0:00:03.700,0:00:06.770 トニーです[br]"Every Frame a Painting"の時間です 0:00:08.484,0:00:10.832 どこを見ても その影響が見られる、 0:00:10.832,0:00:14.252 影響力の強い映画監督もいます。 0:00:16.607,0:00:20.257 ウェス・アンダーソン作品にその影響が見られます。 0:00:23.451,0:00:26.891 ジャッキー・チェンのアクロバットとスタントや… 0:00:28.431,0:00:31.731 ビル・マーレイの無表情なポーズも。 0:00:34.896,0:00:39.157 彼はもちろん、三大喜劇王の1人、[br]バスター・キートンです。 0:00:39.157,0:00:42.815 -"今日わたしたちが[br]気付き始めているように…" 0:00:42.815,0:00:47.755 "…彼は映画史上、[br]最も偉大な道化師でした。" 0:00:47.932,0:00:49.742 ほぼ100年経ちますが、 0:00:49.742,0:00:52.532 彼から学ぶことは[br]たくさんあると思います。 0:00:53.141,0:00:56.871 では今日は、"マスター"の作り方を見ていきましょう。 0:01:07.950,0:01:10.825 ビジュアル・コメディーについて[br]まず知っておくべきことは、 0:01:10.825,0:01:13.524 物語はアクションで[br]語らなければならないということです。 0:01:13.524,0:01:15.780 キートンは視覚的な語り手であり、 0:01:15.780,0:01:18.499 挿入字幕を好みませんでした。 0:01:18.499,0:01:21.768 -"平均で240の字幕があった…" 0:01:21.768,0:01:23.788 "…それが普通だった。" 0:01:23.788,0:01:27.378 -"240が平均ですか?"[br]-"そう、私は多くて56だった。" 0:01:27.993,0:01:31.883 彼はジェスチャーとパントマイムに[br]重点を置き、字幕を避けました。 0:01:31.883,0:01:35.014 このショットでは、[br]何の会話かわかりません。 0:01:35.014,0:01:38.714 必要なことは全て、テーブルと[br]動きによって伝えられます。 0:01:38.714,0:01:41.294 -"けれど、あなたの言い分は…" 0:01:41.294,0:01:44.557 " …観客に伝える手段はひとつだと…" 0:01:45.553,0:01:49.029 "アクションを通して。"[br]-"その通り。字幕は消しました…" 0:01:49.029,0:01:51.709 ”…アクションで伝えられる限りね。" 0:01:52.045,0:01:55.190 彼は、それぞれの動きはユニーク[br]であるべきと信じていました。 0:01:55.190,0:01:57.250 同じことは二度としません。 0:02:00.170,0:02:01.990 すべての落下は… 0:02:03.153,0:02:04.713 クリエイティブの… 0:02:05.487,0:02:07.177 …機会です。 0:02:08.023,0:02:11.162 しかし、一度アクションを知ると、[br]第2の疑問が生まれます。 0:02:11.162,0:02:13.192 カメラはどこに[br]置けば良いのでしょう? 0:02:18.267,0:02:22.038 ビジュアル・コメディーは、一般的に[br]特定のアングルが最もよく機能します。 0:02:22.038,0:02:23.955 もしアングルを変えたら… 0:02:23.955,0:02:27.295 ギャグを変えても[br]うまくいかない場合があります。 0:02:27.697,0:02:30.567 正しいアングルを見つけるには[br]試行錯誤が必要です。 0:02:30.567,0:02:34.374 それでは、同じギャグに対して、[br]2つのカメラ配置を見てみましょう。 0:02:34.374,0:02:36.093 これがひとつめ。 0:02:43.040,0:02:44.920 そしてふたつめ。 0:02:52.069,0:02:55.869 最初のアングルでは車が[br]画面のほとんどを占めていて、 0:02:55.869,0:02:58.784 キートンの顔は振り向くまで[br]よく見えません。 