0:00:00.840,0:00:06.160 「開発過程で出てきたアイデアの方が[br]私がデザイナーとして盛り込んだアイデアよりも」 0:00:06.160,0:00:11.880 「完成したゲームの中に、明らかに多く残っている」 0:00:11.880,0:00:17.300 「本作のゲームプレイをデザインするプロセスは[br]好き勝手に新しいものを作るというよりも」 0:00:17.300,0:00:22.600 「すでに存在するものを発見するのに近かった」 0:00:22.600,0:00:25.060 「別の言い方をすれば、ある部分までは」 0:00:25.070,0:00:27.970 「このゲームは自らをデザインしたということだ」 0:00:31.760,0:00:37.600 Game Maker's Toolkitへようこそ[br]僕はマーク・ブラウン 0:00:37.600,0:00:45.160 今のはジョナサン・ブロウが2011年のGDCでした[br]時間を巻き戻せるジャンプアクションBraidの話だ 0:00:45.160,0:00:50.840 ブロウがここで述べているのは、彼がBraidと[br]The Witnessを作る時に用いたデザイン哲学だ 0:00:50.840,0:00:57.060 ルールやパズルはプログラミングとプレイテストを[br]通じて発見されるものであり 0:00:57.060,0:01:01.060 予め考えられたアイデアを導入するのではない[br]という発想だ 0:01:01.079,0:01:06.569 だからマリオに似たジャンプアクションのBraidでは[br]ブロウはまずシステムから始めた 0:01:06.569,0:01:09.700 時間をほぼ無制限に巻き戻せる能力だ 0:01:09.700,0:01:15.719 これをコード化する過程で、新たなアイデアが生まれた[br]ゲーム世界内の全ての物の位置を巻き戻す際に 0:01:15.719,0:01:20.539 特定のオブジェクトは[br]巻き戻らないようにすることもできる 0:01:20.539,0:01:25.749 そうすれば一部の物は時間操作の影響を受けなくなる[br]こうしてルールが一つ生まれた 0:01:25.749,0:01:31.700 この新しいルールを導入した後、ブロウは[br]ゲームをプレイして、予想外の結果を探した 0:01:31.700,0:01:36.260 例えば動く足場が時間操作無効になった場合 0:01:36.260,0:01:41.080 足場が自分の位置からなくなるまで巻き戻せば 0:01:41.100,0:01:45.880 時間操作を止めた瞬間、下に落ちることになる 0:01:45.880,0:01:47.480 これは悪くない 0:01:47.480,0:01:53.420 このように、各パズルはこうした現象の例示になるので[br]プレイヤーはパズルを解くことで 0:01:53.420,0:01:58.319 Braidのユニークな世界についての興味深い事実を[br]発見することができる 0:01:58.320,0:02:02.440 ゲームのプログラム中に[br]ブロウ自身が発見したのと同じ事実だ 0:02:02.440,0:02:08.020 The Witnessでも似たプロセスが使われている[br]ブロウはグリッド上に線を引くシステムを追求して 0:02:08.020,0:02:15.240 ルールとパズルを作った これをテストすると[br]グリッドのセルが分割されることがわかった 0:02:15.240,0:02:18.180 これがルールになるだろうか? 0:02:18.180,0:02:20.700 そこから次のような状況が出てくる 0:02:20.700,0:02:24.700 このパズルは簡単に解ける[br]こうやって回りこめばいい 0:02:24.700,0:02:29.200 次のパズルは同じに見えるが、出口が移動している 0:02:29.200,0:02:33.240 同じ進み方だと出口が塞がってしまう 0:02:33.240,0:02:35.640 だからこうやる必要がある 0:02:35.640,0:02:41.480 ここでは線を引くというシステムが[br]セルを切り分けるというルールを生み 0:02:41.480,0:02:47.140 それが出口を塞ぐ結果になり[br]そのことを示すパズルへと繋がる 0:02:47.140,0:02:52.560 ブロウはこの種のパズルの発明を[br]2011年のIndieCadeで解説している 0:02:52.560,0:02:56.700 「それはこうした、普段注目されることのない[br]問いを立てた結果だ」 0:02:56.700,0:03:01.440 「『こんなパズルが作りたい』というような[br]上から押し付けた決定ではない」 0:03:01.440,0:03:06.540 「むしろ開発初期における、非常にシンプルな[br]探究のプロセスから発している」 