,0:02:19.062 実際18歳で私は家を出ました 0:02:19.062,0:02:21.035 税金も払うのだと 0:02:21.035,0:02:23.875 ええ 確かに―[br](笑) 0:02:25.605,0:02:30.786 両親は愛情と恐れの区別を[br]知っていたのです 0:02:30.786,0:02:35.710 私たちは恐れによって[br]困難を前にすると動けなくなります 0:02:35.710,0:02:38.612 両親は盲目であるが故に[br]大きな困難に直面するとわかっていました 0:02:38.612,0:02:41.666 私は恐れを知らずに育てられました 0:02:41.666,0:02:45.415 両親が私の自由こそを[br]最優先にしたのは 0:02:45.415,0:02:48.535 それが愛情のなすべきことだからです 0:02:48.535,0:02:52.764 さて 先に進みますが[br]私は今どうやって生活しているでしょう? 0:02:54.044,0:02:57.419 世界は小児用集中治療室よりも[br]ずっと大きいものです 0:02:57.419,0:03:01.320 幸い 私には信頼できる長い杖があります 0:03:01.320,0:03:04.014 多くの盲目の人が使うものよりも[br]長いものです 0:03:04.014,0:03:07.357 私はこれを「自由の杖」と呼んでいます 0:03:07.357,0:03:08.913 これのおかげで 例えば 0:03:08.913,0:03:14.529 舞台からみっともなく[br]退場しなくてすむのです (笑) 0:03:15.279,0:03:17.242 ここに舞台の端が見えます 0:03:18.282,0:03:21.509 舞台上でスピーカーに起こった 0:03:21.509,0:03:25.100 あらゆる失敗を[br]教えてもらいましたが 0:03:25.100,0:03:27.121 新しい前例を作るのもいいでしょう 0:03:28.491,0:03:30.425 しかし それ以上に― 0:03:30.425,0:03:33.552 私が舞台に上がってくるときに[br]舌を鳴らしている音が― 0:03:33.552,0:03:34.619 (舌を鳴らす音) 0:03:34.619,0:03:36.488 聞こえたでしょう 0:03:36.488,0:03:39.666 これらの一瞬の音は 0:03:39.666,0:03:44.746 発せられると[br]周囲の面にはねかえって 0:03:44.746,0:03:46.118 コウモリの反響定位(ソナー)のように 0:03:46.118,0:03:51.738 パターンをなして[br]情報となって返ってきます 0:03:51.738,0:03:54.225 あなた方にとっての光のようなものです 0:03:55.135,0:03:58.793 私の脳は 両親のおかげで 0:03:58.793,0:04:04.098 視覚野でイメージを形成するように[br]活性化されています 0:04:04.098,0:04:07.338 これは結像系と呼ばれるものですが 0:04:07.338,0:04:11.288 あなた方の脳と同様に[br]情報から像を結ぶのです 0:04:11.288,0:04:13.854 このプロセスを私は[br]フラッシュソナーと呼んでいます 0:04:14.604,0:04:20.322 これは私が盲目であることを通じて[br]学んだ「見る方法」なのです 0:04:20.322,0:04:23.498 困難と言う名の 0:04:23.498,0:04:27.538 未知の暗闇の中を[br]歩んでいくために 0:04:27.538,0:04:31.439 これによって ついたあだ名は 0:04:31.439,0:04:35.154 「すごいバットマン」です 0:04:35.154,0:04:37.708 「バットマン」はいいでしょう 0:04:37.708,0:04:41.098 コウモリもバットマンもかっこいいものです 0:04:41.098,0:04:46.766 ですが 私は自分を「すごい」と[br]考えるようには育てられませんでした 0:04:47.856,0:04:51.884 私は常に自分のことを[br]他の誰もと同じように 0:04:51.884,0:04:57.300 困難と言う名の未知の暗闇を[br]歩む者だと考えてきました 0:04:57.300,0:05:00.718 これが そんなに「すごい」ことでしょうか? 0:05:00.718,0:05:04.014 私は目を使わずに[br]脳を使うまでのことです 0:05:04.834,0:05:07.317 誰かが どこかで[br]「それはすごい」とか 0:05:07.317,0:05:11.144 「自分はそこには上がれない」と[br]考えているでしょうが 0:05:11.144,0:05:14.183 そのことについて考えてみましょう 0:05:15.013,0:05:17.739 何かの困難に 0:05:17.739,0:05:22.428 直面したことがある人は 0:05:22.428,0:05:24.160 手を挙げてください 0:05:25.470,0:05:27.490 おお いいでしょう 0:05:27.490,0:05:30.462 たくさん手が挙がっていますね[br]数えてみましょう 0:05:30.462,0:05:32.503 (舌を鳴らす音) 0:05:33.713,0:05:36.731 少し時間がかかります[br](舌を鳴らす音) (笑) 0:05:36.731,0:05:38.205 たくさん挙がっていますね 