1 00:00:00,942 --> 00:00:03,770 大学生の頃はよかった 2 00:00:03,770 --> 00:00:07,673 博士課程レベルの純粋数学と 世界ディベート選手権が 3 00:00:07,673 --> 00:00:10,144 入り交じった高揚感・・・ 4 00:00:10,144 --> 00:00:15,397 それに「やあ お姉さん方」 なんて言い回ってね 5 00:00:15,397 --> 00:00:17,389 大学の頃の自分が 一番セクシーでしたよ 6 00:00:17,389 --> 00:00:18,853 大学の頃の自分が 一番セクシーでしたよ 7 00:00:18,853 --> 00:00:23,239 シドニー出身のしがない 朝のラジオのホストにとって 8 00:00:23,239 --> 00:00:25,570 地球の反対側の 9 00:00:25,570 --> 00:00:27,733 TEDの舞台は興奮そのものです 10 00:00:27,733 --> 00:00:29,366 聞いてください オーストラリア人について 11 00:00:29,366 --> 00:00:31,011 よくある噂は ほぼ事実です 12 00:00:31,011 --> 00:00:33,433 私達は幼い頃から 13 00:00:33,433 --> 00:00:35,944 驚異的なスポーツの才能を発揮し 14 00:00:35,944 --> 00:00:40,289 戦場では勇敢で高潔な戦士です 全部 本当ですよ 15 00:00:40,289 --> 00:00:40,946 戦場では勇敢で高潔な戦士です 全部 本当ですよ 16 00:00:40,946 --> 00:00:44,770 オーストラリア人は ちょっと飲んだり ― 17 00:00:44,770 --> 00:00:48,520 飲み過ぎたりして 気まずい状況に なっても気にしません (笑) 18 00:00:48,520 --> 00:00:54,707 1973年 父の職場の クリスマス・パーティです 19 00:00:54,707 --> 00:00:56,629 私は5才になる直前で 20 00:00:56,629 --> 00:00:59,009 サンタよりも ずっと はしゃいでいました 21 00:00:59,009 --> 00:01:02,889 ただ今日は 朝のラジオのホストでも 22 00:01:02,889 --> 00:01:04,335 コメディアンでもなく 23 00:01:04,335 --> 00:01:08,241 数学者として来ています 私は昔も今も ― 24 00:01:08,241 --> 00:01:11,421 そしてこれからも数学者です 25 00:01:11,421 --> 00:01:13,615 数字に取り付かれた人なら 26 00:01:13,615 --> 00:01:17,375 わかるでしょう 数字は幼い頃に深く根を下ろします 27 00:01:17,375 --> 00:01:20,312 小2の時にシドニー郊外の 28 00:01:20,312 --> 00:01:22,335 小さくて きれいな州立の ― 29 00:01:22,335 --> 00:01:26,090 ボロニアパーク小学校に 通っていました 30 00:01:26,090 --> 00:01:28,151 もうすぐ昼ごはんという時に 31 00:01:28,151 --> 00:01:29,879 ラッセル先生が言いました 32 00:01:29,879 --> 00:01:32,344 「みんな 昼から何をしたい? 33 00:01:32,344 --> 00:01:34,613 先生は まだ決めていないの」 34 00:01:34,613 --> 00:01:37,760 民主的な教育の 実践校だったのです 35 00:01:37,760 --> 00:01:42,382 今は民主的教育に賛成ですが 当時は まだ7才ですよ 36 00:01:42,382 --> 00:01:44,124 結局 午後の授業の提案は 37 00:01:44,124 --> 00:01:46,688 ちょっと無理なものばかりでした 38 00:01:46,688 --> 00:01:48,962 そのうち誰かが ヘンなことを言い始めて 39 00:01:48,962 --> 00:01:51,107 先生がやんわりと諌めました 40 00:01:51,107 --> 00:01:52,704 「それは上手くいかないわ 41 00:01:52,704 --> 00:01:56,695 四角い杭を 丸い穴に通すようなものね」 42 00:01:56,695 --> 00:01:58,962 その時 私は賢いふりや ふざけるつもりもなく ― 43 00:01:58,962 --> 00:01:59,797 その時 私は賢いふりや ふざけるつもりもなく ― 44 00:01:59,797 --> 00:02:02,012 ただ静かに手を挙げました 45 00:02:02,012 --> 