大学生の頃はよかった
博士課程レベルの純粋数学と
世界ディベート選手権が
入り交じった高揚感・・・
それに「やあ お姉さん方」
なんて言い回ってね
大学の頃の自分が
一番セクシーでしたよ
大学の頃の自分が
一番セクシーでしたよ
シドニー出身のしがない
朝のラジオのホストにとって
地球の反対側の
TEDの舞台は興奮そのものです
聞いてください
オーストラリア人について
よくある噂は ほぼ事実です
私達は幼い頃から
驚異的なスポーツの才能を発揮し
戦場では勇敢で高潔な戦士です
全部 本当ですよ
戦場では勇敢で高潔な戦士です
全部 本当ですよ
オーストラリア人は
ちょっと飲んだり ―
飲み過ぎたりして 気まずい状況に
なっても気にしません (笑)
1973年 父の職場の
クリスマス・パーティです
私は5才になる直前で
サンタよりも ずっと
はしゃいでいました
ただ今日は
朝のラジオのホストでも
コメディアンでもなく
数学者として来ています
私は昔も今も ―
そしてこれからも数学者です
数字に取り付かれた人なら
わかるでしょう
数字は幼い頃に深く根を下ろします
小2の時にシドニー郊外の
小さくて きれいな州立の ―
ボロニアパーク小学校に
通っていました
もうすぐ昼ごはんという時に
ラッセル先生が言いました
「みんな 昼から何をしたい?
先生は まだ決めていないの」
民主的な教育の
実践校だったのです
今は民主的教育に賛成ですが
当時は まだ7才ですよ
結局 午後の授業の提案は
ちょっと無理なものばかりでした
そのうち誰かが
ヘンなことを言い始めて
先生がやんわりと諌めました
「それは上手くいかないわ
四角い杭を
丸い穴に通すようなものね」
その時 私は賢いふりや
ふざけるつもりもなく ―
その時 私は賢いふりや
ふざけるつもりもなく ―
ただ静かに手を挙げました
先生が気付いてくれたので
友達が見ている前で
こう始めたのです
「でも先生 ―
四角形の対角線の長さが
円の直径より短かったら
四角い杭だって
簡単に丸い穴を通るよ」
(笑)
「トーストをバスケのゴールに
通すようなものでしょ?」
気まずい沈黙が
クラスに広がり
気まずい沈黙が
クラスに広がり
隣に座っていた友達で
クラスの人気者のスティーブンが
私の頭を力いっぱい叩きました
(笑)
それからスティーブンは言いました
「今がお前の人生の
大きな分かれ目だ
俺達の仲間のままでいるか
くだらない話を続けて
あっち側に行くかだ」
私は1ナノ秒考えてから
人生のロードマップを
ちらっと見て
「オタク」の標識がある方へ
喘息持ちのぽちゃぽちゃの足で
ひた走りはじめたのです
私は幼い頃に数学に目覚め
友達に説明しまくりました
数学は美しく
自然で どこにでも存在する ―
それぞれの数は音符で
宇宙のシンフォニーは
その音符で書かれている
かのデカルトも言っています
宇宙は「数学的言語で
書かれている」と
今日は そんな音符の
一つを紹介しましょう
とても美しく
壮大なスケールの数字です
皆さんも びっくりしますよ
お話しするのは
「素数」についてです
6 が素数でないことは
たぶん記憶にあるでしょう
6 は 2 x 3 だからです
7 は素数です
1 x 7 で表せますが
それ以上は小さなパーツ
つまり因数に
分けられないからです
素数の豆知識を
いくつか紹介しましょう
まず 1 は素数ではありません
その証明は手品みたいなもので
ある種のパーティーでしか
うけません
(笑)
さらに 一番大きな
最後の素数は存在しません
終わりがないのです
素数が無限だとわかったのは
天才数学者
ユークリッドのおかげです
何千年も前に
彼が証明してくれたのです
さらに3つ目は
数学者がいつでも ―
どんな時でも
知りうる最大の素数が
何か考えてきたことです
今日は巨大素数捜しに
皆さんをお連れします
怖がらないで
必要な知識はたった一つです
皆さんが 学んだり 学ばなかったり
詰め込まれたり 忘れたり ―
そもそも理解不能だったりした
数学のうち ―
必要な知識はこれだけです
「2 の5乗」と言ったら ―
2 という数を 5つ並べて
全部かけるということです
2 という数を 5つ並べて
全部かけるということです
2 x 2 x 2 x 2 x 2 です
だから「2 の5乗」とは
2 x 2 で4 ―
さらに2倍して
8 16 32 です
これさえ分かれば
話についてこれますよ
2 の5乗は
2 を 5回かけたものです
2 の 5乗から
1 を引くと 31 です
31 は素数で
指数である5も
素数です
これまでに発見された
巨大素数の大部分は
この形式 ―
2 を素数乗したものから
1 を引いた数です
詳しい理由は言いません
説明したら皆さんの
目玉が飛び出すでしょう
ただこの形式の数は
素数かどうかを調べるのが
とても簡単なのです
ランダムな奇数の場合
調べるのはずっと難しい
一方 巨大素数を捜してみると
すぐわかりますが
一方 巨大素数を捜してみると
すぐわかりますが
素数を指数にするだけではだめです
2 の11乗マイナス1 は 2,047 ですが
皆さん お気づきの通り
23 x 89 になります
(笑)
でも 2 の13乗引く1 も
2 の17乗引く1 も
2 の19乗引く1 も
全部 素数です
これ以降は素数の数は
どんどん減ります
