1 00:00:10,032 --> 00:00:14,474 大昔には 石器時代や 青銅器時代がありました 2 00:00:14,474 --> 00:00:18,070 ならば現在は “プラスチック時代”のまっただ中です 3 00:00:18,070 --> 00:00:23,177 世界で生産されるプラスチックの量は 年間3億トン 4 00:00:23,177 --> 00:00:29,530 その一部は川や水路に流れ 最終的には海に漂着します 5 00:00:29,530 --> 00:00:33,216 例えば 店で売っている ビスケットを買うとしましょう 6 00:00:33,216 --> 00:00:36,425 そのビスケットは ビニール袋に入っています 7 00:00:36,425 --> 00:00:39,343 それがトレイに入って さらに紙箱に入っています 8 00:00:39,343 --> 00:00:42,362 箱は透明ラップで包まれていて 買うと ポリ袋に入れられます 9 00:00:42,362 --> 00:00:46,263 有害な核廃棄物じゃなくて ただのビスケットなのに 10 00:00:46,263 --> 00:00:53,337 ところで この写真は僕です ダイビングが趣味なんです 11 00:00:53,337 --> 00:00:57,802 休暇中に撮った 僕の写真を 何枚か持ってきました 12 00:00:57,802 --> 00:01:04,709 ここは美しいアゾレス諸島ですが 浜辺はこんな状態です 13 00:01:04,709 --> 00:01:09,068 プラスチックの破片だらけ 14 00:01:09,068 --> 00:01:12,385 日光と波に 何年もさらされると 15 00:01:12,385 --> 00:01:18,266 プラスチックは細かく砕けますが 分解はしません 16 00:01:18,778 --> 00:01:28,037 とても興味深いことに 赤い破片だけは なぜか少ない 17 00:01:28,410 --> 00:01:31,976 その理由は 鳥たちには 赤い破片が― 18 00:01:31,976 --> 00:01:35,548 一番おいしそうに見えるからです 19 00:01:35,548 --> 00:01:39,467 結末は ご覧のとおり 20 00:01:39,467 --> 00:01:46,140 海上を漂うゴミは 基本的に この5か所の海流の渦に集まります 21 00:01:46,320 --> 00:01:50,785 “環流”と呼ばれるこの場所で 海洋生物がゴミで命を落とし 22 00:01:50,785 --> 00:01:57,869 食物連鎖が PCB や DDT で汚染されるのです 23 00:01:58,039 --> 00:02:01,828 我々人間も この食物連鎖に無縁ではありません 24 00:02:02,982 --> 00:02:05,925 ギリシャで海に潜ったときのことです 25 00:02:06,109 --> 00:02:11,279 魚よりもポリ袋の数の方が多い 場所を見つけました 26 00:02:11,279 --> 00:02:14,799 その光景に僕は驚いて すごく悲しくなりました 27 00:02:14,876 --> 00:02:19,334 一緒にいた スコットランド人の仲間は 僕にこう言ったんです 28 00:02:19,334 --> 00:02:23,906 “ここは クラゲが多いなあ 1000体ぐらいいるかな” 29 00:02:23,906 --> 00:02:26,710 もちろん クラゲではありません 30 00:02:26,710 --> 00:02:31,039 僕が環境問題を話すことは めったにないんですよ 31 00:02:31,060 --> 00:02:34,212 “今すぐ取り組むことじゃない”と 考えるのが普通でしょう 32 00:02:34,257 --> 00:02:36,356 “自分の子供の世代の課題だ” 33 00:02:36,356 --> 00:02:39,387 でも今 僕は 問題に気づいてしまいました 34 00:02:41,264 --> 00:02:44,306 なぜゴミ掃除をしないのか 35 00:02:44,306 --> 00:02:45,953 現在のプラスチックゴミの研究者が 36 00:02:45,953 --> 00:02:50,392 ゴミの回収活動を目指すよりは 教育活動などで汚染の予防に注力すべきだと 37 00:02:50,409 --> 00:02:55,794 考える理由は幾つもあります 38 00:02:55,921 --> 00:03:01,012 掃除が必要な巨大な環流は 5か所もあって それぞれが動いています 39 00:03:01,123 --> 00:03:09,201 大きさも廃漁網から 分子サイズまでさまざまで 混獲や廃棄物も問題です 40 00:03:09,336 --> 00:03:12,966 回収したプラスチックはすべて 陸揚げしなければなりません 41 00:03:12,966 --> 00:03:16,228 経済的に実行可能であることが 大切ですが 42 00:03:16,228 --> 00:03:24,094 実際にはどれだけのプラスチックが環流を 漂っているかもわかっていません 43 00:03:24,094 --> 00:03:28,736 去年 僕が散髪に行こうと出かけた時に 44 00:03:28,846 --> 00:03:36,527 ちょっとひらめいたことがありました 正直 たまにしか髪を切らないのに 45 00:03:36,639 --> 00:03:39,076 なんと お年寄りまで 水路にゴミを捨てていたのを見たんです 46 00:03:39,076 --> 00:03:44,551 僕は“年齢に関係なく 