00:02:03,995 先生が気付いてくれたので 46 00:02:03,995 --> 00:02:06,631 友達が見ている前で こう始めたのです 47 00:02:06,631 --> 00:02:10,194 「でも先生 ― 48 00:02:10,194 --> 00:02:13,990 四角形の対角線の長さが 49 00:02:13,990 --> 00:02:18,201 円の直径より短かったら 50 00:02:18,201 --> 00:02:21,086 四角い杭だって 簡単に丸い穴を通るよ」 51 00:02:21,086 --> 00:02:24,104 (笑) 52 00:02:24,104 --> 00:02:28,375 「トーストをバスケのゴールに 通すようなものでしょ?」 53 00:02:28,375 --> 00:02:30,018 気まずい沈黙が クラスに広がり 54 00:02:30,018 --> 00:02:31,216 気まずい沈黙が クラスに広がり 55 00:02:31,216 --> 00:02:33,319 隣に座っていた友達で 56 00:02:33,319 --> 00:02:35,771 クラスの人気者のスティーブンが 57 00:02:35,771 --> 00:02:38,114 私の頭を力いっぱい叩きました 58 00:02:38,114 --> 00:02:39,198 (笑) 59 00:02:39,198 --> 00:02:41,699 それからスティーブンは言いました 60 00:02:41,699 --> 00:02:46,248 「今がお前の人生の 大きな分かれ目だ 61 00:02:46,248 --> 00:02:48,525 俺達の仲間のままでいるか 62 00:02:48,525 --> 00:02:50,195 くだらない話を続けて 63 00:02:50,195 --> 00:02:53,975 あっち側に行くかだ」 64 00:02:53,975 --> 00:02:55,577 私は1ナノ秒考えてから 65 00:02:55,577 --> 00:02:59,353 人生のロードマップを ちらっと見て 66 00:02:59,353 --> 00:03:03,181 「オタク」の標識がある方へ 67 00:03:03,181 --> 00:03:08,608 喘息持ちのぽちゃぽちゃの足で ひた走りはじめたのです 68 00:03:08,623 --> 00:03:12,336 私は幼い頃に数学に目覚め 69 00:03:12,351 --> 00:03:15,209 友達に説明しまくりました 数学は美しく 70 00:03:15,209 --> 00:03:17,193 自然で どこにでも存在する ― 71 00:03:17,193 --> 00:03:20,498 それぞれの数は音符で 72 00:03:20,498 --> 00:03:24,720 宇宙のシンフォニーは その音符で書かれている 73 00:03:24,720 --> 00:03:27,003 かのデカルトも言っています 74 00:03:27,003 --> 00:03:29,713 宇宙は「数学的言語で 書かれている」と 75 00:03:29,713 --> 00:03:33,937 今日は そんな音符の 一つを紹介しましょう 76 00:03:33,937 --> 00:03:38,329 とても美しく 壮大なスケールの数字です 77 00:03:38,329 --> 00:03:40,902 皆さんも びっくりしますよ 78 00:03:40,902 --> 00:03:43,649 お話しするのは 「素数」についてです 79 00:03:43,649 --> 00:03:47,615 6 が素数でないことは たぶん記憶にあるでしょう 80 00:03:47,615 --> 00:03:49,931 6 は 2 x 3 だからです 81 00:03:49,931 --> 00:03:53,545 7 は素数です 1 x 7 で表せますが 82 00:03:53,545 --> 00:03:56,148 それ以上は小さなパーツ つまり因数に 83 00:03:56,148 --> 00:03:58,131 分けられないからです 84 00:03:58,131 --> 00:04:00,621 素数の豆知識を いくつか紹介しましょう 85 00:04:00,621 --> 00:04:02,632 まず 1 は素数ではありません 86 00:04:02,632 --> 00:04:05,172 その証明は手品みたいなもので 87 00:04:05,172 --> 00:04:08,076 ある種のパーティーでしか うけません 88 00:04:08,076 --> 00:04:11,066 (笑) 89 00:04:11,066 --> 00:04:14,728 さらに 一番大きな 最後の素数は存在しません 90 00:04:14,728 --> 00:04:16,140 終わりがないのです 91 00:04:16,140 --> 00:04:17,979 