巨大素数の探究が好きな理由は
歴史上 最も偉大な数学者達が
その発見に取り組んできたからです
スイスの偉大な数学者
レオンハルト・オイラーです
1700年代には数学者達は
彼を師と仰ぎました
とても尊敬され
欧州では紙幣になりました
それが敬意の証だった頃の話ですが
(笑)
オイラーは当時最大の
素数を発見しました
2 の31乗マイナス1 ―
20億を超える数です
彼はこの数が素数であることを
羽ペンとインクと紙と
精神力だけで証明しました
大きな数ですね
2 の127乗マイナス1 も
素数とわかっています
これはかなり厄介です
見てください
39桁もあります
1876年にリュカという数学者が
素数だと証明しました
すごいぞ リュカ
(笑)
でも巨大素数探しのすごさは
発見だけに留まりません
時には 素数でないことの
証明にも興奮します
先程のリュカは1876年に
2 の 67乗マイナス1 という
21桁の数が
素数でないと証明しました
ただ因数はわからなかったのです
素数ではないとわかっても
何と何をかければ
その巨大な数になるかは不明でした
何と何をかければ
その巨大な数になるかは不明でした
これは約40年間 謎でした
その後フランク・ネルソン・
コールが登場します
アメリカのある著名な学会での発表で
彼は黒板に歩み寄り
チョークを手にして
次々に 2 のべき乗を書き始めました
2 4 8 16 ―
さあ皆さんもご一緒に
32 64 128 256 ―
512 1,024 2,048・・・
数学マニアの天国だね
ここで止めましょう
コールは ここで止めませんでした
どんどん続けて
2 の67乗まで計算し
そこから1 を引いた数を
黒板に書きました
震える様な興奮が
会場を駆け抜けました
彼が2つの大きな素数で
かけ算の式を書くと
会場は騒然としました
発表の残り時間を全て使って
コールは その式を
すごい勢いで計算しました
彼は 2 の67乗マイナス1 の
素因数を発見したのです
会場が興奮に包まれる中 ―
(笑)
彼は席へ戻っていきました
発表で一言も話さなかったのは
数学の歴史上この時だけです
後に彼は この問題は
難しくなかったと言っています
必要だったのは
集中と粘り強さ ―
それから 彼の概算で
「日曜日 3年分」だったそうです
一方 数学の世界では
TEDに登場する他の分野と同様 ―
コンピュータ時代になって
爆発的な進歩を遂げました
画面では次々に更新された ―
最大の素数を10年ごとに
ご覧頂いています
コンピュータが主役になり
私達の計算能力が
飛躍的に高まったのです
これが1996年の時点で
最大の素数です
個人的に思い出深い年です
私は この年に大学を卒業して
数学とメディアの
どちらをとるか迷っていました
難しい決断でした
大学が大好きで
学位をとるのに たっぷり
9年半もかけましたから
(笑)
でも結局
自分の限界を悟ったのです
ランダムに選ばれた人々の中では
私は数学の天才です
でも数学の博士号を
持つ人々の中では
所詮 金づち並に
頭の鈍い人間に過ぎません
私には数学そのものより
数学について
語るほうが向いています
私が卒業した ちょうどその頃 ―
巨大な素数が次々と見つかり
記録が更新されていました
巨大な素数が次々と見つかり
記録が更新されていました
そんな頃にカーティス・
クーパー博士が登場します
博士は数年前まで
最大素数の記録を持っていましたが
ライバルの大学が
新記録を出しました
そのカーティス・クーパーが
記録を取り戻したのです
何年前でも何か月前でもなく
ほんの数日前のことです
この素晴らしい発見の瞬間 ―
私はTEDで使う予定だった
スライドを差し替えました
彼の成功を紹介するためです
(拍手)
その時の様子を まだ覚えています
朝のラジオ番組の放送中に
ツイートが入ったのです
「最大の素数が見つかったよ」
体が震えました
(笑)
別室にいた制作スタッフの
女性陣と交渉しました
「トップニュースを差し替えたい
今日は政治の話はしない
スポーツもなしだ
新しい巨大素数が見つかった」
彼女達は頭を抱えましたが
やりたいように
やらせてくれました
カーティス・クーパーのおかげで
現在わかっている最大の素数は
2 の57,885,161乗 ―
マイナス1を忘れずに
この数の長さはおよそ1,750万桁です
コンピュータに打ち込むと
テキスト形式でも
22MBになります
数学マニアじゃない人は
ハリー・ポッターの
小説を思い浮かべて
第1巻はこの位の厚さでした
全7巻でこの位です
ラスト近くは水増ししてますから
(笑)
この素数を本に書き出せば
ハリー・ポッター全巻の
1.5倍の長さになります
画面にあるのは
この素数の始めの1,000桁です
TEDは火曜の
11時から始まりましたが
1画面1秒の割合で見せても
全部見せるには
5時間もかかります
私は見せたかったんですが
ボノが承知しませんでした
まあ 当然です
この数をスライドにすると
17,500枚になります
この数が素数なのは
間違いありません
7が素数だと言うのと
同じ位 確かです
私が感じたのは
ほとんど性的興奮と言ってもいい
いや「ほとんど」すら不要です
(笑)
当然こう思う人もいるでしょう
アダム 君が喜ぶのは
よくわかった
でも素数は 私達と何の関係が?
