「開発過程で出てきたアイデアの方が
私がデザイナーとして盛り込んだアイデアよりも」
「完成したゲームの中に、明らかに多く残っている」
「本作のゲームプレイをデザインするプロセスは
好き勝手に新しいものを作るというよりも」
「すでに存在するものを発見するのに近かった」
「別の言い方をすれば、ある部分までは」
「このゲームは自らをデザインしたということだ」
Game Maker's Toolkitへようこそ
僕はマーク・ブラウン
今のはジョナサン・ブロウが2011年のGDCでした
時間を巻き戻せるジャンプアクションBraidの話だ
ブロウがここで述べているのは、彼がBraidと
The Witnessを作る時に用いたデザイン哲学だ
ルールやパズルはプログラミングとプレイテストを
通じて発見されるものであり
予め考えられたアイデアを導入するのではない
という発想だ
だからマリオに似たジャンプアクションのBraidでは
ブロウはまずシステムから始めた
時間をほぼ無制限に巻き戻せる能力だ
これをコード化する過程で、新たなアイデアが生まれた
ゲーム世界内の全ての物の位置を巻き戻す際に
特定のオブジェクトは
巻き戻らないようにすることもできる
そうすれば一部の物は時間操作の影響を受けなくなる
こうしてルールが一つ生まれた
この新しいルールを導入した後、ブロウは
ゲームをプレイして、予想外の結果を探した
例えば動く足場が時間操作無効になった場合
足場が自分の位置からなくなるまで巻き戻せば
時間操作を止めた瞬間、下に落ちることになる
これは悪くない
このように、各パズルはこうした現象の例示になるので
プレイヤーはパズルを解くことで
Braidのユニークな世界についての興味深い事実を
発見することができる
ゲームのプログラム中に
ブロウ自身が発見したのと同じ事実だ
The Witnessでも似たプロセスが使われている
ブロウはグリッド上に線を引くシステムを追求して
ルールとパズルを作った これをテストすると
グリッドのセルが分割されることがわかった
これがルールになるだろうか?
そこから次のような状況が出てくる
このパズルは簡単に解ける
こうやって回りこめばいい
次のパズルは同じに見えるが、出口が移動している
同じ進み方だと出口が塞がってしまう
だからこうやる必要がある
ここでは線を引くというシステムが
セルを切り分けるというルールを生み
それが出口を塞ぐ結果になり
そのことを示すパズルへと繋がる
ブロウはこの種のパズルの発明を
2011年のIndieCadeで解説している
「それはこうした、普段注目されることのない
問いを立てた結果だ」
「『こんなパズルが作りたい』というような
上から押し付けた決定ではない」
「むしろ開発初期における、非常にシンプルな
探究のプロセスから発している」
ブロウはパズルデザインの仕事を
宇宙の法則か何かに任せてしまったようだが
それにしても彼は重要な役割を果たしている
第一に、加えた変更から派生する影響を
可能な限り追求するということだ
The Witnessにおいて、ブロウはこの作品の
あらゆる部分が変更可能だと言っている
それにはグリッドやセル、線、環境
そしてパネルも含まれる
Braidでは、ルール変更の帰結はゲーム内に
存在する全てのオブジェクトに適用される
例えば一部のオブジェクトが
巻き戻し無効のワールドでは
敵や鍵、ドア、雲、足場、そしてプレイヤー自身も
この特性を持つようになっている
ブロウが果たした第二の役割は、結果として出現した
パズルをプレイヤーに提示するやり方にある
問題の核心部分において、プレイヤーを面白い発見へと
導くようなお膳立てをしているのだ
例として、彼は一見簡単そうな道を用意して
プレイヤーを誤った方向へ導く手法をよく使う
プレイヤーはその後、解法が間違っていることに気づく
Braidの「Hunt」というパズルでは
敵を全て倒せと言われるが、素直に倒していくと
クリアできない配置になっている
こうした誘導の手法はプレイヤーがゴリ押しで攻略して
面白い発見を見逃すことを防ぐ
また、なぜうまくいかないのかを示すことは
ブロウが各パズルで表現しようとしている
本質的なポイントでもある
ブロウは続き物のパズルや組み合わせ