学ばない人もいるんだ”と思いました 47 00:03:44,551 --> 00:03:48,474 ごみの削減と回収の 両方が同時に必要です 48 00:03:48,474 --> 00:03:51,236 すぐにやらなければいけないんです 49 00:03:51,236 --> 00:03:53,611 まずは単純に 懸案事項と課題を挙げました 50 00:03:53,611 --> 00:03:58,694 例のお年寄りを見た直後に たまたま 学校で宿題が出た 51 00:03:58,694 --> 00:04:01,244 じっくり考える チャンスが来たんです 52 00:04:01,244 --> 00:04:05,441 どんな選択肢があるのか 友達と一緒に考えました 53 00:04:05,441 --> 00:04:07,616 僕にとっては 絶好の機会です 54 00:04:07,616 --> 00:04:12,408 プラスチックごみの海洋汚染について 根本的に調べ直しました 55 00:04:12,408 --> 00:04:16,911 ギリシャに行き マンタの形をした網を持っていきました 56 00:04:16,911 --> 00:04:20,099 プラスチックのサンプルを集めるとき よく使います 57 00:04:20,099 --> 00:04:24,047 おかげで着替えの服は 全然持っていけませんでした 58 00:04:24,047 --> 00:04:27,309 格安飛行機で 荷物の重量制限が厳しかったからです 59 00:04:27,309 --> 00:04:32,803 このトロール網は自作です 網の目は通常よりも 15倍細かいんです 60 00:04:32,803 --> 00:04:36,535 そして発見したのですが 61 00:04:36,535 --> 00:04:42,010 小さなゴミの破片は 大きな破片よりも40倍も多いのです 62 00:04:42,010 --> 00:04:46,710 細かいプラスチックの粒子は 海水から取り除きたいのですが 63 00:04:46,710 --> 00:04:52,175 そこで一緒にプランクトンまで すくい上げてはいけません 64 00:04:52,175 --> 00:04:57,978 幸いにも プランクトンとプラスチックは 遠心力で分別できます 65 00:04:57,978 --> 00:05:02,753 でも 動物性プランクトンが生存できる 重力の限界は まだ不明です 66 00:05:02,753 --> 00:05:11,052 トロール網を再度 海に持ってきましたが 今度はボートを積み忘れました 67 00:05:11,052 --> 00:05:16,467 それでも実験をしてみると 50G の環境でもプランクトンは生きていました 68 00:05:16,467 --> 00:05:20,470 遠心分離器は問題なく使えます 69 00:05:20,470 --> 00:05:24,544 どれほど深い水域まで ゴミの除去作業を行うかを調べるために 70 00:05:24,544 --> 00:05:28,329 新しい道具をまた作りました “積み重ね型トロール網”です 71 00:05:28,329 --> 00:05:33,291 このトロール網は基本的に 10個まで積み重ねられます 72 00:05:33,291 --> 00:05:36,148 こんな感じで 北海で実験しました 73 00:05:36,148 --> 00:05:39,972 忘れられない体験です 船酔いしなかったのは 僕だけでした 74 00:05:39,972 --> 00:05:47,547 実験しているうちに 自慢の網が壊れてしまいました 75 00:05:47,547 --> 00:05:52,733 それでも実験は続けました ゴミの全体量を まず把握しないと― 76 00:05:52,733 --> 00:05:55,782 ゴミを除去する方法も 考えられないからです 77 00:05:55,782 --> 00:06:00,809 その時点で 僕が聞いていた見積もりは 78 00:06:00,809 --> 00:06:05,429 数十万トンから1億トンの間と いうことでした 79 00:06:05,890 --> 00:06:11,068 僕は もっと科学的で精密な予測が 必要だと思いました 80 00:06:11,068 --> 00:06:15,511 そこでデルフトやユトレヒトやハワイの 大学教授に問い合わせて 81 00:06:15,511 --> 00:06:20,907 海上にどれほどの量の プラスチックごみがあるのか 82 00:06:20,907 --> 00:06:24,677 推定するのを手伝ってもらいました 83 00:06:24,677 --> 00:06:35,717 その結果 2020年には725万トンもの量になると 予測できました 84 00:06:35,717 --> 00:06:42,924 重量で言えば エッフェル塔1000個分の ごみが海に漂っていることになります 85 00:06:42,924 --> 00:06:47,888 “太平洋ゴミベルト”を発見した チャールズ・ムーアの説では 86 00:06:47,888 --> 00:06:55,237 この海域のゴミ除去には 7万9000年かかるそうです 87 00:06:55,237 --> 00:07:00,320 でも僕は 太平洋ゴミベルトを― 88 00:07:00,320 --> 00:07:05,991 5年で完全にきれいにできると 思っています 89 00:07:05,991 --> 00:07:12,262 7万8995年も違いますね 90 00:07:14,592 --> 00:07:18,734 ごみを除去するこれまでの方法は このように 91 00:07:18,734 --> 00:07:23,089 