0:02:58.784,0:03:02.204 しかし2番目のアングルでは、[br]車は背景に置かれているので、 0:03:02.204,0:03:04.667 つねに顔がはっきりと見えます。 0:03:04.667,0:03:07.144 何が起きているのか、[br]彼は知りませんが… 0:03:07.144,0:03:09.894 …こちらの方がずっといいですね。 0:03:10.410,0:03:13.970 それから、はじめのアングルでは[br]画面の構成が注意をそらします。 0:03:13.970,0:03:17.038 顔と看板を同時に見てしまいますね。 0:03:17.038,0:03:19.734 けれどもシーンを再構成すると… 0:03:19.734,0:03:21.648 自然に彼を見て… 0:03:21.648,0:03:23.438 それから看板を見て…[br]"タイヤ修理" 0:03:23.438,0:03:25.908 彼に戻ります。[br]ずっといいですね。 0:03:29.128,0:03:30.708 3つ目の疑問です… 0:03:31.052,0:03:34.212 この世界におけるルールとは何でしょう? 0:03:35.511,0:03:39.381 キートンの世界は平面的で、ひとつのルールに支配されています。 0:03:43.371,0:03:47.282 カメラに映らないものは、[br]登場人物も見ることができません。 0:03:47.282,0:03:50.182 この世界では[br]登場人物は画面枠と、 0:03:50.182,0:03:53.109 観客に見える範囲に制限されています。 0:03:53.772,0:03:57.326 これにより、視覚的に意味のある[br]ギャグが可能になります。 0:03:57.936,0:03:59.801 合理的でなくとも。 0:03:59.801,0:04:03.537 彼のギャグの多くは、平面上での[br]人々の動きについてのものです。 0:04:03.537,0:04:05.618 彼は右に行くことができて… 0:04:05.618,0:04:06.838 左にも… 0:04:07.629,0:04:08.899 上も… 0:04:09.478,0:04:10.648 下も… 0:04:11.496,0:04:13.335 レンズから離れたり… 0:04:13.335,0:04:15.118 近づいたり。 0:04:15.118,0:04:16.818 見覚えがありますか? 0:04:16.818,0:04:20.858 -"彼女は殺されました。[br]私が容疑者でしょうね。" 0:04:24.221,0:04:28.101 アンダーソン同様、キートンも[br]幾何学にユーモアを見出しました。 0:04:31.091,0:04:35.165 彼はギャグの"かたち"が見えるように[br]よくカメラを後ろに置きました。 0:04:35.165,0:04:37.206 これは円で… 0:04:37.206,0:04:38.691 三角形に… 0:04:39.071,0:04:39.971 縞模様… 0:04:41.120,0:04:44.230 そしてもちろん[br]画面枠は長方形ですね。 0:04:46.049,0:04:49.933 このような演出は、観客が自ら[br]画面を見渡すように促すので、 0:04:49.933,0:04:52.053 私は素晴らしいと思います。 0:04:52.429,0:04:55.529 このショットで、[br]あなたはどこを見ているでしょう。 0:04:59.320,0:05:00.840 彼は今どこに? 0:05:02.047,0:05:04.949 これらのギャグの中には、[br]寄席にルーツを持ち、 0:05:04.949,0:05:07.379 手品のように[br]デザインされているものもあります。 0:05:11.894,0:05:13.901 そして手品と同様に、 0:05:13.901,0:05:16.941 どうやっているのか考えるのも、[br]楽しみの1つです。 0:05:19.086,0:05:23.846 キートンは、これらのギャグを[br]"インポッシブル・ギャグ"と呼びました。 0:05:25.635,0:05:29.325 彼のもっとも独創的で[br]シュールなギャグの一部です。 0:05:30.279,0:05:32.701 しかし語り手として、[br]物理法則を無視したギャグは、 0:05:32.701,0:05:34.578 扱いにくいと感じました。 0:05:34.578,0:05:39.288 -"我々は漫画的なギャグを止めなければいけなかった。" 0:05:39.288,0:05:43.356 -"長編映画を撮り始めた時、[br]すべて失いました。" 