0:05:38.205,0:05:40.609 挙げておいてください[br]良い考えがあります 0:05:40.609,0:05:46.302 困難を切り抜けるのに[br]脳を使った人は 0:05:46.302,0:05:49.243 手を下ろしてください 0:05:50.423,0:05:53.024 さて まだ手を挙げているあなたは 0:05:53.024,0:05:58.262 非常に独特の困難をお持ちの方です[br](笑) 0:05:58.262,0:06:00.839 私たちは皆 困難に直面し 0:06:00.839,0:06:04.577 未知の暗闇に直面します 0:06:04.577,0:06:08.920 これは多くの困難にはびこっており[br]私たちの多くが恐れるものです 0:06:08.920,0:06:12.773 しかし 私たちには脳があります 0:06:12.773,0:06:17.069 こうした困難を切り抜けていくために 0:06:17.069,0:06:23.456 私たちを活性化し 導いてくれるものです[br]いいですね? 0:06:24.151,0:06:28.284 これが良い例です[br]私はここに上がってきましたが― 0:06:28.284,0:06:35.254 (舌を鳴らす音)[br]誰も演壇の場所を 0:06:35.254,0:06:38.152 教えてくれませんでした 0:06:38.152,0:06:41.066 TEDの人たちは信用できませんね 0:06:42.796,0:06:44.653 「自分で見つけてください」[br]と言われました 0:06:44.653,0:06:48.063 ですから―[br](笑) 0:06:49.413,0:06:52.525 音響装置に関するフィードバックは[br]「全く役に立たなかった」ですね 0:06:52.525,0:06:55.934 皆さんに挑戦して頂きましょう 0:06:55.934,0:06:59.850 少しの間 目を閉じていただけますか? 0:06:59.850,0:07:03.507 ソナーを少し覚えてみましょう 0:07:03.507,0:07:05.017 私が音を鳴らします 0:07:05.017,0:07:08.562 私はこのパネルを掲げますが[br]動かすことはしません 0:07:08.562,0:07:11.486 少し音を聞いてみてください 0:07:13.236,0:07:19.228 しーっ 0:07:19.228,0:07:21.293 よし あまり面白くはありませんよ 0:07:21.293,0:07:24.032 では同じ音を鳴らして[br]パネルを動かすと 0:07:24.032,0:07:25.816 どうなるでしょうか 0:07:27.146,0:07:33.111 しーっ[br](音が高くなったり低くなったりする) 0:07:38.266,0:07:41.609 お前はダークサイドの力を[br]知らないのだ 0:07:41.609,0:07:43.421 (笑) 0:07:43.421,0:07:45.812 どうしても我慢できなくてね 0:07:47.832,0:07:50.479 さて 目を閉じたままで 0:07:50.479,0:07:52.327 違いがわかりましたか? 0:07:52.327,0:07:55.425 それでは 確かめてみましょう 0:07:55.425,0:07:57.224 あなた方への挑戦です 0:07:57.224,0:08:02.308 パネルを動かし始めたと思ったら[br]「今」と言ってください 0:08:02.308,0:08:05.300 いいですね?[br]リラックスしてください 0:08:08.160,0:08:11.823 しーっ 0:08:11.823,0:08:13.888 観客:今[br]ダニエル・キッシュ:すばらしい 0:08:13.888,0:08:15.381 目を開けてください 0:08:15.381,0:08:19.915 いいでしょう[br]ほんの数センチですが 0:08:19.915,0:08:22.045 違いがわかるものですね 0:08:22.045,0:08:24.488 皆さんはソナーを体験したのです 0:08:25.528,0:08:28.547 目が見えなくなっても 大丈夫ですよ (笑) 0:08:28.547,0:08:31.240 それでは この活性化のプロセスに 0:08:31.240,0:08:34.583 時間と注意を傾けると 0:08:34.583,0:08:39.111 どうなるか見てみましょう 0:08:39.111,0:08:42.292 (ビデオ) フアン・ルイス:[br]みんなは目で見るけど― 0:08:42.292,0:08:45.497 僕たちは耳で見るんだ 0:08:45.497,0:08:48.561 ブライアン・ブッシュウェイ:[br]もっと楽しめるとかいう問題ではなくて 0:08:48.561,0:08:51.487 違う楽しみ方ができるんだ 0:08:51.487,0:08:54.529 ショーン・マーソレ:ここを横切って―[br]キッシュ:そうだね 0:08:54.529,0:08:58.337 マーソレ:それから[br]だんだんと下っていくわ 0:08:58.337,0:08:59.950 キッシュ:そう![br]マーソレ:すごいわ 0:08:59.950,0:09:04.246 本当に車が見えるみたい[br]びっくり! 0:09:09.981,0:09:12.048 J. ルシャール:目が見えないのが好きなんだ 0:09:12.048,0:09:15.716 機会があったとしても[br]視力を手に入れたいとは思わないよ 0:09:15.716,0:09:19.176 ルイス:目標が高ければ高いほど[br]もっと多くの障害が待っている 0:09:19.176,0:09:21.777 その目標を乗り越えたときこそ― 0:09:21.777,0:09:23.425 勝利なんだ 0:09:23.425,0:09:28.580 [イタリア語] 0:09:28.580,0:09:38.355 (拍手) 0:09:38.355,0:09:42.245 キッシュ:さて 彼らは怖がっていましたか? 