素数が美しい理由を
3つだけあげましょう
まずコンピュータに
ある数が素数か
判断させる場合
短い式を入力します
わずか6行程のコードで
非常に単純な
質問をするのです
答えは「イエス」か「ノー」の
どちらかですが
とてつもない処理能力が必要です
だから巨大素数は
コンピュータ・チップの
速度と正確さを測るのに
うってつけなのです
そして2つ目
クーパーは1人で巨大素数を
捜したわけではありません
私のノートPCでも
4個の素数候補を調べていました
世界規模の分散処理
ネットワークに参加していたのです
世界規模の分散処理
ネットワークに参加していたのです
今回の巨大素数の発見は
RNA配列の解明や
SETIなどの天文プロジェクトの
データ解析に似ています
私達の時代には 偉大な発見は
研究室でも大学でもなく
ノートPCやデスクトップPCや
探究を支援する人々が持つ
デバイスの中でなされます
ただ私が本当に
すごいと思うのは
それが私達が生きる時代 ―
人間の精神と機械が
協力する時代を象徴するからです
TEDではロボットの
話がよく登場するので
可能性と限界もよくわかります
実際 自分のスマートフォンに
チェスの達人を凌駕する
アプリだって入れられます
すごいと思いませんか
これもすごいマシン ―
キューブ・ストーマー II です
シャッフルした
ルービックキューブを置くと
スマートフォンの処理能力で
キューブを調べて
解くことができます
時間はわずか5秒です
(拍手)
怖がる人もいますが
私はわくわくします
精神と機械が協力する時代に
生きているなんて
ラッキーじゃないですか
去年 地元の有名人という肩書で
インタビューを受けて
私の中で 2012年最大の
ニュースは何か聞かれました
私が熱烈に応援している ―
シドニー・スワンズだと
予想する人もいました
オーストラリアン
フットボールにおける ―
スーパーボウル級の
大会で優勝したのです
私も会場にいました
胸が高鳴る感動的な日でした
でも最大のニュースではありません
番組でしたインタビューでも
政治家や新発明のことでも
本やアートのことでもなく
2人の可愛い娘のことでもありません
2012年ダントツの
トップ・ニュースは
ヒッグス粒子の発見です
他の全ての素粒子に質量を与えた ―
究極の素粒子に大きな拍手を
(拍手)
この発見のすごいところを
説明します
50年前ピーター・
ヒッグス率いる研究陣が
究極の疑問を検討しました
つまり私達を構成するものに
質量がないのはなぜだろう?
私に質量があるのは明らかですが
その質量はどこから生じたのか?
彼はある仮説を立てました
無数の極めて小さな場が
宇宙全体に広がっていて
他の粒子がこの粒子を通り抜け
干渉する時に
質量を得るという仮説です
科学界の反応は こうです
「すごいアイデアだけど
そもそも証明できるのか?
理解の範囲を超えてるよ」
それからちょうど50年 ―
彼が生きている間に
本人が見ている前で
私達は歴史上最も
偉大なマシンを設計して
人間の精神が生み出した ―
壮大なアイデアを
実際に証明したのです
この素数に興奮する理由も同じです
存在を予測していたものを
実際に発見したのです
これが人間の本質です
人間として
何よりも大事なことです
心の友 デカルトが言うように
我々は考えるから ―
存在するのです
どうもありがとう
(拍手)