0:03:06.540,0:03:12.340 ブロウはパズルデザインの仕事を[br]宇宙の法則か何かに任せてしまったようだが 0:03:12.349,0:03:15.549 それにしても彼は重要な役割を果たしている 0:03:15.549,0:03:20.840 第一に、加えた変更から派生する影響を[br]可能な限り追求するということだ 0:03:20.840,0:03:25.440 The Witnessにおいて、ブロウはこの作品の[br]あらゆる部分が変更可能だと言っている 0:03:25.440,0:03:28.840 それにはグリッドやセル、線、環境[br]そしてパネルも含まれる 0:03:28.840,0:03:34.680 Braidでは、ルール変更の帰結はゲーム内に[br]存在する全てのオブジェクトに適用される 0:03:34.720,0:03:39.460 例えば一部のオブジェクトが[br]巻き戻し無効のワールドでは 0:03:39.469,0:03:44.489 敵や鍵、ドア、雲、足場、そしてプレイヤー自身も[br]この特性を持つようになっている 0:03:44.489,0:03:50.219 ブロウが果たした第二の役割は、結果として出現した[br]パズルをプレイヤーに提示するやり方にある 0:03:50.219,0:03:54.579 問題の核心部分において、プレイヤーを面白い発見へと[br]導くようなお膳立てをしているのだ 0:03:54.579,0:03:59.670 例として、彼は一見簡単そうな道を用意して[br]プレイヤーを誤った方向へ導く手法をよく使う 0:03:59.670,0:04:05.170 プレイヤーはその後、解法が間違っていることに気づく[br]Braidの「Hunt」というパズルでは 0:04:05.170,0:04:09.319 敵を全て倒せと言われるが、素直に倒していくと 0:04:09.319,0:04:11.519 クリアできない配置になっている 0:04:11.520,0:04:17.100 こうした誘導の手法はプレイヤーがゴリ押しで攻略して[br]面白い発見を見逃すことを防ぐ 0:04:17.109,0:04:22.130 また、なぜうまくいかないのかを示すことは[br]ブロウが各パズルで表現しようとしている 0:04:22.130,0:04:25.810 本質的なポイントでもある 0:04:25.810,0:04:31.500 ブロウは続き物のパズルや組み合わせ[br]発想の転換といった手法を用いている 0:04:31.500,0:04:35.740 単純なパズルが出てきた場合、例えば[br]2つのドアを1つの鍵で開けるこのパズルの場合 0:04:35.740,0:04:38.980 同じエリアでより複雑な[br]バージョンが出てくる可能性が高い 0:04:38.980,0:04:42.800 異なるワールドで似たような配置を利用することで 0:04:42.810,0:04:48.380 結果がどのように変化するかを見ることができる[br]この面はワールド2と4の両方で出現するが 0:04:48.380,0:04:52.310 時間の動き方が違うので、解法も異なっている 0:04:52.310,0:04:56.520 ジョナサン・ブロウはプレイヤーが慣れたルールを[br]転覆させることもある 0:04:56.520,0:05:01.340 Irreversibleという面では、プレイヤーは[br]巻き戻しを使ってはいけないことに気づく 0:05:01.340,0:05:06.080 罠を仕掛け、考えの足りないプレイヤーを引っ掛ける[br]この面は時間の働き方が特殊なので 0:05:06.080,0:05:09.250 片方のドアしか開けられない 0:05:09.250,0:05:14.979 ブロウの最後の貢献は、容赦のない吟味にある[br]システムやルール、パズルの中で 0:05:14.979,0:05:20.710 驚きがなかったり、他と被っていたり[br]面白くないものはどんどん切り捨てていく 0:05:20.710,0:05:25.190 BraidもThe Witnessも、お蔵入りになったゲームから[br]派生した作品であり 0:05:25.190,0:05:30.580 お蔵入りになったのは、基本システムが十分な深みを[br]持たなかったからだ 0:05:30.580,0:05:35.699 ブロウはルールも切り捨てる[br]Braidのターン制ワールドは結果に驚きがなく 0:05:35.699,0:05:37.979 不自然だったので廃棄された 0:05:37.980,0:05:42.360 だがジョナサン・ブロウが他のデザイナーと違う点は 0:05:42.360,0:05:48.820 興味深いアイデアや、ないとゲームが不完全になる[br]要素は、楽しくなくてもあえて残しておくことだ 0:05:48.980,0:05:53.780 例えば鍵が勝手に跳ね回るこの変なパズルだ 