素数が無限だとわかったのは 92 00:04:17,979 --> 00:04:19,929 天才数学者 ユークリッドのおかげです 93 00:04:19,929 --> 00:04:23,161 何千年も前に 彼が証明してくれたのです 94 00:04:23,161 --> 00:04:24,858 さらに3つ目は 95 00:04:24,858 --> 00:04:26,368 数学者がいつでも ― 96 00:04:26,368 --> 00:04:28,630 どんな時でも 97 00:04:28,630 --> 00:04:31,433 知りうる最大の素数が 何か考えてきたことです 98 00:04:31,433 --> 00:04:35,741 今日は巨大素数捜しに 皆さんをお連れします 99 00:04:35,741 --> 00:04:38,888 怖がらないで 100 00:04:38,888 --> 00:04:41,889 必要な知識はたった一つです 101 00:04:41,889 --> 00:04:46,374 皆さんが 学んだり 学ばなかったり 詰め込まれたり 忘れたり ― 102 00:04:46,374 --> 00:04:48,107 そもそも理解不能だったりした 数学のうち ― 103 00:04:48,107 --> 00:04:50,492 必要な知識はこれだけです 104 00:04:50,492 --> 00:04:54,739 「2 の5乗」と言ったら ― 105 00:04:54,739 --> 00:04:57,586 2 という数を 5つ並べて 全部かけるということです 106 00:04:57,586 --> 00:04:58,881 2 という数を 5つ並べて 全部かけるということです 107 00:04:58,881 --> 00:05:02,097 2 x 2 x 2 x 2 x 2 です 108 00:05:02,097 --> 00:05:05,501 だから「2 の5乗」とは 2 x 2 で4 ― 109 00:05:05,501 --> 00:05:07,681 さらに2倍して 8 16 32 です 110 00:05:07,681 --> 00:05:11,195 これさえ分かれば 話についてこれますよ 111 00:05:11,195 --> 00:05:13,167 2 の5乗は 112 00:05:13,167 --> 00:05:14,879 2 を 5回かけたものです 113 00:05:14,879 --> 00:05:19,142 2 の 5乗から 1 を引くと 31 です 114 00:05:19,142 --> 00:05:22,453 31 は素数で 指数である5も 115 00:05:22,453 --> 00:05:24,998 素数です 116 00:05:24,998 --> 00:05:28,502 これまでに発見された 巨大素数の大部分は 117 00:05:28,502 --> 00:05:29,738 この形式 ― 118 00:05:29,738 --> 00:05:33,017 2 を素数乗したものから 1 を引いた数です 119 00:05:33,017 --> 00:05:35,434 詳しい理由は言いません 120 00:05:35,434 --> 00:05:38,185 説明したら皆さんの 目玉が飛び出すでしょう 121 00:05:38,185 --> 00:05:42,396 ただこの形式の数は 素数かどうかを調べるのが 122 00:05:42,396 --> 00:05:45,859 とても簡単なのです 123 00:05:45,859 --> 00:05:49,459 ランダムな奇数の場合 調べるのはずっと難しい 124 00:05:49,459 --> 00:05:51,380 一方 巨大素数を捜してみると すぐわかりますが 125 00:05:51,380 --> 00:05:53,219 一方 巨大素数を捜してみると すぐわかりますが 126 00:05:53,219 --> 00:05:55,960 素数を指数にするだけではだめです 127 00:05:55,960 --> 00:05:58,557 2 の11乗マイナス1 は 2,047 ですが 128 00:05:58,557 --> 00:06:01,925 皆さん お気づきの通り 23 x 89 になります 129 00:06:01,925 --> 00:06:04,051 (笑) 130 00:06:04,051 --> 00:06:07,291 でも 2 の13乗引く1 も 2 の17乗引く1 も 131 00:06:07,291 --> 00:06:10,648 2 の19乗引く1 も 全部 素数です 132 00:06:10,648 --> 00:06:13,517 これ以降は素数の数は どんどん減ります 133 00:06:13,517 --> 00:06:15,647 巨大素数の探究が好きな理由は 134 00:06:15,647 --> 00:06:18,786 歴史上 最も偉大な数学者達が 135 00:06:18,786 --> 00:06:21,303 その発見に取り組んできたからです 136 00:06:21,303 --> 00:06:24,040 スイスの偉大な数学者 レオンハルト・オイラーです 137 00:06:24,040 --> 00:06:26,501 1700年代には数学者達は 138 00:06:26,501 --> 00:06:29,533 彼を師と仰ぎました 139 00:06:29,533 --> 00:06:32,721 とても尊敬され 欧州では紙幣になりました 140 00:06:32,721 --> 00:06:35,366 それが敬意の証だった頃の話ですが 141 00:06:35,366 --> 00:06:40,346 (笑) 142 00:06:40,346 --> 00:06:43,429 オイラーは当時最大の 素数を発見しました 143 00:06:43,429 --> 00:06:45,216 2 の31乗マイナス1 ― 144 00:06:45,216 --> 00:06:47,564 20億を超える数です 145 00:06:47,564 --> 00:06:49,599 彼はこの数が素数であることを 146 00:06:49,599 --> 00:06:53,387 羽ペンとインクと紙と 精神力だけで証明しました 147 00:06:53,387 --> 00:06:54,341 大きな数ですね 148 00:06:54,341 --> 00:06:57,618 2 の127乗マイナス1 も 149 00:06:57,618 --> 00:06:59,212 素数とわかっています 150 00:06:59,212 --> 00:07:00,856 これはかなり厄介です 151 00:07:00,856 --> 00:07:04,861 見てください 39桁もあります 152 00:07:04,861 --> 00:07:08,224 1876年にリュカという数学者が 153 00:07:08,224 --> 00:07:10,288 素数だと証明しました 154 00:07:10,288 --> 00:07:12,224 すごいぞ リュカ 155 00:07:12,224 --> 00:07:13,969 (笑) 156 00:07:13,969 --> 00:07:16,363 でも巨大素数探しのすごさは 157 00:07:16,363 --> 00:07:17,560 発見だけに留まりません 158 00:07:17,560 --> 00:07:21,811 時には 素数でないことの 証明にも興奮します 159 00:07:21,811 --> 00:07:27,593 先程のリュカは1876年に 2 の 67乗マイナス1 という 160 00:07:27,593 --> 00:07:30,269 21桁の数が 素数でないと証明しました 161 00:07:30,269 --> 00:07:32,698 ただ因数はわからなかったのです 162 00:07:32,698 --> 00:07:34,483 素数ではないとわかっても 163 00:07:34,483 --> 00:07:36,904 何と何をかければ その巨大な数になるかは不明でした 164 00:07:36,904 --> 00:07:38,154 何と何をかければ その巨大な数になるかは不明でした 165 00:07:38,154 --> 00:07:40,195 これは約40年間 謎でした 166 00:07:40,195 --> 00:07:43,117 その後フランク・ネルソン・ コールが登場します 167 00:07:43,117 --> 00:07:45,495 アメリカのある著名な学会での発表で 168 00:07:45,495 --> 00:07:49,291 彼は黒板に歩み寄り チョークを手にして 169 00:07:49,291 --> 00:07:52,056 次々に 2 のべき乗を書き始めました 170 00:07:52,056 --> 00:07:55,177 2 4 8 16 ― 171 00:07:55,177 --> 00:07:56,833 さあ皆さんもご一緒に 172 00:07:56,833 --> 00:08:00,699 32 64 128 256 ― 173 00:08:00,699 --> 00:08:05,355 512 1,024 2,048・・・ 174 00:08:05,355 --> 00:08:07,907 数学マニアの天国だね ここで止めましょう 175 00:08:07,907 --> 00:08:10,677 コールは ここで止めませんでした 176 00:08:10,677 --> 00:08:12,340 どんどん続けて 177 00:08:12,340 --> 00:08:16,009 2 の67乗まで計算し 178 00:08:16,009 --> 00:08:18,501 そこから1 を引いた数を 黒板に書きました 179 00:08:18,501 --> 00:08:22,842 震える様な興奮が 会場を駆け抜けました 180 00:08:22,842 --> 00:08:25,104 彼が2つの大きな素数で 181 00:08:25,104 --> 00:08:29,503 かけ算の式を書くと 会場は騒然としました 182 00:08:29,509 --> 00:08:33,416 発表の残り時間を全て使って 183 00:08:33,416 --> 00:08:38,049 コールは その式を すごい勢いで計算しました 184 00:08:38,049 --> 00:08:40,223 彼は 2 の67乗マイナス1 の 185 00:08:40,223 --> 00:08:42,633 素因数を発見したのです 186 00:08:42,633 --> 00:08:45,135 会場が興奮に包まれる中 ― 187 00:08:45,135 --> 00:08:46,955 (笑) 188 00:08:46,955 --> 00:08:48,997 彼は席へ戻っていきました 189 00:08:48,997 --> 00:08:52,344 発表で一言も話さなかったのは 190 00:08:52,344 --> 00:08:55,153 数学の歴史上この時だけです 191 00:08:55,153 --> 00:08:57,840 後に彼は この問題は 難しくなかったと言っています 192 00:08:57,840 --> 00:09:00,490 必要だったのは 集中と粘り強さ ― 193 00:09:00,490 --> 00:09:02,490 それから 彼の概算で 194 00:09:02,490 --> 00:09:06,461 「日曜日 3年分」だったそうです 195 00:09:06,461 --> 00:09:08,799 一方 数学の世界では 196 00:09:08,799 --> 00:09:11,914 TEDに登場する他の分野と同様 ― 197 00:09:11,914 --> 00:09:16,257 コンピュータ時代になって 爆発的な進歩を遂げました 198 00:09:16,257 --> 00:09:18,694 画面では次々に更新された ― 199 00:09:18,694 --> 00:09:22,101 最大の素数を10年ごとに ご覧頂いています 200 00:09:22,101 --> 00:09:25,301 コンピュータが主役になり 私達の計算能力が 201 00:09:25,301 --> 00:09:27,213 飛躍的に高まったのです 202 00:09:27,230 --> 00:09:30,295 これが1996年の時点で 最大の素数です 203 00:09:30,295 --> 00:09:32,315 個人的に思い出深い年です 204 00:09:32,315 --> 00:09:34,250 私は この年に大学を卒業して 205 00:09:34,250 --> 00:09:36,875 数学とメディアの どちらをとるか迷っていました 206 00:09:36,875 --> 00:09:39,330 難しい決断でした 大学が大好きで 207 00:09:39,330 --> 00:09:43,203 学位をとるのに たっぷり 9年半もかけましたから 208 00:09:43,203 --> 00:09:45,786 (笑) 209 00:09:45,786 --> 00:09:49,413 でも結局 自分の限界を悟ったのです 210 00:09:49,413 --> 00:09:52,930 ランダムに選ばれた人々の中では 211 00:09:52,930 --> 00:09:54,805 私は数学の天才です 212 00:09:54,805 --> 00:09:56,882 でも数学の博士号を 持つ人々の中では 213 00:09:56,882 --> 00:10:00,611 所詮 金づち並に 頭の鈍い人間に過ぎません 214 00:10:00,611 --> 00:10:02,358 私には数学そのものより 215 00:10:02,358 --> 00:10:06,250 数学について 語るほうが向いています 216 00:10:06,250 --> 00:10:08,436 私が卒業した ちょうどその頃 ― 217 00:10:08,436 --> 00:10:10,572 巨大な素数が次々と見つかり 記録が更新されていました 218 00:10:10,572 --> 00:10:12,338 巨大な素数が次々と見つかり 記録が更新されていました 219 00:10:12,338 --> 00:10:17,231 そんな頃にカーティス・ クーパー博士が登場します 220 00:10:17,231 --> 00:10:20,590 博士は数年前まで 最大素数の記録を持っていましたが 221 00:10:20,590 --> 00:10:23,895 ライバルの大学が 新記録を出しました 222 00:10:23,895 --> 00:10:28,072 そのカーティス・クーパーが 記録を取り戻したのです 223 00:10:28,072 --> 00:10:33,399 何年前でも何か月前でもなく ほんの数日前のことです 