発想の転換といった手法を用いている
単純なパズルが出てきた場合、例えば
2つのドアを1つの鍵で開けるこのパズルの場合
同じエリアでより複雑な
バージョンが出てくる可能性が高い
異なるワールドで似たような配置を利用することで
結果がどのように変化するかを見ることができる
この面はワールド2と4の両方で出現するが
時間の動き方が違うので、解法も異なっている
ジョナサン・ブロウはプレイヤーが慣れたルールを
転覆させることもある
Irreversibleという面では、プレイヤーは
巻き戻しを使ってはいけないことに気づく
罠を仕掛け、考えの足りないプレイヤーを引っ掛ける
この面は時間の働き方が特殊なので
片方のドアしか開けられない
ブロウの最後の貢献は、容赦のない吟味にある
システムやルール、パズルの中で
驚きがなかったり、他と被っていたり
面白くないものはどんどん切り捨てていく
BraidもThe Witnessも、お蔵入りになったゲームから
派生した作品であり
お蔵入りになったのは、基本システムが十分な深みを
持たなかったからだ
ブロウはルールも切り捨てる
Braidのターン制ワールドは結果に驚きがなく
不自然だったので廃棄された
だがジョナサン・ブロウが他のデザイナーと違う点は
興味深いアイデアや、ないとゲームが不完全になる
要素は、楽しくなくてもあえて残しておくことだ
例えば鍵が勝手に跳ね回るこの変なパズルだ
これは確かに驚くし、このゲームの世界の
興味深い帰結だ
つまりジョナサン・ブロウにとって、パズルは
パズルだけのものではない
パズルはデザイナーからプレイヤーへのアイデアの
伝達だ パズルを解くことは、プレイヤーが
「よくわかった」と言うことなのだ
「よくわかった」は「やっと解けた」とは
大きく異なるコンセプトだと思う
多くのパズルゲームは「やっと解けた」の方だ
なぜあるのか不明なステップや込み入った順序
引っ掛け要素やわかりにくい仕組みで
出来ているからだ
ブロウの作品におけるパズルはそれに比べて
公平に感じられる
だからこのデザイン哲学は、デザインから
ルールやパズルを作ることに留まらない
より優れた、より誠実なパズルを
作ることを助ける方法でもあるのだ
BraidとThe Witnessは全ての要素を最初に紹介し
導入部のパズルで簡潔にシステムを教えてくれる
それ以降に出るより高難度のパズルの攻略は
すでにわかっているシステムから生じる帰結を
異なる状況や組み合わせ、配置において
理解することに尽きている
こうしたパズルは一瞬で解けることもある
大部分のパズルが扱うアイデアは1つだけだし
ステージは小さめなので、動く部分を全て
同時に考慮に入れることができる
引っ掛け要素はないか、あってもごくわずかだ
存在意義が不明な攻略ステップもほとんどない
解き方がわかってしまえば、実行するのは難しくない
だからこのゲームでパズルを解くのは
ルービックキューブを解くこととか
クイズの答えを予想するのとは違う
ただ最初からあったものを見ることなのだ
答えはプレイヤーの目の前にある
世界をどう見るべきか、それさえわかればいい
The Witnessの隠しパズルもそれに近い
パズルを解いた時の「そうか!」という感じは
ピースを全部つなぎ合わせた時の感覚ではないし
デザイナーが一体何をしてほしいのか
ようやく探り当てた時の感覚でもない
ゲーム世界がよりはっきりと見えてくる感覚なのだ
ジョナサン・ブロウはGamasutraに語っている
「パズルが現実的で具体的になっていくにつれて」
「そして無意味な課題を設定しなくなるにつれて
閃きの瞬間がより有意義なものになる」
視聴してくれてありがとう!
GMTで僕が目標としていることの一つは
優れたゲームデザイナーたちの哲学を伝えることだ
君たちが自分のゲームでそれを活用できるように
興味があるなら、ジョナサン・ブロウが
デザインプロセスについて語っているリンクを
たくさん記してある
これはパズルゲーム専用というわけじゃない
デザインがルールとシステムを
決めるというこのプロセスは
他のジャンルにも利用できると
ブロウは考えている
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