0:05:53.780,0:05:57.870 これは確かに驚くし、このゲームの世界の[br]興味深い帰結だ 0:05:57.870,0:06:02.750 つまりジョナサン・ブロウにとって、パズルは[br]パズルだけのものではない 0:06:02.750,0:06:06.970 パズルはデザイナーからプレイヤーへのアイデアの[br]伝達だ パズルを解くことは、プレイヤーが 0:06:06.970,0:06:09.419 「よくわかった」と言うことなのだ 0:06:09.420,0:06:14.760 「よくわかった」は「やっと解けた」とは[br]大きく異なるコンセプトだと思う 0:06:14.760,0:06:18.900 多くのパズルゲームは「やっと解けた」の方だ[br]なぜあるのか不明なステップや込み入った順序 0:06:18.900,0:06:22.080 引っ掛け要素やわかりにくい仕組みで[br]出来ているからだ 0:06:22.080,0:06:26.360 ブロウの作品におけるパズルはそれに比べて[br]公平に感じられる 0:06:26.360,0:06:31.960 だからこのデザイン哲学は、デザインから[br]ルールやパズルを作ることに留まらない 0:06:31.960,0:06:35.480 より優れた、より誠実なパズルを[br]作ることを助ける方法でもあるのだ 0:06:35.490,0:06:39.830 BraidとThe Witnessは全ての要素を最初に紹介し[br]導入部のパズルで簡潔にシステムを教えてくれる 0:06:39.830,0:06:44.610 それ以降に出るより高難度のパズルの攻略は[br]すでにわかっているシステムから生じる帰結を 0:06:44.610,0:06:49.400 異なる状況や組み合わせ、配置において[br]理解することに尽きている 0:06:49.400,0:06:54.759 こうしたパズルは一瞬で解けることもある[br]大部分のパズルが扱うアイデアは1つだけだし 0:06:54.759,0:06:59.720 ステージは小さめなので、動く部分を全て[br]同時に考慮に入れることができる 0:06:59.720,0:07:05.409 引っ掛け要素はないか、あってもごくわずかだ[br]存在意義が不明な攻略ステップもほとんどない 0:07:05.409,0:07:08.449 解き方がわかってしまえば、実行するのは難しくない 0:07:08.449,0:07:13.039 だからこのゲームでパズルを解くのは[br]ルービックキューブを解くこととか 0:07:13.039,0:07:18.250 クイズの答えを予想するのとは違う[br]ただ最初からあったものを見ることなのだ 0:07:18.250,0:07:23.250 答えはプレイヤーの目の前にある[br]世界をどう見るべきか、それさえわかればいい 0:07:23.250,0:07:25.639 The Witnessの隠しパズルもそれに近い 0:07:25.639,0:07:30.300 パズルを解いた時の「そうか!」という感じは[br]ピースを全部つなぎ合わせた時の感覚ではないし 0:07:30.300,0:07:34.900 デザイナーが一体何をしてほしいのか[br]ようやく探り当てた時の感覚でもない 0:07:34.900,0:07:38.139 ゲーム世界がよりはっきりと見えてくる感覚なのだ 0:07:38.139,0:07:43.169 ジョナサン・ブロウはGamasutraに語っている[br]「パズルが現実的で具体的になっていくにつれて」 0:07:43.169,0:07:50.200 「そして無意味な課題を設定しなくなるにつれて[br]閃きの瞬間がより有意義なものになる」 0:07:53.240,0:07:54.280 視聴してくれてありがとう! 0:07:54.280,0:07:59.980 GMTで僕が目標としていることの一つは[br]優れたゲームデザイナーたちの哲学を伝えることだ 0:07:59.980,0:08:02.580 君たちが自分のゲームでそれを活用できるように 0:08:02.580,0:08:06.400 興味があるなら、ジョナサン・ブロウが[br]デザインプロセスについて語っているリンクを 0:08:06.400,0:08:07.720 たくさん記してある 0:08:07.720,0:08:10.540 これはパズルゲーム専用というわけじゃない 0:08:10.540,0:08:14.200 デザインがルールとシステムを[br]決めるというこのプロセスは 0:08:14.200,0:08:16.940 他のジャンルにも利用できると[br]ブロウは考えている 0:08:16.940,0:08:20.660 番組が気に入ったならコメントや[br]「いいね!」、チャンネル登録をよろしく 0:08:20.660,0:08:25.000 Patreonで財政面の支援をしてくれてもいい[br]このゴールドレベルの支援者たちのように