船から プラスチックを集める網を引きます 92 00:07:23,089 --> 00:07:27,174 広大な海域をカバーするには 船は多いに越したことはありません 93 00:07:27,174 --> 00:07:30,900 船と船の間に浮きを伸ばせば 94 00:07:30,900 --> 00:07:33,511 カバーできる海域が断然広がります 95 00:07:33,511 --> 00:07:37,540 ゴミを単に集めるだけではダメで 海から引き揚げることが肝心ですから 96 00:07:37,540 --> 00:07:43,702 網のサイズという問題はなく 小さな破片も逃さずに済みます 97 00:07:43,702 --> 00:07:47,739 それに 全ての生物は浮きの下を 通り抜けるので 98 00:07:47,739 --> 00:07:54,954 混獲は 99.98パーセントまで 防ぐことができます 99 00:07:55,185 --> 00:08:00,042 世界の現状を 少しでも変えたいなら 100 00:08:00,042 --> 00:08:03,871 自分たちの発想も 変えなければなりません 101 00:08:03,871 --> 00:08:11,142 例えば PCB をプラスチックで 吸収するのは悪くない案です 102 00:08:11,773 --> 00:08:14,303 むしろ いいことです 103 00:08:14,471 --> 00:08:19,228 プラスチックを全部 海から引き揚げて 同時に何トンもの― 104 00:08:19,228 --> 00:08:24,290 有機的な汚染物質も 海から除去しましょう 105 00:08:24,290 --> 00:08:31,694 ではどうすれば 環境的 財政的 そして輸送費の 負担を減らせるでしょうか 106 00:08:31,694 --> 00:08:34,948 今まで有害無益と 思っていたものを活用しましょう 107 00:08:34,948 --> 00:08:41,187 常に流れている海流が 問題を解決します 108 00:08:41,187 --> 00:08:49,526 海上を移動しなくても もともと海には 海流がありますね 109 00:08:49,526 --> 00:08:54,057 だからこの「船」を海底に固定して 海流が通り過ぎるようにしましょう 110 00:08:54,057 --> 00:09:01,337 海流のエネルギーを使えば お金も人手もかからず CO2も出ません 111 00:09:01,337 --> 00:09:05,332 このプラットフォームは もちろん完全に自律式で 112 00:09:05,332 --> 00:09:09,024 動力は 太陽光と海流と 波のエネルギーを使います 113 00:09:09,024 --> 00:09:14,372 アゾレス諸島に潜りに行って 思いついたアイデアです 114 00:09:14,372 --> 00:09:18,859 船の形はマンタ型が ベストのようです 115 00:09:18,859 --> 00:09:22,861 両側のヒレ部分を 本物のマンタ同様 弾力性を持たせます 116 00:09:22,861 --> 00:09:26,529 こうすれば注入口が水面から 離れることはありません 117 00:09:26,529 --> 00:09:30,187 海が荒れても大丈夫です 118 00:09:30,803 --> 00:09:41,526 こんな船をジグザグに24隻つなげば 地球上の全海域をきれいにできます 119 00:09:41,526 --> 00:09:45,278 では比較をしてみましょう いいですか 120 00:09:45,355 --> 00:09:48,034 これは今年初めの香港の浜辺です 121 00:09:48,034 --> 00:09:53,558 史上最大のごみ捨て場になってます この原因はこれです 122 00:09:53,558 --> 00:09:56,599 こんなコンテナ6個です 123 00:09:56,599 --> 00:09:59,506 プラスチックをどれだけ 除去できるでしょう? 124 00:09:59,506 --> 00:10:05,173 毎日コンテナ55個分を回収できます 125 00:10:05,173 --> 00:10:16,083 プラスチックは 大型船舶も破損させます 被害額は年間数百万ドル 126 00:10:16,083 --> 00:10:19,545 これだけでなく 僕がとても驚いたのは― 127 00:10:19,607 --> 00:10:28,307 全世界の環流上のプラスチックを 集めて売ると 収益は5億ドル超 128 00:10:28,307 --> 00:10:33,104 この金額なら プロジェクトの費用が 十分賄えるばかりか おつりが来る 129 00:10:33,104 --> 00:10:36,820 つまり 利益が出ます 130 00:10:36,820 --> 00:10:41,792 でもここで大切なことは 131 00:10:41,792 --> 00:10:48,490 まず変化を起こすために行動すれば お金は後からついて来ます 132 00:10:48,490 --> 00:10:58,444 これは世界最大級の環境保護対策です なんだかスゴイことになりました 133 00:10:58,444 --> 00:11:05,647 この船を発明したのがきっかけで 今日ここで 話すことになったのです 134 00:11:05,647 --> 00:11:12,407 皆さんどうか 僕に力を貸してください 135 00:11:12,407 --> 00:11:14,752 ありがとうございました 136 00:11:14,860 --> 00:11:17,598 (拍手)