224 00:10:33,399 --> 00:10:35,043 この素晴らしい発見の瞬間 ― 225 00:10:35,043 --> 00:10:39,195 私はTEDで使う予定だった スライドを差し替えました 226 00:10:39,195 --> 00:10:41,205 彼の成功を紹介するためです 227 00:10:41,205 --> 00:10:43,855 (拍手) 228 00:10:43,855 --> 00:10:45,358 その時の様子を まだ覚えています 229 00:10:45,358 --> 00:10:46,806 朝のラジオ番組の放送中に 230 00:10:46,806 --> 00:10:48,178 ツイートが入ったのです 231 00:10:48,178 --> 00:10:50,483 「最大の素数が見つかったよ」 232 00:10:50,483 --> 00:10:51,897 体が震えました 233 00:10:51,897 --> 00:10:53,637 (笑) 234 00:10:53,637 --> 00:10:56,719 別室にいた制作スタッフの 女性陣と交渉しました 235 00:10:56,719 --> 00:10:59,170 「トップニュースを差し替えたい 236 00:10:59,170 --> 00:11:00,630 今日は政治の話はしない 237 00:11:00,630 --> 00:11:02,587 スポーツもなしだ 238 00:11:02,587 --> 00:11:04,917 新しい巨大素数が見つかった」 239 00:11:04,917 --> 00:11:06,429 彼女達は頭を抱えましたが 240 00:11:06,429 --> 00:11:08,666 やりたいように やらせてくれました 241 00:11:08,666 --> 00:11:11,242 カーティス・クーパーのおかげで 242 00:11:11,242 --> 00:11:13,571 現在わかっている最大の素数は 243 00:11:13,571 --> 00:11:21,581 2 の57,885,161乗 ― 244 00:11:21,581 --> 00:11:24,384 マイナス1を忘れずに 245 00:11:24,384 --> 00:11:31,608 この数の長さはおよそ1,750万桁です 246 00:11:31,608 --> 00:11:35,034 コンピュータに打ち込むと テキスト形式でも 247 00:11:35,034 --> 00:11:37,829 22MBになります 248 00:11:37,829 --> 00:11:39,873 数学マニアじゃない人は 249 00:11:39,873 --> 00:11:42,010 ハリー・ポッターの 小説を思い浮かべて 250 00:11:42,010 --> 00:11:44,360 第1巻はこの位の厚さでした 251 00:11:44,360 --> 00:11:46,062 全7巻でこの位です 252 00:11:46,062 --> 00:11:48,424 ラスト近くは水増ししてますから 253 00:11:48,424 --> 00:11:51,943 (笑) 254 00:11:51,943 --> 00:11:54,255 この素数を本に書き出せば 255 00:11:54,255 --> 00:11:58,730 ハリー・ポッター全巻の 1.5倍の長さになります 256 00:11:58,730 --> 00:12:04,269 画面にあるのは この素数の始めの1,000桁です 257 00:12:04,269 --> 00:12:07,390 TEDは火曜の 11時から始まりましたが 258 00:12:07,390 --> 00:12:11,958 1画面1秒の割合で見せても 259 00:12:11,958 --> 00:12:17,328 全部見せるには 5時間もかかります 260 00:12:17,328 --> 00:12:20,294 私は見せたかったんですが ボノが承知しませんでした 261 00:12:20,294 --> 00:12:22,897 まあ 当然です 262 00:12:22,897 --> 00:12:27,317 この数をスライドにすると 17,500枚になります 263 00:12:27,317 --> 00:12:31,440 この数が素数なのは 間違いありません 264 00:12:31,440 --> 00:12:34,814 7が素数だと言うのと 同じ位 確かです 265 00:12:34,814 --> 00:12:40,500 私が感じたのは ほとんど性的興奮と言ってもいい 266 00:12:40,500 --> 00:12:42,683 いや「ほとんど」すら不要です 267 00:12:42,683 --> 00:12:45,245 (笑) 268 00:12:45,245 --> 00:12:46,896 当然こう思う人もいるでしょう 269 00:12:46,896 --> 00:12:51,875 アダム 君が喜ぶのは よくわかった 270 00:12:51,875 --> 00:12:54,373 でも素数は 私達と何の関係が? 