0:05:43.356,0:05:48.095 -"現実味を感じられないと、[br]ストーリーは成立しないでしょう。" 0:05:48.390,0:05:52.200 そこで彼は"ナチュラル・ギャグ"[br]と呼ぶものに注目しました。 0:05:52.200,0:05:56.214 登場人物と状況から[br]有機的に生まれるギャグです。 0:05:56.214,0:05:59.351 彼はこのドアで[br]何をしていると思いますか。 0:06:04.043,0:06:06.285 キートンは、[br]ビジュアル・コメディーにおいては… 0:06:06.285,0:06:08.785 即興に気を配らねばならない[br]と主張しました。 0:06:08.785,0:06:12.381 -"どのくらいが計画されて、[br]またどのくらいが実際に行われたのでしょう?" 0:06:12.381,0:06:14.316 "即興はどの位ですか?" 0:06:14.316,0:06:16.541 -"基本的には50%を…" 0:06:18.391,0:06:20.773 "…撮影前に考えて…" 0:06:20.773,0:06:24.152 "…残りは撮影中に発展させています。" 0:06:24.152,0:06:26.760 時には、[br]お気に入りのギャグを見つけて 0:06:26.760,0:06:28.710 あとで繰り返すこともありました。 0:06:30.136,0:06:33.984 けれど計画していたギャグが[br]うまくいかない日もありました。 0:06:33.984,0:06:36.178 彼は ただカットしました… 0:06:36.178,0:06:39.270 -"目立たなかったり、[br]機能しなかったりするからね。" 0:06:39.270,0:06:41.120 "そしてアクシデントが起きる。" 0:06:42.183,0:06:44.198 ジャンプは成功のはずでした。 0:06:44.198,0:06:45.630 失敗した彼は… 0:06:45.630,0:06:48.499 そのまま土台にして、[br]続けることにしました。 0:06:49.229,0:06:52.643 -"こんな良いシーンは[br]二度と撮れないからね。" 0:06:52.643,0:06:54.873 "まず最初の撮影で起こる。" 0:06:54.873,0:06:56.654 -"それが理由かもしれませんが…" 0:06:56.654,0:06:58.934 " …昨夜は我が家で大ウケでしたよ。" 0:06:58.934,0:07:04.447 "本当に起きたように[br]感じられたのです。今まさに!" 0:07:05.527,0:07:07.298 "それは一度だけ起きて…" 0:07:07.298,0:07:09.448 "何度も撮影したものでは[br]ありませんでした。" 0:07:09.448,0:07:12.054 そして最後になりますが、[br]キートン監督の 0:07:12.054,0:07:14.694 最も有名なルールを紹介します。 0:07:16.655,0:07:18.854 "作り物のギャグはしない" 0:07:18.854,0:07:23.512 キートンにとって、観客に本物だと[br]納得させる方法は1つだけでした。 0:07:23.512,0:07:27.622 自分でスタントをする必要[br]があったのです… 0:07:27.622,0:07:29.841 …編集なしで。 0:07:29.841,0:07:32.790 彼は厳格で、こう言いました… 0:07:32.790,0:07:35.200 -"一発で撮るか…" 0:07:38.211,0:07:40.554 "…そのギャグは捨てるか、だ。" 0:07:40.554,0:07:44.113 これこそ、彼が今でも[br]"生き続けている"理由です。 0:07:44.113,0:07:47.153 技術だけでなく、彼の誠実さの為に。 0:07:47.153,0:07:49.543 これは監督本人です。 0:07:50.373,0:07:53.183 技術が進歩しても、[br]これは真似できませんね。 0:07:53.802,0:07:57.822 今でも本物のスタントを見ると、[br]私たちは驚きます。 0:07:57.822,0:08:01.659 けれど私は、95年前はもっとうまく[br]やっていたように思います。 0:08:01.659,0:08:05.599 だから、どんなに彼の[br]オマージュを見たとしても… 0:08:16.777,0:08:19.403 本物に勝るものはありませんね。