0:09:42.245,0:09:44.067 そんなことないですね 0:09:44.067,0:09:46.853 私たちは活性化トレーニングを 0:09:46.853,0:09:50.382 何万人もの様々なバックグラウンドの[br]目が不自由な人や 0:09:50.382,0:09:52.820 目が見える人たちに[br]およそ40か国で 行いました 0:09:52.820,0:09:57.302 目が不自由な人が見えるようになると 0:09:57.302,0:10:00.320 目が見える人たちは 彼らの見え方を 0:10:00.320,0:10:05.377 恐れずに もっとはっきりと[br]知りたいと思うようになります 0:10:06.627,0:10:12.533 なぜなら これが私たち皆に備わっている[br]すごい可能性を表しているからです 0:10:12.533,0:10:19.046 いかなる暗闇の中でも[br]どんな困難をも乗り越えて― 0:10:19.046,0:10:22.332 想像だにしないものを[br]見つけ出す能力が 0:10:22.332,0:10:27.695 活性化すれば得られるのです 0:10:27.695,0:10:33.709 皆さんが生き生きとした人生を[br]歩まれますように 0:10:33.709,0:10:35.474 ありがとうございました 0:10:35.474,0:10:42.695 (拍手) 0:10:43.716,0:10:46.162 クリス・アンダーソン:[br]ダニエル ありがとう 0:10:46.162,0:10:51.297 見てお分かりのように[br]TEDの観衆が沸いています 0:10:51.297,0:10:54.281 素晴らしいトークをどうもありがとう 0:10:54.281,0:10:59.530 あなたが内部に構築している[br]あなたの世界について1つ質問です 0:10:59.530,0:11:05.095 目が不自由な人の持っていない物が[br]世界にはあると考えられていますが 0:11:05.095,0:11:06.819 あなたの世界はどんな感じですか? 0:11:06.819,0:11:09.582 私たちになくて あなたにあるものは[br]何でしょうか? 0:11:09.582,0:11:12.717 キッシュ:360度のパノラマの視界です 0:11:12.717,0:11:16.618 私のソナーは前も後ろも[br]把握できます 0:11:16.618,0:11:18.499 曲がり角も把握できるし 0:11:18.499,0:11:21.238 表面も把握できます 0:11:22.448,0:11:27.229 少しぼやけた三次元構造[br]といったところでしょうか 0:11:27.229,0:11:31.269 今はインストラクターになっている[br]私の生徒の1人は 0:11:31.269,0:11:34.195 視力を失ってから 数ヶ月後に 0:11:34.195,0:11:36.447 3階建ての自宅に座っていると 0:11:36.447,0:11:40.464 家の中の音がすべて聞こえることに[br]気づいたといいます 0:11:40.464,0:11:44.643 会話や台所の物音[br]バスルームの物音― 0:11:44.643,0:11:47.337 ずっと階下の音や[br]何部屋も向こうの音もです 0:11:47.337,0:11:50.889 X線で透視しているようだったそうです 0:11:50.889,0:11:54.511 アンダーソン:今いるこの場所は[br]どのように描いているのでしょう? 0:11:54.511,0:11:57.530 この舞台をどう思い描いていますか? 0:11:57.530,0:12:03.033 キッシュ:大音量のスピーカーが[br]たくさんありますね 0:12:04.453,0:12:08.709 面白いことに[br]誰かが物音を立てると― 0:12:08.709,0:12:13.864 笑ったり 身動きしたり[br]飲み物を飲んだり 鼻をかんだり 0:12:13.864,0:12:16.557 何であっても 私には聞こえるのです 0:12:16.557,0:12:19.738 1人ひとりが行う[br]ほんのわずかな動きでも聞こえます 0:12:19.738,0:12:22.501 私の注意力が必ず捉えます 0:12:22.501,0:12:24.355 ソナーという点から言うと 0:12:24.355,0:12:30.209 部屋の大きさや[br]舞台を取り囲む観客が描く曲線 0:12:30.209,0:12:33.847 天井の高さなど 0:12:33.847,0:12:37.127 申し上げたように[br]三次元構造が 0:12:37.127,0:12:38.544 私を取り囲んでいるのです 0:12:38.544,0:12:40.830 アンダーソン:ダニエル[br]あなたは私たち全員に 0:12:40.830,0:12:43.655 世界の違う見方を教えてくれました 0:12:43.655,0:12:45.825 本当にありがとう[br]キッシュ:ありがとう 0:12:45.825,0:12:50.214 (拍手)