271 00:12:54,373 --> 00:12:57,083 素数が美しい理由を 3つだけあげましょう 272 00:12:57,083 --> 00:13:00,634 まずコンピュータに ある数が素数か 273 00:13:00,634 --> 00:13:03,713 判断させる場合 短い式を入力します 274 00:13:03,713 --> 00:13:07,915 わずか6行程のコードで 275 00:13:07,915 --> 00:13:10,236 非常に単純な 質問をするのです 276 00:13:10,236 --> 00:13:13,249 答えは「イエス」か「ノー」の どちらかですが 277 00:13:13,249 --> 00:13:15,806 とてつもない処理能力が必要です 278 00:13:15,806 --> 00:13:17,975 だから巨大素数は コンピュータ・チップの 279 00:13:17,975 --> 00:13:20,608 速度と正確さを測るのに うってつけなのです 280 00:13:20,608 --> 00:13:23,409 そして2つ目 クーパーは1人で巨大素数を 281 00:13:23,409 --> 00:13:25,334 捜したわけではありません 282 00:13:25,334 --> 00:13:26,519 私のノートPCでも 283 00:13:26,519 --> 00:13:28,794 4個の素数候補を調べていました 284 00:13:28,794 --> 00:13:32,450 世界規模の分散処理 ネットワークに参加していたのです 285 00:13:32,450 --> 00:13:33,705 世界規模の分散処理 ネットワークに参加していたのです 286 00:13:33,705 --> 00:13:35,634 今回の巨大素数の発見は 287 00:13:35,634 --> 00:13:38,836 RNA配列の解明や SETIなどの天文プロジェクトの 288 00:13:38,836 --> 00:13:41,908 データ解析に似ています 289 00:13:41,908 --> 00:13:45,150 私達の時代には 偉大な発見は 290 00:13:45,150 --> 00:13:47,669 研究室でも大学でもなく 291 00:13:47,669 --> 00:13:49,783 ノートPCやデスクトップPCや 292 00:13:49,783 --> 00:13:51,649 探究を支援する人々が持つ 293 00:13:51,649 --> 00:13:55,062 デバイスの中でなされます 294 00:13:55,062 --> 00:13:57,391 ただ私が本当に すごいと思うのは 295 00:13:57,391 --> 00:13:59,328 それが私達が生きる時代 ― 296 00:13:59,328 --> 00:14:04,172 人間の精神と機械が 協力する時代を象徴するからです 297 00:14:04,172 --> 00:14:06,531 TEDではロボットの 話がよく登場するので 298 00:14:06,531 --> 00:14:08,141 可能性と限界もよくわかります 299 00:14:08,141 --> 00:14:10,663 実際 自分のスマートフォンに 300 00:14:10,663 --> 00:14:14,558 チェスの達人を凌駕する アプリだって入れられます 301 00:14:14,558 --> 00:14:16,022 すごいと思いませんか 302 00:14:16,022 --> 00:14:18,588 これもすごいマシン ― 303 00:14:18,588 --> 00:14:20,774 キューブ・ストーマー II です 304 00:14:20,774 --> 00:14:24,595 シャッフルした ルービックキューブを置くと 305 00:14:24,595 --> 00:14:27,161 スマートフォンの処理能力で 306 00:14:27,161 --> 00:14:34,354 キューブを調べて 解くことができます 307 00:14:34,354 --> 00:14:37,053 時間はわずか5秒です 308 00:14:37,053 --> 00:14:40,934 (拍手) 309 00:14:40,934 --> 00:14:44,999 怖がる人もいますが 私はわくわくします 310 00:14:44,999 --> 00:14:48,230 精神と機械が協力する時代に 生きているなんて 311 00:14:48,230 --> 00:14:51,523 ラッキーじゃないですか 312 00:14:51,523 --> 00:14:53,795 去年 地元の有名人という肩書で 313 00:14:53,795 --> 00:14:56,783 インタビューを受けて 私の中で 2012年最大の 314 00:14:56,783 --> 00:14:58,788 ニュースは何か聞かれました 315 00:14:58,788 --> 00:15:00,250 私が熱烈に応援している ― 316 00:15:00,250 --> 00:15:02,918 シドニー・スワンズだと 予想する人もいました 317 00:15:02,918 --> 00:15:05,926 オーストラリアン フットボールにおける ― 318 00:15:05,926 --> 00:15:08,060 スーパーボウル級の 大会で優勝したのです 319 00:15:08,060 --> 00:15:11,051 私も会場にいました 胸が高鳴る感動的な日でした 320 00:15:11,051 --> 00:15:13,165 でも最大のニュースではありません 321 00:15:13,165 --> 00:15:15,128 番組でしたインタビューでも 322 00:15:15,128 --> 00:15:17,196 政治家や新発明のことでも 323 00:15:17,196 --> 00:15:19,251 本やアートのことでもなく 324 00:15:19,251 --> 00:15:21,415 2人の可愛い娘のことでもありません 325 00:15:21,415 --> 00:15:24,994 2012年ダントツの トップ・ニュースは 326 00:15:24,994 --> 00:15:28,626 ヒッグス粒子の発見です 327 00:15:28,626 --> 00:15:31,302 他の全ての素粒子に質量を与えた ― 328 00:15:31,302 --> 00:15:34,307 究極の素粒子に大きな拍手を 329 00:15:34,307 --> 00:15:35,803 (拍手) 330 00:15:35,803 --> 00:15:38,616 この発見のすごいところを 説明します 331 00:15:38,616 --> 00:15:40,852 50年前ピーター・ ヒッグス率いる研究陣が 332 00:15:40,852 --> 00:15:43,262 究極の疑問を検討しました 333 00:15:43,262 --> 00:15:47,902 つまり私達を構成するものに 質量がないのはなぜだろう? 334 00:15:47,902 --> 00:15:52,361 私に質量があるのは明らかですが その質量はどこから生じたのか? 335 00:15:52,361 --> 00:15:54,175 彼はある仮説を立てました 336 00:15:54,175 --> 00:15:57,845 無数の極めて小さな場が 337 00:15:57,845 --> 00:15:59,963 宇宙全体に広がっていて 338 00:15:59,963 --> 00:16:02,048 他の粒子がこの粒子を通り抜け 339 00:16:02,048 --> 00:16:04,440 干渉する時に 質量を得るという仮説です 340 00:16:04,440 --> 00:16:06,897 科学界の反応は こうです 341 00:16:06,897 --> 00:16:08,506 「すごいアイデアだけど 342 00:16:08,506 --> 00:16:10,192 そもそも証明できるのか? 343 00:16:10,192 --> 00:16:12,300 理解の範囲を超えてるよ」 344 00:16:12,300 --> 00:16:14,797 それからちょうど50年 ― 345 00:16:14,797 --> 00:16:20,681 彼が生きている間に 本人が見ている前で 346 00:16:20,681 --> 00:16:24,313 私達は歴史上最も 偉大なマシンを設計して 347 00:16:24,313 --> 00:16:27,379 人間の精神が生み出した ― 348 00:16:27,379 --> 00:16:31,342 壮大なアイデアを 実際に証明したのです 349 00:16:31,342 --> 00:16:33,874 この素数に興奮する理由も同じです 350 00:16:33,874 --> 00:16:35,960 存在を予測していたものを 351 00:16:35,960 --> 00:16:38,380 実際に発見したのです 352 00:16:38,380 --> 00:16:42,280 これが人間の本質です 353 00:16:42,280 --> 00:16:45,954 人間として 何よりも大事なことです 354 00:16:45,954 --> 00:16:47,923 心の友 デカルトが言うように 355 00:16:47,923 --> 00:16:49,636 我々は考えるから ― 356 00:16:49,636 --> 00:16:52,049 存在するのです 357 00:16:52,049 --> 00:16:53,440 どうもありがとう 358 00:16:53,440 --> 00:16:59,041 (拍手)